非日常Life!   作:Pine Water

1 / 2
少女は異常体質

「やーい!"化け物"!!」

 

「きゃー!!"化け物"よ!!」

 

「あっちいけ!!"化け物"!!」

 

ああ、またか。と少女は諦めた言葉を頭で発する。

 

少女の名は水月麗愛(ミズツキレイナ)。薄い紫がかったくせっ毛の長い髪をした12歳にしてはかなりの低身長の女の子である。

 

何故少女が"化け物"と呼ばれるのは過去を遡る。

 

 

 

 

 

レイナは物事ついた頃から一人だった。

 

周りに人はいる。同年代の子もいる、大人もいる。

 

だが、レイナだけに人が寄ってこなかった。

 

レイナは最初こそは身体も心も幼かったあの頃は分からなかった。

 

歳をとるにつれて気付いた。

 

自分は周りから存在を認識されてないのだと。

 

しかし、不思議と悲しくはなかった。

 

でも、"独り"は寂しかった。

 

 

 

レイナは孤児院という子供保護施設で今も暮らしている。

 

所謂孤児という扱いだ。

 

周りにはレイナと同じ孤児と呼ばれる子供が沢山いるが、誰とも心が打ち解けられていなかった。

 

それは、レイナは自分から話しかけたり、話題を持ちかけることが苦手だったからだ。

 

決して影がうすいわけではいない。

 

周りからは認識されていても、相手にしたくないという部類にいるだけだった。

 

そんなレイナの前に現れた同じ年に見える女の子がレイナに話しかけてきた。

 

「ねえ、いっしょにあそぼ?」

 

「………!うんっ!!」

 

いつも独りだったレイナにとってとても嬉しい出来事だった。

 

"独り"という言葉に当てはまりたくなかったから。

 

 

 

 

 

ある日のこと。

 

その頃の孤児院ではと周りの子達に自分のことを自慢する事が流行っていた。

 

周りの子供たちの真似をしたくて、その輪に入れば友達になってくれる子がいるかもしれない。

 

話しかけてくれた女の子は自分の自慢話を語り出した。

 

「あたしはね!おはなをつかって、いろんなものがつくれるんだよ!!すごいでしょ!!」

 

女の子が自慢した。

 

女の子らしい、自慢話である。

 

「レイナちゃんのじまんは??」

 

彼女の質問だ。

 

今、自分の求めていたことが実現しようとしている。

 

ずっと言いたくて我慢して、"あの子"と何度も練習して覚えてた自慢話を女の子に語った

 

「あたしのじまんはね、あのおにんぎょうさん!!」

 

自分の部屋から持ってきた人形を指差す。

 

そう、レイナは自分が日常を過ごす相手は人形なのだ。

 

その人形を自慢したかったのだ。

 

「え?なんにもないよ?」

 

彼女は否定の言葉を発した。

 

可笑しい。たしかに彼処には人形があるのに。

 

「え?そこにおいてるよ?」

 

自分は可笑しくない、間違いなく自分の部屋から持ってきた人形がそこに置いてあるのに。

 

"見えて"いるのに。

 

「なにいってるのレイナちゃん!!なんにもないじゃん!!うそつきっ!!」

 

話しかけてくれた女の子は怒り出した。

 

「なにもないのに、あるって…!なんにもないのにあるわけないじゃん!!」

 

そして、泣き出した。

 

彼女の顔は「怒り」から段々「恐怖」に変わっていた。

 

レイナの顔を見ながら、わんわんと泣いていた。

 

レイナはゆっくりと人形を見た。

 

自分が自慢しようとした、最高の友達を。

 

その時、人形が"笑った"。

 

"笑った気がした"のではない。確かに"笑った"のだ。

 

人形が笑うはずがない。作られたものは動くはずがないのに。

 

レイナの自慢話を聞いた子は担当員に報告した。

 

そのことを機にレイナの周りに更に人が寄ってこなくなった。

 

子供たちが通り過ぎるときは必ずこの言葉を言われるのだ。

 

「化け物」と。

 

 

 

 

