シスコン一誠くん   作:超人類DX

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ツインズ・イッセーにもあったやり取り回。




殺意の元龍帝

 永久に進化する異常性。

 名を与えられる事で無神臓と呼ぶ異常性。

 

 

 その異常性とドライグという奇跡にも近い相性の良すぎた相棒。

 そして同じカテゴリーとされる力を持ち、死ぬその時まで一緒だった二人の……俺にとっては何よりも大事だったトモダチ。

 

 

 その微妙なバランスが俺という人間を押し上げ、人間が人間じゃない生物共を粉々に出来る領域へと進化させた訳だけど、今じゃ俺は生き続けるだけの脱け殻……いや、言ってしまえば腐らないだけの死体だ。

 

 かつては生き続ける事を目標にしてただけに、これはもう皮肉と笑うしかない。

 

 相棒を喪い、友を亡くし、挙げ句の果てに最後の最後まで全力で殺しに掛かれる忌々しい猫ガキも居ない。

 それでも俺は何故生きているのか? 自壊という最後の手段で、自分と相棒しか残らなかった世界に別れを告げた筈なのに、何故俺だけが生きる?

 

 それはきっと、人間でありながら力を持ち過ぎ、あまつさえ永久に生き続けるという目標を力付くで叶えてしまった罰なのだと思う。

 

 

 だから歴史とルーツが微妙に違う兵藤一誠として過去へと戻されたのだと考えるべきなのかもしれない。

 

 そして同じく、邪魔者を殺し、二度と己が利用されないように脱け殻となっても尚力を付け、そしてまた独りになる。

 何もかもを殺し続けた俺に対してのどこぞの誰かからの罰だとしたら、これほど相応しいものはないだろう。

 

 

 

 だが、決して喪ったばかりではない。

 悲観にくれる状況ばかりではない。

 

 

 確かに俺には、もはや全てを預けられる相棒のドライグも、俺の粗暴な生き方を否定しないで傍らで何時も優しくしてくれた大好きな友でもあり、同志でもあり、愛し合っていたと思いたいゼノヴィアとイリナは居ない。

 

 けど、その脱け殻となった俺には、俺の女版……にしては良い子過ぎる、妹みたいな存在が居る。

 最初はその子に対して何の感慨も無かったし、あっても単なる観察対象としか思わなかった。

 

 それがいつの間にか横から手を差し出して手助けし始め、やがて一緒に居るようになり、何時しか血の繋がりがあるようで無い兄妹になった。

 

 あぁ、言ってやる。俺は今久々に『生きているという実感』を感じている。

 それも弱っちい火種みたいな実感じゃない……ドライグみたいな真っ赤、業火の様な実感だ。

 

 故に俺は言う――

 

 

 レンを嫁にしたいなら、この俺をぶち倒してからにしろっ……てな。

 

 

 

 俺より強くなくばレンを守れる資格なぞありゃしない。

 それに付け加えるが、レンよりも弱いカスなぞ論外だぜ。

 くく、レンは本当に俺の女版かと疑っちまうくらいチビで虫も殺せない様な顔してるが………。

 

 

「しゃっきーん! 落ちてて良かった魔剣・枝ソード! さぁ木場君、どこからでも掛かってくるがよい!」

 

『Boost!』

 

 

 それなりに自衛の手段は教えてるんだよ……ゴミ共をぶちのめせる程度には、な。

 

 

「ほ、本当にレンさんに勝ったら今度の日曜日に二人っきりにしてくれるんだよね!? 良いんだよね兵藤君!?」

 

「……。レンがそう言ったんだから、ムカつくけど黙っててやる。それよりテメー、何を勝手にレンの事を名前で――」

 

「うぉぉぉぉっ!! 僕が勝ったらレンさんとぉぉぉっ!!」

 

「……………………。あのガキ、あんな性格だったか? これも俺じゃなくてレンだからこそのタイム・パラドックスという奴か……」

 

 

