シスコン一誠くん   作:超人類DX

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タイトル通りではない。

※胸くそ注意。




小猫たんの仙術道の第一歩

 仙術を会得すると息巻いた私ですが、正直に言うと触りというか、なんというか……あまり引き出し方がわからないんです。

 

 昔姉が『気を取り込み自身の力に変換するんだよ』なんて言ってた気がしますけど、気っていう概念がそもそもあやふやで、取り込むにしてもどう取り込むのかがわからない。

 

 そこで私は、リアス部長からなけなしで貴重なフェニックスの涙という秘薬を頂いて自身を回復させた後、早速その『気』というものを肌で感じれる様に修行をしてみることにした。

 

 

「魔力なら部長を見てるのでわかるのに、気を感じるのは難しいものですね……」

 

 

 朝でも昼でも夜でも、暇さえあったら瞑想し、気というものを感じる様に努めてみるのですが、中々これが難しく、私は改めて姉が紛れもない天才なんだなと思い知る。

 何せ以前の時ですら姉は息をするように仙術の気を練り込んでましたからね。

 

 

「それに加えて先輩はリアス部長や副部長の魔力みたいに体外に放出出来る。

でたらめにも程がある」

 

 

 姉と同じ……いやもしかしたら仙術の進化系にすら思える強大なエネルギーを取り込める先輩はもしかしなくても凄いと改めてやっと微弱ながらも気を感じ取れた気がする私は思わず笑ってしまう。

 まあ、一週間かそこいらで覚えられたら苦労はしないって話ですけど。

 

 

「仙法……か」

 

 

 果たして私はそこにたどり着けるのだろうか? 姉が扱う仙術すらまともに練れない私が果たして……。

 いえ、たどり着かないと訳にはいかない。大見得切って会得してみせると不安な顔をした部長と約束したんだ。

 

 諦めて堪りますか。

 

 

「…………」

 

「あら、お昼休みに一人で何処へと思っていたらこんな所で座禅ですか?」

 

 

 そんなこんなで先輩にボコボコにされてから一週間。

 あれから先輩とは顔を合わせる事はあっても話す事は無く、無視される……というよりは嫌そうな顔をして避けられるという前進(?)を果たしたのですが、その前進をある意味横入りしてくる人がいる。

 

 それが、今屋上で一人仙術の力を練る訓練をしている私元へとやって来て嫌味っぽい口調で話しかけてくる金髪で如何にもお嬢様って風体の人。

 名をレイヴェル・フェニックスと言って、先輩にしこたま殴られてガタガタになった私の傷を直せた秘薬・フェニックスの涙を生産している家の末っ子にて長女さんです。

 

 

「部長さんにお聞きしたのですが、仙術の修行をしてらっしゃるとか? あの力は扱える者が少ないと聞いてますけど、アナタに使えるのかしら?」

 

「………。わざわざそんな嫌味を言いに来たの? 暇な事で」

 

 

 正直言うと、私はこの人がそんなにあまり得意じゃない。

 一々偉そうだし、一々小うるさいし、一々私に絡んでくるしで、悪い人じゃないのはわかるが苦手です。

 今だって仙術の気を少しずつながら肌で感じ取っていた私の集中力をかきみだし、見事に邪魔をしてくれたので思わず言い返してしまう。

 

 

「本当ならイッセー様にこのお弁当を食べて頂こうと思いましたのに、探しても見つからなかったのですわ。はぁ……」

 

「………。見つけて近づくもんなら殴られるのに、まだそんな事をしてるとか……」

 

「おたくの部長さんにも止められましたけど、私は止めませんわよ? きっとイッセー様は照れてるだけでしょうから……」

 

「………………」

 

 

 そう言いながら先輩でも想ってるのか、赤くなってるフェニックスさん。

 苦手な理由のひとつにこの性格もあるけど、一番はこのポジティブ過ぎるバカさ加減。

 

 一回目の接触で思いきり頬を張り手されて吹っ飛ばされた挙げ句、生ゴミとまで言われたのに、何でそんなポジティブになれるのかが全くわからない。

 

 恐らく、レン先輩に連日付きまとってるお兄さんの妹だからというのもあるのでしょうけど、それにしたってアホの極みというか、鳥頭というか……。

 

 

「む……小猫さん? 貴女今私をバカにしてませんか?」

 

「別に……」

 

 

