シスコン一誠くん   作:超人類DX

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レンちゃまがライザーから、まるで調子乗ってた時代の某魔法学生のジェームズさんがリリーさんにアタックしていたみたいに、突撃してる最中、この世界の白猫さんは――



白い猫からの贈り物

 

 

 忌々しく、大嫌いで、殺したくて堪らないガキが居た。

 

 ガキって言っても見た目がチビで吹けば飛びそうなだけだからガキな訳で、実年齢は俺の一個下という事になってたのでそれほどガキじゃないのかもしれない。

 

 とにかく、そのガキを俺は視界に入れた瞬間殺したくなる衝動に支配される訳だけど、その衝動とは別にガキの力が俺の脅威レベルである事を認めては居た。

 

 現実を否定して無かった事に書き換えるふざけたスキル。

 全てを喰らい尽くす異常。

 俺の持つスキルの30%程度の同名スキル。

 

 どれもこれも時間が経つに連れて洒落にならない領域へとガキを引き上げ、殺したくてもそう簡単に殺せないレベルになってしまった時は憎悪という言葉がチンケに思える程の巨大な殺意を覚えたものだ。

 

 だがあのガキはそんなスキルとは別にもうひとつ……ガキ本来の種族としての力がある。

 

 

 ――仙術――

 

 

 理論はよくわからないが、ガキの姉も白龍皇とツルんでよく使っていたのを知ってる訳だが、別領域に至ったガキの仙術は、ガキの姉が戦慄しながら震えるくらいにはただの仙術では無かった。

 

 

『見てください。また私は先輩に追い付きましたよ? 夢で見たプカプカ浮いてるおじいさんに引き出し方を学び、今やっと完成した私の仙術。

名前はそう―――六道・白音モード』

 

 

 どこぞの修行僧が着そうな格好で、黒い珠を背に浮かび上がらせ、この珠から黒の錫杖みたいなもんを手に笑う白ガキは忌々しくも記憶に残る。

 

 思えば此処からだったかもしれない……奴を殺そうとしても殺せなくなったのは。

 

 忌々しい。どこまでも忌々しく、憎い。

 

 奴の全てを殺しきった時はどれほどに安堵したか。

 

 そして虚無感を植え付けられたのは……。

 

 忌々しい……忌々しい……。

 

 

「仙術……か」

 

 

 殺しても尚、最期まで煮ても焼いても喰えなかったガキだったよクソッタレ。

 

 

『先輩ならこんな私でも簡単に壊してくれますよね?』

 

 

 

 

 『こんなものまで』俺に埋め込みやがって……。

 

 

 

 

 

 先輩の力が何なのか、どうしてそんなに強いのか。

 そして何で私が憎いのか……私には全然わからない。

 

 あの騒ぎの後、先輩は私を前にしても取り乱す事はなくなったけど、代わりに私を『居ないやつ』扱いする様になり、無視をする事が多くなってしまった。

 

 私が嫌いだから。憎いから。それはわかってるけど、それとは逆に私を見て時折怯えた様な目をするのはどういう意味なのか。

 

 その目はまるで、昔姉の力に恐怖した私自身の様に……。

 

 そしてその事を思い出す事でふと感じた先輩の強さの正体かもしれない事象もあり、私はますますわからなくなった。

 

 

「先輩の力は姉様に似ているかもしれない……」

 

 

 先輩とは最早学園でも顔を合わすことが無くなり、レイヴェル・フェニックスという悪魔が転校してきたせいでその対応を同じクラスだからと任され、ますます先輩との接点が失って居た今日この頃。

 

 その離れすぎてる距離感が逆に私を敏感にさせたのか、神器も持たない先輩が何故あれほどの力を振るえるのかという疑問に対し、ひとつの考察が浮かび上がっていた。

 

 それは、ライザー・フェニックスを何があったのか、バールの様なもので殴り付け、その後馬乗りになってまで殴り続けた際に先輩から感じた雰囲気……いや、オーラ。

 

 それはかつて私が姉に怯えてしまう原因となったとある力にとても良く似たものを先輩の中から感じたのが理由だった。

 

 しかも恐らくだけど、姉様の様な仙術とは一線を画す……似てる様でそうじゃない、別系統の仙術と私は考えていた。

 根拠は無いけど、そんな気がするくらい、先輩は不思議な人ですから……。

 

 ちなみにこの事は誰にも話してない。

 部長辺りに話すべきなのかもしれないけど、話してもし先輩が機嫌を損ねたら、それこそライザー・フェニックスみたいに殺されかける可能性がある。

 私個人が殴り殺されるだけなら良いけど、根拠も無い考察一つで周りを巻き込む訳にはいかない。

 

