一応折角なのでとお茶とお菓子の準備の為にキッチンに行くレンとアーシア。
お構い無くとその場に呼び止めたくても震えて声が出せないリアスと、この状況をどう回避するかで頭が一杯な悪魔メイド。
そしてその二人を虫けらかゴミでも見るような、心底『死ねば良いのに』といった目でソファの背もたれ部分に腰を下ろす、バールの様なものを持つイッセー
本日、家主とその妻が居ない兵藤家は異様なまでの緊張感に包まれていた。
「そこの色彩最悪な髪したゴミが同じゴミの粗チンをぶちこまれるのが嫌だってか?」
「粗チっ!? い、いえ、大まかに言っちゃうとそうなるかも……」
「その言い方は下品だよお兄ちゃん……。でも婚約者かぁ、グレモリー先輩も大変なんですね? あ、お口に合うかは分かりませんけど、良かったらどうぞ」
「こっちはお菓子です……」
「あ、ありがとう」
「恐縮です……」
ストッパーが居なかったら今すぐにでもミンチにして来そうなイッセーの下品きわまりない言動にビクビクしながらレンとアーシアが用意したお茶とお菓子を頂くリアスとグレイフィア。
さっきからイッセーが持つバールの様な物が怖くてしょうがない。
「先程のご無礼をお許しくださ――」
「黙れゴミ。生皮剥いでから死ね」
「――い……」
グレイフィアがすかさず謝罪しようとしても、イッセーはバールの様な物を突きつけつつ、理不尽にも程がある罵声を浴びせる。
取りつく島が無いとはまさにこの事だとグレイフィアはひとつ学習できた気がした。
「お兄ちゃん、アーシアちゃんが居るんだからもう少し言葉使いをさ……」
「ん? あぁ……そうだな」
レンと言ったか……彼の妹らしき少女が間に入ってなかったらかと思うと、先程顔面を叩きつけられた時の鈍い痛みが蘇り、グレイフィアは無意識にアーシアの神器で何とか元に戻れた自分の顔の鼻頭辺りを擦る。
この男……つまりイッセーが単なる人間では無いことだけはわかったが、余りにも異常過ぎる……形容しがたい何かを持っている事だけはわかっただけでも、ある意味では収穫だったのかもしれない。
何せちょっとした言い方の間違いひとつで、顔の判別が不可能になるまで痛め付けられるし、何よりこの彼は何故かは知らないけど悪魔という種族を心底毛嫌いしているのだから。
「私から簡単にご説明させて頂きますと、リアスお嬢様はライザー・フェニックス様という方と婚約を結ばれております。
ですが、お嬢様はその婚約に納得されておらず、この様にまったくの無関係である兵藤様にご迷惑をお掛けしてしまった次第です。本当に失礼致しました」
「ご、ごめんなさい……」
「要するに好きでもない人と結婚させられるのが嫌だから、私達の所に来て相談してみようと考えたんですね? 何で私達なのかはよくわかりませんけど……」
「それはその……。
最初出会った時から頼もしそうなオーラを感じたものだから……」
バールの様な物を肩に添えながら、今にもドタマカチ割りに来そうな顔をしてるイッセーにやはりビクビクしながらリアスは代表して話をするレンに俯き気味にうなずく。
レンやアーシアは同性というのもあってか比較的リアスに同情的なのだが……。
「ドブ鼠がそこら辺のドブ鼠とヤッてゴキブリみたいに増殖するのだけのクソ話が俺達に何の関係があるんだか。
そこのゴミに家をこんな所呼ばわりされてよ? いやホント笑えるわ、思わずこのまま脳ミソをカチ割ってどんな構造してるか調べたくなるくらいにな?」
イッセーはもう辛辣通り越して鬼な言動の雨あられしか言わず、同情するという様子が欠片もなかった。
実はリアスの兄が魔王で、その魔王の嫁で、それに釣り合う実力を持つグレイフィアを一切抵抗させずに一方的な痛め付けられ方をしたという、悪魔が持つ人間のイメージと常識を真っ向否定する力を見せつけられただけに、リアスもグレイフィアもなんと言葉を発して良いのかわからない。