 その癖察しだけは良いから苦手にも程がある。

 今だって心の中で鳥頭だとぼやいたら目付き鋭く睨まれたし……はぁ、よりにもよって何でイッセー先輩になんだか。

 只でさえ私は転生悪魔に加えて顔まで気にくわないなんて言われて、仲良くるのがハードモードなのに、こんなポッと出に横入りされるのなんてやめて欲しい。

 

 

「まあ、良いでしょう。ところでイッセー様の為に作ったお弁当が余ってしまいましたので、胃拡張猫さんに恵んで差し上げましょうか?」

 

「……。一々憎まれ口叩かないといけない様に躾でもされたの? ……まあ、貰いますけど」

 

「結構。はぁ……本当ならイッセー様とご一緒にと思ったのに……」

 

「それは残念だったね」

 

 

 だけどこのバカみたいにポジティブな部分は彼女の兄共々見習うべきなのかもしれない。なんて思いつつフェニックスさんから貰ったお弁当で、少し遅い昼食を一緒にとる。

 

 

「それにしても、イッセー様が仙術を扱うという噂を聞きましたけど、それは本当なのですか? イッセー様は人間ですよね?」

 

「実際この目で見たからそれは間違いない。ただ、只の仙術とはちょっと違う」

 

「ふーん? まあどちらにせよ、流石は私の心を盗んだお方ですわ。

これでますますイッセー様に……ふふふ」

 

 

 仙術を使う事をバラすのは不味かったかも、とトリップしてるフェニックスさんを横目に、味だけは一丁前に良いお弁当を食べてると……。

 

 

「ひぃぃっ!?!?」

 

 

 バーンと激しい音をさせながら屋上の扉が開かれ、私とフェニックスさんは驚いて思わず持っていた箸を落としそうになった。

 

 

「な、何ですかいったい?」

 

「さぁ? あ、でもあの人確か生徒会の人ですよ」

 

 

 私とフェニックスさんに気付いてない様子で転び、扉に向かって怯えた様に情けない悲鳴をあげながら後退りしている。

 よく見たら右側の頬が倍くらい腫れてるし、何なんだと暫く私とフェニックスさんが眺めていると……。

 

 

「どこへ行くんだぁ……?」

 

 

 どう見ても怒ってて、されど怒り過ぎて逆に嗤ってる様にしか見えないイッセー先輩が姿を現した。

 

 

「わ、悪かった! ほ、ほんの挨拶のつもりだったんだ!!」

 

「一々手を握ることがかぁ……? しかもそれだけじゃないだろ……?」

 

 

 ぎゅぴ!ぎゅぴ! ……と聞こえそうな足音と共に半泣きになって首を横に高速で振っている生徒会の人にゆっくり近付きながら嗤ってる先輩を一週間振りに近くで見れて若干心が晴れた気がした。

 ふと横を見ると、パァァッと顔だけは無駄に良いフェニックスさんも表情を明るくさせている。

 

 

「ま、待てって! 俺は生徒会長の眷属なんだぞ!? いくら悪魔嫌いだからってそんな真似を俺にしたら仲間達が黙っちゃいないぞ!!?」

 

 

 …………。一体あの人……ええっと、確か最近生徒会側の眷属になった匙って人でしたっけ? あの人は何をやらかしたんでしょうか……というか、その言葉は寧ろ逆効果じゃないかと……。

 

 

「あっそう、じゃあ奴等も道連れにしてやらんとなぁ? え?」

 

「ぎゃぁっ!?」

 

 

 何かが擦り潰れた様な肉の嫌な音と共に顔面を蹴られた匙って人が勢いよく吹っ飛び、屋上の手摺をひしゃげさせながら思いきり身体を打ち付ける。

 あれは相当怒ってますね……けど何で――

 

 

「なぁにが『よく見たら可愛いねキミ』だカス野郎。レンが可愛いのは最初からじゃボケ! クソボケが!! 手を握ったのはまだ良いとして、然り気無く胸と尻まで触りやがって!! それで悪気が無いだと? 死ねドグサレがぁぁぁっ!!!!」

 

「げぇ!? ぐぇ!? ぎげげっ!?」

 

 

 

 ……。あぁ、そういう事ですか。恐らくレン先輩にあの人が何かしてしまったんだ。だからあんなに――あーぁ、生徒会長さんは眷属さんに言わなかったのでしょうか?

