シスコン一誠くん   作:超人類DX

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悪魔さん達と散歩してるのは奇跡に思えても、基本別に丸くなったとかは無いので、用済みとわかれば……やばいかも。

あぁ、今回の話しにはあんま関係ないっすけど。



不条理なるデストロイヤー

 やはり利用価値が無くなればぶっ殺してしまおうか。

 

 レンに対する変態度が分刻みでアップしていく木場祐斗を見て、そう思い始めたイッセーは顔面が悲惨な事になった――というよりは悲惨にしてやった祐斗からレンを少なくとも二メートル以上は離しながら、それでもアーシアが学校に通う為だと我慢し、別にやらんでも良い木場祐斗の抱えるお悩みの解決の手伝いをしていた。

 

 

「だから僕は聖剣が憎いんだ」

 

「ふーん……? 大変だったんだね……」

 

「うん、だからレンさん……どうか僕と――」

 

「ごめんね、それはちょっと無理」

 

「用無しになったら、テメーから真っ先にブチ殺してやる……」

 

 

 まるで我が子を守る親の様にレンを木場から離し、更に盾となってそれでも懲りない彼のアプローチに対して番犬の如く唸ってるイッセー。

 

 イリナとゼノヴィアというかつての自分の大半を占めていた要因と枷を自ら少しだけ外したせいか、分刻みでレンへのシスコン度が上昇しているのがよーく分かる態度だ。

 

 

「何と無く前より更にレン先輩を大事にしている気がします」

 

「お兄様もこれから大変ですわねぇ……」

 

 

 ご主人様以外には噛みつく狂犬のごとき態度に小猫とレイヴェルは前よりレンに対する溺愛っぷりに拍車が掛かってると察し、何とも複雑な眼差しだ。

 妹といえど従兄妹というのもその複雑な眼差しの理由なのかもしれないし、更に複雑にさせてるのは、言ってしまえば他人である筈のアーシアにもその要素があるのだから『純人間ってだけでも得なんて、何かズルい』と、其々人より力やら何かやら優れた種族なのに人への憧れを持ってしまうのも無理は無い。

 

 だがどう足掻いた所で、悪魔を毛嫌いしているイッセーが態度を改める事は、天文学的な確率で有り得ないこの現状、どうする事もできないのだった。

 

 

 

 

 

 もう、昔の記憶のほぼ全てはアテになりゃしない。

 何せこの時期の俺は、奴等に利用されていた時期であり、そしてイリナとゼノヴィアと会って直ぐの頃だ。

 

 故に、レンやアーシアと行動している現状、その記憶を照らし合わせてもこれから何が起こるのかも予想がつかない。

 

 まあ、予想できたところでだからどうだこうだって訳じゃあ無いし、例えばだ……。

 

 

「クソ悪魔数体に? 人間様お二人? そしてそしてぇ? あららのら? そちらの子はアーシアたんではございませんかぁ?」

 

「ふ、フリード神父……!?」

 

 

 俺が全てを取り戻す切っ掛けの一人だった男で忘れはしなかったフリード・セルゼンもまた、違う存在だという時点で最早この世界は単なる平行世界の過去では無いのかもしれない。

 だってそうだろ? 俺の記憶にあるフリード・セルゼンは天然のジョワユーズ使いであり、白夜の騎士であり、言動はともかく普通にできる男で、コカビエルをボスと慕う、分かりにくい忠義心の塊みたいな奴だった。

 

 だが今アーシアをアーシアたんなんぞと呼んでニヤニヤしている目の前の男はどうだ? そんな気配も強さも、欠片だって感じやしない。

 

 

「その手に持つのは聖剣だな!?」

 

「んぁ? そーですけど何か? あぁ、お前確か聖剣計画のモルモットだった奴の生き残りだっけ? ヒャハハハ! てことはこの俺様の持つ聖剣様が憎いってかぁ?」

 

「っ! 当たり前だ、その聖剣は僕が破壊させて貰う!」

 