 昔の俺を2で割った様な様子で、枝ソードとある程度モノにさせた赤龍帝の籠手を片手に不敵だけど見た目のせいで単に子供っぽい笑みを浮かべてるレンに、クソ転生悪魔は、宿す剣系の神器を振り回しながら突撃するのをぼんやり眺める。

 

 あのガキはどうもレンにストーカーじみた真似をエスカレートしていたので、もう殺してやろうかと考えていた。

 が、この通りレンがそれを止めてきて、こんな条件までつけてクソガキの相手をしてやる事になったのだけど、このガキは相手の実力も見抜けないのか勝手に勝ったつもりらしい。

 

 駆け引きも何もない、バカ丸出しでレンに突撃噛ましてるのを見て、本当に引導でも渡してやりたい気分でいっぱいなのだけど、レンに止められてるのだから仕方ない。

 というか、嘗めすぎなんだよレンを。

 

 

「せいっ!」

 

「っっ!? うわぁぁぁぁっ!?」

 

 

 軽く振り下ろした枝から突風が吹き、クソガキは惨めにも出現させていた玩具ごと数十メートルは吹っ飛び、壁に頭をしこたま打ち付けて気絶する。

 うん、コイツはクソ悪魔にプラスしてムッツリスケベのバカだ、救いようもねぇ。

 

 

「あ、あれ? 相手が相手だからちょっと強くやってみただけなのに……」

 

「それでも手加減してるのがバレバレだよ。

けどその加減したレンに届いてないんだよ、このカスは。

なぁにが勝ったら僕とデートしてくれ、だ。

この際だから二度とその口聞けない様に下半身を不能にしてやるぜ」

 

「いや良いよやらなくて。

多分これで木場君も私にそんな気なんて無いってわかってくれる筈だし」

 

「いやダメだ。この手の輩は何を言っても、どう行動しても全部テメーにとって都合の良い解釈をしやがる。

だからいっそ粉々にしてやるべきなんだよ」

 

「前々から思ったんだけど、まるで経験があるみたいに聞こえるよ?」

 

「…………。だとしたらそれは気のせいだ」

 

 

 レンから目を逸らし、否定する。

 あぁ、そうだよレン。確かに俺は経験してる……それもクソみたいにしつこかった猫ガキからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――という事がありまして、レンさんの実力はかなりありました。

多分ですけど兵藤君がシスコンのせいです」

 

「ご、ご苦労様……?

別に調べて来いなんて言ってないけど……」

 

「こうも振り回される祐斗先輩を初めて見た気がします」

 

「そうねぇ?

何というか、遅れてやってきた思春期かしら……?」

 

 

 この日、木場祐斗は頭に大きなたんごぶをつくりながら、レンの実力に関しての報告を淡々と済ませる。

 だが、リアスはそんな事を頼んだ覚えなんて無いし、もっと言うとあまりにもアグレッシブになり出してる祐斗に、『実は女の子を口説くのがド下手なのでは?』という新たな一面を垣間見てひきつった笑みしか浮かべられなかった。

 

 

「はっきり言って強いです。頼もしさすら感じる程に……」

 

「は、はぁ……それはさっき聞いたわ祐斗」

 

「それに強さだけじゃなく、ちゃんと女性らしさも……」

 

「いやだからそれも聞いたわよ祐斗?」

 

「それに体育の授業の時はバドミントンを頑張ってて……」

 

「……。駄目ですね、レン先輩の事しか頭にないみたいです」

 

「これはこれで困りましたねぇ……?

ストーカーにならなければ良いのですが……」

 

 

 完全にリアス達にレンへの好意がバレてしまって開き直りでもしたか、逆に気持ち悪いくらいレンの事ばっかりしか語らない祐斗に、リアスは朱乃の言うとおり少し困った。

 

 というのも、そろそろ自分の意志ではどうにもならない事が迫ってきているのだ。

 過去に色々とあって達観していた祐斗が恋に走るのは良い傾向なのだけど、それ以上に現在リアスの貞操的な意味で危ないのだ。

 

 

「あのー……例の私の件について何とかしないと、この学園に居られなくなる可能性もあるのよ? そうしたらアナタがお熱なレンとも会えなく――」

 

「何ですって!? それは本当ですか!?

