東方青春録   作:青木々 春

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急に更新が止まってしまって申し訳ありませんでした。受験ですハイ。

更新ペースはものすごく遅れます。



自己嫌悪

「八幡、入るわよ?」

 

「どうぞ…」

 

病室の扉の外から紫の声が聞こえる。外で待機していた幽々子様を連れて来たのだろう。

 

正直に言おう、今俺は物凄く怖い。

前まではこんな事なかった。昔からこういうのには慣れているつもりだった。

 

冤罪をかけられて虐められたり

 

物を隠されて虐められたり

 

単純に暴力で虐められたり

 

虐められてばっかりだな…あれ?涙出てきた。

 

…とにかくもう慣れていた。

でも今は違う。俺は奉仕部という本物に成り得る関係を持った。

 

 

『大切なものを作るってのはね?それと同時に自分を弱くするんだよ』

 

 

そんな様な台詞がどこかのアニメであった気がする。

そう、俺は奉仕部という大切な関係を作って“しまった”んだ。

 

昔の俺が見たらなんていうだろうか?

 

滑稽に思うだろうな。

本来群れずに孤高の存在を貫くボッチが、『一人になるのが怖い』と不安に煽られている。

 

だから俺は、確実に弱くなった…。

 

「八幡!怪我は大丈夫なの〜?」

 

幽々子様が心配した様子で病室に飛び込んでくる。

本当にこの人は優しい。幻想郷に来たあの時、俺の事を救ってくれたのは紛れもなくこの人だ。

 

俺はこの人のお陰で変われた。そう思っていた。いや、今もそう思っている。

 

「左腕が…そう、でも永琳なら治せるわよね…よかった…」

 

ただ同時に複雑なのだ。

俺はこんなにも簡単に、単純に変わってしまうのかと…。

 

妹の小町でも、戸塚でも俺は変わることはなかった。それは奉仕部(あのふたり)でも同じだ。

 

あの日、平塚先生に無理矢理入部させられた訳の分からない部活。

 

あそこでも俺は変わることはなかった………いや、元から変わるはずがないのだ。

 

なぜなら俺はぼっちだからだ。

 

ぼっちというのは、優位な立ち位置にいながらも不利な立ち位置にもいる。

リア充というものはカーストというものを組む。

 

 

ただぼっちはその何処にも属さない。故にクラス内政治に気を遣わず、いくらでも上位カーストを高みの…いや、低みの見物ができ、優位な位置に立てる。文化祭の相模の時のがいい例だ。ぼっちならいくらだって牙を剥くことができる。

 

 

ただここで忘れてはいけないのは、不利な立ち位置にもいるということだ。

つまりカーストに属さず、最底辺にいるぼっちは、常に周りから蔑まれ、疎まれる。

 

そう、認められることがないのだ。まぁ俺も認められたいとは思っていなかったが…。

 

「ルーミア…だったかしら?私たちと八幡は大事な話があるのよ。少し席を外してくれないかしら?」

 

「うん。分かったー!八幡、またねー!」

 

「あ、あぁ…」

 

ただ今はこうしているのが心地よいと思っている。誰かに認められたいと思ってしまっている。

 

だから自分勝手にも、俺は今までぼ自分が否定された様な気持ちになってしまう。だからこそ複雑なのだ。

 

 

こんなにも簡単に変わってしまった自分が嘘の様で

 

今までの関係や積み重ねが否定された様で

 

そんなことを考えるようになった自分にも嫌気が差して

 

 

不快だ。自分に対してここまで嫌悪感を示したのは初めてだった。

自分自身が全く見えない…全く分からない…。

 

幻想郷に来た時からあった自分を見失う様な不安が此処に来て大きくなってきやがった…。

そう、俺はぼっちだ、ぼっちだったんだ…いや、むしろ一匹狼とかカッコいい肩書きまで持っててもいいまである。

 

 

そんな俺が今は…

 

認められたくて、否定されたくなくて、勝手に否定された様な気分になって、

 

まるで子供の様に世界が色付いて見える。

いつから俺はこうなったんだ?変わってしまったんだ?