「はぁ~? テメーみたいなクソ悪魔に聖剣様を破壊するなんざムリムリムリムリカタツムリよ! つーか、その前に俺っちがテメー等切り捨ててやるしー!!」

 

 

 動きも鈍い、剣筋も素人の俺が見てもしょぼい、完全にバラけた聖剣の一つの特殊能力頼り。

 それでも変態小僧と打ち合えてるのは端から見れば凄いとか思われるのかもしれないが、変態小僧一匹始末もできない時点でたかが知れている。

 

 

「おい、邪魔だ下がれ」

 

「え――うわっ!?」

 

 

 だからもう良いやと思った俺は、威嚇にもなりゃしねぇ剣をそこかしこから出してフリード・セルゼンと互角やってる変態小僧に接近して首根っこを掴むと、そのまま猫ガキと鳥ガキの所に投げつけた。

 

 

「ぐっ!? な、なにをするんだ兵藤くん……!」

 

「要するにアレの持ってる聖剣を奪えば良いんだろ?

だったら俺がやる」

 

 

 地面を転がった変態小僧が困惑した顔をしてどういう事なのかと聞くので、俺は一言それだけを言うとアーシアとレンに離れろと言い、訝しげな顔をしながらも構えてはいたフリード・セルゼンと向き合う。

 

 

「えーっと、なんですかアンタ? クソ悪魔じゃねーですよね?」

 

「クソ悪魔ってのには同意するし、先に断っとくが奴等と仲良しこよしもしてない上で言う。その聖剣俺に寄越せ」

 

 

 顔だけは同じなフリード・セルゼンに向かって手を差し出して聖剣を寄越せと言うと、目を点にされた。

 

 

「は? 急に何言ってるんですかねこのバカは? それに悪魔と仲良しこよしじゃない? 超信じらんねーんだが?」

 

「信じて貰う必要も無い。だから早く聖剣を寄越せ……………悪魔じゃないというサービスで手足をブチ折る程度に済ませてやるからよ?」

 

 

 聖剣なんて興味も無い代物を奪う理由は色々だが、一番はやはりこれを持ってればカス共に貸しを作れるというのが大きい。

 アーシアを無料で学校に通わせる手配をさせる為には、嫌なもんでもやるしかないのだ。

 

 

「……………。はい、ありがとさん」

 

「……………………は?」

 

 

 こんなナマクラに目の色変えてる時点で、恩人のフリード・セルゼンとは別物だし、遠慮なんてする必要もない。

 隙だらけのその手から掠め取ってやったのに気づくまで何秒も掛かってる時点で………単なるカスなのだから。

 

 

「は? て、テメェ俺の聖剣ちゃん返せゴラ!!!」

 

「お前のじゃないだろこれ。それに俺はお前の手から拾っただけだ。

つまり拾った俺の物だよ……これは」

 

「ふざけた事言ってじゃねぇぞクソ野郎がっ!」

 

 

 激昂したフリード・セルゼンが殴り掛かってくる。

 体術も鍛えていた記憶の中のフリード・セルゼンとは別物過ぎるお粗末な動き。

 余りにも遅く、余りにも弱く、余りにも違う。

 

 

「げがっ!?」

 

 

 そんなに聖剣が大事ならキスでもしてやれとばかりに、俺は奪った聖剣の刃の腹で思い切りカウンターで顔面を叩き飛ばしてやると、あまりにも呆気なくこの世界のフリード・セルゼンはボールの出来損ないみたいに地面を何バウンドかし、そのままピクピクと痙攣しながら動かなくなってしまった。

 

 

「あーぁ、やっぱり都合良くねーわな世の中って」

 

 

 全然嬉しくともなんともない勝ち。

 寧ろ余計に虚しさだけが残る勝ち。

 

 進化を微塵も感じない勝ちに俺はただ一言ぼんやりと呟くのだった。

 

 

 

 

 襲撃してきたフリードから聖剣を奪い取ったイッセー。

 当然その行為に木場や小猫やレイヴェルはどうしたら良いのかわからずに立ち尽くすのだが、逆にレンとアーシアは掠りすらしてない無傷のイッセーを心配して駆け寄る。

 

