MACROSS-A.D.2048-   作:eisyama

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 新型スナイパーライフルを導入したフォルト。
 狙撃任務を任されたフォルトの胸中は?


第10話スナイプ・スナイパー

 その日、フォルトは朝からワクワクしながら哨戒任務に就いていた。

 

『どうしたフォルト? 朝からニタニタして』

 

 その様子に気づいたアーサーが通信を入れる。

 

『今日は注文した荷物が届くのさ』

 

 フォルトは、更に嬉しそうな笑みをアーサーに見せる。

 

 フォルト達が哨戒任務に就いている最中、1隻の大型輸送船が惑星ローグ付近にフォールドアウトする。

 

「おお、あれか?」

 

 大型輸送船を視界に捉えたフォルトは、大型輸送船の行く末を目で追う。

 フォルトの予想通り大型輸送船は、そのまま惑星ローグ内に大気圏突入を開始する。

 

『なあ、アーサー、ポール。今日の哨戒任務はこれくらいにしないか?』

 

 大型輸送船が気になるフォルトは、二人に通信を入れる。

 

『勝手に終わっちゃって良いのかなぁ?』

 

 フォルトの通信にポールは、まだ哨戒任務を始めて10分しか経っていない状態で任務を終える事に不安を見せる。

 

『大丈夫大丈夫。僚機の機体に異常が起きたから帰還するって事にしておくから』

 

 ポールの不安をよそにフォルトは楽天的に応える。

 

『フォルト、後で俺とポールを巻き込むなよ』

 

『わかったわかった』

 

 アーサーの苦言を右から左に流してフォルトはブラックバルチャー基地へ通信を入れる。

 

『バルチャー7からブラックバルチャー基地』

 

『はい、こちらブリッジ』

 

 フォルトの通信にアイナが応答する。

 

『悪い、僚機の機体に異常が見つかったから、これより任務を終えて帰投する』

 

『? 誰か調子でも悪いの? モニタリングには機体の異常は特に見当たらないけど?』

 

 アイナは、モニターに表示される機体情報を見ながら返答をする。

 アイナの返答を聞いてフォルトは、表情を引きつらせる。

 

『あ、ああ……ちょっとポールの機体の調子がな』

 

 アイナと通信をしつつフォルトは、必死にポールにアイコンタクトを送る。

 

『あ、ああ……ま、まあ……何だかセンサー系とかその他諸々がおかしいんだ』

 

 フォルトのアイコンタクトにポールは、しどろもどろしながら応える。

 

『了解。じゃあ、隊長には私から伝えておくわね』

 

『お、おう、よろしく』

 

 通信を終えたフォルトは嘘がバレなかった事に安堵の表情を見せる。

 

『ふぅ……危うくバレるかと思ったぜ』

 

『フォルト、本当に大丈夫なのか?』

 

 三人のやりとりを見ていたアーサーは、怪訝そうな表情をしていた。

 

『は、ハハハ……』

 

 アーサーの表情にフォルトは、ただ苦笑いをするのみだった。

 

 フォルト達が帰還すると、既に大型輸送船は基地に到着しており、作業用デストロイド達が荷物の運搬作業を始めていた。

 基地に帰還すると同時にフォルトは、一目散に大型輸送船に向かい、運び込まれる荷物をキョロキョロと探し始める。

 

「フォルトさん、注文していた品物ならこっちですよ」

 

「おう、そっちか」

 

 荷物を探すフォルトを見掛けたミランは、荷物の場所を案内する。

 大型輸送船から運ばれてきた物資の中に一際目立つ大きな資材があった。

 

「中身を開けてくれ」

 

 ミランの指示で作業用デストロイドは、その大きな資材の梱包物を解く。

 解かれた梱包物の中からは、大型の銃が顔を覗かせた。

 

「うお……やっぱり、でっけぇなぁ」

 

 フォルトは大型の銃を見て、改めて梱包物の大きさに圧倒されていた。

 

「俺も実物を見るのは初めてですが、本当に凄い物を注文しましたね」

 

 ミランもフォルト同様に圧倒されていた。

 

「やあ、フォルト」

 

 運搬作業の様子を見に来ていたカイルがフォルトに声を掛ける。

 

「よお」

 

「へぇ、コレがフォルトの言ってた……」

 

 カイルは、まじまじと巨大な銃を見る。

 

「大きいなぁ……」

 

 フォルトやミランと同様にカイルも銃の大きさに圧倒されていた。

 

「だろ? 結構な値段だったんだけど、曰くつきと言う事で俺の給料3ヶ月分くらいの値段に値切って貰ったんだぜ」

 

 腕組みをしながらフォルトは、カイルに自慢げに話しながら銃の方に視線を向ける。

 

「曰くつき?」

 

「ああ、今回の銃は実弾式とビーム式と切り替えられるタイプなんだけど、ビーム出力時の調整が色々と難しいらしくて、失敗したらジェネレーターが暴走して、ドカーンらしいのさ」

 

「へえ……それはまた」

 

 脳天気に話すフォルトにカイルは、他人事ながら心配になっていた。

 

「ああ~、早くコイツを試し撃ちしたいなぁ~♪」

 

 新たな銃を手に入れたフォルトは、早く試し撃ちをしたい気持ちが高ぶり、銃を撃つ仕草をする。

 