 

 

「や、やめてください兵藤君!! さ、匙にはよく言って聞かせますからこれ以上は――」

 

「うるせぇゴミが!! 慌てなくてもコイツぶっ殺したら次はテメー等じゃクソが!」

 

「っ!? だ、誰か兵藤さんを呼びなさ――あがっ!?」

 

「レンを呼ぶだぁ? くくく、人間様を見下しながら人間のレンに泣きつくとは悪魔の名が廃るぜ? いっそ死ぬか? あーゴラ!!」

 

 

 と、思ってたら生徒会長と生徒会の人達が真っ青な顔をしながら遅れてやって来て、イッセー先輩を止めるよう 、最悪な選択を大声で生徒会であり眷属の皆さんに命令したその瞬間、匙って人から生徒会長に矛先が変わり、私がされた時みたいに首を締め上げられてしまってる。

 

 

「ひぃ!? か、会長が!!」

 

「も、申し訳ございません! 申し訳ございません! どうか、どうかお許し――」

 

「ゴミが気安く触るなぁぁぁっ!!!」

 

「ぎゃぁっ!?」

 

 

 死人の様に顔面蒼白になった生徒会の皆さんが必死になって先輩を止めようと膝ついて先輩の腕にしがみつこうとする。

 が、それより前に……えっと、そう、副会長で女王の人が裏拳で眼鏡を叩き割られながら乱回転して屋上から落ちてしまった。

 

 まあこの程度の高さなら落ちても大丈夫なんでしょうけど、顔が大変な事になってそうで少し心配です。

 

 

「か、かけ……へ……」

 

「無駄な事を、今楽にしてやる……!

 

「ふ、副会長が屋上から……!」

 

「こ、こんな嫌われてるなんて……どうして私達がここまでされなくちゃ……!」

 

「言ってる場合じゃないよ! は、早くしないと会長が死んじゃうよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、あれくらい先輩は悪魔が嫌いなんです。

ライザーさんが殺される前に早くレン先輩に付きまとうのはやめるべきだと言った方が良い」

 

「バカね小猫さんは。恋はあれくらい障害がある方が燃えるのよ? あぁ、見た目もお子様だからわかりませんか?」

 

「うっさい黙れ鳥頭」

 

「はぁ!? 誰が鳥頭ですって!?」

 

 

 ああなった先輩を止めるには確かにレン先輩が必要な為、私とフェニックスさんは気づかれないようにコソコソと屋上の扉の影に隠れて暴れてる先輩を眺めながら、フェニックスさんに忠告したら、その些細なやり取りでついフェニックスさんが声を荒げてしまったせいで、それまで生徒会の人達を相手に怒りを爆発させていた先輩の目が私とフェニックスさんに向けられ、存在がバレてしまった。

 

 

「何見てんだクソが……!」

 

「あ、いえ、元々私とフェニックスさんが先に屋上でご飯を食べてて、そしたら先輩が来て暴れだしたのでちょっとした避難を……ね、フェニックスさん?」

 

「は、はい! それにしてもこの一寸たりとも容赦しないやり方と力強さにレイヴェルは感服致しましたわ!」

 

 

 ……。仮にも同族が半殺しにされてるのに、キラキラした眼差しをイッセー先輩に送るこの人の神経の図太さは見習うべきものがある。

 いや、私も私でおかしいですけど、この人よりはマシだと思いたい。

 

 

「………。チッ」

 

 

 ? あれ、てっきりまとめてボコボコにされると思ってたら、泡吹いて痙攣してる生徒会長を投げ捨てて舌打ちするだけ……? 一体何故……。

 

 

「おいゴミ共、汚いからとっとと片付けておけよ、そこのボロクソ二匹を」

 

 

 急に萎えたという顔をしながら顔面蒼白の生徒会の人達にそう吐き捨てると、イライラした様子で此方に向かって歩いてくる先輩。

 あ、これはもしかして矛先が此方に向けられちゃった感じなのか……? だとしたら貴女のせいだよこの焼き鳥頭め。

 

 

「退け、邪魔だ」

 

「! は、はい!」

 

「あれ……殴らないんですか?」

 

 

 そう思って歯だけは折らないで欲しいと口を開きかけた私だったけど、先輩は私やフェニックスさんを殴る事はせず、ただ一言低い声で退けと言うだけで手を上げようとしない。

 

 ……。逆に不気味です。

 

 

「チッ……」

 