ならばやはり兵藤君とレンさんに僕が土下座を――なんならレンさんの脚だろうと舐めてでもおがみ倒しに行きますよ!?」

 

 

 まるでどこぞの馬のオルだかフェノクが悪人スマイルフェイスを浮かべる草だか加だかに騙される様子をネタにした時の様な返答をしつつ、後半は殆ど昔の一誠を2で割った………いや、どっこいどっこいな事を宣いだす祐斗に全員が遂にドン引き。

 

 

「それって祐斗先輩のただの願望ですよね……?

やっぱり変態だったんだ……」

 

 

 小猫が小さく毒舌を噛ますのも仕方ない変貌っぷり。

 

 いや本当に、ギャグかました空気だけど危ないのだリアスが。

 

 

 

 

 アーシアちゃんがウチに住む様になってからの話だけど、私が懸念していた不安は然程実現はしなかった。

 というのも、お兄ちゃんは確かにアーシアちゃんに対して普通以上の事をしてあげてるけど、だからといってそれ以上の事は決してしないからだ。

 

 まあ、アーシアちゃんがお兄ちゃんに何かしら想ってる様だけどさ。

 

 

「お昼何食べようか? お父さんとお母さんからお金貰ったけど、勿体無いよね?」

 

「まーな、家にあるもんで良いだろ。アーシアは?」

 

「あ、私もそれに賛成です」

 

 

 お父さんとお母さんは休日ということもあって朝から出掛けちゃっており、今日は私とアーシアちゃんとお兄ちゃんのお留守番。

 本当ならお兄ちゃんにめっちゃ甘えられる至福のお時間だけど、アーシアちゃんが住む様になってからはそれも自重気味。

 

 いや別にアーシアちゃんが悪いとはもう思わないけどね? どこか物足りない感はある。

 

 

「神器の訓練よりお兄ちゃんに抱っこしてほしーな?」

 

「ダメだ。お前もアーシアもその神器があるが故に狙われないなんて事は無いんだぞ。

だからある程度の自衛の手段は持て、特にアーシアはな」

 

「で、でも私、戦うのって苦手といいますか……」

 

「あっそう、なら別にやらなくても構わないぞ。今後泣きを見るのはキミだし、俺は絶対助けねぇ」

 

「っ……! や、やります!」

 

「よし、それで良い。さて、今から俺を教官と呼べ」

 

「「はい教官!!」」

 

「よーし………………………………………って、俺は何を言ってるんだ?」

 

 

 最近のお兄ちゃんは悪魔さんとの邂逅のせいで、私やアーシアちゃんに自衛手段の叩き込みが多くなった。

 

 

「レンは神器――つまり赤龍帝の籠手の力を基礎の基礎しか使えてない。

使いこなすと段階的に腕だけじゃなくて全身鎧みたいになるぞ、それと神器となる赤い龍ともトークが可能だ」

 

「毎度思うけど、お兄ちゃんってやけに私の神器に詳しいよね? どこでそういうのって調べられるの?」

 

「レンの事だぞ? 知らない事はない。例えば8歳まで一人で寝られなかったとか、中学までシャンプーハット使ってたとか、それから――」

 

「わ、わかったわかった! だからそれ以上アーシアちゃんの前で言わないでってば!!」

 

 

 何故レンの神器に詳しいのかという疑問に対して顔色も変えずに誤魔化したイッセーは、ブツブツ言いながら恥ずかしがるレンから今度はアーシアへと視線を向ける。

 

 

「キミは回復系の神器だったな? …………うん、ぶっちゃけあんまりそこらへんのジャンルは知らないので、素手で相手を捻り潰せるレベルの体術を習得して貰いたいが、レン以上に虫も殺せない性格だからなぁ……」

 

「す、すいません……」

 

 