 

「大丈夫お兄ちゃん? ちょっと変な人だったけど……」

 

「お怪我は……それにその聖剣はどうしましょう?」

 

「あぁ、大丈夫。そしてこの聖剣とやらは色々と使えそうだから暫く持っておきたいんだけど――――

 

 

 

 アーシアとレンにペタペタと触られながらへらへらと笑っていたイッセーが軽く顔を上げ、こう続ける。

 

 

 

――――――――持ってたら持ってたで厄介になりそうなのが寄ってきそうだよな? 例えばそう、悪魔祓いとかさ。なぁ、そうだろ? イリナとゼノヴィアとやら?」

 

「「……」」

 

 

 自分達の後ろに立つ二人組に対し、イッセーは笑いながらその名を口にした。

 

 

「っ!? 悪魔祓い……!」

 

「この前の……聖剣の気配にやって来たのか?」

 

「む……女ですわね」

 

 

 二人が現れた事に小猫と木場とレイヴェルは少し警戒する。

 しかし二人組はそんな三人には目もくれず、イッセー……いや正確にはイッセーがフリードから奪った聖剣に目を向けていた。

 

 

「キミがそこで寝てるフリード・セルゼンを倒したのか?」

 

「い、イッセーくんったら強いのね……」

 

「あ、イリナちゃんとゼノヴィアって人……」

 

「……………」

 

 

 一般人が天才レベルと言われたはぐれの悪魔祓いを一蹴し、聖剣まで奪い取った。

 その時点で実は偶々見ていたゼノヴィアとイリナは複雑な気分を半分にイッセーを警戒しており、その手に持つ聖剣をどうするつもりなのかを探る様に背を向けるイッセーに言う。

 

 

「それは我々が任務で回収する聖剣のひとつだ。渡してくれるか?」

 

「えっと、渡してくれたらちゃんとお礼とかするよ?」

 

 

 少し威圧的なゼノヴィアとは反対に先日の事を引き摺ってるのか少し怯えた様子のイリナはイッセーに聖剣を渡すように要求する。

 それを聞いた木場が勢い良く抗議の声を出そうとしたが、その声は小猫のボディブローを貰って泡吹いて気絶をしたせいで出る事は無くなった。

 

 そしてイッセーはというと……。

 

 

「嫌だと言ったら俺をどうしてくれるんだ?」

 

 

 二人へと振り向き、薄く笑って挑発的に返した。

 

 

「渡さなければ気は進まないが、力尽くでも渡して貰う。

どうやら悪魔と組んでいるようだしな」

「イッセーくんの事は傷つけたくない。だからそのまま私達に渡してくれないかな……?」

 

 

 剣の柄に手を置きながら殺気立つゼノヴィアと、反対に何とか穏便に済ませようと努めるのが見えるイリナ。

 この時点で、イリナとゼノヴィアという二人の女の子が大好きだったイッセーは即座に渡していただろうし、何なら数分もしない内に残りの聖剣を回収してあげていただろう。

 しかしそれは、かつてイッセーが愛し、互いに切磋琢磨した『同類』の二人ならの話であり、目の前の……フリードの様に姿が同じなだけの二人では無い。

 

 つまり、突如吹き荒れる風と共に出したイッセーの答えは……。

 

 

「やってみろよ。

テメー等ごときに出来るもんならなぁ……!」

 

 

 完全に嫌われるだろう、傲慢な答えだった。

 

 

「くく、その場で裸躍りでもしてくれんなら渡してやっても良かったが、礼も無いんじゃますます渡したくなんてないなぁ?」

 

「お兄ちゃん! ダメだよ裸躍りなんて強要しちゃ! そ、それにやって欲しいなら家に帰って私がやるからさ……ね?」

 

 

 只の冗談を本気と思ったのか、レンが焦ったようにイッセーに引っ付きながら、何か普通にとんでもないことを言い出す。

 

 

「れ、レンさんの裸―――うっ!?」

 