 だから私は最近転校してきたレイヴェル・フェニックスの様子が妙におかしいのを尻目に、改めて、基本に戻り、猫らしくこっそりと先輩を遠くから観察してみる事にした。

 

 うん――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「レンは居ない。これで止められる心配は無い。

良かったよ、これで心置きなくぶっ殺せる」

 

 

 人気の無い森の中にのこのこと間抜けに誘導され、今まさに久々に向かい合った先輩に殺害宣言されてしまいましたけど………何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 小猫があの白音で無いことはイッセーとて流石に理解はしている。

 だが埋め込まれたトラウマがある限り、例え中身は違えど割り切れたものでは無い。

 だからイッセーは、ここ最近感じる視線にケリを着ける為、小猫を罠に嵌めた。

 

 その理由は宣言通り、殺す為に。

 

 

「やっとまともに殺れる」

 

「…………先輩」

 

 

 歓喜? いや違う、これは安堵だ。

 忌まわしき思い出を永久に葬り去る為の云わば儀式。

 人の立ち寄らない雑木林の奥にて、木々の葉音をBGMに、中身は違えど真っ直ぐとこちらを見るその金色の瞳から逃れる為に、イッセーは始動した。

 

 

「死ね」

 

「がっ!?」

 

 

 その言葉と共に、肉薄したイッセーの硬い拳が小猫の鳩尾にめり込む。

 その痛みに苦しむ暇すら無く、小猫の小さな身体は勢い良く飛び、ボールの様に地面を何バウンドもしながらぼろ雑巾の様に横たわる。

 

 

「げほ、うっ……ぅ……!」

 

「くくっ! クククク! ハハハハハ!!! どうしたよ? 逃げないのか? 抵抗はしないのか? アッハハハハハハ!!!」

 

 

 地獄の苦しみとはこういうものなのか……と、可笑しくて堪らないと嗤うイッセーを見上げ、小猫は血を吐きながらも身体を起こそうとする。

 

 

「そうそう、その目だよその目。

その『私は全然怖くはありませんよ』って嘗めた目が気に入らねぇ……!」

 

「う……あっ……!」

 

 

 何の事を言われてるのか小猫にわかる筈も無い。

 口の中に広がる血の味と、腹部に残る激しい苦痛に下半身に力が入らない小猫を実に楽しげに嗤って見下すイッセーに自分が何をしてしまったのかと改めて考えてみるが、痛みと苦しみで上手く頭が回らない。

 

 

「あぁ、この時をどれだけ待ったことか。

レンの手前我慢しなきゃならず、挙げ句の果てには無様にテメーを避けなきゃならない」

 

「う、うぇ……!」

 

「そうだ、それだ……!

俺に絶望するその目だっ! それが見たかったんだよぉ!」

 

 

 何時に無く興奮した面持ちで嗤い、そしてよく喋るイッセーに、小猫は内心『ああ、こっちがやっぱり素の先輩なんだ』と悟り、ダメージの抜けない身体を立てようと足に力を込めようと踏ん張る。

 

 

「せ、先輩ってサドなんですね……。

何となくわかってましたけど……」

 

「残念ながら違うなぁ? 只ぶっ殺してやりたいだけだ」

 

 

 負の感情を凝縮させた様な邪悪な笑みに小猫は、多分初めてイッセーとまともに、こんな形ながらの会話が成立した。

 勿論嬉しくなんて無いし、殺されると分かってて喜ぶ事も無い。

 寧ろ、先程の一撃を貰った際に流れ込んできた力の波に小猫は予想していた通りのもの感じていたし、よく見るとイッセーの目の周りに隈取りみたいな模様が浮かび上がっていた。

 

 

「ごふっ! ……っ、ぅ……い、いつの間にメイクでもしてたんですか先輩……? 何だかまるで歌舞伎役者さんみたいですよ?」

 

「あ? ……。チッ、また勝手に出てきやがったか。

だがテメーにそれを気にする余裕があるのか? え?」

 

 

 浮かび上がった隈取りに触れながら不機嫌に舌打ちをするイッセーだが、それも一瞬の事であり、すぐにまたボロボロに膝をつく自分を見れて心底嬉しいと、何か『そういう趣味なのか』と疑いたくなる笑みを浮かべるイッセーに、内臓をやられて血を頻繁に吐く小猫に対して容赦するつもりは無さそうだ。

 

 

「内臓が潰れた様だな、くくっ、そうそう……やっぱりそうやって怯えてこそだ」

 

 

 だからこそ本人は気付いて居ないのだろう。

 殺意を孕んだ縦に開いた瞳孔の瞳が……それこそ『猫』みたいで、もっと言えば小猫と同じ金色の瞳になっている事に。

 

