MACROSS-A.D.2048-   作:eisyama

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 ついに姿を現した反統合軍の機動兵器。
 しかし、そこに待っていたのは悲劇だった


第12話アフター・イン・ザ・ダーク

 孤島では既に戦闘が始まっていた。

 この孤島には、統合軍の軍事施設や研究施設が多数建造されており、様々な研究が行われている。

 特に自然に囲まれている環境の為、生物や生態に関する研究が盛んであり、統合軍にからは一目置かれていた。

 しかし、その施設も今では敵からの攻撃で大打撃を受けている。

 

 VF-11を主力にした部隊が大型機動兵器や後続部隊を迎え撃ち、地上からはデストロイド部隊が主力部隊を援護する。

 しかし、その部隊も大型機動兵器の攻撃により次々と撃墜されていく。

 

 エスター機が孤島に到着した頃には、既に施設の半分以上が大型機動兵器の攻撃で壊滅状態だった。

 

「酷い……」

 

 エスターは、悲惨な状況を見て思わず呟く。

 そんな干渉に浸る余裕もなく、目の前にVF-5000の編隊が襲い掛かる。

 

「少しでも被害を食い止めなきゃ」

 

 VF-5000のミサイルを次々とかわし、エスター機はガンポッドで機体を撃墜していく。

 

 VF-5000の部隊と戦闘しているエスター機に気付いた大型機動兵器は、肩のビームランチャーで攻撃を仕掛ける。

 

「くっ!」

 

 間一髪でビームランチャーをかわしたエスター機は、ガンポッドで大型機動兵器を攻撃するがビクともしなかった。

 

 更に追い討ちを掛けるかの如く、大型機動兵器は腕からのミサイルランチャーで攻撃するが、エスター機はガンポッドで撃墜しつつミサイルで攻撃する。

 しかし、ミサイルは肩のビームランチャーで次々と撃墜される。

 

「何処かに弱点は……」

 

 エスターは、機体をファイターに変形させて攻撃を回避しながら大型機動兵器の周りを飛びながら弱点を探す。

 しかし、大型機動兵器の攻撃を避けるのが精一杯で弱点を探す余裕が無かった。

 

『そこのパイロット、なかなかやるじゃないか!』

 

 突如大型機動兵器から声が発せられる。

 しかし、その声は聞き覚えのある声だった。

 

「この声、もしかして……」

 

 エスターは、機体をガウォークに変形させて通信を入れる。

 

『もしかして、ケヴィンさんですか?』

 

『!? まさか……エスターか?』

 

 ケヴィンは、エスターの通信に言葉が詰まる思いだった。

 戦っていた相手が、昨日親切心で助けた相手であれば尚更だった。

 

『お前……統合軍だったのか?』

 

『……はい』

 

 エスターもケヴィンと同じく言葉を詰まらせる。

 

『そうか、そうだったのか。クックック、あーっははははははは!』

 

 唐突にケヴィンは、大声で笑い出す。

 

『なんか急に歯応えのあるヤツが出てきたなぁと思ったら、エスターだったのかぁ』

 

『ケヴィンさん、もうこれ以上攻撃をするのは止めてください。お願いします』

 

 エスターは、モニター越しにケヴィンに頭を下げる。

 

『攻撃を止めろ……か……悪いけど、ソイツは無理な相談だ』

 

 先程まで笑っていたケヴィンの眼差しが急に鋭くなる。

 

『どうしてですか?』

 

『お前にも話したが、俺は統合軍が憎い。それにお前が撃ち落とした機体には、俺の仲間達が乗っていたんだ』

 

『そんな……』

 

『だから俺は、統合軍よりも仲間の敵討ちもしなきゃいけないんだよ!』

 

 ケヴィン機は、ビームランチャーの砲身をエスター機に向けて攻撃を開始する。

 

『止めてください、ケヴィンさん!』

 

 エスター機は、逆加速で攻撃を振り切りながらファイターに変形する。

 

『攻撃しろよ、エスター!』

 