「これからすぐにコイツを撃つのかい?」

 

「いや、曰くつきだから、ちょっとばかし機体の改造が必要なのさ。だからミラン達に協力して貰って色々と調整しなきゃいけないんだよ」

 

「そうなんだ」

 

「フォルトさん、そろそろ改修作業を始めますか?」

 

 運搬作業を終えて様子を見に来たミランがフォルトに声を掛ける。

 

「ああ、そろそろやるかな。じゃあな、カイル」

 

「ああ、またな」

 

 カイルと別れて、フォルトはミランと合流して格納庫へと向かう。

 

「どうだ、ミラン」

 

 ミランは、銃の仕様書を隅々まで読み始める。

 時折VF-11の仕様書も読みつつ、交互に銃の仕様書も読んでいく。

 しかし、その表情は段々と険しくなっている。

 

「うーん……このタイプですと、VF-11では出力がかなり不足してますね」

 

 険しい表情で仕様書を読みながらミランは答える。

 

「え、マジで!?」

 

「ええ。そもそもフォルトさん、この銃を仕入れる前に諸元を読まれましたか?」

 

「い、いや……その、なんていうか。曰くつきだけど安かったから、その勢いで仕入れちゃって」

 

 非番の日に新しい銃を新調しようとネットワーク関係で調べていたら、たまたま安い銃を見つけたフォルトは、何も考えずに値段の安さの勢いに任せて購入した様である。

 

「はあ……」

 

 フォルトの思いつきの行動にミランは、思わず深い溜息を吐く。

 

「何とかならないかな?」

 

 フォルトは、ミランの肩を揉みながら掛け合う。

 

「うーん……じゃあ、かなりの時間を費やしますけど、VF-11のジェネレーター交換と電子系統の改修ならびに頭部のセンサー系も改良しましょう」

 

「すまないな」

 

「その代わり、暇な時でもいいんで、みんなに美味しい物を腹いっぱい食べさせてあげてください」

 

 ミランは、フォルトの謝罪に笑顔で応える。

 

「わかった。それは約束する」

 

「みんな、集まってくれ」

 

 ミランは、作業中のメカニックマンを全員集めて作業工程を説明し始める。

 こうして、フォルト機の大掛かりな改修作業が始まった。

 

 VF-11のジェネレーターを大型タイプへ交換し、かつ頭部センサーの改良ならびにコクピット部の改修作業等、かならい大掛かりだった。

 

「フォルト」

 

 作業開始から2時間が経過した頃、大きめの紙袋を持ってカイルが格納庫にやって来る。

 

「カイル」

 

「差し入れ持って来たよ」

 

 カイルは、持っている紙袋をフォルトに見せる。

 

「ああ、サンキューな。じゃあ、一息入れるか」

 

「そうですね。みんな、休憩に入ろう」

 

 一旦作業を止めて、フォルト達は休憩に入る。

 

「調子はどうだい?」

 

「んー……まあ、順調って感じかな? なあ、ミラン」

 

 フォルトは、ハンバーガーを頬張りながら話す。

 

「そうですね。でも、まだ電子系統の調整が残っているんですよね」

 

 ミランは、ホットドッグをかじりながら仕様書に目を通す。

 

「そうかぁ……それよりも、メイアちゃんまで大変だろう」

 

 ジュースを飲みながらカイルは、メイアの方を見る。

 メカニックマンで最年少かつ女性であるメイアは、他のメカニックマンと共に大掛かりな作業を手伝っている為、カイルは内心心配していた。

 

「お兄ちゃん達が頑張ってるのに、自分だけ休めないですよ」

 

 メイアは、ポテトを摘んで口へと運びながら話す。

 

「お兄ちゃん思いだねぇ……でも、メイアちゃんは女の子なんだから無理はよくないよ。メイアちゃんの分は俺達でやるからな。なあ?」

 

 ナゲットを頬張るモヒカン頭のエドの言葉に、おかっぱ頭のロルフとタラコ唇のジョンは笑顔で頷く。

 

 エド達三人は、元々ミラン達と共にメカニックマンとして仕事をしていたが、たまたまガルスの機体調整の関係でガルスから理不尽な因縁をつけられて、そのまま責任者であるミランと共にブラックバルチャー隊へと左遷させられた。

 

「ありがとうございます」

 

 エドの心遣いにメイアは、三人に頭を下げる。

 

「なあ、フォルト。僕にも何か手伝えないかな?」

 

 仕様書と設計図を見ながらカイルがフォルトに訊ねる。

 

「そうだなぁ……じゃあ、ジェネレーター出力関係のシミュレーションと調整を頼むよ」

 

「それくらいなら、まかせてくれよ」

 

 休憩を終えた七人は、作業を再開する。

 

 ミラン達メカニックマンがパーツ交換や機体調整等を行い、フォルトは機体の動作確認や出力のチェック、カイルは交換したパーツによるジェネレーターの出力や調整を行う。

 

 フォルト機の改修作業は夜通し掛かり、作業が終わった頃には朝を迎えていた。

 改修作業を無事に終えた七人は、達成感を得た表情をしている。

 

「みんな、ありがとな」

 