 

(あの人と同じ力がハッキリと感じる。いや、あの人……姉よりも更に強い……)

 

 

 仙術という力にかなり……いや最早殆ど同じとも言える力をイッセーからヒシヒシと感じる小猫は、やはり気のせいでは無かったのだと確信するのと同時に、何故イッセーが仙術を使えるのかがわからなかった。

 

 ましてや、扱えるという時点で希少とされる力なのだ……。

 

 

「殺される前にひとつ聞いて良いですか?」

 

「あ?」

 

「その力……仙術ですよね? 何故先輩は扱えるんですか?」

 

 

 どうせ説得したって殺させるのは目に見えてるし、ならばと変な覚悟が入った小猫は思いきって聞いてみた。

 するとそれまでどう痛め付けてやろうかとニタニタしていたイッセーがその笑みをピタリと止めた。

 

 

「わからないね……。へ、そうだよなぁ? テメーであってテメーじゃないもんなぁ?」

 

「え……?」

 

 

 笑っていた顔から一変、またしても怒りを堪える様に歪んだ表情となり、低く唸る様な声で呟く様に言う。

 その言葉の意味がわからない小猫は、思わずキョトンとしてしまう訳だが……。

 

 

「仙法・迅晨雷派!!」

 

 

 次の瞬間、ジャパニーズNINJAを思わせる印を結んだイッセーが両手を突き出すと、無数に枝分かれ紫色の雷が放たれ、小猫を襲う。

 

 

「あぁぁっ!!?」

 

 

 大体仙術すら使えることがおかしいのに、まるで姫島朱乃みたいな雷の力まで使うだなんてますますおかしい………なんて考える暇も無く小猫の身体は枝分かれした雷に捕縛されてしまう。

 

 

「……。ちきしょう、やっぱり使えちまうのかクソッタレが!!」

 

 

 全身が麻痺し、身動きが取れない小猫が苦しむ中、自分が引き出して見せた力だというのに忌々しく顔を歪めて呪詛の言葉を吐くイッセーは、瞬間移動と錯覚するスピードで枝分かれした紫電を潜り抜け、捕縛した小猫の前に立つとその細くて折れそうな首を掴み、ギリギリと締め上げる。

 

 

「ぃ……ぎ……ぃっ!」

 

「苦しいか? 苦しいよな? 苦しいようにしてるから当たり前だよな?」

 

「か……ぁ……!」

「良いぜその顔、それが見たかったんだよ俺は……。こんなものまで埋め込み、最後まで俺を嘲笑いながら死にやがって……」

 

 

 誰の事を言っているのかサッパリわからない小猫は、締め上げてくるイッセーのその手首を掴みながら、目尻に涙を貯めて苦しそうにもがく。

 

 

「怯えろ、俺を怖がれ……!」

 

 

 酸素が取り込めず、意識が朦朧となる小猫の耳にイッセーの声が入り込む。

 それほどに自分が憎まれてるとは思わなかった……とは今更アレだけ拒絶されていたのだから思うことは無い。

 このまま自分は絞め殺されて終わるのか……?

 

「仙法――」

 

 

 

 結局何故自分が憎まれてるのかもわからないまま、やはり恐れて疎遠になった姉とは別系統の仙術の力を今まさに自分に向けて放たんと頬を膨らませ始めたイッセーに自分は殺されて終わるのか?

 

 自分は弱く、殺される程の力の差があるのならそれもまた運命なのかもしれない。

 ならばせめて、ちょっとくらいは抵抗してから死んでやる。

 

 首を締め上げられ、トドメを今まさに刺される事を悟って目の前の視界が歪む中考えた小猫は、さっきからしきりに自分に怯えろと言い続けていたイッセーに抵抗するかの様に――

 

 

「ふ、ふふ……」

 

 

 笑ってやった。

 怖くなんてない。怯えてやるものかと、本当は死ぬのが怖いくせに小猫は笑ってやった。

 

 

「………っ!?」

 

 

 笑ってやったからといって何が変わるとは思えないけど、せめてもの抵抗だとこのまま首の骨を折られる覚悟を持って痛々しく笑ってみせた小猫は、口元に笑みを形を浮かべたまま静かに目を閉じた。

 

 

(…………あれ?)