大人で魔王の嫁でも、この状況を前にしたら右も左もわからないのだ。
「勿論私としてはアナタ様三人を巻き込むなんて考えは持ち合わせておりません。
言い訳にしか聞こえないかもしれませんが、リアスお嬢様がこの場所に逃げ込む事も予想出来ませんでしたので……」
連れ戻しに来たら鬼の住み家で、怒りを刺激してしまうなんて思いもしてなかったグレイフィアが、なんとかこの場から生還したいと言葉を選びながら、最初っから今の今も自分とリアスを虫けらを見るような目付きで睨んでるイッセーに話す。
今すぐリアスを連れてこの場から逃げ出したいのだが、先程から頭の中で何度逃げるシミュレーションをしても、追い付かれて今度こそ殺されるというオチにしか辿り着かない。
それほどまでにこの人間の示した異常さが凶悪すぎるといえばそれまでだが、冷静になって考えたら神器も何も持たない人間の男がただの腕力で悪魔を完封できるというのは普通におかしな話。
下手に出てるグレイフィアは薮蛇を突くべきでは無いと考えるものの、何処かでこの男の中身を調べて魔王や同胞に伝えるべきなのかもしれないという考えも出てきてしまっていたのだ。
そう――
「グレイフィア様、リアスを連れ戻すのに随分と時間が掛かってると思って様子を見に来たのですが……」
「っ!? ら、ライザー!?」
「……!?」
その婚約者を此方側に連れてリアスと会わせていた事を忘れるという、うっかりだのドジっ娘メイドという言葉では誤魔化すことが無理な大失態をやらかしていたのだと、思い出してしまうまでは、少なくともこのままイッセーという化け物から何とか生還できると考えていたグレイフィアだった。
「リアスとアナタの気配を辿って来てみれば、何故二人してこんな小屋みたいな所に? というか、何ですかこの人間共は?」
無知は幸せとばかりに、それこそグレイフィア以上の地雷原上でのタップダンス言動を吐き散らかすフェニックスの三男坊が、家の中だというのにパフォーマンス気取りで魔方陣ジャンプをして姿を現したのだ。
「………………………。場所、変えよっか?」
「「…………」」
「あ? 何だこの人間は? 誰ですかこれは?」
この瞬間、それまで不機嫌な顔だったイッセーの顔が、それこそ逆に見惚れるくらいに、無垢で、母性本能すら擽られる程の笑顔で全身冷や汗でシャワーが浴びたくなるリアスとグレイフィアに向かって微笑み掛けた。
『一誠って子供っぽいというか、本人は強がってるけど
そこが良いんだ』
『そうそう、こう頭を撫でて思い切り甘やかしてあげたいわ』
かつてのイリナとゼノヴィアのイッセーの好きな面として、この子供っぽさというか、背伸びした子供っぽさがあって放ってほおけなくなるというのがあったわけだが、悪魔であるリアスとグレイフィアからすればこの笑顔は逆に処刑台へのカウントダウンが一気に迫ったという風にしか取れない。
現に場所を変えようと提案してる時点で、その場所で皆殺しにするつもりなんだろうと思うと、最早恐怖しかない。
「いひ! きひっ! キヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」
「わぁ、お兄ちゃんが可愛い顔で笑ってるよ」
「そうですねぇ……」
「「………」」
「おい、だから俺を無視しないで欲しいのだが……」
まるでどこぞの無限の魔女がおっぱいソムリエを自称する男子を虐める時に浮かべる変顔を彷彿とさせる嗤い方をするイッセーに、ブラコン故のフィルターでも入ったのか、頬を紅潮させながらほんわかしてるレンやアーシアとは真逆に、死しか見えない未来に詰みすら悟り出したリアスとグレイフィア……そして何にも知らないで無視されてると不満そうなライザー。
「わ……かり、ました。
ならばお嬢様が部活動をされている部室へと移動しましょう」
「そ、そう……ね……」
