シスコン一誠くん   作:超人類DX

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………。特に無い!。


終わりと始まり

 壊されたコカビエルがその後どうなったのか。

 

 かつては己を取り戻す事が出来た最大の協力者であったが、この時代のコカビエルは性格も実力も何もかもが違っていた。

 

 だからこそ一誠は思い出に一つの区切りを付ける為にこの時代のコカビエルを潰した。

 この時代のイリナとゼノヴィアに対する踏ん切りを付けた様に、今もまだ囚われている過去から未来へと進む為に……。

 

 

 

 

 この時代のゼノヴィアが悪魔に転生したらしい。

 と、レンから聞いた時は流石に驚いた気がするけど、この時代のゼノヴィアとイリナには嫌われてるし、また俺自身も別人と思ってるので、軽く流す程度に終わった。

 

 

「イリナちゃんは教会に帰ったみたいだけど……」

 

「ふーん、そうか」

 

「ふーんって……気にならないの?」

 

「あぁ、割りともうどうでも良いかな」

 

 

 もう俺の知る二人とは会えない。俺の知るドライグとも会えない。

 何年も掛けて漸くその現実を少しは受け入れられる様になれた俺にとって、この時代の二人がこれからどうなろうが関係ない。

 悪魔になってしまおうが何しようがな……。

 

 

「そんな事よりアーシアの転入が決まったんだし、軽いお祝いでもしようぜ」

 

 

 それが今を生きる者の責務……だと思うから。

 

 

 

 

 ゼノヴィアが自棄になって転生させろと言ったので、騎士として転生させたリアスだったが、まだ兵士の枠がどうしても埋まらない。

 目ぼしい人材も居ない為、焦って適当な存在を兵士にするよりは今のままの方が良いと仲間達に言ってるものの、目ぼしい人材という意味ではある意味居た。

 

 兵藤兄妹と、兄妹が保護してるアーシアという癒しの神器使い。

 もし、もしもの話だが、この三人を加えられたら最強のチームが完成出来る………と、リアスは考えたりもしたが、現実はそう甘くはない。

 

 

「その、済まなかった……キミを魔女なんて言って……」

 

「あ、い、いえそんな頭を上げてください! 私は気にしてませんから……!」

 

「そ、そうか……。それとイッセーと言ったか? キミにも礼を……」

 

「俺はそういうのは要らないわ。借りと思う必要も無いから」

 

「そ………そう、か」

 

 まず一誠という少年が異常に悪魔を毛嫌いしてて、レンとアーシアに何かしようものなら本当に殺しに来る。

 現にソーナ・シトリーの兵士の一人がレンに狼藉を働いた時は、他の下僕もろとも半殺しにされた挙げ句、教育不足と指摘されて評価が駄々下がりな目に遇わされた。

 

 

「ちなみになのだが、コカビエルとの戦いの際にお前が放っていたあの技は――」

 

「言った所でキミに習得は不可能だし、聞くだけ無駄だよ。というか早く奴等の所に戻ったらどうだ? 聞いてる筈だろ? 俺は転生した存在だろうが悪魔は嫌なんだよ」

 

「む……」

 

 

 あの半殺し事件以降、ソーナ達は目に見えて一誠に怯えてる。

 女だろうが容赦なく顔面をグチャグチャにされたり、屋上から殴り落とされたりもすればある意味当然な心理だが、ソーナ・シトリーの姉である魔王レヴィアタンが激怒してる話を一誠に教えておいた方が良いのか、リアスはゼノヴィアまでも追っ払われてる姿を遠巻きに眺めながら微妙に迷っていた。

 

 

「ダメだ、殆ど相手にされなかった……」

 

「お疲れさま……やっぱり貴女でもダメか……」

 

「以前より風当たりが強くなった気がしたが……」

 

「多分貴女が悪魔に転生したからだわ。彼、本当に比喩じゃなくて悪魔が嫌いみたいだし」

 

「それは何故だ? 何かしたのか?」

 

「ある意味しでかしたと言えば……まぁ、うん……」

 

 