 ケヴィン機は、ビームランチャーとミサイルを同時に発射する。

 エスター機は、チャフをバラ撒きながら不規則な軌道を描きながらミサイルとビームランチャーを回避する。

 

『そんな事、僕には出来ませんよ!』

 

 ケヴィン機の攻撃を回避しながらエスターは叫ぶ。

 そこには困っていた自分に親切にしてくれた人にへの情があったからだ。

 

 しかし、隙を突かれてエスター機は、ケヴィン機の大型マニピュレータに捕らえられてしまう。

 

「しまった」

 

 エスター機は、エンジンを限界まで上げるが、ガッチリと捕らえている為、全く動けない状態だった。

 

『エスター、そろそろ観念しろ』

 

 ケヴィンから通信が入る。

 しかし、その表情は、どことなく悲しげだった。

 まだケヴィンにもエスターと同じく情があるのだろう。

 

『せっかく、お前と知り合えたのに、こんな結果になるなんて残念だ』

 

『ケヴィンさん……僕だって、こんな結果になんて嫌ですよ。だから、もう止めましょうよ!』

 

 エスターは、最後の望みを掛けて再度ケヴィンの説得を試みる。

 

『……悪いな。これも仲間の為だと思って、諦めてくれ』

 

 マニピュレータに少しずつ力が入り、エスター機は徐々に押し潰されていく。

 

「くっ……」

 

 エスターは、少しずつ潰れていくコクピットの中でケヴィンを説得できなかった悔しさと悲しさで胸がいっぱいだった。

 

 その時、ケヴィン機とエスター機のレーダーにミサイルが感知される。

 

「何だ?」

 

 見上げると上空からミサイルが降り注いでくる。

 ケヴィン機は、ビームランチャーで迫りくるミサイルを次々と撃ち落として辺りを見回す。

 

「力が加わってない? い、今だ」

 

 ケヴィンが怯んでマニピュレータが緩んだ一瞬の隙を突いて、エスターはエンジンを限界まで上げてマニピュレータから脱出する。

 

『エスター、大丈夫か?』

 

 ドルチェフから通信が入り、上空を見上げるとブラックバルチャー隊のバルキリーが次々とやってくる。

 

『隊長』

 

『よく頑張ったな。アイナから話は聞いた、後は俺達に任せろ。全機、攻……』

 

『ま、待ってください!』

 

 攻撃命令を出そうとするドルチェフをエスターは、機体をガウォークに変形させて止める。

 

『エスター。何故、止める!』

 

 突然の事にブラックバルチャー隊も機体をガウォークに変形させて停止する。

 

『あの機体には、僕の知り合いが乗っているんです。お願いです、攻撃しないでください』

 

 エスターは、ケヴィンへの攻撃を止めさせる為、ドルチェフに必死に頭を下げる。

 

『ここは戦場だ! 甘ったれた感情を持つと今度は、お前が死ぬんだぞ!』

 

 エスターの願いを退け、ドルチェフは怒鳴る。

 

『隊長、お願いします! 僕は、あの人を助けたいんです!』

 

『何度も言わせるな、そんなに死にたいのか!』

 

『……それでも構いません』

 

 エスターは、涙を流しながら覚悟を決めていた。

 

『エスター……』

 

 エスターの覚悟を決めた態度にドルチェフは躊躇する。

 

『僕は……死んでも構いません。隊長、お願いします』

 

 エスターは、真剣な眼差しでドルチェフに訴えかける。

 その姿にドルチェフは、何処となく昔の自分の面影を投影していた。

 

 例え任務だとしても時には、どうしても任務に背いてまでやらなければならない事があった。

 今のエスターであれば、それはケヴィンを説得して戦いを止めさせる事だった。

 

『……わかった。そんなに言うなら、やってみろ。その代わり、死ぬならお前一人で死ね。周りを巻き込むな』

 

『!? ありがとう……ございます』

 

 厳しい言葉ながらも、その言葉の裏側に隠された温かさを感じたエスターは、頭を下げてドルチェフに礼を言う。

 

『ところで、タクヤは何処にいる?』

 

 先程からタクヤの姿が全く見えない事を疑問に思い、ドルチェフが問い掛ける。

 

