あの終わりはないな と 俺は思った   作:無月

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主人公について

主人公視点ですが、超短いです。




 あっけなく死んだと思ったら、俺には二度目の人生があった。

 最初は『つまんねー』とか、『うわー、やってらんねー』とか思っていたが、一度勉強したことは案外忘れていなくて、一度目の人生よりもはるかにうまく生きれた。

 幸いなことにこの世界はファンタジーやら、SFやら、治安が極端に悪いわけでもなければ、デュエルで全てを決まる世界でもない。だから俺はかつてより学力的にも、人間関係的にもうまくやっていくことが出来た。そして、大学の頃にサークルが同じだった女性と恋仲になり、今に至る。

 小さな違和感は彼女との出会い、彼女の名である『梓川 雪乃』にどこかで聞いた覚えがあった気がした。だが、そんな違和感は生きているうえで当たり前にあることだ。ましてや、人生を一度終えている俺なら尚更だった。彼女との関係が良好だったこともあり、すぐに些事として頭から消えていった。

 そうして彼女との関係を維持し、就職活動を始めた頃に彼女から誘いを受けた。

 

「私のおじい様の会社で働かないかしら?」

 

 逆玉、よっしゃー!

 と浮かれた俺が、その会社へ挨拶行った際にその浮かれた頭は冷えることになる。

 彼女からは食品会社だと聞いていたその会社の名は、パンタジア。

 パンなんてコンビニの菓子パンで十分な俺にとって、普段行かないパン屋の名前など気にも留めていなかった。

 

 故に気づかなかったのだろう。

 この二度目の人生がただの輪廻転生などではなく、漫画の世界に転生していたことを。

 

この世界の名は ――― 『焼きたて!! ジャぱん』

 

 とある週刊誌においてヒットし、アニメ化どころかコンビニ等で商品化もした作品。パンとギャグを織り交ぜた名作である

 だがあえて言おう、転生先としては・・・ ねぇな。

 神様の所業であるのなら、何を考えているかを問いただしたいところだ。

 しかも、しかもだ。

 ここにきている以上、俺はパンタジア側の人間となる。どう考えても、ハードモードだ。

 それに何より、原作において悪役だった雪乃の性格があまりにも違いすぎる。

 大学内においてパンタジア後継者候補であることを公言することなく、先輩を立て、後輩に優しく、同期には友好的な優等生。原作像である『傲慢で厭味ったらしい、手段を選ばない女』とは、あまりにもかけ離れている。それこそ本人と付き合っていても、漫画のキャラとかぶせることが不可能なほどに違い過ぎていた。

 どうなるんだ、一体。

 今更、別れるなんてありえない。彼女のことは好きだし、この誘いだって俺のことを想ってのことだとわかっている。猫を被っているなんてことも、俺を騙しているなんてことも、誰かの命令というのもあり得ない。

 なら俺は・・・

 

「なるようになれ、だな」

 

「何か言った? 雹」

 

「いや、何も」

 

 何も問題はない、原作のような争いが起こるという保証もない。

 ヒューパンなんて珍妙な生物なんているわけがないし、ジャぱんなんて面白いパンを作ろうとする少年だってもしかしたらいないかもしれない。そして、パンを食ってダルシムになる関西人なんているわけがないしな。

 恋人の祖父の会社で働く、ただそれだけのことだ。

 

 そんな楽観が数か月後にぶち壊されることを、彼はまだ知らない。

 

 

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