誤字脱字や文の作りがめちゃくちゃかもしれないです。
肌がヒリヒリする様な寒さ。パラパラと降る雪は、俺の肌に落ち、やがて熱で消えてゆく。
永遠亭を出た後の俺は、人里で団子を食べながら遠くを見つめていた。
あいにく今日の天気は雪で、絶好の異変解決日和とはいかない。
と言っても別に今日異変を解決しようとしたわけでもなく、なるべく早く解決策を練らないといけないと考えていただけだ。
バカルテットの異変解決の手伝いをするといっておきながらも、あいつらは流石に連れていけないだろう。
あいつらには悪いが、危険に晒すわけにはいかないからな。
ただ俺が異変を解決できるわけでもなく………
「さて、どうするか…」
誰かに頼るってのもありだが、手伝ってくれるかどうか…。
慧音さんならワンチャンと思ったが、今バカルテットは慧音さんのもとにいる。
聞いたところ異変を解決すると息巻いているところを、慧音さんに止められているらしい。
つまり今は慧音さんの協力を仰ぐ事は出来ないという訳だ。
なら射命丸さんとかか?でもあの人どこに居るのか知らないしな…取材をするだけして、手伝ってくれるとも限らない。
妖忌さんはどうだ?いや、今は個人的な理由で白玉楼には戻りたくないな…。
ならば…
「やっぱり八幡だぁ!」
そうやって手伝ってくれそうな候補を頭の中で探し出しているうちに、どこからか子供っぽい声が聞こえてくる。
声色的には女性だろう。そしてその声の主ははっきりと俺の名を呼んだ。誰だ?
幼女に知り合いはバカルテットぐらいしか居ない。
妖夢もギリギリ幼女に含まれる可能性もあるが、彼女を示すには、少女という言葉が一番適切だ。
その声の主の想像がつかなくなったところで、声のした方向に振り向く。
──ドスン
振り向いた瞬間、鈍い音が俺の腹から聞こえてくる。声を出す暇もなく、俺は体のバランスを崩される。
謎の黒い物体が俺の腹に飛び込んできたのだ。その謎の黒い物体とは、お察しの通り先程の声の主。
幼女が飛び込んでくるなんて、なんて羨ましいんだ!と思う人も居るだろうが、そんな事を考えられる余裕はなかった。
なんとその幼女は、プロ野球選手の投げたボール並みのスピードで突っ込んで来たのだ。
おまけにその幼女にはツノが生えていた。そう、サイやシカなどに生えているあのツノだ。
別にツノが生えている事に驚きは無い。ここ幻想郷じゃ、ツノが生えている妖怪が居てもおかしくないだろう。
いや、実際ツノの生えた妖怪は結構の数居る。
ただ、今回の話は別だ。ツノの生えた幼女が、物凄いスピードで頭から突進してきたんだぞ?
俺の頭の中にはたった二文字の言葉が浮かんでいた。
──死ぬ
本当にまずい。一瞬走馬灯の様なものが見えるぐらいまずい。
その走馬灯を説明するならそう…
幽々子様がご飯を食べていたり…
小町がカマクラと戯れていたり…
幽々子様がご飯を食べていたり…
妖夢が妖忌さんと稽古をしていたり…
幽々子様がご飯を食べていたり…
紫が扇子を片手に笑っていたり…
幽々子様がご飯を食べていたり…
「………ガッ!?」
そのまま俺は地面に倒れた。その時に頭をぶつけた衝撃で、ようやく走馬灯の様なものが消える。
というか俺の走馬灯はあんなのでいいのか…?
「八幡、久しぶりー!八幡の妖力を感じて、こっそり地上に飛び出して来ちゃった!」
一方その声の主は呑気に俺の腹に顔を埋めていた。こいつ…俺の気も知らずに…。
ところで、なんだか俺のことを知っている様だが、残念ながら俺はこの幼女を知らない。
改めて容姿を見直しても全然面識がない気がする。
見た目は幼女。ただその体に見合わないほどの大きいツノ。ツノは二本生えていて、横に大きく伸びている。
これが縦に長いツノだったのなら、俺は今頃串刺しにされているだろう。
他に気になるところと言えば…腰につい付いているひょうたんだ。蓋が緩いのか、さっきから少しづつ水の様な液体が溢れている。
ただ、あれは水では無い、さっきから酒の独特な匂いがこの幼女から香ってくる。つまりはこれは酒か…。
幻想郷はこんな幼女でも酒を飲めるんだな…法律どこ行った…。
「もう仕事はいいのか?八幡」
「ん、えぇっと…?」
仕事?白玉楼のことを言っているのか?でもこいつとは面識ないはずだけどな………まてよ…?