 忌まわしき白猫からの負の遺産により持ち得るマイナスにより、日本語も碌に話せなかったアーシアに『言語の壁という現実』を否定させ、どの種族に対してもその壁が取り除かれる仕込みを実はしていたイッセーは、戦闘手段云々より前にあるアーシアの性格を考慮した上での自衛手段を与えようと、何故か謝る彼女に首を横に振りながら話す。

 

 

「いや別に責めてる訳じゃないぞ? なんつーか、俺の中にある少なすぎる交遊関係でキミみたいなタイプはよーく考えたら初めてだったっつーか……」

 

「む、それって私が乱暴者だって言いたいの?」

 

「人見知りのするお前がここまで成長したのを俺は寧ろ喜んでるんだよレン。

んで話は戻るけど、取り敢えずアーシアには――」

 

 

 何故赤の他人にここまでしてる自分が居るのかという疑問については、既に折り合いをある程度つける事で吹っ切ったイッセーが何故かポケットから分度器を取り出して何かを言おうとしたその時だった。

 

 

「こんにちはー……」

 

 

 物凄く遠慮がちな声が、庭で神器の制御のイロハを二人に叩き込んでいたその最中に聞こえ、振り向いて見れば……

 

 

「休日で『偶々』近くを通ったら声が聞こえて……」

 

「…………………」

 

 

 紅い髪の悪魔(ヤツ)は居た。

 

 

 

 

 兵藤家の大黒柱の父が汗水流して働いた結晶とも言えるマイホームは、一般家庭と比べると少し―――いや、かなり大きめの一軒家だ。

 ローン無し、全て一括キャッシュで手にした父が父である誇りとも言える男の城――――というのをこの世界では甥である一誠は、元の世界とはまったく違うという意味でもよーく知っていた。

 

 故にこの世界のレンの父かつ叔父を一誠は割りと尊敬してるし、可能な限り迷惑をかけずに努めようとしていた。

 けれど……けれどだ。そんな父の――叔父があくせく働いて得た男の城に悪魔なんぞが足を踏み入れようとする? そんなもの――

 

 

「この家の敷地内を跨いだら、その足もいで野良犬の餌にしてやる」

 

「あ、はい……」

 

 

 例え叔父が許しても許さない。

 丸くなろうとも悪魔が大嫌いな一誠が何故か一人のリアスを見た瞬間、低い声でそう言うと、リアスは踏み越えようと上げかけていたその足をピタリと止めてしまう。

 

 

「グレモリー先輩? 何でウチに……」

 

「あの、どなたですか?」

 

「この前言った悪魔だよ。気を付けろよアーシア、このカスには?」

 

「か、カスって……」

 

 

 金髪緑眼の少女に対してイッセーが嫌悪丸出しに此方を睨みながら平然とカス呼ばわりする事に、そんなに悪魔が嫌いなのかと改めて、小猫じゃないが凹むリアス。

 レンにはまだそういった嫌悪感は感じられないが、それも何時まで続くかわからない。

 

 しかしここで凹んで引き下がったら来た意味が無い。偶々なんて出任せをつい言ってしまったが、本当の所は偶々なんかじゃなく、目的があってこの場所に来たのだから。

 

 

「あ、あの……ちょっと、ほんのちょっとで良いから私にお話をさせて貰いたいのだけど」

 

「お話? えーっと、今度は何ですか?」

 

「聞くなレン、そしてお前は消えろゴミカス。

じゃないとその目障りな髪の毛を毛根ごと引きちぎるぞ」

 

「い、イッセーさん……?」

 

 

 一体全体何があったからここまで言われなくてはならないのか。

 気にさわる真似を過去一度たりともした覚えが無いリアスは、毛根ごと髪をひきちぎるというやられたくはない暴言を受けてちょっとだけ小さくなりつつも、切羽詰まってる事もあってかリアスは引かなかった。

 

 

「本当に、本当に! ただ話を聞いてくれるだけで良いの! いえ、本音を言うと力を貸して欲しいってのもあるけど!」

 

 