 でも教えたら教えたで、頭を下げる訳が無いし、寧ろ殺意がより膨れ上がって魔王に喧嘩を吹っ掛けそうな気がする。

 所詮先伸ばしてるに過ぎないかもしれないけど、余計な事をして漸く平和になりかけてるこの空気を壊す勇気はリアスに無いのだ。

 

 

「ソーナ達はアレ以降、完全に一誠に怯えてる様で、学園内ですれ違う度に震えてしまうらしいわ」

 

「まぁ、殺されなかったとはいえ半殺しにされたとなれば仕方ない気もしますわ」

 

「ですが匙君がそもそもレンさんに狼藉を働いたからでしょう? 正直僕も許せない……レンさんのお尻を……ぐぬぬ!」

 

「何、それは本当か木場? シトリー嬢の兵士がレンの尻を撫でたのか?」

 

「ええ、僕達の仲間と勘違いして、何でも魔が刺したとか」

 

「それは個人的に許せんな。イッセーがキレるのもわかるぜ」

 

「……………。何故シレッと貴方が居るのかしらライザー?」

 

「? いやレイヴェルの様子を見に来たのと、レンにプレゼントを渡しに来ただけだ」

 

「……………」

 

 

 只でさえ、自分の騎士の一人と元婚約者がレンにアレコレとした感情を向けてて危ないのに、これ以上の起爆剤を投入したくないのだ。

 それでイッセーがぷっつんして、その責任を問われて評価がまた落とされでもしたら実家の母からなにを言われるのかもわかりゃしない。

 

 

「そのレイヴェルなら今小猫の仙術修行に付き合ってるわ」

 

「キミの戦車か? そういえば仙術を扱えるタイプだったな」

 

「ええ、あの夜イッセーが見せた仙術とは思えない何かに近づく為とか何とか……」

 

 

 結局の所、リアスは何もできないのだった。

 

 

 

 

 イッセーの全く異なる仙術を見てからというもの、小猫はほぼ独学で仙術を会得する修行に明け暮れていた。

 

 

「駄目……こんなのは先輩の仙術じゃない」

「けれど相当使いこなせているじゃありませんか、貴女自身の仙術を」

 

「これは姉が使ってた力を思い出して模倣しただけ。

先輩の仙術とは全然違う」

 

「確かにあの時見たイッセー様とは全く違うのはわかるけど……」

 

 

 イッセーの仙術がまるで解らないというもどかしさとは裏腹に、本来ならもう少し後に疎遠だった姉から教えられる事で使えるようになった仙術を独学でモノにしてしまっていた小猫は、所謂"白音モード"の姿になりながら、かつて一誠自身が何千と苦渋を舐めさせられた平行世界の白音が扱っていた"六道輪廻仙術"を手にしようと躍起になっている。

 

 

「確かこの前先輩に打ち込まれた技の名前――そう、仙法・迅晨雷派!」

 

 

 手がかりがコカビエルをズタズタにした時と、その前に自分が半殺しにされた時に見せられた術のような技のみ。

 試しに中々グラマスな身体に仙術化によって一時成長している小猫が両手を前に突き出し、一誠が口に出してた技の名前を言ってみるが、何の反応も無い。

 

 

「駄目か……」

 

「何ですの今のは?」

 

「前に先輩から殺され掛けた時に受けた術みたいな技。

両手から枝分かれした紫電が出てくる筈なんだけど、やっぱり今使ってる仙術じゃ駄目みたい」

 

「へぇ、それを受けただなんて羨ましいですわ」

 

 

 一誠というインパクトのお陰か、アレだけ恐怖してた力をいつの間にか克服してしまった小猫は、何度も両手を合わせては前に突き出すという動作をするが、あの時一誠が放った紫電は出てこない。

 

 

「あの夜イッセー様があのお姿になる際、手を合わせながら瞑想し、その瞬間目元に隈取りのような模様が浮かんでましたが、それはヒントになりませんの?」

 

「うん……やってみたけどあんまり……」

 

「そうですか……うーん、あの夜以降も基本的にイッセー様は私達に近寄りませんし、聞こうとすると顔色が悪くなりますから、ちょっと聞きづらいですわよね」

 