 フォルトは、カイル達に頭を下げて礼を言う。

 彼らがいなかったら、注文した銃は一度も使われる事なく、スクラップになっていただろう。

 

「何言ってるのさ、僕達は親友だろ」

 

 そう言ってカイルは、右手をフォルトの右肩に置く。

 

 

「フォルトさん、俺達は同じ仲間なんだから気にしなくて良いよ」

 

 ミラン達は笑顔で返す。

 ミラン自身も今回の大幅な改修作業は、久しぶりに満足のいく事ができて自身のスキルアップに繋がったと思っていた。

 

「ありがとう……本当にありがとう」

 

 ミランの言葉にフォルトは、少しだけ涙ぐむ。

 

「フォルト……」

 

 カイルが心配そうに声を掛ける。

 

「バ、バッカ野郎! ちょ、ちょっと朝日がまぶしいだけだよ!!」

 

 フォルトは、涙を拭うのを見られない様に振り返る。

 

(ここ、朝日が出ないんだけどなぁ……)

 

 フォルトの言葉にカイル達は、心の中でツッコミを入れていた。

 ブラックバルチャー基地が在住する惑星ローグは、万年紫色の雲に覆われている為、日が照る事は殆どないからだ。

 

「お前達、まだやっていたのか」

 

 早朝一番にドルチェフが格納庫にやって来る。

 

「おはようございます、隊長。ええ、さっき終わったばかりなんですよ」

 

 ミランがドルチェフに状況説明するが、徹夜作業の為、その瞼は重くなりつつあった。

 

「そうか、ご苦労だったな。もうお前達は寝ろ。特にメイア」

 

「は、はい」

 

 普段、あまり名前を呼ばれる事がないメイアは、突然のドルチェフからの名指しに驚いた表情をする。

 

「お前は女だ。それに睡眠不足と疲れは、肌の天敵だ」

 

 ドルチェフのメイアを気遣う言葉に皆の目が驚きのあまり点になる。

 

「た、隊長……」

 

「隊長がそんな事を言うなんて、もしかして明日は雨が……」

 

「いやいや、天変地異の前触れかも知れないぞ」

 

 フォルト達は、お互いに顔を見合わせてドルチェフを見る。

 普段の様子から、ドルチェフが女性に気遣う素振りを見せない為、尚更だった。

 

「バカ野郎! 俺だって女の扱いくらいわかっている!」

 

 フォルト達の悪ふざけにドルチェフは、照れ隠しに怒鳴る。

 

「いいな、メイア。これは隊長命令だ」

 

「はい、わかりました」

 

 ドルチェフの言葉にメイアは、敬礼をして笑顔で返す。 

 

 自室へと戻ったフォルト達は疲れ果て、その日は、そのまま眠り込んだ。

 

 そして、翌日。

 フォルトにとっては、待ちに待った全体的な機体の動作確認とスナイパーライフルのテストが行われる。

 

 朝早くからフォルトは、格納庫でバトロイド形態の機体に乗り込み機体チェックを行っていた。

 ミラン達も動作テストに付き合い、スナイパーライフルの調整を行っている。

 

「フォルトさん、機体の調子はどうですか?」

 

 ミランはスナイパーライフルの調整を行いつつ、フォルトに声を掛ける。

 

「システム系統、動作系統、電子系統共に今の所は異常無し。ライフルの方はどうだ?」

 

「こちらも今の所は大丈夫です」

 

「わかった。ライフルを取るから離れててくれ」

 

 フォルトの声に従ってミラン達は、スナイパーライフルから離れる。

 

 フォルト機はハンガーに架けてあるスナイパーライフルを掴み、格納庫から外へと進む。

 

 ある程度、進んだ所で機体とスナイパーライフルの接続コードを繋ぎ、フォルト機は地面にうつ伏せになりスナイパーライフルを構える。

 スナイパーライフルのコードを機体に繋ぐ事でコクピットのモニター画面にスナイパーライフルの状況が数値とグラフで表示される。

 

「よし、今の所は出力系統に問題は無いな」

 

 フォルトはモニター画面でスナイパーライフの状況を確認する。

 

『始めてくれ』

 

 ミランの通信機にフォルトからの通信が入る。

 

「ジョン、標的用意」

 

 ミランの指示でジョンはリモコンのボタンを押す。

 ボタンが押されると同時に格納庫から200mほど離れた場所の地面が展開して標的が顔を出す。

 

 フォルト機はスナイパーライフルの固定装置を引き出してスナイパーライフルを固定する。

 

 フォルトは、シート背面からターゲット用スコープを取り付けて標的に照準を合わせる。

 照準と標的が合わさったのを確認したフォルトは、ライフルのトリガーを引く。

 

 トリガーを引くと同時にスナイパーライフルが発射されて標的に穴が開く。

 

『どうだ?』

 

 フォルト機の通信を受けてメイアが双眼鏡で標的を確認する。

 

「凄い……ちゃんと真ん中に当たってます」

 

 双眼鏡で標的を確認したメイアは、子供のようにはしゃぐ。

 

『どんなもんよ!』

 

 フォルト機は、メイアに向かってVサインをする。

 

『ミラン、標的の距離を遠くしてくれ』

 

「了解。ジョン、頼む」

 