 

女の子に自慢話を語った後日、その女の子が行方不明になった。

 

そう、レイナが自慢話をした女の子である。

 

その疑いの目は幼いレイナに向けられた。

 

「レイナちゃん?あの子がどこに行ったのか知ってるよね?」

 

大人が言った。

 

その内容を聞いた周りの子供たちは勿論初めて知ったことで、レイナも同じだった。

 

しかし、レイナに向けられた言葉。拒否なんてさせまいという言葉だった。

 

「し、しらない…」

 

「どうして嘘をつくの!?正直にいいなさい!!」

 

「ほ、ほんとうにしらないのっ」

 

自分は本当に知らないのだ。

 

しかし、誰も助けてくれる人はいない。

 

それはそうだ。今の自分の立場は「化け物」なのだから。

 

疑いの目が向けられて当然なのだ。

 

周りの人達に味方と言える人は勿論いるはずもない。

 

その日はレイナに向けられる目がいつもより多くて、より多くの人に「化け物」扱いされた日であった。

 

そして"自分は独り"なのだと、再認識した日でもあった。

 

 

 

 

 

あの女の子は保護施設からかなり離れた場所で意識不明の状態で発見された。

 

何とか一命を取り留めたものの、この保護施設に戻ってくることは無かった。

 

(「もしかして、あのへんなおにんぎょうさんは……」)

 

"人ならざるもの"。絵本でたまたま書いてあった内容を思い出した。

 

(「ようかい、ゆうれい、せいれい……」)

 

絵に描かれた妖怪、幽霊、精霊は恐ろしい姿をしていた。

 

あの人形は、もしかして………

 

『ねえ、遊ぼうよ』

 

何処からか、声がした。空耳だろうか。

 

『遊ぼうよ、"レイナちゃん"』

 

その声の主はだれか。

 

後ろを向けばあの日から突然きえていた"あの人形"。

 

「ひっ……」

 

初めて感じた恐怖。いつも一緒にいた人形は声を発した。

 

そして、"動いた"。

 

「い、いやっ………!!こないで……!!」

 

『いつも一緒にいたじゃないか。さあ、一緒に遊ぼうよ。"いつも"のように』

 

レイナは逃げた。幸い人はいる。近くにいた大人に助けを求めた。

 

「こわいっ……!!たすけて!!!」

 

「……?なにを言ってるの?何もいないわよ?」

 

その言葉を信じて後ろを振り返る。

 

人形がある。しかし、声も聞こえない。動いていない。

 

「あら、でもゴミがあるわね……」

 

大人は人形をゴミ扱いしたのだ。

 

人形が言った。

 

『いつか迎えに来るからね……レイナちゃん』

 

と、言いながらレイナを見つめていた。

 

 

 

 

その人形は次の日にゴミとして出され、この場所から去った。

 

ちなみにあの人形は自分以外にはボロボロの人形に見えていたらしい。それも、とても人形とは言えない程にボロボロの。

 

レイナは知った。

 

あの人形は"人ならざるもの"だったのだと。

 

 

 

 

 

 

段々と子供たちがいなくなる。

 

それは、引き取り手が見つかったからである。

 

しかし、私には全く引き取り手がこなかった。

 

私はそれで十分だった。

 

知らない人に引き取られても、幸せになれる気がしなかったから。

 

また、同じことを繰り返すだろうと薄々感じていたから。

 

「元気でね!」

 

「うん!バイバイ!」

 

ああ、今日も誰かがこの場所を去っている。

 

そして、

 

「みんなー!新しいお友達よ、仲良くね」

 

「よ、よろしく…」

 

「よろしくー」

 

「ねね、あっちであそぼうよ!」

 

いいなぁ、と最初は思っていた。

 

でも、今では何も感じなくなった。

 

昔のように"化け物"と言われることはなくなった。

 

あの頃共に過ごした子供たちは全員引き取り手が見つかり、この場所を去ったのだから。

 

しかし、引き取り手がこない私はここでは一番年上で、一番長くこの場所にいる孤児。とてもいらない称号である。

 