『あなたは幻想郷に来たことがあるわ』
不意に紫の言葉を思い出す。この幼女も、俺が幻想郷に来た時に知り合った妖怪なのだろうか…。
いや、ほぼ確定でそうだ。ならば俺が幻想郷に居た時の事を教えてくれるかもしれない。
何か理由があって紫は言いにくいみたいだが、それでもやっぱり気になるものは気になる。
俺は幻想郷に居た事を全く覚えていない。本当に幻想郷に来た事があるのかを疑ってしまう程。
それでも俺が妖怪だったり、この幼女の様に面識のないはずの人に一方的に知られていたり…。
「なぁ、ちょっといいか?」
ただの好奇心だ。自分の事を知りたいと思うのはごく自然な事だと思うし、当たり前のことだ。
だから俺はこの幼女に話を聞くことにした。
それがまた厄介を呼ぶのだが………
〜〜〜
「えぇ!?覚えてない!?」
「あ、あぁ」
なかなかのオーバーリアクションで少し驚いたが、それほど親しい仲だったのか…?
人里から少し離れて山の中。今は生い茂る草花に隠れ、消えかけた山の道をゆっくりと幼女と歩いている。
あまり人里で妖怪は歓迎されないからな、あそこじゃ落ち着いて話せない。それに、伊吹は人里に居ると、なにかと都合が悪いらしい。
ちなみにこの幼女は、『伊吹萃香』というらしい。
種族は『鬼』。
鬼は結構な酒飲みらしく、伊吹もその例に漏れず酒飲みらしい。今日はまだ飲んでないとか。どうでもいいですねわかります。
そして今は丁度、幼女改め伊吹に、幻想郷に居た時の事を覚えていない話をしているところだ。
「紫のことも幽々子のことも!?」
紫も初対面の頃に、俺のことを知ったような感じだったことから、きっと紫もその時に面識があるのだろう。まだ話せないと言っていたが…。
一つ分かった事といえば、この伊吹の反応を見るに、俺が幻想郷に居たという事がほぼ確定したという事だ。
ただ、同時に気になることも一つ増えた。
「紫はそうだが…幽々子様もなにか関係があんのか?」
伊吹は先程幽々子様の名前も出した。幽々子様とは、俺が修学旅行の後に幻想郷に来た時が初対面だと思うが…。
幽々子様も俺を知っているような様子はなかった。幽々子様と面識があったというのは考えにくい。
「え?あぁいや、なんでもないなんでもない!そんな事より…」
はぐらかす様に話をずらそうとする萃香に、疑いの目を向ける。
その視線に気づいたのか、伊吹は気まずそうに目を逸らす。
おい、これ絶対なんかある奴じゃねぇか…。
「そんな事より!何か聞きたい事があるなら、あたしが出来る限り答えるぞ!」
ここで先程の幽々子様のことを聞けばいいのだが、流石にそれは意地悪が過ぎるな…。
「…んじゃあ、俺はなんの妖怪なんだ?」
気になっていた素朴な疑問をぶつける。
幻想郷に来てもう2ヶ月ぐらい経つが、まだ俺は自分の妖怪の種族を把握していなかった。
なんなら自分が妖怪という事に確証が持ててないぐらいだ。
「八幡は八咫烏だ。幻想郷でも指折りの実力者だったな。ま、私にはぜ〜んぜん敵わないけどなー!」
「さいで…」
なんだか失礼なことを言われたが…。
それにしても八咫烏か…どれだけ俺は八という数字に縁があるのだろうか…もはや呪いのレベルまである。
八咫烏というと、一番に思い浮かぶのは、太陽の化身という事だろう。
俺が太陽の化身か……ないな。
八咫烏は導きの神とも言われていた様な気もする。
俺が導きの神か………もっとないな。むしろ俺が導いて欲しい。
中二の時に知った知識を必死に絞り出していたが、もうこれまでだ。
俺が八咫烏について知っていることといえば、太陽の化身であることと、導きの神であるということ。そして、足が三本あるということぐらいしか知らない。
自分がなんの妖怪なのかを知れば、なにか思い出すかと思ったが、そんなに役に立ちそうな情報じゃなかったな…。
「それで、能力は…」
「あぁ………いや、待て。能力ってなんだ…?」
能力
萃香の口から出た聞き慣れない言葉に、思わず質問してしまう。
紫のスキマや、バカルテットが出していた弾幕の様なもの。この幻想郷には妖怪や妖精という存在以外にも、不可思議なものが存在している事は知っている。だとしたら、それらを能力と言うのだろうか。