「そうだね、例の白い誰かさんがキーマンと思ってるけど、それを聞くと完全に嫌われそうだし……」

 

 

 微妙に仲がよくなってるせいか、レイヴェルも割りと真剣に小猫の修行に付き合っている。

 

 

「そもそも先輩に近付きたいのに先輩から力について聞くのって間違ってると思う。

それってほら……ズルみたいだし」

 

「確かに。とはいえ、この段階から次のステップに入るとなるとまるっきりノーヒントというのは無謀でしょう」

 

「…………」

 

 

 おちょくられると思いきや、結構真剣に考えてくれるレイヴェルに内心『ありがとう』と思いつつ、小猫は改めて気合いを入れる為に両頬を叩く。

 

 

「考えても仕方ないし、このまま今の仙術を使いこなす。そうしたら何か掴めるかもしれないから」

 

 

 諦めてはならない――という誓いと共に。

 

 その気持ちが奇しくも、「如何なる苦難にも向かって行く鋼の信念」、 「諦めを知らない根気強さ」という、ある種ベクトルが違えど破壊の龍帝に追い付いた白音(ネオ)が抱いたものと同じである様に……。

 

 

「手こずってる様だな、別世界の白音よ」

 

「っ!? だ、誰!?」

 

 

 そして――「巡る輪廻と運命の導き」まで後少し……。

 

 

 

 

 

 急に背後から声を掛けられたので、咄嗟に後ろを振り向きながらレイヴェルと一緒に後方に飛び退く。

 そして、声の聞こえた場所を見ると、声の主が宙に座りながらこちらを見ていた。

 

 

「だ、誰ですかあなた……」

 

「何処と無くイッセー様が変化した格好に似てますが……」

 

「我は安定秩序を成す者……六道仙人と言う」

 

 

 宙に浮いて座るおじいさん。

 見た目は完全に人間とは思えず、あの時の先輩みたいな角まで額から生えている。

 私とレイヴェルは暫く硬直してしまい、どうリアクションして良いのかわからずに居ると、修行に使ってた森の木々がそのおじいさんに呼応するようにざわめいてる。

 

 

「ふむ、どうやら儂の知る白音とは心の出来から違うらしい。

向こうの白音が儂を見たリアクションはもっと冷静であったからな」

 

「は?」

 

「さ、さっきから何をおっしゃってるのかしら?」

 

 

 勝手に一人で納得してるおじいさんにますます訳がわからないと私とレイヴェルはその場から動くことも出来ずに居ると、おじいさんは続ける様に口を開く。

 

 

「儂はお前達の知る様な種族では無い。

そしてこの世に存在もしていない……チャクラでのみで存在する」

 

「ちゃ、チャクラ……?」

 

「あのー……もう少しわかりやすくは出来ませんの?」

 

「む……そうだったな、この世にはチャクラという概念は無かったな。

簡単に言えば儂は只の思念体で、お前達――というより白音の感情に呼応して出てきたのだ」

 

「私の? というか何故私の本名を……」

 

 

 あ、怪しすぎますよこのおじいさん。

 私の本名は知ってるし……。

 

 

「白音よ、お前は兵藤一誠の扱う"仙術"について知りたがっているな? そしてその仙術を会得しようと修行をしている」

 

「……。そ、そうですが……」

 

「その仙術について儂が知ってると言えば少しは耳を傾ける気になるだろう」

 

「っ!? し、知ってるんですか!? 先輩の仙術についてを!?」

 

「うむ、何を隠そう、あの力は儂が与えた力だ」

 

「な、何と……!」

 

 

 おじいさんの言葉に私とレイヴェルは驚愕する。

 いや、怪しい怪しいとは思ってたけど……まさかこんな形で知ることになるなんて……。

 

 

「教えてくれるのですか?」

 

「中身についてだけだが、お前に教えよう。

だがその前にお前に伝える事がある……兵藤一誠がお前を通して見る『存在』についてを」

 

「あ、それは確か……」

 