誰も敬わない。そもそも、相手にもされない。

 

されたとしても、大人たちのお手伝い。

 

"年上だから"という理由で。

 

この孤児院で唯一"学校"と呼ばれる教育施設に通う孤児である。

 

それもそう。私より下の子供たちは皆、幼いから。

 

私に次いで年が高い子供は幼稚園児で言う年長組にはいる。

 

引き取り手が見つかった子供は小学生に上がる前に引き取られていった。

 

寂しいと思わない。

 

あの日のことがあってからか、私は人というものが嫌いになっていた。

 

本当は学校なんて行きたくない。人が沢山いるから。

 

でも、義務教育と呼ばれる制度と、大人たちからの命令に近いお願いで行かざるを得なかった。

 

そうそう、この孤児院はとある学園と繋がりがあり、私は強制的にその学園に通うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

今日も嫌な1日が始まる。

 

4月。

 

4月といえば、小学生にとって新学年に進級したときのお楽しみのクラス替えにうきうきしているだろう。

 

私は誰が同じクラスでも何とも思わない。

 

私がここに入学試験を受けた時、首席として入学した。

 

最初は人がよってきた。

 

寄ってくる理由なんて見えている。

 

首席とは受験した人達のなかで1番優秀な人のことだ。

 

首席だから寄ってくる。

 

私によってきている訳では無いのに。

 

人が嫌いと思っていても、頼られると自然と嬉しくなるもので。

 

孤児院にいる時より学校にいる方が遥かに楽しいと思った時期もあった。

 

あの日のことをこの調子なら忘れられる。そう思っていた。

 

しかし、それは長くは続かなかった。

 

入学して3ヶ月程たった頃だ。

 

 

 

その日の授業、道徳の時間でのこと。

 

「今日は自己紹介文を書いて、発表してもらいます」

 

自己紹介は入学した頃にしたではないか。

 

でも、小学生。いろんなことを基礎から学ぶために通っているのだ。

 

今そう考えて見ると、不思議ではないだろう。

 

「せんせー!どんなことをかけばいいの?」

 

「そうねえ…自己紹介は自分を紹介するから……例えば、自分の誕生日や、自分の特技、趣味とか」

 

「しゅみってなにー?」

 

「自分の好きなことよ」

 

「じゃあ、とくぎってなーにー?」

 

「自分の自慢出来ることよ」

 

自慢。

 

その言葉は昔のあの日を思い出させた。

 

でも、心が育ってなかった私はまた同じ過ちを犯した。

 

今度は大丈夫だろうと、何にもない根拠を頼りに。

 

「さあ、みんな出来たかな?名前順から行きましょう」

 

名前順で先程書いた紹介文を発表していく。

 

そして名前順の最後、つまり私の番が来た。

 

「はい最後、水月麗愛ちゃん」

 

「は、はい!」

 

自分の番だ。

 

「みずつきれいなです!えっと、たんじょうびは──」

 

皆が発表した項目などを参考に自分の紹介をする。

 

そして……

 

「わたしのとくぎは、おにんぎょうさんとおはなしすることです!」

 

あの人形はいない。

 

でも、あの人形がいなければ私は今いない。

 

あの頃の私の友達なのだから。

 

怖い思いをしても、あの人形以外の友達はいなかったから。

 

「おにんぎょうさんは、わたしのおはなしを、なんでもきいてくれるの。わたしの、さいこうのおともだちなの!!」

 

ここまでは何となく理解してくれる子はいただろう。

 

この文章を読まなければこの先の未来は変わっていたのかもしれない。

 

「でも、おにんぎょうさんこわかった……」

 

思わず、あの日の恐怖をこぼしてしまったのだ。

 

「こっちをみて、わたしに『遊ぼうよ』っていってきて……」

 

誰か、私のこの体験をした私に共感してほしくて。

 

でも、その期待は

 

「うわっ、こっわあー」

 

「にんぎょうさんがそんなこというわけないよー!」

 

「そもそも、にんぎょうしゃべらないっしょ」

 

「レイナちゃんこわーい」

 