「あ、いえ、決して殴られたい訳じゃないので、見逃して頂けるならそれはもう……はい」

 

「あ、あのイッセー様、私今日早起きしてクッキーを焼いてみたのですが、宜しければ食べて――」

 

「犬の餌なんざ食うかボケ」

 

 

 生徒会を半殺しにしたから少し収まったのだろうか……私の言葉に対して舌打ちを、フェニックスさんの好意を罵倒で切り捨てた先輩は、しょぼんとするフェニックスさんを一切気にせずそのまま通り過ぎようとしました。

 

 何だろう、初めて助かった気が――――

 

 

「! おいお前」

 

 

 した……けど、やっぱりこのまま平和にという訳にはいかなかった様で、通り過ぎた先輩がピタリと足を止め、嫌悪した顔はそのままに此方へと再び振り向き、私――いや、フェニックスさんに多分初めて自ら話しかけたじゃありませんか。

 

 

「ふぇ?」

 

 

 これには犬の餌呼ばわりされて凹んでたフェニックスさんもビクッとして思わず返事が遅れてしまうのも無理はありません。

 ですが先輩は相手が悪魔だと全く気を使うこともしないし、粗暴な面だけしか見せません。

 

 レン先輩や、例のアーシアって人に向ける穏やかさが大嘘みたいに……。

 

 

「お前、名前は確かフェニックス……だったか?」

 

「え……あ、はい! レイヴェル・フェニックスです!」

 

「………」

 

 

 名前すら興味無かったフェニックスさんに今更名前を聞く……何故? そう思いながら急に舞い上がるフェニックスさんにジト目を送っていると……。

 

 

「…………………」

 

「あ、あの……?」

 

「先輩……?」

 

 

 屋上では生徒会長と匙って人を回収して大騒ぎしてる生徒会の人達の声が聞こえる中、先輩は何故かフェニックスさんを身長差の関係で見下ろす様にジーっと彼女を見つめてます。

 先輩の性格上、それはありえない行動なのでフェニックスさんも私もどうしたら良いか分からずに困惑してしまいます。

 

 もしかしたらノーモーションで殴られるのかもしれないとか、心臓を貫かれるのかとか……まあ、とにかくそんな心配もしてしまう訳で、決してフェニックスさんをじーっと見てて何かムカムカするとかは無いです。はい……本当に。

 

 

「…………」

 

「そ、そんなに見つめられるとドキドキしちゃいますわ……」

 

「…………………」

 

「と、この鳥さんは言ってますけど、何かあるんですか?」

 

「……………………」

 

 

 ……。あー、はいわかってますよ。無視ですね?

 どうせ私は無視されますよ。はいはい、フェニックスさんと比べたらどうせ私はチビでむかつく顔で胸無しですよ……! ふんだ! 鳥頭の癖に……なんて思いながらいっそ嫌われる真似でもしちゃえと先輩に念を送ってたのに……。

 

 

「………………」

 

「ぁ……」

 

「ちょ、ちょっと先輩……!?」

 

 

 スッと目を細め、次第にフェニックスさんの顔へと自分の顔を近づかせるという、私の念を嘲笑うかの行動に思わず声が出てしまう。

 フェニックスさんは満更でも無い様子だけど、散々悪魔をボコボコにしてこんな行動を見せられる私にしてみれば納得できる筈がない。

 けど先輩は何を考えてるのか読めない顔で頬を紅潮させるフェニックスさんと、それこそ鼻頭がくっつくんじゃないかという位まで顔を近づかせる……そして。

 

 

「……………すんすん」

 

「ひゃあ!?」

 

「はぁっ!?」

 

 

 すんすんと、まるで犬みたいにフェニックスさんの身の匂いを嗅ぎ始めた時は、先輩がおかしくなったと思っても仕方ないと、私は思いました……まる!

