俺、横島忠夫はこんなにも強く思ったことはない。
俺の両親って何者だ?と。
目覚めてしまった霊力をコントロール出来ず駄々漏れなままの俺の身はかなり危険な状態だった。
というのも、腹を空かした鮫の大群を海パン一枚で呼んでいるのと変わらない状況だったらしい。
ちなみにこれは駆け付け、先生の説明を受けた際の父さんの解釈だ。
今は教会という聖域に居るため漏れてはいないらしいが、あの変態が化け物に短時間で姿を変えた理由の一つに雑魚霊の集合、吸収も有ったらしい。
原因は言うまでもなく俺。
そんな状態でよく逃げ切ったなと冷や汗をたらたらとかいた。
連絡を受けて慌てて駆け付けてくれた両親には、ほんと頭が上がらない。
文字通り抱き潰されたが有りがたく受け取った。
あの事件の後すぐに、両親には唐巣先生から懇切丁寧な説明が入った。
突然のことでかなり戸惑っていた二人だったが、先生の人柄が話している間に伝わったようで次第に納得した様子だった。
結論から言うと、あのあとすぐに俺は唐巣先生のもと住み込みで、弟子入りした。
両親同意で、初めて一週間も学校を休んだ。
そして弟子入り3日目。
今俺の左手には、唐巣先生に貰ったミサンガが二つ結ばれている。
封じ込めの霊具だ。
これは俺のために、態々作ってくれた特注品だ。
しかも、唐巣先生と令子さんの共同作。
世界最高峰のGSが作ったとか、下手なお守りより断然効果は高いだろうな。
とはいってもこの霊具、有を無には出来ない。
これはあくまで、体から霊力を漏れ出さないように流れを作ってくれている物なので、自力で出来るように目下コントロールの真っ最中だ。
「はい、今ぶれたね。もう一度最初から、はいスタート!」
「………………」
唐巣先生はさりげにスパルタだ。
ちなみにこのやり取りは、もう数えきれないほどやっている。
俺は唐巣先生の住居、リビングにて椅子に座り水晶に自分の霊力を流していた。
一定の量を一定の時間注ぎ続ける。
弟子入りした俺がやっている修行は、本当にこれだけだ。
しかしながら難しい。
量は余裕があるのでまだまだ苦しくはないが、一定の量をコントロールし続けるのは今のところは最大1分が限界だった。
精神を磨り減らす感じの疲れ方をするし、集中するってこんなに難しかったのかと正直なところ思いもしなかった。
「…はい止め、5秒更新だね。頑張ったね。今日はここまでにしようか」
にこりと笑った先生には先ほどまでの厳しさは無くなっていた。
「ありがとうございました」
ペコリと頭を下げて礼をする。
はぁーと息を吐き出し脱力した。
「修行は順調みたいね」
令子さんがテレビ前に置かれているソファーから、こちら側に身を乗り出すような体勢で笑いかけてきた。
片手には調査書の束を持っている。
「少しずつ成長してはいるんでしょうけど、自分ではあまり変わった感じはしないですね」
霊力はある。
呼吸するのと同じく、霊や化け物を感知したり認識したりは当たり前に出来るようになったのは、翌朝カーテンを開けた際に自覚した。
2階の窓から外をみたら、足のないスケルトン気味な幽霊が飛んでいだ。
普通に目があって挨拶をされ、朝から絶叫したのだ。
イヤー、あのときはマジでびびった。
「大丈夫よ、最初に出会った時よりもちゃんと体に留まるように成ってきてるわ」
自信を持ちなさいと笑った令子さんは封筒に書類を入れると、鞄にそれを入れて持った。
「じゃあ先生、横島君お先に失礼します!」
「まだ明るいが気をつけて帰りなさい」
「令子さんまた明日!」
これが今の日常だった。