 ミランの指示でジョンはリモコンのボタンを押す。

 姿を現した標的は最初の場所から更に500m程離れた場所に姿を見せる。

 

 さすがに肉眼で確認ができないのでミラン達は、メイアの双眼鏡を互いに回して状況を確認する。

 

 フォルトは、再び標的に照準を合わせる。

 

(コンマ4ズレてるな……)

 

 フォルトは照準を自動制御から手動に切り替えて修正をする。

 自動制御とは言え、あくまでも自動制御はサポートであり、細かい微調整となると手作業が必要となる。

 

 手動で修正を行い、標的が合わさったのを確認したフォルトは、トリガーを引いて標的に穴を開ける。

 

『確認してくれ』

 

 フォルトの通信を聴いたメイアは、双眼鏡で標的を確認する。

 

「凄い……あれだけ離れているのに真ん中に命中しています」

 

 穴の開いた標的を見たメイアは、驚きを隠せない様子だった。

 そこには綺麗に真ん中に穴が空いた標的が映っている。

 

『どうよ! 俺の実力』

 

 フォルト機は、得意げにガッツポーズを取る。

 

「やってるな、お前達」

 

 フォルト達の様子を見にドルチェフがやって来る。

 

「隊長、フォルトさん凄いんですよ! あんなに離れた的の真ん中に命中させてるんです!」

 

 メイアは、まるで子供が母親に話を聞いて欲しいかの様な様子で興奮気味に話す。

 

「フォルトは、元々射撃に関しては確かな腕を持っているからな」

 

 メイアから双眼鏡を借りて標的の状況を見たドルチェフは、フォルト機の方を見上げる。

 

 フォルトは、過去に統合軍主催の射撃大会で連続で3回優勝した経歴を持つ。

 その経歴や射撃の精密度の高さから精密射撃が必要な任務の時には、統合軍参謀本部から直に要請がくる程であった。

 そんな彼の能力を活かす為、機体も精密射撃に特化した仕様にカスタマイズされており、幾度の任務で功績を残している。

 

 同僚のカイルとは統合軍入隊時に知り合い、後に行動を共にする程の仲になる。

 カイルのサポートは、フォルトにとってはなくてはならない存在であり、カイルがフォルトを信じるようにフォルトも彼を信じて背中を任せている。

 

 そんなある日、ガルスと共に二人は任務を遂行する事になるが、ガルスの無謀とも思える任務強行に二人は猛反対をする。

 その事がガルスの逆鱗に触れてしまい、後に二人はブラックバルチャー隊へと左遷となり今に至る。

 

 そんな二人をドルチェフは温かく迎え入れ、任務遂行時には、二人の能力を信頼している。

 

「フォルト」

 

『あ、隊長』

 

「フォルト、調子はどうだ?」

 

『コイツは、結構良い感じですよ。本当に買ってよかったですよ』

 

 フォルト機は、自慢気にスナイパーライフルをドルチェフに見せて、その声もご機嫌な様子だ。

 

「そうか。フォルト、お前に任務を頼みたい。後で部屋に来てくれ」

 

『わかりました』

 

 フォルトとの会話を終えて、ドルチェフは部屋へと戻っていく。

 

 その後、フォルトは標的の距離を伸ばしてスナイパーライフルのテストを続ける。

 次々と距離を伸ばして現れる標的にフォルトは、正確に的の中心にスナイパーライフルを命中させていく。

 その様子にミラン達は、一喜一憂を見せる。

 

 テストを終えたフォルトは、機体を降りてミラン達と話し込む。

 

「フォルトさん、凄いですね」

 

 ミランは、フォルトのスコアを確認して驚きの表情をする。

 現れたターゲットの着弾率は100%であり、98%は的の中心に当てていた。

 

「いや、正直コイツの性能も凄いと思うぜ。照準の調整も前の物よりもしやすかったしな」

 

 フォルトは、右親指をスナイパーライフルに向ける。

 

「さっすが、曰く付きだけの事はあるな」

 

 フォルトは、スナイパーライフルに向けて満足げな笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、俺、隊長のトコ行ってくるから、悪いけど後を頼んで良いか?」

 

「ええ、いってらっしゃい」

 

 機体整備をミラン達に任せてフォルトは、ドルチェフの部屋へと向かう。

 

「隊長、入ります」

 

 フォルトは、ドアをノックして確認を入れる。

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

 ドアを開けてフォルトは、ドルチェフの部屋に入る。

 最後に部屋に入ったのは、いつだったのかを思い出すかのようにドルチェフの部屋は、相変わらず質素だった。

 

「お前をここに呼ぶのも久しぶりだな」

 

「そう言えば、そうですね。それで隊長、任務と言うのは?」

 

「ああ……さっき統合軍本部から惑星ルーラン駐在の統合軍基地が反統合政府軍に襲撃されて、大型輸送船が1隻奪取されたと言う連絡が入った」

 

「相変わらず統合軍も警備がザルですね」

 

 任務内容を聞いたフォルトは、統合軍の平和ボケしている様子を皮肉る。

 

「だったら俺だけじゃなくて、みんなで……」

 

「まあ、待てフォルト」

 

 粋がるフォルトをドルチェフは抑える。

 