「…………。何で祐斗先輩が前屈みになるんですか……」

 

「察しておあげなさい。この状況でそんな事を考えていたのは最低ですけど……」

 

 

 そしてレンの言葉に目敏く反応した木場が急に前屈みになり、それを見てドン引きする小猫とレイヴェル。

 とはいえ、二人も二人で内心『もし命令とかされたら多分断れないかも……』と思ってたりするのでおあいこなのだが。

 

 

「だったら力尽くなまでだ! 行くぞイリナ!!」

 

「う、うん……ごめんねイッセーくん。これもお仕事だから……」

 

「ほう、向かって来るのか? へー? 良いぜ……久々にちょっとテンション上がって来たから相手してくれや……!!」

 

 

 そんな悪魔達の事は放置し、イッセーはといえば剣を取り出したゼノヴィアとイリナと戦い始めていた。

 

 剣を構える二人に対し、イッセーは奪った聖剣をその場に捨て置き、レンとアーシアに下がってろと言ってから、腕を胸の辺りで交差させると、ダンスを踊る様なステップを踏み始める。

 

 そのステップは不規則で、また挑発的にも見え、二人の冷静さを少しずつ削っていくものを感じさせており、現に先日の屈辱を晴らすという意味で突撃したゼノヴィアの剣筋を完全におちょくる様に、ダンスを踊るかの様に紙一重で避けていた。

 

 

「貴様、真面目にやれ!!」

 

「真面目にやってるぜ? てか、真面目に見えない奴に一太刀も浴びせられないお前は何だ………カスか?」

 

「このっ! 嘗めるな!!」

 

「ぜ、ゼノヴィア! 相手は一般人なのに本気で剣を振るのは――」

 

「構うものか! 昨日の時点でコイツは一般人では無い!」

 

 

 力任せに振りまくるゼノヴィアを止めようとするイリナだが、頭に血が昇っていた彼女は寧ろ更に猪の如くイッセーに斬りかかろうと剣を振りまくる。それこそ破壊の聖剣と呼ばれる力すら使い始めて……。

 

 

「よっ、ほっ、ヒャハ!!」

 

 

 だがその全てを悉くかわし続けたイッセーは、遂に攻撃を開始する。

 だが、その攻撃は何時もの様な相手を破壊する様なパワー任せのものでも無ければ、仙術を駆使したものでも無かった。

 

 どちらかと言えばそう……。

 

 

「ヒャッホォォ!!!」

 

「ぐえっ!? がっ!? べっ!?」

 

「ぎゃん!? ぐへ!?」

 

 

 ブレイクダンスを思わせる動きの足技で二人をボコボコと蹴りまくっていたのだ。

 

 具体的に言うとトーマスで足を、スワイプで二人の剣を蹴り飛ばし、トドメにウィンドミドルで連撃するという流れであり、最後にはピタリと三点倒立まで決めた。

 

 

「ぐ……」

 

「い、痛い……」

 

 

 ふざけてる様に見えて普通にエグい足技により二人の顔は所々痣が残りそうな腫れ方をしてしまう辺りは、やはりふざけても人の枠を越えた力を持つイッセーだからこそなのだろう。

 

 

「どうよレン? ブレイクダンスを戦闘的にしてみたんだが、良い実験台が居てくれて助かったぜ」

 

「お兄ちゃんさ、ひょっとして逆にあの二人の事嫌いなの?」

 

「え? いや別に好きとか嫌いじゃないよ。興味が無くなっただけさ。それに、昨日アーシアに色々と言った相手と仲良くなれるか? 俺はムリだね」

 

「でもさ、前に私とアーシアちゃんの事をあの二人の名前で呼んでたよね……?」

 

「んな事あったか? 覚えてないな」

 

 

 過去とは違うからこそ、過去とは別の道を進む。

 故にこの世界の二人とはその性格の差と相性の悪さで決別する。

 いや、わざと決別しようとする。

 

 過去を過去として割り切る為に……。

 

 

「さぁてと、こうして聖剣をひとつ入手した訳だが、これってよ質屋に持ってったら幾らになると思う? 3000円くらい?」

 