否定の言葉。

 

そして、

 

「ばけものだー!!」

 

"化け物"

 

そして、後悔。

 

「ばけものがどうしてがっこうにいるのー?」

 

「でていけ!ばけもの!!」

 

落ち着かせようとあたふたする教師。

 

私を化け物と謳うクラスメイト。

 

その頃の私の表情はきっと"絶望"だろう。

 

「どうして……?」

 

レイナは2度も失敗した。同じことで。

 

そして、信じるべきではなかった。

 

私は周りと馴染めない。私は皆と違うから。

 

 

 

 

 

 

登校中に嫌なことを思い出した。

 

いつもより多くの思い出を。

 

それはそうと今日は入学式。

 

今年は私が暮らす孤児院の子供たちの数名が入学してくる。

 

また、面倒な事が増えるのかな……と思う1日の初めだった。

 

 

 

 

 

新学年ということで、クラス替えされている。

 

6-A

 

それが、私の指定された小学生時代最後のクラス。

 

ガラッとスライド式のドアを開ける。

 

「わー…化け物と同じクラスかー……」

 

「今年、ついてないなあ」

 

「俺、席近くなんだけど……」

 

「ドンマイドンマイ」

 

新しい教室に入ればすぐに飛んできた私に対しての言葉。

 

私のことは学年中に広まっており、私と同じクラスの人は不幸が起こる、という起きるはずもないことを信じている。

 

そもそも、私と同じクラスになったからといって誰も不幸になどになっていないのだ。

 

化け物扱いに慣れた、と言えば嘘になる。

 

慣れるわけが無い。毎日ストレスが溜まる日々だ。

 

そう、私はいじめられているのだ。

 

だが、幸いなことに陰口悪口だけで収まっている。

 

何故学校側は対応しないのか。

 

それは学校側も私のことを"化け物"と認識しているからだ。

 

教師達は上手く隠しているつもりだろうが、バレバレだ。

 

私と話しているときの表情が引きつっている。

 

それで隠しているつもりだ、という態度に苛立ちと悲しみが起こる。

 

私の通うこの学校、通称紫苑学園。

 

この学園、そこそこ有名な学園である。

 

学部は小等部、中等部、高等部まであるエスカレーター式だ。

 

私は小等部卒業後は他の中学校に転校する予定もないので、そのまま中等部に上がるだけである。

 

中等部に進学してもメンバーは変わらないため、このいじめは回避できない。

 

「(私の居場所はどこにあるんだろう)」

 

毎日思うこと。

 

そして、

 

「(友達、欲しいなあ…)」

 

この言葉も毎日思うこと。

 

今日は入学式だけなので、午前帰り。

 

どこにいても苦痛だが、悪口を言われるここにいるのはもっと嫌だ。

 

「(終わったらさっさとかえろう)」

 

そう思いながら1番廊下側の一番後ろの席に座る。

 

私の苗字はま行。このクラスでは1番最後だ。

 

後ろに誰かいないだけ、今年はマシだろう。

 

この6年間で出席番号が一番最後になったのは今回が初めてだ。

 

この学園は全国の学園の中でもそこそこ多い生徒が通っている。

 

なので、私より後ろの苗字の人はまだまだいるということ。

 

「(学校、変えたいなあ…)」

 

でも変える手続きをしようにも、私には親がいない。

 

物心ついた頃には今住む保護施設にいた。

 

引き取り手が見つかれば、という願いも考えてしまう。

 

「(ないものねだり、だよね)」

 

 

 

 

 

入学式が始まった。

 

とか言っても、私にはなんとも思わない。

 

クラスメイトの方からは

 

「あれ、私の弟よ!」

 

「あ!親戚の子だ!!」

 

など、顔見知りや兄弟姉妹を言い合う光景。

 

私には兄も弟も姉も妹もいるか分からない。

 

親も知らないのに。

 

私が入学した時は祝ってくれる人なんていなかった

 

母親がいれば、あの女性のように自分を撮ってくれたのだろうか。

 