『……わかりません。昨日から、はぐれてしまって。連絡をしても全く繋がらなくて』

 

『そうか……』

 

 エスターの言葉にドルチェフは溜め息を吐く。

 タクヤが任務をサボっている事と真面目に任務をやってくれると信じていた自分に対して、ドルチェフは沸々と怒りが湧いてきていた。

 

『俺達はタクヤを探しに行く。後の事は、お前に任せる』

 

『ありがとうございます』

 

『やるからには、悔いを残すなよ』

 

『はい』

 

『全機、タクヤのバカを探しに行くぞ!』

 

 ケヴィンの事をエスターに任せて、ブラックバルチャー隊はタクヤの捜索をしに市街地の方へと飛んでいく。

 

『エスター、話は着いたか?』

 

 ケヴィンが見計らうようにエスターに通信を入れる。

 エスターとドルチェフが会話をしている間にケヴィンは攻撃をしようと思えば、いつでも攻撃が出来る態勢だった。

 しかし、敢えてそれを行わなかったのは、ケヴィンなりの優しさだったのかも知れない。

 

『……ケヴィンさん』

 

 エスター機は、ケヴィン機の近くまで飛び、バトロイドに変形して近づく。

 

『お願いです、ケヴィンさん……もう、戦うのは止めましょう』

 

 エスターは、ケヴィンに通信で呼び掛ける。

 

『一人でここに来るって事は……エスター、覚悟はできたか?』

 

『僕は、死んでもケヴィンさんを説得します』

 

 エスター機は、覚悟を決めてケヴィン機の前に立ちふさがる。

 

 それと同時にケヴィン機は、エスター機の足元にビームランチャーを撃ち込み、エスター機の足元に穴を開ける。

 

『どうやら、言葉に嘘は無いみたいだな』

 

 ビーム攻撃に臆して逃げると思っていたが、エスターは逃げようとはしなかった。

 エスターが死ぬ気で自分を説得しようと試みる思いにケヴィンは、殺すのが惜しいと言う思いが頭の中を過る。

 

 ケヴィン機は、ビームランチャーをエスター機に目掛けて撃つが、エスター機は、とっさに防弾シールドでビームランチャーを防ぐ。

 ビームランチャーのエネルギー圧にエスター機は、防御しつつも徐々に圧されていく。

 

『そのまま耐えれらるか?』

 

 ケヴィンは、ビームの出力を上げる。

 ビームの出力が上がり、防弾シールドが徐々に溶け始める。

 

「くっ……」

 

 ビームの出力に圧されてエスター機は、片膝を付く。

 

『ケヴィンさん、お願いだから止めてください。ティナさんが悲しみますよ!』

 

 エスターは、必死になってケヴィンを説得する。

 

『ティナの名前を出すんじゃねえ!』

 

 やがて防弾シールドが溶けてエスター機の左腕を貫通してエスター機は、そのまま吹き飛ばされる。

 

『確かに統合軍の行いで被害を受けた人もいます。だからこそ、僕は、その事実を受け止めて、少しでも解り合いたいんです』

 

 エスターは、機体をガウォークに変形させてケヴィン機に突撃する。

 

『そんな綺麗事で争いなんて終わらないんだよ!』

 

 ケヴィン機は、向かってくるエスター機にビームランチャーとミサイルで攻撃する。

 

 エスター機は海面付近を大きく旋回して、水しぶきを揚げてビームを拡散しつつ、ガンポッドでミサイルを撃ち落とす。

 

「くっそー!」

 

 ビームを拡散されて、なかなかビームが当たらない事にケヴィンは苛立ち、その雰囲気は、エスターも僅かながら感じ取っていた。

 そして、エスター機は水しぶきを揚げながらケヴィン機に近づき、ガンポッドの銃剣を右肩のビームランチャーに突き刺す。

 銃剣を突き刺されたケヴィン機の右肩は爆発を起こし、その衝撃でコクピットは大きく揺れる。

 

「うぉあああ!」

 

 銃剣を突き刺されたケヴィン機の右肩は、火花を散らして動かない状態だった。

 