「も、もっとすると思うんだけど」

 

 

 その第一歩として、イリナとゼノヴィアを相当に加減したとはいえ暴力で追い払ったイッセーは、フリードから奪い取った天閃の聖剣で地面の土を適当に掘り起こしながら質屋に売ろうかと、割りととんでもないことを宣う。

 

 横でその聖剣に復讐したくて仕方ない少年が居ても関係ないといった様子で。

 

 

「し、質屋に入れるなら僕が言い値で買いたいんだけど……」

 

「あ? じゃあ5000万をキャッシュで用意しろ」

 

「ごっ!? さ、さっき3000円で質入れしても構わないみたいな事を言ってたのに!?」

 

「バカかお前? レンに対する変態迷惑料じゃボケ」

 

 

 イッセーに軽く投げられて地面を転がったせいか、白いYシャツが土で汚れてる木場祐斗に5000万という破格過ぎる値段を付けて来たことに抗議しようとし、あっさり普段の行いを引き合いに出されて封殺されてしまう。

 

 

「そ、そんなの、レンさんと聖剣は関係ないじゃないか……」

 

「無いな。だが俺は個人的にテメーがムカつく」

 

「そ、そんな……」

 

 

 仇が目の前にあるのに手が出せないジレンマと、つくづくレンの兄に毛嫌いされているというダブルパンチで木場は目に見えて肩を落とすが、普段のレンに対するイケメンという生まれながらにして勝ち組確定の素養を帳消しにして有り余る程の残念すぎる態度のせいか、寧ろ誰も同情はしてなかった。

 あのレンとアーシアですらだ。

 

 

「ですが先輩。先輩がそれを持っていても何にもならないと思います。

そのまま保持すれば何れは天使達に目を付けられるし、最悪敵と認定されるかも……」

 

「だがテメー等カス悪魔を効果的に切り刻めんだろ? それだけでも質入れ以外の価値はあるな」

 

 

 そうサディスティックに笑いながら、眠ってる様に力が無い天閃の聖剣の切っ先を小猫、レイヴェル、祐斗の三人に向ける。

 

 

「貴様等にとっては猛毒なんだからなぁ、聖なる力は……げげげ!」

 

「「「………」」」

 

 

 冗談には思えないイッセーの言い方に、三人は顔を少しばかり青くする。

 特に半殺しにされた経験のある小猫にしてみれば、命の危機すら感じても仕方ないものだ。

 

 町の郊外を流れる小川のせせらぎと緩い風の音が、全員の耳を擽り、暫く無言が続くこの緊張感は推して測れるものでは無い。

 

 

「まぁ、お前等ごときカスなぞこんなナマクラ無くともバラバラにできる訳だし、今日の俺は町で女の子をナンパしたくなるくらいの良い気分だからな。

メッセンジャーとしてまだ生かしておいてはやるさ……くくく」

 

「「「…………」」」

 

 

 そう言って剣を乱雑にその場に刺し、クスクスと嘲笑うイッセーに三人は何も返せない。

 だってその言葉の通り、その気になれば呆気なく自分達は殺される程の力を彼は持っているのだから。

 

 そしてイッセーの命令に逆らえない事を。

 

 

「てな訳で、白ガキか変態野郎のどっちでも良いが、今すぐあの紅髪の雌悪魔を此処に呼べ、奴にこの剣の管理をさせる」

 

「え、リアス部長にですか?」

 

「ま、待ってくれよ兵藤くん。

僕、ちょっと色々とあって今部長と顔を合わせる訳には」

 

「お前の事情なぞ知るか。嫌なら勝手に消えても構わんが、その時は首から下の骨という骨を粉々にして死ぬまで寝たきりにさせてやる」

 

「ぅ……」

 

「お兄ちゃんってさ、悪魔さんをイビる時だけかなり生き生きしてるよね」

 

「楽しくてしょうがないってお顔です……」

 

 