 

 

「な、何を……! わ、私から変な臭いが……」

 

「黙れ動くな!!」

 

「ひゃい!」

 

「…………………なにこれ?」

 

 

 途端に恥ずかしさで身を捩ろうとしたフェニックスさんを一括し、引き続き犬よろしくにくんかくんかとフェニックスさんの身体を嗅ぎ続ける先輩を見て、私の事は獣臭いなんて言ったのに……と微妙に納得できない気分で見ているしかできない。

 

 

「………………………………………」

 

「あ、あの……イッセーさま?」

 

「匂いフェチなんですか? そうなんですか? どーせ私は獣臭いですよ……」

 

「な、なんですの貴女まで……?」

 

「ふん、鳥と猫なんてそう変わらないのに……」

 

 

 時間して1分たっぷりとフェニックスさんをくんかくんかとしていた先輩が漸く離れ、何か思い出す様に自分の眉間を指で叩きながらブツブツと言う先輩を二人して眺めてると……。

 

 

「レンからお前に似た匂いを感じたが……お前、レンに何かしたか?」

 

「へ? い、いえ……レンお姉様とは少しお話したりはしますが……」

 

「ほーぅ? レンに近寄るのかお前……」

 

「それ、先輩の地雷……」

 

 

 そういう事でしたか、レン先輩からフェニックスさんの匂いがしたから確かめる為に……。

 それにしても先輩って人間なのにそこまで判別出きる鼻があったんですね……なんというか、色々の人の枠を越えてます。

 

 いえ、それは今良いです。バカ正直にレン先輩と話をしたりするなんて言っちゃうものだから、先輩の顔付きが怖くなってます。

 このままだとフェニックスさんが肉の塊にされてしまう……。

 

 

「だが、お前の匂いとレンから感じた匂いは似てるが違う。おい答えろ、お前フェニックスとほざいてたが、この前殺し損ねた方のフェニックスの関係者か?」

 

「あ、はい……それは恐らく私の兄のライザー・フェニックスですわ」

 

 

 バカっ! 何で疑いも無く話しちゃうんですかこの鳥頭は! それじゃあ殺してくださいって言ってる様なものでしょうが!!

 あぁ、案の定兄にライザーが居ると暴露した瞬間、先輩の顔が更に凄いことに……。

 

 

「そう、か。レンの奴……俺が殺っちまうと心配して黙ってたのか。

ははは、ホントあの子は俺の従兄妹――いや、妹にしては出来すぎた子だ。あぁ、なんて優しいんだ……まったく。くくく……げげげ……」

 

 

 遂にバレましたか。レン先輩に猛烈なアプローチを実はしていたライザーなる存在を。

 これはもうだめです……あの人は間違いなく殺されますね。フェニックスさんも流石にアホながらに気付いたらしいですが、全部が遅いんですよ。

 

 

「あ、あのー……うちの兄は決してレンお姉様に乱暴な事はしておりませんよ?」

 

「ははは……それをこの俺が信じると思ってるのか? あ?」

 

「い、いえ……悪魔がお嫌いなイッセー様の事は紛いなりにも存じてますので……」

 

「だろうな? そこで集団でゲロ吐いてるボロクズ共に対してさっきまで俺がやってたのを見てたんなら、バカでもわからぁ。くくく、げげげげげ!!」

 

「殺すんですか? フェニックスさんのお兄さんを」

 

 

 目の錯覚……じゃあありませんね。先輩の瞳の色が反転してドス黒くなり、あの時みたいな隈取りまで浮かび上がってる姿は、鬼を彷彿とさせます。

 

 

「当たり前だろ…………と、言いたいが、レンが健気にも俺を止めてくれるからなぁ? そう簡単にホイホイぶっ殺してたらレンに嫌われちまう。だが、カスの分際でレンに近寄る奴は許せない………困ったなぁ?」

 

 

 うひらうひらと不気味に笑う先輩の言葉に、レン先輩にライザー・フェニックス……牽いては悪魔の未来の全てが掛かってる事に、今更ながらレン先輩って凄いと思う私。

 然り気無く会話時間の長さがリアルタイムで延長してるのは……まあ、この状況ですから喜べない。

 

 

「そ、そうですわ! 少しでもイッセー様に信用して頂く為に、いっそ兄の行動を見て頂けたらどうでしょう?」

 

「あ? カス鳥の行動をだと? おいおい、お前といい、例の兄貴といいバカなのか? つーかお前、あんだけ目の前で同族を半殺しにされて何も思わないのか?」

 

「思わないと言えば嘘にはなります。けれど、弱い者は強い者に負けるのは自然の摂理。

今この場でアナタ様の手に掛かるのであれば、私には抵抗する手段も力もありません。ですので、ええっと、開き直ってしまってるんですわ!」

 

「ごめんなさい、この人バカなんです……何分鳥なんで……」

 