 

 

 しかし何時まで経ってもトドメを刺してくる気配が無い。

 そればかりか自分を閉じ込めていた紫電は消えて解放され、首にあった万力の様な締め付けも無くなり、小猫は重力に従う様に地へと横たわる。

 

「っ……!? ゲホッゲホッ!!」

 

 

 急激に酸素が供給され、噎せて咳き込みながら身体を起こして蹲る小猫は、目を涙で充血させながらイッセーの足が見え、やがてその視線を上へと上げていく。

 するとそこには、これでもかと苦痛に顔を歪ませたイッセーが自分を見下ろしており、小さく金魚みたいに口をパクパクさせている。

 

 よく見ると目の回りのあった隈取りもなくなっていた。

 

 

「う……あ……!」

 

 

 何のつもりなのかと疑問に思っていると、いつぞやの時に自分に怯えた様に二、三歩小猫から後退すると、イッセーはカタカタと震え始めた。

 

 

「な、に……笑ってんだ……貴様ァ……!」

「けほ……」

 

 

 せめてもの抵抗のつもりなだけなんだけど……と軽く咳き込みながら内心呟く小猫を明らかに恐怖した眼差しで睨むイッセー。

 いきなり過ぎて情緒不安定さが半端ないし、よくわからないけど、自分が笑うとイッセーの攻撃の手は緩むらしい。それもかなりの効果抜群で。

 

 

「けほ……わ、私が笑ったらダメ、だったんですか……?」

「……! ち、違う……」

 

「で、でも先輩は私がせめてもの抵抗で笑ったら首を絞めるのをやめましたよ、ね……?」

 

「だ、黙れ……!」

 

「なんで……ですか? 何で先輩は私が怖いんですか? 嫌ってるのは悪魔全体という意味だからわかりましたけど、どうして私にはそれに加えて怯えるんですか?」

 

 

 それに漬け込む……という事はしないが、純粋に疑問として投げ掛ける小猫に、それまで殺意しか見せてなかったイッセーが明らかに動揺した様に目を泳がせた。

 

 

「私が先輩の知ってる誰かに似てるんですか……?」

 

「っ!? 黙れ!! 黙れ黙れ黙れ!! その目を止めろ!!」

 

 図星を突かれたイッセーは、トラウマによって上手く動いてくれない自分の身体に苛立ちながら喚いた。

 

 

「私は先輩の知ってる人じゃない、だから怯えなくても――」

 

「黙れと言ってるんだ!!!」

 

 

 頭を抱え、とうとうその場に蹲ってしまったイッセーに、小猫はさっきまで自分を殺そうとした癖に情緒不安定な人だと思う。

 だけどその怯え方の尋常のなさ。そして自分を殺そうとしたのもその恐怖から逃れたいだけなのかもしれないと考えると、どこか納得してしまう。

 

 少なくとも、自分と重ねられるその誰かさんに文句を一言言ってやりたいくらいには。

 

 

「あの、先輩………」

 

「ひっ!?」

 

 

 腹部を支配する鈍い痛み……恐らく肋の何本かは確実に折れてるだろう怪我に堪えながら、這いずるように頭を抱えて蹲っているイッセーに近寄った小猫は、その誰かと自分は絶対に違うということをこの際全部ぶちまけてやろうと声を掛けた。

 

 すると掛けられた本人のイッセーは、まるで親に虐待されて怯える子供みたいな悲鳴を上げ、近寄ってきた小猫から逃げようとする。

 

 

「よ、寄るなァ! こっちに来るなァ!」

 

「………」

 

 

 あの時と同じだ……と小猫は何時もの不機嫌な顔しかしないのが嘘の様に自分に怯えるイッセーを見て思う。

 

 徹底的に自分を避けるのも、悪魔を嫌悪してるのも、そして自分を殺そうとしても失敗したのも、きっと何かがイッセーの中に……それこそレンにも話した事の無い何かがあるんだと。

 

 そしてその原因である誰かは自分に酷似してるという、とてつもなく迷惑な話。

 

 

「殺したくば殺しても構いません。

なので――」

 

「うっ!?」

 

 

 どれ程自分と似てるのはわからないが、少なくとも相当嫌な奴なんだろうと思った小猫は、散々痛め付けられたというのに、悟りきった顔で逃げようとしたイッセーの手を掴むと、そのまま身を貫き殺される覚悟で自分の方へと引き寄せ、そのまま抱き締めた。

 

 

「嫌ならこのまま私を貫いて良いです。私は先輩より弱いですし、文句無く死にますから。

ですけど、死ぬ前に言わせてください―――――私はアナタの知ってる何処のどなたさんじゃありません」

 

 

 我ながら何をしてるのやら……と自嘲しながら小猫はガタガタ震えるイッセーを抱きながら囁く様に言った。

 

 

「う……ぅ……」

 

 

 これで無理なら文句無く殺されておしまい。

 そんな覚悟までした小猫の行動に情緒不安定が全開だったイッセーは震えたのだけど……。

 