 リアスを呼び出す事に抗議の声を出そうとした木場を黙らせ、小猫にそのまま呼び出させたイッセーの姿を見て、相当楽しそうにしてるんだなと今更の様に眺めるレンとアーシア。

 性格の悪さがこれでもかと今のイッセーから出てるのにも関わらず一切の幻滅が無い辺りは趣味の悪さが出てるのかもしれず、諦めた様に項垂れる木場をニタニタしながらイビり続けてる内にやって来たリアスと朱乃にも、イッセーは平常運転な態度であった。

 

 

「よぉ、雌悪魔とたれ目黒髪雌悪魔? 変態小僧と聖剣一本だ」

 

「め、雌悪魔……」

 

「私達って全部同じ括りなのね、あなたにとっては……うん、まさかアナタが此処までしてくれるとは思わなかったわ。ありがと……」

 

 

 小猫に電話口でイッセーの名前を聞き、まさかと思って文字通りに飛んでやって来たリアスと朱乃が、開幕一番に見た目の特徴に雌悪魔を付けた呼び方をするイッセーに対して微妙な顔をしつつ、罰が悪そうに俯く祐斗を叱る………気にはなれなかった。

 

 

「心配したわよ祐斗……何か色々あったみたいね?」

 

「え、えぇ……あの部長、僕は――」

 

「大丈夫よ。アナタが無事であるなら怒る気は無かったもの……。

それより聖剣のひとつを確保したってのは―――えっと、その地面に刺してる剣かしら?」

 

 

 多分イッセーから散々な目に合わされたのは目に見えてる為に怒らなかったリアスは、地面に刺さっていた聖剣を見ながら問い掛ける。

 

 

「そうだ。俺とレンとアーシアでそこの変態の確保ついでにはぐれのエクソシストから奪ってやったんだ、感謝しやがれ」

 

「私とアーシアちゃんは何にもしてないんだけど……」

 

「ただ付いてきただけで、全部イッセーさんが……」

 

「えっと……うん」

 

 

 別に聖剣を奪っても自分達にメリットは無いのだけど――という言葉を喉まで出掛かっていたのを止めてリアスは曖昧に頷いた。

 

 

「で、だ。そこの変態小僧一匹に聖剣一本を確保してやったんだ。礼として無条件且つ学費タダでアーシアを学園に編入させろ」

 

「…………。まさかとは思うけど、そこの彼女を学園に入れたいが為にこんな事を?」

 

「そうだが? 寧ろ他に理由なんざ無い。アーシアの件を考え付かなければ、テメー等がどうなろうが知ったこっちゃ無いしな」

 

「……………」

 

 

 悪魔という理由ひとつで人間のアーシアや妹と此処までの差があるのかと改めてショックでは無いが、複雑な気分になるリアス。

 

 

「……。勿論その話は聞くけど、ソーナ達があれからどうなったか聞いた事は?」

 

「あ? ソーナ? 誰だそれ?」

 

「……。アナタがこの前半殺しにしてくれた生徒会の子達よ」

 

 

 今更ここまで突き抜けられるせいで、敵意とか怒りが沸かなくなっては居たりするし、グレイフィアの報告により、その人間と周囲の者達の気に極力触れないことを魔王直々に命令されてるので、穏便に済ませられるものなら済ませたいとリアスも思ってる。

 

 だが今リアスが口にした名、ソーナ・シトリーはリアスにとっては友人であり、幼馴染でもあり、ライバルでもあった。

 イッセー本人は自分が半殺しにした相手の名前すら覚えてる気が無いようだが、リアスはそれが複雑なのだ。いや、寧ろ敵意を抑える方が無理のある話だった。

 

 

「生徒会? あぁ、居たな『そんな連中。』」

 

「………」

 

「なるほど、つまりアンタはこう言いたい訳だ。『同族である連中に対して何か無いのか。』……と」

 

「私は別に……」

 

「『蟠りだらけなのに、何で要求を受け入れなきゃならないのか。 』……てか?」

 

「そうじゃないわ、アーシアさんが学校に通う事に対しては私だって全面的に協力したいと思ってる。

けれど……ソーナは私の友達なのよ?」

 