「ふん、怯えるよりバカと言われる方がマシですわ。

それに私は、初めてお会いした際に受けた一撃により、イッセー様の持つお力、そしてその悪魔を容赦なく張り倒せる気位に盗まれてしまったのです」

 

「あ? 何を俺が盗んだんだ? テメー意味のわからんことを――」

 

「盗まれましたわ……私の心を……うふふ♪」

 

「」

 

 

 頬を再び赤らめて宣う鳥に先輩が目を丸くし、その内引いた顔をした。

 まあ、でしょうね……私だってちょっと引いてますもん。

 

 

「おいガキ、何を言ってるんだこのナマモノは?」

 

「どうも、先輩に張り倒されたせいで脳の構造が異常になっちゃったみたいで……」

 

「ふざけんなよ、こんなナマモノに好かれるだなんて悪夢でしかねぇ。やっぱりこの場で殺して――」

 

「私は見なかった事にしますけど、でもレン先輩の事は良いんですか?」

「う……」

 

 

 でもそのお陰で先輩と会話らしい会話が成立してるって……ムカツクけどこの鳥には感謝かもしれないですね。

 ………ついでに仙術を練る為に必要な気の取り込み方をそれとなく聞ければ良いのですが……。

 

 

「あのー……そこでクネクネしてる鳥の事は放置で良いとして、先輩は仙術を発動させる為にどんな事をしてますか?」

 

「は? 仙術だと……?」

 

「はい。その、恥ずかしい話、先輩に大負けしてから自分の弱さをやっと自覚できた愚か者で、少しでも強くなりたいと仙術の会得を……」

 

「お、お前っ! つ、強くなってどうするつもりだ……」

 

 

 それとなく処かそのまま話したのはやっぱり早計だったのか、急に顔を強ばらせた先輩がまた私に怯える様な声で強くなりたい理由を聞いてきた。

 

 ここで先輩にリベンジしないと言えば殺されるかもしれないけど、嘘を言うよりマシ……というかこの鳥を少し見習ってみようと、私は真っ直ぐ目を逸らさず先輩を見てその理由を答える。

 

 

「先輩にちょっとでも認めて欲しいから……あと、私はその先輩に意地悪した誰かとは違うんだと知って欲しいから。

ほら、わかって貰うには今の私はあまりにも弱いので……」

 

 

 さぁ、先輩はこの答えにどう反応するのか。

 やっぱり私を始末するのか、それとも……。

 

 

「く……くっだらねぇな。テメーが何をしようが俺はテメーなんざ怖くもないし、ましてや誰が意地悪されただって?」

 

「だって先輩、何時も何かする時最後まで出来ずに錯乱する――――いたたたたっ!?!?」

 

「テメーチョーシこいてんじゃねーぞボケが。今すぐこのまま頭を粉砕するぞゴラ」

 

 

 始末はされなかったけど、代わりに頭を万力みたいに締め付けられた私は悶絶する。

 

 

「痛い痛い痛い!?!? ご、ごめんなさいごめんなさい! た、確かに調子に乗りました! だ、だってやっと先輩とまともにお話できて嬉しかったから……!」

 

「……………。チッ! レンにゴーサイン貰えたら真っ先にぶっ殺してやれたものを」

 

「いつつ……わ、私はその私に似て先輩に嫌がらせした人を恨みたいですよ。

その人絶対先輩が悪魔もろとも嫌う元凶ですよね?」

 

「ふん、元から悪魔は嫌いなんだよ俺は……」

 

 解放され、目から涙を流しながら締め付けられた箇所を擦る私に先輩はプイッと目を逸らす。

 

 けど私はその目を逸らす前の瞬間を見た。

 

 先輩が目を見開き、驚いた様な顔をしたのを……。

 

 

 まるで……思っていた私じゃなくて困惑した……そんな顔を。

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えずおいクソ鳥、テメーの兄貴はどこにいる? 冥界か?」

 

「は、はい。普段は冥界に居ますが……あのその……本当に兄はレンお姉様と出会われて変わりまして……少しだけ判断という名の猶予を頂きたいといいますか……勿論気に入らなければ私も、兄もどうしようと構いませんので……!」

 

「んなもんぶっ殺せば関係な――」 

「私からもお願いします先輩。言えた義理じゃありませんが、悪魔の中にも変わり種は居るんです。

こう、人間っぽい悪魔とか……」

 