父親がいれば、あの男性のように自分の名前を呼んでくれたのだろうか。

 

「(私は、ずっと独りなんだ……)」

 

今日も良いことない。

 

 

 

 

 

HRが終われば学校にいる理由はない。

 

「(施設にいても暇だし、散歩しようかな)」

 

今日は特に多くの嫌な記憶を思い出した。

 

気晴らしにいいだろう。

 

「あー!また不用品持ってきてるー!」

 

「これ、宝石なんじゃね?」

 

「化け物の宝石とか、絶対いいものじゃないねー」

 

「割っちゃおーよ!」

 

「いいね!」

 

「賛成!!」

 

私の話をしているのだろうか。

 

「あんた、野球してるから遠くに投げられるでしょ?」

 

「目指すはあの森!!」

 

「おっしゃー!やってやるぜ!!」

 

そう言って、彼の投げるものは…

 

「わ、私の……!!」

 

私の大事な大事な宝物

 

不思議な石で持っていると安心する不思議な石。

 

「返して……!」

 

「なんだよ化け物。」

 

「返すも何も、持ってこなけりゃ良かったんだよ」

 

「そーそ!!」

 

私を味方する人などいないわけで。

 

石は学校の近くにそびえ立つ山に消えていった。

 

「あ、あぁっ……」

 

やっぱり、学校なんて嫌いだ。

 

人なんて、嫌いだ。

 

私で遊んで、何が楽しいんだ。

 

教えてよ、誰が。

 

誰が助けてよ、独りは嫌だよ。

 

「ぎゃははは!!」

 

「さいっこう!!」

 

「鞄とかも投げちゃう?」

 

「いいねいいね!!」

 

前はこんなにひどく無かったのに、いじめがエスカレートしている。

 

「や、やめてよ…!!」

 

「はあ?なんでやめなきゃならないの?」

 

「こんなに楽しいのに、やめられるわけないじゃーん!」

 

他にも投げられたら、困る以前の問題だ。

 

施設のいじめは幸いにも起きてはいないが、この鞄や教材は全て施設から出したお金で使えているものだ。

 

「お願いっ、やめ…」

 

「HR始めるわよー」

 

私には良いタイミング、ほかの人には最悪なタイミングで、このクラスの担任に配属された女性の教師が入ってくる。

 

ちなみに、今年からこの学校にきた新しい先生だ。

 

「先生、タイミング悪すぎー」

 

「先生KYだよー」

 

「なっ!?酷いわね!?でも、さっさと帰りたいでしょ?」

 

「まあ、そーだけど……」

 

運良く私の鞄は投げられずに済んだ。

 

しかし、私の大事な石はあの山に消えた。

 

普通の人なら諦めるだろう。

 

私は……

 

「(探しに行こう。今日は丁度散歩しようって思ってたんだし)」

 

HR終了の挨拶を終え、教室を一番に出た。

 

「あいつ、探しに行くつもりだぞ!」

 

「やっぱり馬鹿だねー!」

 

「あっははは!!」

 

後ろから私を馬鹿にする声が聞こえる。

 

「(私より、成績悪いくせに……)」

 

ここの学園を首席で入学した私。

 

今現在もこの学園の中で一番の成績実績をもっている。

 

この学園が頭の悪い人達が集まるところではない、むしろ逆だ。

 

試験内容も幼い私には難しい内容だったが、難なく答えられた。

 

「(少なくとも、いじめる人達より馬鹿じゃないから)」

 

いつもは反抗できないけど、心の中では反抗しても何も言われないよね。

 

 

 

 

 

学校の裏山。

 

噂では熊とか出る、と言われている。

 

正直、怖い。

 

熊に襲われたら一溜りもない。

 

「早く見つけて、帰ろう。」

 

学校の荷物を森の入口に置き、入る。

 

一通りは全くない、置いておいても誰も取らないだろう。

 

「よし、行こう!」

 

怖がる自分に喝を入れる。

 

大丈夫、見つかる。

 

根拠の無い自信が湧く。でも、何故か石の居場所がわかる気がした。

 

 

 

 

