.hack//OverLord:Another Side 作:ヨツバ
AIDA側の正体ですね…まあAIDAなんですけど
本編での時系列でいうと今回の物語はゲヘナが実行される前日にあたります。
ヘレン・ゲートキーパーのアジトとオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンの屋敷が王国に存在する。
どちらにヘレンだかオズワルドがいるか分からないがこれは二手に分かれないといけないだろう。なので2チームに分かれることになる。
ハセヲをリーダーとするチームは志乃に揺光。なんともハセヲがある意味困るチームだ。例えば恋愛の話になるとハセヲが困るという意味で。
次にもう1つのチームだがここでクーンとパイが入れ替わりだ。実は欅がトブの大森林で興味深いモノを発見したからパイを呼び戻したのだ。
クーンをリーダーとするチームは望に天狼、太白だ。クーン曰く野郎ばっかで華がないとのこと。それに望の中にいる朔はツッコミをするが望しか聞こえない。
まずはクーンたちの視点からだ。彼らはオズワルドの屋敷に向かっている。
「もし同一人物だとしてオズワルドの顔は貴族の顔だ。屋敷に行ったとしても門前払いかもしれない」
「ど、どうするのクーンさん」
「…侵入か?」
「あたりだ天狼」
クーンたちとオズワルドは知り合いでも何でもない。だから屋敷に行っても入れないだろう。そもそも相手がAIDAならそんなことも言っていられない。
だからこそ侵入だ。もしかしたら侵入したらすぐ戦闘になるかもしれない。クーンと望はAIDAに対抗できる碑文使いだ。
「望。気合い入れろよ」
「う、うん。ボク頑張るよ」
(ウチも力を貸すからな!!)
天狼も太白も力を貸す。彼らはAIDAに嫌な目にあっている。彼らはAIDAに対抗できる力を持たないがクーンたちをAIDAに向かわせることくらいはできる。
さて、オズワルドの屋敷は王国の貴族街に位置する。貴族街の中でも一番端だ。端にあるからこそ目立たず、ひっそりしている。
何でも王国貴族の中でも六大貴族はトップの貴族。その六大貴族に加わろうとしているのがオズワルドだ。そんな貴族としての顔を持つのに貴族街の端っこに位置するとは少し違和感だ。
トップの貴族グループに入るのならもっと良い立地のある場所かと思う。だけど貴族街の端っこである。
「ここがオズワルドの屋敷か。まあやっぱ貴族の顔だからか立派な屋敷だ」
クーンは屋敷のどこから侵入するかと考えていると天狼はあることに気付く。獣人の身体だからこそ人間のクーンたちには分からない微かな音や匂い、気配が分かるのだ。
「何だ…人の気配を感じない」
「そうなのか天狼?」
「ああ。こんな立派な屋敷なら使用人でも何でもいるはずだ。だが人の気配を全く感じない」
「天狼のいう通りかもしれん。見ろ」
太白が門を押すと開く。最初から開いていたのだ。これでは本当に誰もいないようである。
「…行ってみるか」
クーンたちは警戒しながら屋敷の中に入る。屋敷に入って、内装は綺麗だが確かに人の気配が無い。
これは本当に人がいないのかもしれない。そうなると武器を持っていつでも戦えるようにしておく。
このまま屋敷を捜索するが一向に誰とも会わない。完全に誰もいないようだ。こんな無人の屋敷が貴族の屋敷なのだろうか。
最初は嘘の情報でも貰ったかと思うが蒼の薔薇が嘘を言う理由がないだろう。
「もともと無人なのではないだろうか」
太白は自分の予想をみんなに伝える。彼の予想は正解かもしれない。ここはもともと無人の屋敷。
「おい、地下に通じる階段がある。慎重に行くぞ」
地下への階段を下りていくとある扉が現れる。その扉は厳重に封鎖されていた。これは何かあると思って天狼は自慢の拳で破壊する。
「破!!」
バコン!!と扉を破壊して室内に入る。室内は何かの研究室のようである。
壁中に多くのレポートが張り付けられており、何かの実験結果のレポートだ。1枚剥がしてレポートを読んでみるとクーンも顔が歪む。
「当たりのようだ。ここでAIDAの実験がされていたみたいだぜ」
「AIDAの実験?」
「ああ。この世界の人間に寄生させてどうなるかをまとめたレポートだコレ」
オズワルドは間違いなくAIDAと関係者だ。こんな実験レポートを見れば嫌でも分かる。
人間に寄生させてるし、モンスターにも寄生させている。他にも亜人や獣人にも寄生させて実験しているようだ。そしてその実験体がどのように変化したか、理性はどうなるか、凶暴性などの変化を事細かく書いている。
この実験の目的はAIDAの進化。どの種族が一番AIDAに適した生物か調べているようだ。その結果人間であることが分かったようだ。