 多分自分でもかなり必死だし、みっともないのかもしれない。

 けど引くわけにはいかないそれなりの理由がリアスにもあり、その必死さが少なくともレンやアーシアには伝わったのだろう、訝しげな表情ながらもイッセーに対して声を掛ける。

 

 

「お兄ちゃん、グレモリー先輩に何かあったみたいだよ? 何時もの様子が違うし」

 

「私はあの方がどんな方かは存じませんけど、何となく必死なのがわかります……その、お話だけでも聞いてあげてはどうでしょうか?」

 

 

 レンとアーシアのアシストに内心喜びつつリアスもペコペコ頭を下げまくる。

 何でイッセーに対して自分がこんな下手に出てるのかはわからないけど、彼の機嫌を損ねては意味がないのでこの時ばかりはプライドなんで横にポイだった。

 

 

「ふざけるな、悪魔だぞ?

テメーの自己顕示欲の事しか頭にない欠陥生物がこんな下手な小芝居噛ましてる時点で碌な事なんて無いぜ」

 

 

 だが肝心の砦であるイッセーが拳骨煎餅みたいに頑な為に中々次の段階に進めないし、もっと言えば家の敷地内にすら入れず門の前でまるで鬱陶しいセールスマンみたいに立ち尽くすしかできない。

 

 

「そこを何とか――」

 

 

 グレモリー家次期当主予定のリアス・グレモリーの今のこの姿を冥界に住む多数の悪魔達が見れば何と言うか。

 恐らくは傲慢な人間だと多くはイッセーに憤慨するだろうが、生憎ここは人間の住む世界。

 人間の住む世界に悪魔の地位なぞ関係無いし、ましてや相手はかつて悪魔を嗤いながら踏み潰して絶滅まで追い込んだ元・破壊の龍帝だ。

 

 それを知らないにしても、雰囲気からして機嫌を完全に損ねさせては駄目だと本能で感じ取れたリアスはある意味イッセーのかつての世界のリアスと比べれば大分マシで有能ともいえなくもない。

 

 まあ、これ程に食い下がると流石にイッセーも内心『殺す、半殺し、8分殺し、9分殺し、全殺し、皆殺し』と脳内ルーレットが回り始める訳で……。

 

 

「ここに居ましたか、リアスお嬢様……」

 

「っ!? ぐ、グレイフィア……!」

 

「わっ、綺麗なメイドさんだ……初めてリアルに見たかも」

 

「あ、あの方もやはり悪魔なのでしょうか……」

 

 

 モタモタしてる間に連れ帰ろうとやって来たもう一人の……レンにとっては初めて見るメイド服姿の悪魔の出現により、ルーレットはより過激に回り始めてしまったのは云うまでもなかった。

 

 

「はぁ、何処に出られたかと思いきやこんな所に居たのですね? もう何を言っても逃げられませんよお嬢様?」

 

「そ、そんなの……私はそれくらい嫌なのよ!」

 

 

 グレイフィアなる悪魔のため息混じりの声にリアルは食って掛かる様に声を張り上げる。

 断っておくが、今彼女達の居るところは普通に住宅街のど真ん中だし、兵藤家の門の前だ。

 

 

「これはジオティクス様やヴェネラナ様がフェニックス家と結ばれた婚約です。取り消すことはできません」

 

「そ、そんなの勝手に決めた事じゃない!」

 

 

 

「………。ウチの門の前で喧嘩してるよ……」

 

「何のお話なんでしょうかイッセーさん?」

 

 

 言い争う二人の悪魔に対してレンが『近所迷惑だから別の所で出来ればやって欲しいかも』と呟き、アーシアは二人の悪魔に首に掛けていた十字架のネックレスを握りしめながら不安そうにイッセーをそれぞれ見上げるが……見た瞬間二人はハッと息を飲んでしまった。

 

 

「………………………」

 

 

 鬼だ(オーガ)が居る。

 アーシアとレンはイッセーの顔を見て普段を知る故に怯えはしないが、それでも見せるその形相にちょっと腰が引けてしまった。

 