 

どれほど時間が経っただろうか。

 

森は静かだ。とても、静かだ。

 

意外と森の中は綺麗で、誰かが整備してるのではと疑う程。

 

「今度からここに来ようかな…」

 

施設に居たくない、ここは何故か独りでも落ち着く。

 

太陽の光が薄暗い森に照らされている。

 

その中でも一番太陽の光で照らされている場所で何かが光った。

 

「あっ!あった!!」

 

私が探していた石だ。

 

正直、日が暮れるだろうと思っていた。

 

「良かった〜…!」

 

まるで、友達の無事を喜ぶかのように。

 

石はヒビひとつなかった。幸いにも落ちた場所に生えていた雑草がクッションになっていたようだ。

 

「ありがとうっ」

 

返答なんてしない雑草にお礼を言う。

 

雑草が風に吹かれて揺れた。

 

もしかして、「どういたしまして」と言っているのかもしれない。

 

「ふふっ」

 

誰かと話している気がして、心地よかった。

 

「さてと、石は見つかったけど……帰り道が分からないなぁ」

 

いくら自然にしては綺麗に整われている森でも、景色は何処も同じようにしか見えない。

 

まるで、迷路のようだ。

 

「仕方ない、手探りで進もう」

 

まあ、帰りが遅くなっても誰も心配なんてされないから。

 

 

 

 

 

しばらく進むと、光がもれている。

 

「出口かも……!!」

 

やっと帰れるという喜びと、もう終わりか…と残念な気持ちになる。

 

少し、冒険チックで楽しかったのは秘密だ。

 

出口に向かって進む。

 

 

 

 

 

「あ、れ……?」

 

出口だと思って進み、出た場所は……

 

一言で言うと花だらけの場所だ。

 

花といっても、この花は……

 

「百合の…花?」

 

野生の百合の花は見たことないが、施設の花壇には何本か植えてある。

 

でも、この数はすごい。

 

辺り一面百合の花。

 

赤、黄色、桃、橙……カラフルだ。

 

でも、何故こんな森の中に……?

 

「森の中にある花園……」

 

誰か人がこの場所に暮らしていたのかもしれない。

 

先程、石を探している時に、古ぼけた小屋を見たので間違いないだろう。

 

「ちょっとだけ……見てもいいよね?」

 

好奇心には逆らえない。ちょっと見るだけだ。

 

この場所は森みたいに複雑な地形ではなく、平地だ。

 

それに、赤の百合の花で一塊、黄色の百合の花で一塊とやはり人が植えたのではないかと疑うほどに綺麗に植えられている。

 

花の管理も見たところ、毎日やっているような印象を受ける。

 

「やっぱり誰か人がここに来て管理してるのかも…?」

 

花を見ながら歩いていると、かなり奥まで進んだようだ。

 

先程の入口が視界に入らない。

 

「まだ明るいし、帰れるでしょ」

 

もう少し、探索してみることにした。

 

「あれ…?あそこだけ坂になってる」

 

少し坂になった場所に木が1本生えている。

 

とても、立派な木だ。学校の屋上から見たら見えるのではないかと思うほど高くて立派な木だ。見たところ、5、6メートル程。

 

「わあ…!大きい…!!」

 

首が痛い。それほど、背の高い木なのだ。

 

多少、自分の身長が低いのもあるが。

 

「あれ…?この百合の花……」

 

不思議な色だ。

 

白……と言いたいが、黒とも言える。

 

白がメインで黒が飾りと言えば良いだろうか。

 

うーん、我ながら説明が下手だ。

 

「不思議……でも、綺麗……」

 

ずっと眺めていられる色。眺めていると時間を忘れそうだ。

 

不思議な色の百合の花を眺めていたその時、レイナの背後から影が生まれた。

 

「えっ……?」

 

誰か、いる。

 

先程まで気配なんてなかったのに。

 

恐る恐る後ろを振り返る。

 

視界に入った者は───────

 

 

 

レイナにとって、この後の人生を変える人物。

 

そして、様々な出来事を生む始まりの日。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。