人間の持つ心がAIDAの知的欲求を満たし、進化させている。亜人は次に良いらしい。モンスターはあまり適さないようだ。
「このレポートにはAIDAの進化した先について考察が書かれてやがる」
AIDAの進化した先。それはAIDAの自我誕生。AIDAは本能で動くが人間並みに自我を持ったAIDAはどう生きていくか考察されている。
もし、AIDAが人間並みに知性を持ったら人間社会に馴染めるとまで掛けている。無害なAIDAならそのまま人間社会に溶け込むが、害意あるAIDAならば人間社会を取り込む可能性があるとレポートにまとめられていた。
「AIDAが人間並みの知性を手に入れたらか…」
クーンは嫌な気しかしない。彼らが戦っていたAIDAはすべて本能的に動いたやつばかりだ。そんなAIDAが知性を持ったらどうなるか分かったもんではない。
「ん、このレポートは?」
太白は重要に保管されたレポートを発見した。このレポートはどうやらオズワルドにとって特に熱心に実験していたものかもしれない。
クーンは太白から渡されたレポートを読んでいく。
『このAIDAは私にとって特別なAIDAだ。このAIDAは特異変異体AIDA』
『このAIDAは彼女に寄生させよう。あの女ならばこのAIDAを成長させてくれるに違いない』
『あの女は私が認める人間の中でも特別だ。あの皇帝やこの国の王よりもAIDAに適している』
『法国にいる漆黒聖典のメンバーも気になるが今の私では近づけない。本当に惜しいものだ。特に番外次席に興味がある』
『ここ最近の彼女は寄生されているというのに変化はない。まさか逆に支配したのだろうか。会ってみるといつも通りの彼女だ』
『…どうやら違ったようだ。あのAIDAは彼女を使い分けているようである。自分が寄生されていると気付いていないのだ』
『さすがは特別なAIDAだ。こうも他のAIDAと違って進化しているとは驚きである』
『このAIDAはいずれ私を超えるだろう。このAIDAならばAIDAを新たな進化に導いてくれる』
『次に彼女に出会ってみてAIDAの成長を見てみると…とても成長していた』
『ここまで特別に進化するのは流石だ。少しこのAIDAの力を見せてもらったが…素晴らしい』
『一撃で私の腕を切断する斬撃を放つなど他のAIDAではできないことだ』
『これならばこの世界にいる存在は敵ではないだろう。コイツが本気を出せば国なんて陥落させることができる』
『リ・エスティーゼ王国だろうが、バハルス帝国だろうが、聖王国だろうが、アーグランド評議国だろうがな』
『では、このAIDAの成長を見せてもらいたい。でもその前にあの双子が何か仕出かすからその後にしよう』
ここでレポートが終わっている。
「なんだか不穏しかない内容だったな」
「う、うん。これは誰か…女の人がAIDAに寄生されているってことだよね」
「それも特別なAIDAにな」
またまた無視できない情報が出てきてしなった。当たり前だが情報を探せば新たな情報は出てくるものだ。
「ここにはオズワルドはいないようだ。ならヘレンのアジトかもしれん」
「…そうかもな。あっちはハセヲに任せるか」
クーンが研究室を出ようとしたが望が新たな隠し扉を発見した。
「隠し扉か」
隠し部屋に入ると薄暗い。だが天狼はすぐに誰かいることに気付く。
「誰かいるぞ」
目を凝らすと確かに誰かがいた。椅子に縛り付けられた男だ。
男なのだが異常なのだ。肉体が変化しており、どういう変化をしているかというと、黒色状に覆われ触角のような隆起物が出現している。さらにその上から血管のような物が走るというグロテスクな見た目なのだ。
これはまさしくAIDA感染者の中でも酷く感染された状態だ。その男はもう意識はなさそうだ。まるで麻薬中毒者のようである。
「おそらくオズワルドによって実験体にされた人間だろう」
この男の正体だが、実は八本指密輸部門の本来の幹部だ。この幹部はオズワルドが捕縛してAIDAの寄生実験をしていたのである。
こんな状態だがAIDAを取り除けば助かるのだろうか。
「うが…」
「ん?」
「うぎゅぐぎゃあああああああああああああああああああ!?」
いきなり男が奇声を発したと思えば身体中から黒い斑点が溢れ出し、肉体が変化していく。
その姿は蜘蛛であった。体色が赤い半透明な蜘蛛。そのAIDAの名前はGrunwald(グルンワルド)である。
「AIDA!?」
グルンワルドはそのままクーンたちへと迫る。
「ヤバッ!?」
スチームガンを装備してグルンワルドに発砲するクーンと太白。連撃で発砲するとどうやら攻撃は効いている。
望も天狼も攻撃が効くと分かれば援護する。だが決め手は碑文使いの力だ。
「どうやら通常の攻撃も効くようだ。ならばこのまま押し通すぞ!!」