「確かに俺達で行けば大型輸送船の1隻や2隻なんて簡単に堕とせる。だが、ヤツらが奪取した輸送船には、とんでもない物資が積んであったらしい」

 

「何ですか? それは」

 

 フォルトに訊ねられ、ドルチェフの表情が険しくなる。

 

「……反応弾だ」

 

「反応弾!?」

 

 反応弾の言葉に思わずフォルトの表情が強張る。

 

「しかも、威力や範囲も今までの反応弾とはケタ違いらしい。もし俺達が、この船を堕とそうものなら……」

 

「堕とした瞬間に俺達は、反応弾の爆発に巻き込まれてお陀仏ってヤツですか?」

 

 ふざけながら話すフォルトの言葉にドルチェフは頷く。

 

「そうだ。恐らく統合軍本部は、俺達をそこに向かわせて輸送船を撃破させて、そのまま俺達も一緒に始末したいんだろう」

 

 険しい表情のままドルチェフは話す。

 

「なんだよそれ、ふざけんな! それが統合軍本部のやり方ってヤツなんですか?」

 

 ドルチェフの話を聞いたフォルトは、思わず怒りを露わにする。

 

「俺達は、統合軍の掃き溜めだからな。統合軍からしたら反応弾は反統合政府軍に盗られずに済むし、ついでに厄介払いできるしで一石二鳥なんだろう」

 

 ガルスによって左遷された者達の部隊、ブラックバルチャー隊。

 その部隊は、知らず知らずの内に統合軍の掃き溜めと呼ばれる様になり、いつしか左遷先になっていた。

 ある意味、統合軍にとっては、またとないチャンスだったのだろう。

 

「……こんな事までされて、隊長は悔しくないんですか?」

 

 フォルトは黙って統合軍に従うドルチェフに苛立ちを覚える。

 今まで色々な不祥事を揉み消してきた統合軍を見てきたフォルトにとっては尚更だった。

 

「俺がこのまま黙っている訳がない事くらい、わかるだろう?」

 

 いきり立つフォルトを見たドルチェフは、少し口元を緩ませる。

 

「じゃあ……」

 

「だが、今は我慢して機会を待つんだ。いいな?」

 

「了解」

 

 ドルチェフの言葉にフォルトは納得したのか、さっきまでいきり立っていた表情が静まる。

 

 ドルチェフは、いつしか統合軍に対して何か行動を起こそうとしている。

 フォルトは、その時が来る事を密かに期待していた。

 

「話が逸れたな。とりあえず任務の事だが、お前が手に入れたライフルによる長距離攻撃が一番有効だと思うが……どうだ? フォルト。せっかく手に入れたライフルの威力を試すんだ。悪くない任務だろ?」

 

 ドルチェフは、スナイパーライフル使用を提案してフォルトを横目でチラっと見る。

 

「……悪くないですね、隊長。その任務、引き受けましょう」

 

 フォルトは、得意気に右親指をドルチェフに突き立てる。

 自身にとっては、任務もこなせて手に入れたばかりのスナイパーライフルも実戦で使用できる為、何も利害はなくWin-Winである。

 

 ドルチェフ自身も統合軍本部からの任務依頼を聞いた時、既にフォルトに任せる気満々であった。

 

「統合軍本部の情報によると明日の9時にはポイントイプシロンを通過するらしいから、そこで迎撃する。あそこは、ステーションも殆ど無いから撃破しても影響は無いだろうからな」

 

 ドルチェフの端末ディスプレイに新統合軍本部から送られてきた輸送船の航路と座標が表示される。

 

「航路や座標を見る限り、そのようですね」

 

 フォルトはディスプレイを覗き込み納得する。

 

「どうだ? フォルト。お前さんの腕の方の自信は?」

 

「任せてください。俺の射撃の腕は、隊長もご存知でしょう?」

 

「そうだな」

 

 ドルチェフとフォルトは、互いに口元を緩ませる。

 

「よし、決まりだな。明日の7時には出撃だ。念の為、カイルも索敵とジャミング担当として連れて行く」

 

「わかりました」

 

「カイルには、後で俺の方から伝える。フォルトは、明日に備えて今日は早く休んでおけ」

 

「了解」

 

 フォルトは、ドルチェフに敬礼をして部屋を後にする。

 

「フォルト」

 

 自室に戻ろうとするフォルトにカイルが声を掛ける。

 

「よお、カイル」

 

「さっき隊長から話は聞いたよ。僕も明日は、できる限りサポートするよ」

 

「おう、頼りにしてるぜ」

 

 フォルトはカイルの右肩をバシバシと叩いて自分の部屋へと戻る。

 

「いたた……まったく、フォルトは相変わらずだなぁ」

 

 カイルは、叩かれた右肩を押さえてフォルトを見送る。

 

「カイルさん」

 

 タクヤと一緒に歩いていたエスターがカイルに声を掛ける。

 

「やあ、エスターにタクヤ」

 

「隊長から聞きましたよ。明日の出撃、頑張ってください」

 

「ああ、頑張るよ」

 

 エスターの言葉にカイルは、笑顔で返す。

 

「ちぇー、いいなぁ……俺もフォルトさんみたいなカッコいい武器が欲しいなぁ」

 