「知るか、ミンチにしちまえば全部同じ――――――っ!? ちょっと待てレンからメールが……げっ!? ゴミ共半殺しにしたのがバレちまってる!? や、やべぇ、昨日約束したばかりなのに……く、口聞いて貰えなかったらどうしよ……」

 

「心配しなくても事情を話せば大丈夫じゃないですか? さっき聞いてましたけど、生徒会の匙って人がレン先輩にセクハラしたのでしょう?」

 

「あ、そういえばレン姉様のお尻や胸がどうとかと……」

 

「! そう、それだ! あのクソ野郎! 俺がレンの傍に居ない間に、テメーの所の紅髪が、黒髪の所とクソみたいな挨拶してるのに巻き込まれた挙げ句、勝手に紅髪の仲間扱いして………うぐぁぁぁっ!! やっぱぶっ殺して――」

 

「それは今はやめた方が……。レン先輩にダメってメールで言われたのでしょう?」

 

「うぐ……そ、そうだ。レンは俺とは違って優しいから……」

 

「ではこの様にしてはいかがでしょうか? 例えばあのお方はソーナ・シトリー様の眷属ですので、シトリー家に直接眷属の彼がその様な行動を取り、品位を疑うといったクレームの書状を送りつけて、それを悪魔の公の場で公開し、文字通りの公開処刑を……」

 

「は? んな事してどうするんだよ? やっぱお前バカなのか?」

 

「いえ、割りと有効ですよそれ。何せ悪魔は外面を気にする……ましてや大きな家の悪魔は余計気にしますからね。

その大きな家の悪魔の眷属の行動ひとつで名を落としたとなれば、レン先輩にセクハラした人もタダじゃ済みませんよきっと」

 

「ええ、それにお姉様にそんな真似をする下賎な輩なぞ許せませんわ。何ならそれこそお兄様にも話し、フェニックス家をバックに嫌がらせしまくっても構いません」

 

「いや、やっぱ直接殺した方が――」

 

「殺すより生き殺しの方がダメージは大きいですよ?」

 

「だが、何でテメー等にそこまでされなきゃならねーんだ。これじゃまるで徒党組んだみたいで俺は嫌だぞ……」

 

 

 

 ブツブツと文句を言う一誠は気付いていない。

 先程まで悪魔に対してあった100%の殺意が、同じ悪魔相手なのに微妙に削げ、しかも悪魔相手に普通に会話を成立させていることを。

 レンからのメールがあったからにせよ……だ。

 

 

終わり





補足

地雷を先に踏んだのは、前世ではテロ組織に拉致られる所をヘラヘラ笑いながら旗まで降って見送って差し上げた生徒会達らしく、どうも眷属の一人がレンちゃまを勝手にリアスさんの眷属と思って、原作でアーシアさんがされた感じ+『手が滑って』お尻とおっぱいを………。

その時は木場君がマジギレしたけどリアスさんに止められて収まりましたが、どこから漏れたのか、それが鬼ぃちゃんに知れわたった瞬間、地雷爆破となり、生徒会室はグチャグチャに破壊されるわ、恐怖で逃げたその眷属を屋上まで、まるで某伝説の超サイヤ人ばりの圧力と、例のぎゅぴ音をさせながら追い回し、そして仙術修行の休憩でレイヴェルたんとご飯食べてた小猫たんが見てたのも気づかずに、ズッタズタにし、止めようとした生徒会の方々の半数以上をボコボコにしたという。


一番悲惨なのは裏拳で顔面砕かれた挙げ句屋上から落っこちで大変な事になっちゃった子かもしれない。

その2

ライザーの事が遂にバレた。さぁ大変。

ちなみに、そうとは知らずにライザーは今日も手紙をせっせと書き、花束を送り、時間を見てはレンの前にこそこそと直接現れ、木場君の必死のディフェンスと戦いながらデートのお誘いに必死こく。

リアスが苦虫噛み潰した顔をしてるのに気づけば、嘘みたいな変わりっぷりで……

『あー、リアス……その節はすまなかった。
なんというか、俺が調子に乗り過ぎてたってのがやっと自覚できたよ。
バカだったな俺って……」


 と謝罪し、またレンちゃまの元へと走る。

 あのライザーが辞退したせいで良かったといえば良かったのだが、そのせいで


『あのフェニックスの三男坊ですら匙を投げる我が儘なリアス・グレモリー』

という、ふざけた噂が冥界に広まるという展開になっていたとか。
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