 

「いっつつ……先輩は力が強すぎです。

これ絶対に肋骨が折れてます」

 

「ぅ……く」

 

 

 殺そうとはしなかった。

 

 

「…………」

 

「できれば殺す時は一言言ってから――――――先輩?」

 

「…………………………………」

 

「え、嘘……まさか気絶した……?」

 

 

 それがどういう意味なのか、小猫にはわからなない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、小猫!? どうしたのよその格好!?」

 

「えーっとすいません。ちょっと先輩と喧嘩をしちゃいまして……結果は見ての通りボロボロに惨敗しちゃいました。

生きてるのが不思議なくらいです」

 

「け、喧嘩って……それにイッセー!? アナタを殺そうとしなかったの……?」

 

「勿論されましたよ。

腕の骨は折られるし、内臓は破壊され――ごふっ! ……失礼、肋骨は折られるし、挙げ句後一歩の所で絞め殺されそうになるし、トドメに一回起きた先輩から押し倒されてボッコボコに殴られましたよ。あれですね、全然ロマンスのない押し倒され方ってああいうのなんですね? ほら前歯が殆ど折れちゃって……」

 

「ま、待ちなさい! その割には余裕そうなのもそうだけど、アナタそこまでされてるのよ!? 怖くないの!?」

 

 

 ただ、小猫とトラウマの白音は違うし、中身もそれなりに違うとだけ、認識されたとするならそれはきっともしかしたら劇的なのかもしれない。

 今にも悲鳴をあげそうなリアスに対し、吐血しながらイッセーの事を話す小猫の神経も中々図太い。

 

 

「怖いですよ? 当たり前じゃありませんか、悪魔は嫌い、そして私はもっと嫌い。情緒不安定な爆弾みたいな人ですしね」

 

「じゃあ何でそんな……?」

 

「私に対してが一番風当たりが強いのは、何でも『その顔が一番ムカつく』かららしいです。

どうも私って、先輩に嫌がらせした誰かに似てるみたいで……」

 

「それってまさか悪魔……?」

 

「さぁ、そこまではわかりません。けど、これでひとつわかりました」

 

「何を……?」

 

「私ってこれまで怯えてばかりで弱いんだなって」

 

 

 口の端から赤い潜血を伝わせながら遠い目をする小猫の姿は実にスプラッターだ。

 しかしその金色の瞳は何かを決意した強い輝きを放っている。

 

 

「だからこれまで逃げていた力とも向き合おうと思います。

じゃないと先輩にリベンジできないですから」

 

「ま、待って小猫、それってまさかイッセーにリベンジするって本気じゃないわよね?」

 

 

 異常性に魅入って得た力では無く、自分自身の力による成長への渇望。

 それは皮肉にも、ネオと呼ばれて恐れられた平行世界の己とは違い――とてつもなく困難を極めた道。

 

 

「私の姉と同じ仙術を……そしてその先の、先輩が持つ仙法術を習得してみせますよ。

あんな乱暴な人にやられっぱなしは嫌なんで……ふふっ」

 

 

 どこぞのど根性NINJAみたいな道を、小猫は自覚せず歩み出す一歩を今踏みしめたのだ。

 

 

「ちなみに部長、出世払いで歯の治療ってできますか? これじゃあお粥しか食べられないので……」

 

「この前の件のお詫びで手に入れたフェニックスの涙を使って歯を戻してあげる……。でも小猫、お願いだからイッセーを刺激しちゃ――」

 

「それは善処したいのですけど、顔が気に入らないって時点で難しいかなって……」

 

「う……そ、それもそうね」





補足

白ネオさんはなんと某六道仙人化してたとかしてなかったとか。

おかげで当時本当に殺したくても殺すのが難しかったらしい。


そしてその力は贈り物の遺産として埋め込まれ、赤龍帝の力の代わりになっているとか……。



その2
殺す殺す詐欺師になってるけど、どうもやっぱりトラウマが先行して上手くいかないらしい。

気絶したのも、よくああして取っ捕まってたからだとか……。


その3

小猫たんの傷。

右腕の骨をへし折られ、肋骨もろとも内臓が潰され、前歯は根刮折られ、トドメに気絶から帰還したイッセーが自分の措かれた状況(小猫たんの慎ましいお胸でスヤスヤしてた)に発狂し、押し倒されてドキッとする間も無くボッコボコに殴られて……等々、死にはしてないこどグレイフィアやらライザーよりも散々な目にあってる。

けど、弱さを自覚させられた方が大きくて悲しいかな恐怖は殆ど無いに等しいという皮肉。
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