 

「八幡…幽々子も交えてさっきの話の続きをしましょうか…」

 

紫の一声で話の続きが始まる。

 

「さっきの質問の続きよ。あなたはなんで嘘をつくの?自分が嫌う欺瞞を続けるの?」

 

紫が聞いてくる。一方幽々子様は、心配そうにこちらを見つめている。

その視線が、今の俺にはとても痛かった。

 

んだよ…そんな目で見んなよ…。期待しちゃうだろうが。

 

そして欺瞞を使う理由は分かっている。ただ本音を言って失望されたくない。

自分の汚いところを隠す様に欺いて、穴を埋める。俺の嫌う欺瞞そのものだ。

 

ただ今、俺はその大嫌いな欺瞞を使っている。なんでだ…なんでだよ…。

 

腹が立つ。そんな自分に、とてつもなく腹が立つ

 

 

綺麗事を並べて言葉出すのは簡単だ。

ただこれ以上俺は俺を否定したくない。欺きたくない。

 

本音を口に出すのも簡単だ。

ただこれ以上二人に否定されたくない。失望されたくない。

 

だから俺の言葉はそのどちらでもない邪道を行く。

本音を混ぜた欺瞞を言葉にして、その言葉の凶器でまた傷つけるのだ。

 

「……るせぇよ…」

 

「…八幡?どうしたのかしら〜?」

 

いつもの様にまったりとした口調で幽々子様が聞いてくる。

ただ今はそれどころじゃない。

 

「うるせぇよ…」

 

自分でも驚く程低い声が出た。

幽々子様も紫も少しびっくりした様子でいる。

 

「迷惑なんだよ。そうやっていちいち構ってきて…。なんだ?俺の事を憐れんでいるのか?同情でもしてんのか?だったらやめろ。正直言って迷惑だ。お前らの気持ち悪い偽善に付き合わせんな。不愉快だ。」

 

そうだ…俺はこんな奴だった。やはり自分で自分を見失っていた。

 

今の俺はどんな表情をしている?

きっとクズに磨きがかかった様な顔をしている事だろう。

 

 

────あぁ、そうだ。俺は結局変わってなかった。“進歩していなかった”んだな…

 

 

そう、何も変わっちゃいなかった。

俺はこんなやり方しか出来ない、ただのぼっちの高校生だ。

 

だからもう恐怖は無い。失望して離れて行ってくれ。

もう否定されるのはたくさんだ。だから俺から否定してやった。

 

さぁ、存分に非難してくれ…。

 

「「……………」」

 

そのはずなのに……

 

「ふふふっ…あらあら…」

「ふふふふ…」

 

なんでお前らは笑ってんだよ…

なんだ?嘲笑してんのか?生憎だが俺は笑われるのはもう慣れてんだよ。

 

「なんで笑ってんすか…」

 

「いえ、違うのよ〜?ただ…嬉しくって〜」

 

「そうね…少しはいい方に変わってるんじゃない?」

 

嬉しい?変わってる?訳がわからん…。

ただこちらにもまだ策はある。いつも通りの最低な策が。

 

「はぁ…まあいいです。それと幽々子様…」

 

「ん〜?何かしら〜?」

 

さっきも言ったが、これは最低な策だ。でもやるしかない。

それしか道は残されていない。

 

「あなたはいい人すぎますよね…」

 

「…?どういうこと〜?」

 

幽々子様が聞き返してきたところで、俺の顔は歪んだ笑顔を作る。

 

「ま、そのおかげで同情を誘って住居を手に入れられましたけど」

 

その歪んだ笑顔のまま幽々子様の目を見て吐き出す。

ヘドロの様に汚い、それでいて尖った言葉を…

 

「……え?」

 

その瞬間幽々子様の目には光が宿っていなかった。

 

これでいい。これでようやく楽になれる…。

さぁ、今度こそ否定しろ。失望しろ。離れて行け…。

 

「八幡…あなた…」

 

紫がこちらを物凄い殺気を出しながら睨んでくる。

そして殺気を出した紫は、強者というに相応しい雰囲気をしていた。

なんだこれ…年甲斐もなくチビりそうなぐらい怖ぇ…。

 

ただ紫は幽々子様の事を本当に大事に想っているのだろう。

いくら下らない嘘だとか、俺のやり方を知っていても、大切な友人が侮辱されたらどう思う?