だったら納得がいく。
紫のスキマも、バカルテットの弾幕の様なものも、所謂典型的な『能力』だ。ワープをしたり、光の弾をぶつけたり。
「あー、そっか…幻想郷では、大体の人や妖怪達は能力を持ってるのよ。もちろん八幡も」
「紫のスキマみたいなものか?」
「そう!紫でいうなら、『境界を操る程度の能力』」
境界を操る程度の能力か…。そういえば幽々子様が、幻想郷は結界により切り離された世界と言っていた気がする。
その能力は幻想郷設立と、何か大きな関係があるのかもな………まぁ俺が考えても仕方のないことだが。
境界といっても、なんの境界なんだろうか。もし、境界と名のつくものなら、なんでも操れるとなると…考えるだけで恐ろしいな…。
「そんで…俺の能力は?」
そんな恐ろしい能力が、俺にもあるかもしれない。そう考えると、厨二心がくすぐられる。
いや、よく妄想しただろ?強大な能力が抑えられなくなって右腕が…!とか。
それに、決して簡単に踏み入っていいものじゃないのだろうが、やはり自分のことなら出来る限りの事は知っていたい。
「『”かんかく“を操る程度の能力』」
躊躇うことなく萃香の口から出たのは、一度聞いただけでは理解しにくい能力だった。
「程度」というのも少し気になるところだが、今はいいだろ。
「かん…かく?」
「そう、八幡の能力は、かんかくを操れる能力だ」
かんかく
かんかくを操る能力。
何故だろう、何故か馴染むその言葉。いや、一度幻想郷に来た事があるのだから、体がその言葉を覚えているのかもしれない。
自転車の漕ぎ方やプールでの泳ぎ方は一度覚えれば忘れないと良く言うものだ。
生き物というのは、何かを繰り返しやれば体で覚えてしまうもの、それはまるで本能の様に…。
ただ、”かんかく“を操ると言われてもすぐにはピンとこないものだ。
感覚なのか…間隔なのか…もしくは、俺が知らないだけでもっと”かんかく“という言葉があるかもしれない。
「なぁ、それってどんな能力なんだ?」
自分だけでの考察では、能力を把握することが難しかったので、すぐに能力の意味を聞いてしまう。
「分からないよ?」
ただ、伊吹から当然の様に出たのは、頼りない言葉だった。
その言葉につい、ポカンと間抜けな表情を浮かべてしまい
「……え?」
間抜けな声も出ていた。
「いや〜、恥ずかしながら覚えてないんだよな〜、これが」
それでも自分の能力が知れたのはデカイ。
これならあの刀をどうにか出来る可能性も上がった訳だし、自分のことを知れたというのは、単純にいい収穫だ。
これで能力の詳細まで知れたら、もっとよかったんだけどな…今はそんなわがままを言っている場合でもあるまい。
「でも、なんだかワープみたいな事してた様な…」
ワープ。
なんとなく伊吹の口から出た言葉は、結構重要なものだった。
そして、なんとなく能力の想像がついた。なんとなく想像がついた。きっと“間隔”を操る能力だ。
側から見ればワープに見えるが、ただその物と物の間隔を操って、あたかもワープしたように見せただけ…この可能性が一番高い。
もしそうなら、なかなか分かりやすくていい能力だ。だがこれをうまく活用出来るかは別だがな。
「なるほどな…」
「ほかに聞きたい事は?」
「いや、特にもう……あー、ひとつだけ」
聞きたい事は沢山あるが、さすがに全てを聞く訳にもいかない。そうすればきっと日が暮れてしまう。
それに、この伊吹萃香という人物が頼り甲斐のある人物かと聞かれたら、俺は言葉を濁すだろう。出会ってまだ数分しか経っていない訳だが、なんとなく察した。
先程の能力のくだり。そう、あの豪快な性格だ。良く言えば豪快で鈍感だが、悪く言ってしまえば確定性が無い。それは勿論情報も例外ではない。
ただ一つだけ、一つだけ聞きたいことがある。
「ん?なんでも聞いてくれよー」
「能力ってどう使うんだ?」
どう使うか以前に、使い方が分からなければ元も子もない。
他の程度の能力とやらによって、能力を使う感覚が違うのなら聞いても無駄だが、聞いておいて損はない。
その先にまた『活用』という新たな問題が出てくるのだが…。
「へ?能力の使い方?“感覚”に決まってるだろ!か・ん・か・く!」