「虎咬転進撃!!」
「パクドーン!!」
「「轟雷爆閃弾!!」」
苛烈な集中砲火攻撃。グルンワルドの動きが止まる。
この瞬間こそがチャンスだ。
「望、データドレインを展開するんだ!!」
「う、うん!!」
クーンと望のダブルデータドレイン。グルンワルドは消滅した。
「ったく、オズワルドはいなかったがこんなAIDAがいるとはな」
「はあ…」とため息を吐きながらクーンは地べたに座り込む。そして座り込んだと同時に欅からメッセージが入った。
何でも『興味深いモノ』と『興味深い情報』を手に入れたとのことだ。
「ハセヲの方はどうなってんだ?」
side変更
八本指密輸部門アジト。
ヘレンにしか入れない部屋で彼は必要な資材などをまとめていた。それはまるで夜逃げをするみたいだ。その例えはある意味正解だ。
ヘレンはリ・エスティーゼ王国もとい八本指から出ていくつもりだからだ。
「あの双子はこの国で何かをやらかすつもりだ。なら巻き込まれる前に出ていこう」
動物の皮で作成されたケースの中に1つ1つ丁寧にAIDAを封じ込めた卵のような物体を入れていく。
「どうせあの双子のことだ。王国にウィルスバグを解き放って飲み込むつもりだろう」
ヘレンの予想は正解だ。あの双子とは八相の破片データを取り込んだウィルスバグである。その名前はゴレ。
「あの特別なAIDAも連れていきたいが、アイツなら大丈夫だろう。アイツは私よりもスペックが高いのだから」
AIDAを封じ込めた物をケースにしまいこんだら今後はレポートに目を移す。
このレポートはAIDAによる実験レポートだ。人間や亜人、モンスターなどに寄生させてどうなるかをまとめたものである。
特に注目しているのが5体いる。
1体目は帝国の騎士に寄生させた。
2体目はトブの大森林で発見した巨大な樹のモンスターに寄生させた。
3体目は元密輸部門の幹部に寄生させた。
4体目は麻薬取引部門の幹部に寄生させた。
5体目はあの女に。
このまとめたレポートはもう記憶しているので残しておいてもしょうがないのでビリビリに破いてゴミ箱へと捨てる。
「次はどこで実験しようか。帝国なんていいかもしれない。ヘレンとオズワルドの名前は捨てて今度の名前はアナでいいか」
「王国を捨てて今度は帝国に行くのか?」
ピタリとヘレンの動きが止まる。この部屋はヘレンしかいないはずだし、ヘレン以外入れない。
だというのに他者の声が聞こえたのだ。
「やっと見つけたよ。お前があちこちにAIDAをばら撒いていた奴だろう?」
「……前々から私を嗅ぎまわる輩がいるかと思ったが貴様か」
ヘレンが振り向くとそこには男が立っていた。その男の名前はオーヴァン。
「各地でAIDAに寄生された奴らを倒しながら、ここまで来た」
「なるほど。各地でAIDAが消されていたのは貴様の仕業だったのか。てっきり『ファントム』たちに消されていたかと思ったよ」
(ファントム…あいつらのことか?)
「だがそうなると何故AIDAを知っているのだ。まさかあいつらの仲間か?」
「そのあいつらと私はおそらく関係ないだろう。私はAIDAをよく知っている。それだけだ」
オーヴァンは静かにスチームガンを手にかける。もう片手には剣を持つ。
「知性を持ったAIDAよ。お前の目論見もここまでだ」
「ッ!? 私が知性を持つAIDAとよく分かったな」
「言っただろうAIDAをよく知っていると」
「…オズワルド」
ヘレンの背中から半透明の蜘蛛の足が生える。
「どうやら貴様はただの敵のようだ」
「AIDAが人を食い物にしているかぎりこの世界の敵だ」
「言ってくれるな人間」
人間もAIDAも生きている。だがどちらかが害意を持てば戦になるのだ。
「お前はAIDAの中でも特別なAIDAのようだ」
「それも分かるか。その通りだ。私は特別だ!!」
ヘレンの背中から蜘蛛の足が伸びてオーヴァンへと襲いかかる。その攻撃を両手に持つ武器ですべて捌いていく。
彼の攻撃を捌ける人間はこの異世界で全くいない。この異世界、この時代にいるかも分からない。
ヘレンはトブの大森林で出会った白髪の男を思い出す。
「やるな…やはりお前はあのハセヲとかいう奴の仲間じゃないのか?」
「……」
「くらえ。アニケルショット!!」
「……そうか。あいつもこの世界にいるのか」
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。
はい。ヘレンだかオズワルドだかの正体ですが…AIDAそのものでした。
でも特別なAIDAで人並の知性を得たAIDAです。
彼の目的、ボディのことや名前などは次回にて分かります。
ヘレン?「私の姿だけど分かる人は分かるんだよな」
オーヴァン「ああ、プラスの方か」