 

答えは…

 

「いくらあなたでもそれは許せないわ…」

 

こうなるだ。

 

「お、落ち着いて紫!私は大丈夫だから…!少し驚いただけよ〜!」

 

「そんな表情をしながら言っても説得力がないわよ…」

 

さっきより生気の無い様な表情をしている幽々子様を見ると心が痛む。

いや、生気が無いのは幽霊だから当たり前か…?………今はそんな事言っている場合じゃないな。

 

これは俺の為であって、本能的な自己防衛手段でもある。なんならハチマンっていう新しい動物が登録されても良いレベル。

 

「お、落ち着いて〜。ね、一度頭を冷やしましょ?」

 

「ふぅ…そうね、少し取り乱したわ。」

 

らしくもなく取り乱している紫を幽々子様がなだめる。

 

ただこれで終わりとなると少し寂しいところもあるな…。

ほんの数ヶ月の間だったがこの二人は…いや、妖忌さんや妖夢。慧音さんもだ。ここで出会った人達は俺の本質を見ようとしてくれた。

 

それも偽善なのか欺瞞なのかもう分からないが、もしそれが偽物だったとしても、そのぬるま湯が心地よく感じてしまった。

 

きっとこの後二人は俺のことを否定するだろう。失望するだろう。

 

ただ今の本当の俺を見たらもっと失望するだろう。

 

それなら俺から否定する。

もうこれ以上偽物を作らないように…

 

「八幡…」

 

幽々子様と紫が近づいてくる。

 

虚言が嫌いな紫は俺に心底失望しただろう。

 

優しすぎる幽々子様は胸が痛かっただろう。

 

だから俺が終わらせる。いつものやり方で。いつもの様に。

俺が一番嫌う、欺瞞というやり方で…。

 

「何か勘違いしてないかしら〜?」

 

…………はい?

 

いつもの様にまったりとした口調で言った、幽々子様の言葉の意味が理解出来なかった。

勘違い?特にそんな覚えはないが…

 

強いて言うなら中学時代の折本の時の勘違いぐらいしか…。うっ、頭が。

 

「何の事だって顔をしてるわね。幽々子はあなたが私たちを誰かと勘違いしてるって言いたいのよ……最も私もそう思っているけど…」

 

今度は紫が口を開く。

誰かと?誰かって誰だよ。ぼっちだから誰かと勘違いする程知り合いいねーよ。

 

「そうね、はっきり言うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は雪ノ下雪乃じゃないわよ?」

 

は?何言ってんだ?そんなの当たり前だろ?

紫は紫だ。八雲紫だ。そんなもん猿でも分かる。

 

「私は虚言も言うし、嘘も吐くわよ」

 

は?いやいや、俺の知っている八雲紫は……………あれ…?

紫が虚言を吐かない?そんなこと聞いたこともない。

 

じゃあ誰だ?そうだ…雪ノ下だ…。

 

俺以上に偽物を嫌って、本当は小さくて弱い…そして強い雪ノ下雪乃だ。

いや、これも俺のこじつけや押し付けかも知れないが…。

 

「ついでに言っとくけど、幽々子もね」

 

分かってる…分かってるはずだ…。

分かっているはずなのに頭が混乱する。

 

俺はこんな大きな勘違いをしていたのか……?