「………」

 

 

 どこまで先輩の知ってるのだろうこのおじいさん……。

 でも確かに常々気にはなっていた……私を通して先輩が怯える誰かについて。

 だから黙っておじいさんを見つめてると、おじいさんは一つ頷きながら語り出す。

 

 

「その存在は所謂平行世界のお前自身だ……白音よ」

 

「へ、平行世界?」

 

「なんですのそのファンシーなオチ」

 

「そうとしか言い様が無いのだ。

詳しいことは今から儂がお前()に力を託し、それを通して教えるが、兵藤一誠はその平行世界からこの時代へと時代を遡り、出生が少々異なる同一の存在として転生した存在なのだ」

 

「…………………」

 

「それはまた……ぶっ飛んだ事実ですわね」

 

 

 平行世界の私? 先輩が時を遡って生まれ変わった存在? ………………レイヴェルの言う通り、話が大きすぎて理解が追い付かない。

 

 

「白音、レイヴェル・フェニックス。掌を出せ……これから儂の力を其々与える。修行を重ねて力をつければおのずと力の道は開かれるだろう」

 

「え、私も……? 何故……」

 

「本来なら平行世界に於いても白音とお前に其々力を分け与えるつもりだった。

だが既に憎悪を無尽蔵に増幅していた兵藤一誠によりレイヴェル・フェニックスは殺されてしまった。

だからこそ儂は残った白音に両方の力を与えたのだが……それは間違いだった。

儂の力を越え、平行世界の白音は儂の母の力へと昇華させてしまった」

 

 

 おじいさんの手が私とレイヴェルの手に重なる。

 

 

「そして母の力は今、一誠の中に埋め込まれた。

だからこそ儂はもしも一誠が母の力でこの世界をも破壊してしまうのを防ぐ為にお前達二人にそれを止めてもらいたい」

 

「随分と勝手ですね。貴方が平行世界の私とやらに力を渡し、それのせいで私は先輩に嫌われてるのに」

 

「すまない……そもそも儂はとある女に頼まれて素養のある平行世界のお前に、一誠を止めるようにと力を託した。

だが白音はその力を昇華させ、ますます一誠を―――いや、これ以上儂の口から言うのは無粋だな。

『食らい尽くす』力が無いお前なら本当の意味で儂の力を使い、一誠を止められる……レイヴェル、そなたもな」

 

 

 おじいさんの手が離れ、私とレイヴェルの掌には陽と月と思われるマークが浮かび上がる。

 

 

「儂が分け与えた力を通して、仙術についてを知ることが出来る」

 

「私がその平行世界の私と同じ轍を踏むとは思わないんですか?」

 

「そうかもしれない。しかし儂にはこの世界のお前からは歪んだものは感じられないし、レイヴェルという道を

踏み外そうになっても止められる者もおる。だから――」

 

「っ!? い、意識……が……」

 

 

 突然遠退く意識。

 結局本当に色々と知ってしまった気がしたけど――――

 

 

 

 

 

「………。これって皆には内緒にした方が良いよね?」

 

「ええ……多分信じては貰えませんでしょうし」

 

 

 私とレイヴェルの手のひらに残された模様が夢や幻覚では無かったと思わされてしまう。

 

 

「そっか……先輩に平行世界の私ってあんな事を。

これは確かに嫌われて当然だよね……」

 

「で、でもそれは貴女自身では無いですし! それを知って貰う為に頑張りましょう!」

 

「うん……そうだね、ありがとうレイヴェル」

 

「素直にお礼を言われると気持ち悪いのですが」

 

「大丈夫、言って後悔してるから私も」

 

 

 だからこそ思える。

 私は平行世界の私にはならない。




補足

どこぞのカグヤたんのパワーまで昇華させた力を白音たんは死の際に一誠に埋め込んでしまったので、それに対する抑止力になって貰いたいと現れた仙人おじいちゃん。

しかも元々の世界では殺されたレイヴェルたんも素養があったとかなんとかでこの時代にて……。

まあ、そのせいで拗れちゃったとか言うのは無しだぜ。
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