 フォルトの新しいスナイパーライフルの事でタクヤは、自身の機体も標準装備以外の武器が欲しいのか、少しふてくされた表情をする。

 

「タクヤも給料をちゃんと貯めれば、いつか買えるよ」

 

「カイルさん、フォルトさんのあの武器っていくらくらいすんの?」

 

「うーん……彼が言うには、確か給料3ヶ月くらいするって言ってたかな? だから、タクヤやエスターの給料だったら、そうだなあ……多分10年か15年くらい掛かるんじゃないかな?」

 

「げげ! じゅ、10年や15年って、そんなにすんの!?」

 

 カイルからスナイパーライフルのおおよその換算金額を聞かされたタクヤは、自身の給料を10年で換算して出た金額に思わず目を白黒させて驚く。

 

「しかも非合法で手に入れたって言ってたから、値段も結構してたみたいだし」

 

「はぁぁぁぁ……やっぱ俺、カスタムするの止めとくわ」

 

 カイルから値段の話を聞いたタクヤは、ガックリと肩を落とす。

 ただでさえ、毎月支払われている給料で新しい装備関係を購入しようにも半年以上貯めないと購入できない上に更にその上を行く金額を目の当たりしてしまい、絶望感しか無かった。

 

「タクヤ、元気出しなよ。武器はダメでも簡単なカスタマイズなら出来るかも知れないし」

 

 肩を落とすタクヤをエスターが励ます。

 

「エスターの言う通り、タクヤ達の給料なら3ヶ月くらい貯めればアビオニクスの簡単な改良くらいなら出来るさ」

 

「マジっスか!? よーし、頑張って金を貯めてアビオニクスをカスタマイズすっぞ!」

 

 カイルの言葉にタクヤは、急に元気になって浮かれ始める。

 

「元気になったみたいだね」

 

「ありがとうございます、カイルさん」

 

 エスターは、カイルに頭を下げて礼を言う。

 

「いやいや。それにしても、君達を見てると他人事には思えないな」

 

「お互い、相方に苦労する所ですか?」

 

「そうかもね」

 

 エスターとカイルは、お互いに顔を見合わせて含み笑いをする。

 

 翌日、ドルチェフ、フォルト、カイルの三人はポイントイプシロンへ向けて出撃する。

 

『バルチャー1から各機へ。これよりポイントイプシロンへ向けて出撃する。各機、遅れるな』

 

『了解!』

 

 今回は少数行動の為、あえてブロウニングは使用せずに単機でポイントイプシロンへと向かう事となった。

 

 滑走路のシグナルサインが青になっている事を確認した3機は、順番に出撃して進路をポイントイプシロンへと向ける。

 ポイントイプシロンへの出撃は、前回の機密書類の護衛任務以来である。

 

 惑星ローグからは、それほど遠くは無いがポイントガンマが近い事もあり、時折小惑星群が流れてくる。

 向かってくる小惑星群を3機は、次々とやり過ごしていく。

 

『隊長、こうやって少数行動するのも久しぶりですね』

 

 久しぶりの特殊任務にフォルトがドルチェフに通信を入れる。

 

『そうだな。お前とカイルがココに転属になって最初の任務依頼だな』

 

『そうですよね』

 

 二人の会話にカイルも加わる。

 

『あの時は、フォルトが暴走したお陰で俺やカイルまで敵に追いかけられて……』

 

『あの時は死ぬかと思いましたよ』

 

 ドルチェフとカイルは会話をしながら当時を懐かしむ。

 

 まだフォルトとカイルがブラックバルチャー隊に配属して1週間が過ぎた頃、統合軍本部より敵の大型機動兵器の輸送船撃墜任務の依頼が来た時だった。

 

 その頃、まだ配属して間もない二人は、ドルチェフと共に敵基地から遠く離れた場所で輸送船が来るのを待っていたが、なかなかこない輸送船にフォルトのイライラが限界に達し、ようやっと来た輸送船に対してドルチェフの発砲許可を待たずに攻撃をした為、敵に気付かれてしまい、3機は命からがら逃げ延びる事ができた。

 

 その事で任務は失敗したが、元々重要任務ではなかった為、三人は減俸処分と始末書を書くだけの処遇で済んだ。

 

『隊長もカイルも笑わないでくださいよ。あの時は、俺も若かったんですから』

 

 二人の懐かしい会話にフォルトが少しムキになる。

 

『まあ今では、お前以上に凄いヤツがいるからな』

 

『タクヤですね』

 

『ああ。アイツは、お前以上にバカをするからな』

 

 ドルチェフは、タクヤを思い出して少しだけ笑う。

 

 他愛も無い会話をするうちに、やがて3機は目的地であるポイントイプシロンへと辿り着き、早速カイルは索敵を開始する。

 

『今の所は、熱源反応はありませんね。念の為、探査ポッドも射出しておきます』

 

 カイル機は、探査ポッドを射出して周囲を警戒する。

 

『隊長、あそこで待機しましょう』

 

 フォルト機が指を差す方向に多くの小惑星群が漂っていた。

 

『あそこなら身を潜めるにもってこいだな』

 

 3機は、小惑星群に身を潜めて輸送艦が来るのを待つ事にする。

 

『フォルト、無茶な事をするなよ』

 

『するかよ!』

 