場所が変わって、環境が変わって、関係が変わっても結局こうなるのか…。

 

勝手に理想を押し付けて、勝手に失望する。

ただ失望されるのは怖くて、俺は現実から目を背ける。そう、ただの甘えだ…。

 

「それに、幽々子はそこまで優しくないわね。」

 

「友人にそんな言い草…酷いわ〜」

 

「ふふふっ、冗談よ。」

 

俺が熟考している間も二人は楽しそうに談笑している。

紫や幽々子様を奉仕部と重ねていた事には問題はない。一番の問題は、偽善、欺瞞、優しさ。全ての俺の理想を押し付けていたことだ。

 

八雲紫は嘘をつかない。

 

西行寺幽々子は誰よりも優しい。

 

一体そんなこと誰がいつ言っただろうか…。

否、誰も言っていない。

 

「さて、八幡。」

 

「〜〜っ!」

 

いつも通りの筈の幽々子様の声が、やけに冷たく感じ、大げさに反応してしまう。

 

「あなたは、どうしたいのかしら〜?」

 

「俺は…」

 

言葉に詰まる。

俺はここで過ごせば何か変わると期待していたのかもしれない。

またやり直せると思っていたのかもしれない。

 

だからこそ、

 

虚言は吐かない雪ノ下雪乃。

優しすぎる由比ヶ浜結衣。

 

その二人の面影を、関係のないこの二人に押し付けてしまっていたのかもしれない…。

 

「はぁ…どうやら頭を冷やすのはあなたの方だったようね」

 

紫の口から出た言葉は、やけに鋭く俺の胸に突き刺さった。

 

結局失望されちまったな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦失敗かしら?」

 

「八意さん…」

 

幽々子様と紫が病室を出て1分経ったか経ってないかというところで、八意さんが病室に入ってくる。

 

「なんのことですかね…」

 

「別に隠さなくていいのよ。あなたとは初対面だけど、よく幽々子や紫に聞くもの。あなたの事は」

 

なに勝手に話してるんですかねぇ…まさか個人情報とかまで流されちゃったりするの?

それで教えてない筈なのに何故かみんな俺の家知ってて、ポストに泥詰められたりしちゃうの?

あの後理不尽に俺だけが親父に怒られたんだよな…親父絶対許さん。

 

「別に心配しなくても個人情報とかまでは知らないわよ」

 

なんかナチュラルに心読まれたんだが…

 

「それで?これからどうするの?」

 

「そうですね…」

 

頭を冷やせと言われた手前、しれっと白玉楼に戻るわけにもいかない。

適当に人里をぶらつきますかね…。

 

でも…何もしなくていいのか?

いい訳ないよなぁ〜…。

 

「大事なのは、幽々子や紫への罪悪感じゃない…あなたがこれからどうしたいかよ。幽々子も言っていたでしょう?」

 

八意さんが腕を伸ばし、頭を撫でてくる。

別に魔法や妖力とかを使ったわけじゃないだろう。だが、心が落ち着きどこか安らぐ。

 

「あなたは…どうしたいの?」

 

暖かく、優しい声が耳元で響く。

 

俺はどうしたいか…

それはきっとまだ見つかってない。

ただ漠然と、朧げとなら分かる。

 

ずっとずっと欲していたもの。

 

ある時はあの奉仕部に求め、ある時は幽々子様に求めた。

 

ただ今までの俺はただのワガママだったのかもしれない。

綺麗事の様な関係を築くなら誰でも良くて、そのくせして奉仕部を引きずって。

 

 

見定めよう、今度こそ。

 

 

俺が何をしたいのか。誰と作りたいのか。

きっとそれは重要なことの気がするから。

 

押し付けやこじつけ。こればかりは自分を客観的に見れなければ、治らないかもしれない。

それでも俺は、無理だと分かっていても偽善も欺瞞もない。嘘をついたとしても、自分を欺くことがない。

 

そんな関係が、そんな幻想の様な関係が…

 

「俺は…やっぱり…」

 

 

 

────本物が欲しい

 

 




受験の為しばらく更新ペースが遅れます。
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