「? どうしたんだリアスもグレイフィア様も? そこの人間は勝手に笑ってるし……」
恐らく愛着のあるこの家を血で汚したくないからわざわざ場所を変えようと言い出したのだが、最早抵抗する事が叶わないグレイフィアは、せめて、せめてほんの少しでもマイルドになれたらとレンとアーシアを然り気無く同行を願い入れ、結局巻き込まないと言ってたのに巻き込む形でオカルト研究部の部室へ―――処刑場へと移動するのだった。
アーシアちゃんはお兄ちゃんが怒る姿を見たことは無いと言っていたけど、何となく予想は出来るって言っていた。
だからめちゃんこ可愛い顔して笑うお兄ちゃんが本気で激怒しているのも端的に感じ取ってるみたいだし、またそれに関しての恐怖も無いらしい。
私を襲った堕天使の残党を全滅させた後の姿を見ていて慣れたのが幸いだったのかもしれないね。
ただ、それとは別にグレモリー先輩と、このグレイフィアってメイドさん……そして何か急に現れた軽そうな男の悪魔の人にとってはちょっと危険な事になっちゃったかも……いやだってさ。
「ひひひひ……キッヒヒヒヒヒ! げげげげげげっ!!!」
お兄ちゃんって思ってた以上に悪魔さんが大嫌いなんだもん。
上手く落ち着かせないと、グレモリー先輩達が危ない。
「おい人間、さっきから薄気味悪い声で何笑――――ぐぉぉぉぉっ!?!?!?」
「ライザー様!?」
「ひぃっ!?」
グレモリー先輩が部活してる部室に来た私達は、既に部室で待機してたと思う小猫ちゃんや姫島先輩、それから最近ちょっとよくわからない木場くんが驚いて私達を見る訳だけど、そっちよりも更に速く完全に激怒したお兄ちゃんが、しかめた顔で絡んできた―――なんだっけ? ライザーって人の顔スレスレに持ってきていた釘抜きを叩き込み、その余波で旧校舎の半分が消し飛んじゃった。
「ヒャッハハハハハ!!! 皆殺しにしてやるぜ!!!」
「きゅ、旧校舎が……!?」
「ぶ、部長!? 兵藤君は何をっ!?」
「わ、私のせいで完全にキレちゃったみたいで……そ、そんな事より速く逃げなさい!! ライザーも、死にたくなかったら早く――」
「はぁ? おーいおいリアスゥ? 俺がこんな人間に遅れを取ると思ってるのか? 確かに今のは少し驚いたが、所詮は人間――」
「ライザー様、お避けください!!!」
「は? 何ですかグレイフィア様、私の後ろに何か――――――ぎゃぁぁぁっ!?!?」
念の為にアーシアちゃんに耳栓と見てはいけませんよと手で視界を塞いであげてる中、私は本気で悪魔が嫌いなんだなぁと、『久々』に見るお兄ちゃんのハツラツとした姿をぼーっと眺める。
今、例のライザーなる頭に向かってバールみたいなものを振り下ろし、そのまま半壊して見通しと風通しがよくなっちゃった部室の床に叩き付けてる訳だけど、やっぱり止めるべきなのかなぁ……。
「お、お願いします兵藤様! 何卒彼をお止めください!! ライザー様が殺されてしまいます!」
「お、お願いレン! ライザーは嫌いだけど、殺されるのを黙って見るわけにはいかないの! だから……!」
木場くんとか姫島先輩とか小猫ちゃんが校舎外に吹っ飛んじゃって居ない中、グレイフィアさんとグレモリー先輩が必死にお兄ちゃんを止めてくれと私に懇願してきた。
確かに今のお兄ちゃんは、昔お兄ちゃんとやってた武士が魔物を切り捨てていく、鬼の籠手なるものを持った侍が、最終ボス後のムービーで鬼の武者に覚醒したみたいにライザーって人をボッコボコに嗤いながらしてる訳で、あのままだと本当に殺しかねない。
お兄ちゃんの気持ちを束縛なんてしたくないけど、だからと言って私はともかくアーシアちゃんの前でこういう事を見せるのはあんまりよくないので……。
「お兄ちゃん、その辺にした方がいいよ。
その人死んじゃうよ?」
「うはははは! ゴミが! ゴミがっ!! 死ね! 死にやがれぇぇぇっ!! げーっげげげげげげ!!!!!!」