 カイルの忠告にフォルトは、ムキになって応える。

 

 しばらくして、モニターの表示時刻が丁度9時を表示する。

 

『11時の方向……熱源反応、来ます!』

 

 熱源反応を探知したカイル機から通信が入る。

 

『探査ポッドからの映像を出します』

 

 カイル機が射出した探査ポッドの映像が3機のコクピットモニターに映し出される。

 映し出された映像には、大型輸送船の姿が見える。

 

『データ照合……間違いありません、奪取された輸送船です』

 

 データ照合を行い、その輸送船が奪取された輸送船である事をカイルが伝える。

 

『カイル、この距離での反応弾の有効範囲を計算してくれ』

 

『了解』

 

 フォルトから反応弾の有効範囲算出を依頼されたカイルは、コンピュータにデータを打ち込み、算出された反応弾の有効範囲のデータ結果をフォルトとドルチェフに送る。

 

(この距離だと、巻き込まれる可能性が高いな……)

 

 フォルトは、カイルから送られてきたデータ結果を見て、困惑な表情を浮かべる。

 

『奪取された反応弾は従来よりも強力と言う事で範囲も広めに算出しました』

 

『フォルト、そのライフルの有効距離は?』

 

『多く見積もって7,000~8,000mぐらいですね。今の場所で撃ち込んで輸送船を破壊したら、間違い無く敵と一緒にお陀仏です』

 

『こうなったら、射程ギリギリの場所から狙撃して、輸送船の反応炉に命中と同時に一気に離脱するしか方法は無いか……フォルト、やれるか?』

 

 ドルチェフの問い掛けにフォルトは、しばし沈黙する。

 

『……ここまで来たら、やるしかないですよ。隊長、カイル、覚悟しておいてくださいよ』

 

 フォルトは、ドルチェフに余裕の笑みを浮かべる。

 しかし、ドルチェフに見せたのは、苦し紛れの笑顔だった。

 

『分かった。俺達の命は、お前に預けた』

 

 ミランによって装填された対艦戦用の銃弾。

 その威力は戦艦クラスの厚い装甲すら撃ち抜く程の威力である。

 しかし、1発の銃弾のコストがバルキリー1機分相当の為、在庫はあまり無く、今回は任務の為に2発だけ装填されている。

 

 いくら2発の弾が装填されているとは言え、スナイパーライフルが輸送船の反応炉に命中させても一発で仕留められなかった場合、敵に発見される可能性が高く、また爆発したとしても少しでも逃げるタイミングが遅れた場合は、爆発に巻き込まれてしまう。

 

 全てはフォルトの射撃技能に懸かっていた。

 フォルトは、自分が責任重大な立場に置かれている事を感じて固唾を飲む。

 

『よし、気付かれないうちに射程距離ギリギリまで離れるぞ』

 

 3機はスナイパーライフルの最大射程距離まで離れる。

 

 3機は射程距離ギリギリの小惑星群に身を潜め、フォルト機はスナイパーライフルを構えて大型輸送船に照準を合わせる。

 

『フォルト、輸送船の航行速度とスナイパーライフルの射程距離から着弾時間を算出したデータを送るよ』

 

 カイルのデータを基にフォルトは、スナイパーライフル発射のタイミングを計算してコンピュータに入力する。

 ある程度は自動制御に任せて、残りの微調整は手動で行う。

 

「よし、これで発射タイミング時に照準も赤くなるし、後はタイミングを待つだけだ」

 

 フォルトは、ターゲットスコープを覗きつつ息を飲む。

 輸送船が照準内に近付く度にフォルトの息遣いが荒くなる。

 

 やがて輸送船が照準内に入り、ターゲットスコープが赤く光る。

 

「もらった!」

 

 フォルトはトリガーを引き、スナイパーライフルを発射する。

 

 発射されたスナイパーライフルの弾道は、僅かな時間だがコクピットモニターに表示される。

 発射された弾道は、大型輸送船目掛けて突き進む。

 

 モニターに映し出される弾道の様子を3人は固唾を飲んで見守る。

 

(このまま行け!)

 

 フォルトは、手を合わせて願を掛ける。

 

 弾道は輸送船に近付き、もう少しで輸送船の反応炉に到達をする。

 

 作戦は成功する様に見えたが、事態は急変する。

 

「なにぃ!」

 

 途中、浮遊してきた小惑星に弾道が命中し、軌道が狂って輸送船をかすめて行く。

 

 異常に気付いた輸送船は艦載機を射出し、弾道の方向へと偵察に向かわせる。

 

『フォルト、敵が気付いた。急げ!』

 

 事態の急変にドルチェフの焦りのある罵声がフォルトの耳に響く。

 

『りょ、了解』

 

 フォルトは、再びコンピュータに発射データを入力しようとする。

 しかし、焦りからかキーボードを打つ手が震えていた。

 

「クソ、こんな時に!」

 

 焦りで震える手をフォルトは、抑えようとするが尚更震えは止まらなかった。

 

『フォルト、しっかりしろ!』

 

『敵の迎撃は、隊長と僕でやるから落ち着いて』

 

 ドルチェフとカイルの激を受けて、フォルトは少し深呼吸をする。

 

(落ち着け……落ち着くんだ)

 