………こいつに聞いた俺が馬鹿でした。
「あー…わかった。感覚な…」
曖昧な答えを返して、場を濁す。
鬼ってのは本当に豪快な種族なんだな…。種族で性格や気性が決まってしまうなんて、どこか皮肉な話だがな。
いや、もしかしたら俺がぼっちなのも、八咫烏という種族だからなのかもしれん。だとしたら俺は悪くないな。種族が悪い。
「さて…質問も終わったし、私はそろそろ帰らないと」
「あ?帰る…?」
「そ、地底に!」
え、なに?鬼って地底人なの?というか地底とか本当にあったのか…。
「これ以上ここに居て、人間に見つかるのはまずいからな〜」
なんだか訳ありみたいで…。
それにしても幻想郷に地底なるものが存在したとはな、世の中は広いというのはまさにこの事だろう。
まだまだ全く知らないことがありそうだ…。
「んじゃ!さっさと記憶取り戻して、一緒にお酒飲もうね〜!」
「お、おう…」
すごいスピードで走って行く伊吹を送り、ため息をつく。まるで嵐の様な奴だったな…。
自分の事を知れたのはいいが、少し気疲れしてしまう。
あっという間に伊吹は見えなくなり森に一人取り残される。変な奴だったが、悪い奴では無い気がするな…伊吹萃香。
俺の知らないことが沢山あるこの幻想郷で、俺の知らない俺を知っている人が二人も居る。なんだか記憶喪失になったようで、変な気分だ。いや、実際に記憶を失っているらしいから、記憶喪失と言っても差し支えないが…。
それでも外の世界で今まで生きて来た記憶はあるわけだから、それ以上に奇妙だ。
さて…結局能力の使い方なんて都合のいいことは聞き出せず、あの刀への対抗手段は未だ無いままだ。
やはり誰かに頼るのが得策か…。
「ん、靴紐が…」
なんとなく、意味もなく下を見て、靴の紐が解けているのに気付く。外で使っていたスポーツに適した紐靴だ。
幻想郷に来たばかりの時は、服や靴がなかったので、白玉楼にあった和服や下駄を履いていたが、やっぱり外で着ていた服や靴の方が勿論着心地が良くて、外で着ていた衣服を使っている。
ただ、幻想郷に来て歩く機会が増えたからなのか、最近良く靴紐が解ける気がする。
俺は体制を低くし、靴を結び直そうとする。
──ビュンッ
……なんだ?今の音は…。
いや、聞き慣れた音でもある。何か鋭い物が空気を斬る音。そう、妖忌さんが真剣で稽古をしている時に良く聞く音だ。
ただ問題なのは、なんでその音がこんな山の中でするのかという事だ。
そこで、俺の頭から何かがハラハラと落ちてくる。これは………
「髪の毛…?」
あぁ、そうか。なるほど。
少し遅れて俺の横から、ミシミシッと木が倒れる音が聞こえる。
この髪の毛はきっと俺の髪の毛だ。さっきの空気を斬る音は、俺の頭を掠めていった斬撃音。
つまり俺は靴紐を結ぼうとかがんだら、“偶然”避けられたという事だ。
その避けた斬撃はどこへ行くかというと、俺の横にある沢山の木々達だ。だから木が倒れた。
そしてその斬撃音の正体。それは…
「………………」
なんとも言えない、異様な存在感を放つその『刀』。
そう、バカルテットと行った洞窟に居た、俺の左腕を切り落とした、大妖精の意識を奪った……あの刀だ。
黒い瘴気を纏い、刀だというのに殺気を放っている様にも感じる。
「おいおい…嘘だろ…」
嗚呼、助けてください神様仏様小町様!
別にあの刀があの洞窟から出ないなんて誰も言ってない。ただ、ゲームとかだとボスはダンジョンにとどまっているものだ。
だから無意識的に刀は、ずっと洞窟に居るものだと信じていた。
こんなところでエンカウントとは…レベル1の村人が、ただの白玉楼の従者が、どうやってこの危機に対応すればいいのか…。
こんなことなら伊吹に能力の使い方を多少でも聞いておくんだった…。
もしかしたら紫が居るかも知れない、なんて淡い希望にすがりたいが、あいつが見ていたとしても最後までは助けてもらえないだろう。
じゃあどうするか………。
逃げる以外ないだろ。
「くそッ…」
俺は全速力で駆け出した。当てもなく、とにかくあの刀から逃げるため…。
萃香と八幡は面識がありますが、紫の様に対等には見られてません。
何度も言いますが、受験のため更新は遅れます。