(後は左腕を動かないようにしないと)

 

 右肩が動かないケヴィン機の様子を見たエスターは、勝機を見出そうと必死で頭の中で考える。

 

(!? あそこなら)

 

 空を見上げたエスターは考えを思いついたのか、機体をファイターに変形させて上空へと上昇する。

 

「クソ、逃げんじゃねえよ!」

 

 空へと飛び立つエスター機に目掛けて、ケヴィン機はビームランチャーを連射する。

 

 背後からのケヴィン機の攻撃を何とか避けつつ、エスター機は太陽目掛けてグングンと上昇していく。

 そして、ある程度上昇した所で機体を急速反転させてエスター機は、太陽を背後にケヴィン機に目掛けて加速する。

 

「クッ、くそ、太陽が眩しくて見えねぇ!」

 

 ケヴィンは、手で日差しの光を隠して攻撃する。

 太陽を背に向けたお陰でケヴィン機の攻撃は、エスター機には殆ど当たらなかった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

 エスターは、叫びながら機体をケヴィン機に突撃させる。

 そして機体をバトロイドに変形させて、ガンポッドの銃剣を展開させてケヴィン機の左肩に突き刺した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 エスターは上がる息を抑え、ケヴィン機の動かない左腕を見て勝利を確信する。

 

『ケヴィンさん、もう……止めてください。お願いします』

 

 エスターは、少しだけ涙目になりながらもケヴィンを説得する。

 

『はは……くっそー、やっぱり素人ではプロには勝てないか……』

 

 ケヴィンは、レバーをガチャガチャと動かして腕が動くかを確認するが、両腕共に動かない事を確認した後、シートに凭れる。

 しかし、その表情は悔しさと言うよりも吹っ切れた感じで少しだけ笑っていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……も、もう、は、走れねえ」

 

 静まり返った人通りの少ない路地裏の片隅でタクヤは、息を切らしてうずくまっていた。

 顔は殴られたのか少し腫れぼったくなり、服も所々が破れている。

 

「くっそー、あの店のお陰で酷い目にあったぜ」

 

 タクヤは、路地裏からこっそりと顔を出す。

 辺りはグラサンを掛けた黒ずくめの男達がウロウロとしていた。

 

「はー……通信機と携帯電話が無いから連絡も取れないし、もう最悪だぜ」

 

 タクヤは、思わず大きな溜め息を吐く。

 

グー、キュルルルル……

 

 溜息と同時にお腹の虫も鳴り出した。

 朝から何も口にしていない為、尚更腹の虫も大きな声で鳴いている。

 

「あー、腹減ったなぁ……誰とも連絡取れないし、俺もうダメなのかな……」

 

 タクヤの脳裏に絶望感が過り、思わず涙目になる。

 

「あー、誰か助けに来てくれぇぇぇぇ!」

 

「いたぞ!」

 

 絶望感からタクヤが思わず大声で叫んだ為、黒ずくめの男達に居場所が見つかってしまい、タクヤは路地裏を飛び出して逃げ出す。

 

「ちくしょおおおお、俺のバカヤロー!」

 

 タクヤは大声を出した自分を自責して、叫びながら都心部の方へと必死で逃げる。

 

 人混みを分けながら必死に逃げるタクヤの後ろを黒ずくめの男達が必死に追い掛ける。

 

「誰か、助けてくれぇぇぇぇ!」

 

「ん?」

 

 ドルチェフの指示でタクヤの捜索をしていたレオンは、聞きなれた声のする方を向く。

 

「あれは……もしかしてタクヤか?」

 

 レオンが声のする方向へ向かうと、タクヤは必死の形相で黒ずくめの男達から逃げていた。

 

「アイツ、何やってるんだ?」

 

 タクヤを見つけたレオンは、通信機を取り出してドルチェフに連絡を入れる。

 

『バルチャー3よりバルチャー1。タクヤを見つけました。ポイントはB-2地区からB-3地区へ移動予定。黒ずくめの男達に追い掛けられてます』

 

『バルチャー1、了解。そのまま、タクヤを追え』

 