 自分自身に言い聞かせる様に心の中で呟き、再びコンピュータに発射データを打ち込み、ターゲットスコープを覗く。

 

 艦載機は徐々にだが、ドルチェフ達の方へと向かっている。

 

(コイツを外したら……もう後は無い)

 

 焦る気持ちを抑える為、再度フォルトは深呼吸をし、ターゲットスコープに映し出されるデータをチェックする。

 

「頼む、当たってくれ!」

 

 そして、ターゲットスコープが赤くなるのを確認して、フォルトは再びトリガーが引かれてスナイパーライフルの弾道は、再び輸送船目掛けて発射される。

 

 フォルト機のスナイパーライフルの弾道に気付いた艦載機は、弾道元の小惑星郡へと向かう。

 

『まずい、来るぞ!』

 

『敵は、こっちで何とかするから、フォルトは弾道を見てて』

 

『あ、ああ』

 

 迫り来る敵機にドルチェフ機とカイル機は、ガンポッドを構えて応戦態勢に入る。

 

 弾道は輸送艦目掛けて進み、フォルトはモニター越しに弾道の行方を見守る。

 その弾道の行方を見守りつつも、フォルトは徐々に近付いてくる敵も気になっていた。

 

 艦載機である3機のVF-11がドルチェフ達の存在に気付き、攻撃を仕掛ける。

 

「くそ!」

 

 敵の攻撃に居ても立っても居られなくなり、フォルト機はスナイパーライフルの砲身を短くしてガンポッド形態に切り替えて迎撃態勢に入る。

 

『フォルト、お前は弾道の行方を見ていろ!』

 

 ドルチェフ機は、少しでも時間稼ぎをする為に小惑星群から自ら飛び出して囮になる。

 飛び出して来たドルチェフ機に気付いた3機のVF-11は、ドルチェフ機の追撃を始める。

 

 やがて弾道は、輸送船のエンジン部分に命中する。

 弾道は輸送船の装甲を突き破り、そのまま反応炉まで到達し爆発を起こす。

 

『隊長、輸送船から爆発を確認!』

 

『よし、離脱開始!』

 

 フォルトの通信を聞き、ドルチェフは撤退命令を出す。

 

 3機はファイター形態に変形して、爆発に巻き込まれないように脱出し始める。

 3機のVF-11が後ろから追撃をしてくるが構っている余裕は無く、ただ必死で逃げるのに精一杯だった。

 

「くっそー、しつこいなぁ!」

 

 迫り来るミサイルにチャフをバラ撒きつつ回避し、必死で逃げる。

 

『フォルト、カイル、後ろには構うな。とにかく今は、爆発に巻き込まれないのを第一優先だ』

 

『でも、このままじゃ逃げ切る前に俺達がやられちゃいますよ』

 

 敵の攻撃に何もできずに逃げるもどかしさにフォルトは、イラついていた。

 

 やがて爆光は、3機がいた小惑星群を飲み込んでいき、そのまま追撃してきたVF-11をも次々と飲み込んでいく。

 

『た、隊長、このままじゃ俺達も飲み込まれるんじゃ……』

 

 後ろを振り返り、徐々に迫る来る爆光にフォルトは、不安感と焦りを見せていた。

 

『隊長、離脱ポイントまで、あと少しです』

 

『よし、何とか乗り越えるぞ! 頑張れ二人共』

 

 カイルの通信を受けたドルチェフは、フォルトとカイルを励ます。

 

『せっかく新しい武器を買ったのに、こんな所で死んでたまるかよ!』

 

 フォルトは、スロットルを限界まで開ける。

 

 フォルト機とカイル機のエンジンが悲鳴をあげるが、それでもフォルトとカイルは必死にエンジンの出力を上げる。

 

 必死になって逃げたおかげで3機は、何とか離脱ポイントまで辿り着き、爆光が少しずつ遠ざかって行くのを三人は確認する。

 

『熱源、離れていきます』

 

 爆光が遠ざかるのを確認したカイルが通信を入れる。

 

『隊長』

 

 カイルの通信にフォルトの表情が和らぐ。

 

『ああ……俺達は、まだ神には見放されてなかったようだな』

 

 遠ざかる爆光を見て、三人は胸を撫で下ろす。

 

『フォルト、よくやったな』

 

 ドルチェフがフォルトに労いの通信を入れる。

 

『隊長とカイルのおかげですよ』

 

『僕や隊長はサポートしただけだよ。今回はフォルトが一番の手柄さ』

 

『カイル……』

 

 カイルの言葉にフォルトは、少しだけ目を潤ませる。

 

『それにしても、本当にヤバかったなぁ……』

 

 フォルトは状況を思い出して苦笑いする。

 

『どうだ? フォルト。この任務は』

 

『いやいや、もうカンベンしてくださいよ隊長』

 

 意地悪く言うドルチェフにフォルトは、思わず苦笑いする。

 フォルトの苦笑いにカイルも釣られて笑っていた。

 

『よし、これより帰投する』

 

『了解!』

 

 任務を終えた3機は、惑星ローグへ進路を向けて飛び始める。




次回予告

 特殊任務でリゾート惑星にやって来たタクヤとエスター。
 しかし、そこで待っていたのは……

次回「デビル・リゾート」
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