「…………。グレモリー先輩にメイドさん。これダメっぽいです。
昔一度だけ何故か本気で怒ったお兄ちゃんを見たことがあるんですけど、これ当時のまんまです。こうなるともう止まりません」
「そ、そこを何とか! レンしか止められないのよ!!」
漫画の描写にでもありそうな白と黒が反転した目になってライザーって人をミンチより酷い目に合わせてるお兄ちゃんをどうしても止めろって言う二人の力にはなりたいけど、さっきも言った通りこうなるともう止まりそうも無いんだよなぁ。
うーん……よし。
「私は左から飛び掛かるから、アーシアちゃんは右からお願いね?」
「へ? あ、は、はい……!」
こうなったら文字通り身体を張って止めるしか無いと、アーシアちゃんに協力を仰ぎ、既に顔の形がエライ事になっても尚殴り続けてるお兄ちゃんを挟み込む様に飛び掛かり、止めるように頼んでみる。
意外な事にこの行動が良かったのか、お兄ちゃんは直ぐに止まってくれたのだけど……。
「ゼ、ゼノヴィア……イリナ――――――っ!?!? あ、アーシアとレンか……」
誰よそのゼノヴィアとイリナって人は? というか、イリナって確かどこかで聞いた様な……。
ライザー・フェニックスにしてみれば、災難でしか無かった。
婚約者のリアスが嫌がって逃げ、それを連れ戻しに出ていったグレイフィアを待つ為に、空気の悪い人間界の、リアスが拠点にしているオカルト研究部の部室で待機し、戻るのが遅いので疑問に思って気配を辿って迎えに行ってみれば、人間の住み家で何かやってて、部室に戻ってみたらいきなりずっとおかしな笑い声を放っていた人間風情に不意打ちでタコ殴りにされる。
ライザーにしてみれば何のこっちゃわからないし、その人間が解せないレベルに力が強くて抵抗すらできなかった腹立たしい目にも逢わされてしまった。
普通ならこの時点で人間なんか大嫌いだと宣言しても誰が責めようか。
だがライザーは驚く事に人間が嫌いだとは言わなかった。勿論自分を不意打ちしてきた人間の男は嫌いになりそうだったが、その程度の認識に留めたのは一体何故なのか。
「よいしょっと、申し訳ないんだけどアーシアちゃんまたお願いできる?」
「はい。この傷なら何とかなりそうですね」
「っ……いでででで!?!? お、おいお前! もうちょっと優しくしろよ!」
「あ? テメー……今レンに――」
「お兄ちゃん! 待て! おすわり!」
「…………………。 おう」
「ふぅ、せっかく治療してるのにまたボコボコにされたら大変だからね。
私が言ってもお門違いかもしれないけど、アナタも男の人なんだから少しは我慢して」
「ぐっ……」
天井が吹き抜けに、壁が消えて風通し良しにリフォームされたオカルト研究部の部室ににて、残骸の中無事だった椅子に座らされたライザーは、右に金髪緑眼の美少女、左には右に比べると特に特徴は無いが、それでもまぁ美少女だろう茶髪の少女にそれぞれ神器による治療、消毒液を浸した綿で傷口を塗りたくられる治療を受けていた。
ライザーの視線の先には、不意打ちをした男が今にも殺しに来そうな形相で睨んで来るのが見え、婚約者のリアスと魔王の嫁のグレイフィアは、戻ってきたリアスの下僕たちと片付けをやっている。
この状況をこの人間の男が一人で起こしたというのだけはライザーとて流石に認めるが、何でここまでされるのかが分からないので、恐怖より怒りしか沸いて来ない。
「いててててっ!? そっちの子は神器だから良いけど、お前の治療は乱暴だ!」
「しょうがないでしょう、傷口に木の破片が入り込んでるんだから……よいしょっと」
「いでぇぇ!?!?」
「もう、悪魔さんなんだから少しは我慢してよ……」
厄日というのが存在するなら、今日の程その名に相応しい日は無いのかもしれない。