 

 腕がへし折れ、内臓の数ヵ所が破壊され、トドメに綺麗だった顔もボコボコに腫れた変わり果てた姿を見たときは絶叫しそうに何度なったのか。

 話を聞けばソーナの兵士の匙という少年が、何をトチ狂ったのか、レンに狼藉を働いてしまい、それを聞いたイッセーが報復として動いたという、理由らしい理由はある。

 

 しかしいくら匙の主がソーナだからといって、彼女やその周囲の者達にまで暴力を振るう必要はあったのだろうか? ソーナの女王と戦車は中でも一番顔の形が外科的手術を施さなければならないレベルなまでに変形してしまったという話だし、あの妹大好きなシスコン女魔王が間違いなく黙ってるとは思わない。

 

 

「友達、ねぇ? だからそれがどうしたんだという話にしかならんけど、逆に言わせてくれよ雌悪魔? そのカス共の中に居た塵以下のカスがよ、レンに対して何を勘違いしたのか、アンタの奴隷か何かだと勘違いした挙げ句、セクハラ噛ましたって聞いて黙って泣き寝入りしろと思えるのか?」

 

「それは……」

 

「悪いが俺は思わない。ましてやゴミ共にレンが汚されたなんて聞いて我慢できる筈もない。

俺にはもうレンという妹か、アーシアというダチか、こんな俺をここまで育ててくれた叔父と叔母しか居ないんだ。この人達に何かするってんなら、俺は相手が魔王だろうが、神だろうが――――可能な限りの苦痛を与えてぶっ殺してやる」

 

 

 だけどイッセーはそういった懸念や恐怖を一切見せず、当たり前の様に魔王だろうが殺せるという何があってそこまで持てるのかわからない、絶対的な自信を見せながら魔王の妹である自分に対してはっきりと啖呵を切った。

 

 

「もっとも、殺すと言いながら最近俺は殆ど殺せてないがね」

 

「………………」

 

「なんて、粗暴な人……」

 

 

 そんな啖呵にリアスは何も言えず、木場はそれでもレンをといった目を、小猫とレイヴェルはただ悲しげにイッセーを見る中、一番ある意味人間らしい恐怖をイッセーに抱く朱乃が小さくその人間性を口にしてしまう。

 

 しかしそんな朱乃の一言に対してイッセーは何もせず、寧ろヘラヘラと笑いながら口を開く。

 

 

「その粗暴で、バカで、救い様も無いクズ野郎を好いて傍に居ようとしてくれる杞憂で悪趣味な人が俺には居るんでね……粗暴だと思いたいのなら思ってくれて結構だぜ? 所詮貴様等からの評価なぞどうでも良い」

 

 

 このレンとアーシア然りな……と敢えて黙って傍らに居た二人の頭をポンポンしながらイッセーは笑っている。

 

 

「だから例の眼鏡のカスやら生徒会のカス共に俺は謝らん…………まあ、謝らなければアーシアを編入させねーってんなら下げてやるが?」

 

「いえ、やらなくて良いわ。これは只私の個人的な感情だし、一応レンにソーナの兵士がやった事は全部事実で、そのお陰で冥界の貴族達によるソーナ達の評価は相応に下がっちゃったのも事実だから」

 

「へぇ、評価が下がったのか。まぁお貴族様の奴隷が、人間様の女の子にセクハラ噛まして、その人間の兄貴に主や他の奴隷共々半殺しにされましたなんて、奴等からしたら笑い話にもなりゃしないだろうな…………で、話は戻すがこの聖剣は? そこの変態小僧に破壊させるのは自由だが、渡す前にアーシアを学校に転校させるという書状を一筆この場で書いて貰うぜ?」

 

「………。わかったわ。悪魔を堂々と脅迫できる人間なんてアナタくらいなものよ……はぁ」

 

 