 そして言い争う二人の元へゆっくりと歩き始めたイッセーは、それに気づいて無い様子の悪魔二匹に対して、地獄の底の化け物みたいな低い声で一言『おい』とだけ言うと。

 

 

「なにか――――ぶばっ!?!?」

 

「ぐ、グレイフィア!?」

 

 

 居たような居ないような、どちらにせよ殺してやったので覚えても無い銀髪の方の悪魔の後頭部を掴むと、そのまま門を開け、路上に連れ出し、そのままお向かいさんの石壁に向かって顔面から叩き付けた。

 

 

「おいゴミ、俺にとっちゃ叔父だが親父でもある父ちゃんの家に対して何が『こんな所』なんだ? え? もう一度聞いてやるから早く答えろよ? なぁ? ……………なぁっ!!!」

 

「がっ!? ぶっ!? ぐがっ!?」

 

 

 ドスの効いた輩丸出しの迫力で、石壁目掛けて容赦の欠片も無くグレイフィアを顔面から叩き付けまくるイッセーにレンもアーシアもリアスも少しの間唖然としてしまった。

 

 

「ちょ、お兄ちゃん!? 駄目だってそれは!」

 

「や、やめてくださいイッセーさん!!」

 

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! グレイフィアは悪気があって言った訳じゃないの! お願いだからもうやめてぇぇ!!」

 

 

 勿論止めようと三人が三人、壁に血糊がべったりで軽い殺人現場化となってるにも関わらず、ガッツンガッツンとグレイフィアの顔面を叩き付けてるイッセーを止めようと必死になった。

 

 それこそ最初はグレイフィアも抵抗しようともがいたが、只の人間とは思えない万力が最強の女王と呼ばれるグレイフィアを力で押さえ付けられてしまい、運とタイミングとちょっとした言い方の間違いひとつで物理的な整形手術を無理矢理させられる結果となってしまった。

 

 

「か……ぇ……!」

 

「くくく……! げげげげっ……! なぁに効いたフリしてんだゴラ? ほら、父ちゃんが働いて買った家の感想を聞かせてみろや?」

 

 

 最強の女王であることを知るリアスは心底恐怖した。

 不意打ちだったとはいえ、戦意すら失わせたイッセーの力とその悪魔に対する途方もない殺意に。

 

 

「あ、アーシアちゃん治療してあげて……」

 

「は、はい……!」

 

「ぐ、グレイフィアがこんな……」

 

 

 結局は何とか助かったグレイフィアは運よく破壊の技術を込めてやられなかったので、アーシアの神器で元の美しい姿に戻れはしたが……。

 

 

「お兄ちゃん、そんなに悪魔さんが嫌いだったんだね……」

 

「こ、怖かったです」

 

「あ、うんごめん……言い訳はしないよ。

頭に血が昇りすぎた……」

 

 

「い、家に入れて貰えたけど、い、イッセーがリビングに似つかわしくないバールの様なものを持ってるわ……」

 

「……………。逃げたらマズイ………ですよね。多分追い付かれて今度こそ殺されます」

 

 

 今度は倉庫から引っ張ってきたバールの様なものを持ちながら、レンとアーシアにスプラッターを見せてごめんと謝るイッセーが何をしようとしてるのかが容易に想像できてしまい、リアスも……そして地獄の一端を受けたグレイフィアも震えが全く止まらず、地獄行きの快速列車に乗せられた気持ちでただただ正座して俯くのだった。

 

 

 これが交渉する前の出来事である。




補足

悪魔相手だと本当に女子供だろうが容赦が無い。

まあ、今回はすっかりお父ちゃんとお母ちゃんが大好きになってたからこそ、そんなつもりなく口走ってしまったグレイフィアさんにカチンと来ちゃったってのもありますけど。


その2

まあ、D×S本編に比べたらこれでもマイルドなんですよね。
酷いのはシトリー妹はテロリストに拉致されて玩具にされるだろうと予想した上で半笑いで見送り、シトリー姉にはその結果を送られた写真を見せ付けてから精神ぶっ壊してやったりとか……。

うわぁ……改めると引くなこれ。
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