不意打ちで恥ずかしい思いはするし、人間の小娘に乱雑に扱われるし、叶うなら今すぐにでも目の前で睨んでる男を消し炭にしてやりたい。
「なに? アレはお前の兄貴なのか?」
「そーだよ、一応お兄ちゃんに代わってごめんなさいって言っておくよ」
「それで済むと思ってるのか? これだから人間風情は――むぐ!?」
茶髪の方の娘があの男の妹と知り、毒づこうとした瞬間、その妹に手で口を押さえつけられる。
「言うのは構わないけど、今此処で言ったらダメ。
言いたいのもわかるんだけど、また同じ事の繰り返しになっちゃうから」
「ぷは……俺があの男に負けると思ってるのかよ?」
「10:0でアナタの負け」
「なんだと、俺も見くびられたもんだなオイ」
あっさり自分より兄の方が強いよと返しながら腕の傷に消毒液を塗りたくる茶髪の小娘にムッとなるライザーだが、尊敬する魔王様の妻であるグレイフィアが目で『余計な事は言うな』と合図してきたので、解せないと思いつつも矛を納め、せっせと手当てをしてくる茶髪の小娘――レンと呼ばれた女の子の姿を見つめる。
「お顔の方は何とかなりました」
「ありがとうアーシアちゃん」
「……………」
アーシアと呼ばれる娘の神器が地味に悪魔の治療すらできる力があって凄いんじゃないかと思う傍ら、ふとそのアーシアに笑い掛けるレンを見てライザーは内心『ほう』と呟く。
小柄で、リアスみたいな美少女とは違うタイプだし、レベルとしては下回る程度だが、決して悪くはない。
いや、寧ろ小柄にしてはよくよく見ると胸も中々ある。
(悪くないなこいつ。言葉使いは最悪だが)
考えてみたら、人間の分際で自分に媚びもせず痛がってるのにそれを無視してる態度をされるのは初めてだったとライザーは思い出す。
「はい終わり」
「やっとか……」
あの意味不明なレベルで無礼な男の妹だけあるが、逆に考えたらこの妹のほうにもそれなりの力があると考えると、下僕にする価値がもしかしたらあるのかもしれない……と、治療を終えて立ち上がるレンをジーっと見ていたライザーに何を勘違いしたのか……。
「それじゃあ、グレモリー先輩との交渉頑張ってね?」
「っ!?」
「レン!?」
「兵藤さん! そ、そんなことまでしなくても……」
今まで数多の美少女を侍らして遊んでたライザーですら見た事が無く、そして感じた事が無い暖かさと母性を感じる笑顔を向けられながら頭を撫でたのだ。
その後すぐに兄のもとへとちょこちょこ行ってしまったのだが、撫でられたその感触を残したライザーは、美男子と呼ばれるその目を大きく見開きながら固まっていた。
「お前、何であんな事したんだよっ……!」
「いやだって、どうポジティブに考えても今回ばっかりはこっちの落ち度だし。
あとお兄ちゃんがまた私に隠し事してるからつい」
「か、隠し事? な、なんの事だよ?」
「しーらない、自分で考えたら?」
「そ、そんな……な、何でレンが怒るんだよアーシア……?」
「私とレンさんをどこのどなたと間違えたからからじゃありませんか? 私も正直イッセーさんなんて知りません……!」
「う……嘘だろ……?」
何だ、この得体のしれない気持ちは? 今まで星の数程の――と言ったら大袈裟かもしれないが、それでも決して少なくない美女やら美少女と遊んでたライザーにも感じたこと無い、くすぐったい気持ち。
「あの、ライザー様。取り敢えずリアスお嬢様をお連れしましたが……」
「………。あ、は、はぁ……そうでしたね」
オロオロしてるイッセーなる男にご機嫌斜め斜め態度のレンから、嫌そうな顔を自分に向けてるリアスへと視線を移すライザーは、はてと首をかしげる。
(……………。あれ、リアスってこんな程度だったか?)
グレモリー家の長女にて、文句無く抜群の容姿とスタイルを持つリアスを手に入れようと考えていたライザーは、一瞬目がおかしくなったと目を擦りながら、ふとつーんとした様子で兄とやり取りしてるレンを見る。
(あっれー?)