 イッセーにとっての弱点が義理の両親と、レンとアーシアなのは会話でよくわかった。

 けど人質にしようものならまず間違いなく今度こそ、この異常すぎる力を持つ男は躊躇せず悪魔を皆殺しにするだろう。

 そう感じ取ったリアスは、心を完全にへし折られた気持ちで、聖剣の奪取と木場の身柄を抑えたという借りを返す意味合いで、アーシアを駒王学園に転入させるという趣を一筆書かされ、拇印まで押した。

 

 

「よし……くく、よーし、我ながらここまで上手く行くとはな。やったぜ」

 

「後半殆ど脅迫だったよね?」

 

「双方に申し訳が……」

 

「良いんだよ、奴等にとっちゃなんの痛手にもなりゃしない。いや寧ろ神器を持つアーシアを見張りたいだろうしね。

ま、それに託つけてチョーシこいて何かするんだったら、粉々にしてやるから安心しとけ。大丈夫、俺はこういうやり方しか知らないバカだから、レンとアーシアが気にする事なんか何も無いし、幻滅したらしたで仕方ないと思ってる」

 

「幻滅はしないよ。だって色々と言ってるけど私と同じようなものだもん」

 

「私はイッセーさんに例え気まぐれだったとしても命を救われたのです。

粗暴で乱暴なイッセーさんしか私は知らないから、私も何も言いませんよ?」

「…………。げげ、やっぱり趣味悪いぜお前ら……ったく、大好きだぜチキショー」

 

 

 悪魔じゃなければ、あんなにも優しげに微笑むのか……。

 改めて悪魔に対する嫌悪が強い事を身に染みて理解させられたリアスは、特に複雑で悲しげな表情の小猫とレイヴェルをどうにかしてイッセーを諦めて貰うのかを真剣に考えないといけないと思い始める。

 

 勿論、さっきからホットパンツから覗く太ももと、決して小さくない……寧ろ小猫とどっこいどっこいな背丈なのに大きい胸をガン見してる木場にも……。

 

 

「よーし、早速アーシアの制服をオーダーしに行くか」

 

「駒王の制服を着たアーシアちゃんって絶対可愛いんだろうなー……あーぁ、勝てる気がしない」

 

「れ、レンだって素敵じゃないですか! 寧ろ私も自信がそんなに無いですよ……」

 

 

 

「いいなー……アーシアさんとレン先輩」

 

「私、自分が悪魔として生まれた事に初めて後悔してますわ……」

 

「あぁ、レンさんはどうしてあんなに魅力的なんだ。

学園でも一部それに気付いてるのがいるし……僕だけこんな……」

 

「「………」」

 

 

 三人の様子を見るかぎり、かなり難しい案件だけど。








補足

どんどん変態化していく木場君。

というか、惚れた理由もノーブラで体操着姿のレンちゃまが無防備だっだせいで見えちゃったきれいな桜色の……という理由やしね。

妄想して前屈みになるのだって、逆を考えれば年頃らしいじゃない?


その2

この世界の二人に対しては割りとドライになろうとするイッセー。

ちなみに今回のバトルで使用した技術は、某若かりし頃で狂犬化前の眼帯イケメン兄さんが使用したダンサースタイルだったり。

その3
お兄ちゃんと慕ってる妹みたいに見えるけど、実の所レンちゃまもレンちゃまで結構アレなのよ。

例えば前にあった通り、その日使用したイッセーくんの体操着を借りて、着て、スーハースーハーしてぽけーっとトリップしてたり。

そろそろ胸だけまたデカくなったのに、お風呂一緒に入りたがったり。

入ったら入ったで身体の洗いっこしたがるし。

したらしたで手が滑ったと嘘こいてアレをさわさわしようとしたり。
逆に『胸が苦しいよお兄ちゃぁん……』とスゲーアレな声出して触られたがったり。


 …………。まあ、イッセー本人は精神年齢がジジイの概念通り越してるので割りと淡々としてますけどね。


その3

お分かりの通り、このイッセーくんってかなり依存しやすい性格してます。

というか、自分に優しくしてくれる人達にあっさり墜ちるチョロインなタイプですかね。

……。悪魔さん達がその側を被らされてますけど。
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