リアスと比べたら色々と落ちる筈のレン。
なのに見てるとさっきから心臓を誰かが内からトントンと叩いてる、こう、妙な鼓動をするのと同時に先程向けられた笑顔が頭の中から離れなくなる。
「イリナちゃんって昔ちょっとだけ遊んだ事のある男の子みたいな格好をした女の子だよね? 何でさっきその名前を呼んだのさ?」
「は? 呼んだ? 俺が?」
「呼んでましたよ、私も聞いてましたし。それにゼノヴィアさんなるお名前も」
「え………嘘だろ。俺そんな覚え無いぞ……」
「呼んでたの! 嫌だよ私、お兄ちゃんがイリナちゃんの事実は好きでしたなんて聞きたくない!」
「ま、待て待て待て! 違うから!」
「………」
「ライザー様?」
「何よ、さっきからレンばっかり見てるけど」
「い……いや、何でも無い」
「……。親切心で忠告するけど、レンに手を出したら今度こそ死ぬわよアナタ。
認めたくないでしょうけど、あのイッセーなら本気でそれができるし」
「俺が人間風情に負けると思ってるのか? さっきのは不意打ちだっただろう……」
一体自分はどうしたと言うのだ……。
ライザーは自分の中に芽生えたよくわからない感情に支配されるが如く、レンの姿を……よく見たら美少女じゃないかとまで評価を上方修正までしながら眺め倒すのだった。
「………何だよその目は、リアスの騎士?」
「いえ……アナタは部長と婚約する話をしに来たのに、彼女ばかり見るのは失礼なのでは?」
「ふん、俺が誰を見ようが関係ないだろ? それに、別に何か思って見てる訳じゃないしな――――――――――多分」
まだレンに撫でられた感触が残る頭に触れながら、ライザーは呟く。
それがある意味リアスと婚約を完全成立させるより棘の道で、尚且つ死のリスクが98%は軽く上昇する事になるとは知らずに。
「あ、兵藤さんが頬を膨らませてる……可愛い……」
「気が合うなリアスの騎士。チッ、あの人間の男の妹にしておくのが勿体ないくらいだ。
ん、待てよ……? レイヴェルに与えた駒を母上とトレードすれば枠が空くから――」
「ライザー様、聞かなかった事にしますのでそれだけは止めてください」
「あ、アンタ、女好きにも程が――」
「否定はしない。しないがリアス……正直言うと、そういう意味じゃなくあの小娘を手元に置きたいんだよ。困った事にな」
「「「なっ!?」」」
ライザー・フェニックスは実に絵になる笑みを爽やかに浮かべながら、死亡フラグ満載の台詞を吐くのだった。
数日後、あれだけ揉めていたリアスとライザーの婚約話が、ライザー自ら『辞退』する事であっさり解決した。
だがその背後には――
「あのーグレモリー先輩、あのライザーって人何とかなりませんか?」
「な、何かあったの?」
「いえ、最近その人の名義で花束が家に届いたり、勝手に侵入してるのか知りませんけど、下駄箱に手紙が入ってたりするんです。
グレモリー先輩の婚約者だった人ですよね? 何とか止めてくれるよう言って貰えませんか? お兄ちゃんにバレたらあの人本当に死にますよ?」
「え、ええ……い、言っておくわ」
「どうも。あと木場君の事なんですけど、別に護衛とか要らないんでいきなり現れるのはやめてとも言ってもらえますか? お兄ちゃんが毎回蹴り飛ばしてるのに全然やめる気配が無いんです……」
「あ、はい……」
レンが狙われるという代償――という名の絶滅へのカウントダウンがあったのだった。
「…………。ところでレン? 今着てるその体操着って少しサイズが大きくないかしら……?」
「え? あぁ、だってこれお兄ちゃんが今日体育の時間に着てたものですもん。
えへへ、お兄ちゃんの匂いに包まれて好きなんです」
「あ、あっそう……」
レン自身も若干曲者だというのにも拘わらず、妙に悪魔に目を付けられるのは兄妹らしいのかもしれない。
補足
一誠がかつてリアスさん達に魅入られて付きまとわれた様に、レンちゃまもレンちゃまで、女版一誠宜しくにこうなっちまう。
なまじ、ロリ巨乳化する前やし仕方ないね。
その2
ある意味原作よりも平和的に解決しちゃった。
そう、解決しちゃったけど死亡フラグがえぐい事にもなった。