『了解』

 

 ドルチェフとの通信を終えたレオンは、タクヤを追い掛け始める。

 

「……ったく。アイツは、一体何をやらかしているんだ?」

 

 レオンの通信を受けたドルチェフの声は、溜め息混じりだった。

 それと同時に馬鹿な部下を捜索し、そして振り回される自分に対してイライラ感が募り始める。

 

『バルチャー1から各パイロットへ。バルチャー3がタクヤを見つけた。全員、ポイントB-3へと向かえ』

 

『了解』

 

 捜索を続けるパイロット達へ指示を出した後、ドルチェフもポイントB-3へと向かう。

 

「げ、やべぇ……」

 

 逃げた先は行き止まりになっており、遂にタクヤは追い詰められてしまう。

 

「追い詰めたぞ、クソガキ! さあ、料金を払って貰うぞ」

 

 追い付いた黒ずくめの男達は、タクヤにジリジリと近付いてくる。

 

「う……あ、あ……」

 

 もう逃げ場がないタクヤは、恐怖のあまり言葉が出ず、次第に足がガクガクと震え始めて、その場にへたり込む。

 

「そこまでだ」

 

 黒ずくめの男達の後ろから声が聞こえる。

 

「あ、ああ……」

 

 タクヤは声の主を見て地獄で仏にあったような気持ちになり、先程までの恐怖感からの表情から一転、次第に明るくなる。

 

「大の大人が一人の少年を寄ってたかって囲むのは、大人気ないと思わないか?」

 

 ドルチェフに続いて他のブラックバルチャー隊も次々とやってくる。

 

「な、何だ? テメェらは?」

 

 黒ずくめの男達は、ドルチェフ達に食ってかかる。

 

「俺達は統合軍だ。そこの少年は、俺達の部下だから返して貰おうか」

 

「統合軍? なら話は早い。コイツ、俺達の店で飲み食いした挙げ句、金を払わないんだから代わりに払え」

 

 長身の黒ずくめの男がドルチェフに事の成り行きを説明する。

 その説明を聞いたドルチェフは、次第に頭痛を感じ始める。

 

「……そうか、それはすまなかった。それで、幾らだ?」

 

 男から事の説明を聞いたドルチェフは、素直に男の要求を受け入れる。

 

「え? ちょ、隊長、何を払おうとしてるんだよ! コイツら、ぼったくりバーの連中だぜ!」

 

 タクヤは、黒ずくめの男達の要求を受け入れるドルチェフを見て怒鳴り散らす。

 

「馬鹿野郎! 元はと言えば、そう言う店を見抜けなかったお前が悪いんだろうが!」

 

 タクヤのあまりにも軽率な行動に怒りを感じたドルチェフは、逆にタクヤを説教する。

 

「とりあえず、部下が失礼した。振込先と金額を教えてくれ」

 

「わかった」

 

 長身の男は、紙切れに振込先と金額を書いてドルチェフに渡す。

 

「明日中には、振り込んでおこう。もし、振り込まれていなかったらココに連絡をくれ」

 

 ドルチェフは、連絡先を書いたメモを男に渡す。

 

「おほ、さすが統合軍。話がわかるじゃねぇか」

 

 メモを受け取った長身の男は、思わず上機嫌になる。

 

「物分かりのいい上司がいて良かったな。また遊びに来いよ」

 

 へたり込むタクヤの肩を嬉しそうに叩きながら長身の男は、他の黒ずくめの男達と帰っていく。

 その様子を見ていたタクヤは、間抜けな面を晒していた。

 

「さて、タクヤ……」

 

 ドルチェフは、タクヤを殺気立った目で睨み付ける。

 他のブラックバルチャー隊もタクヤを呆れた表情で見ていた。

 

「あ、え、えーと……」

 

 タクヤは、ドルチェフの殺気立った目を前にしどろもどろになる。

 

「お前とエスターの任務は、何だ?」

 

 ドルチェフは、ドスの効いた声でタクヤに問い掛ける。

 

「え、えーと……その……」

 

 ドスの効いたドルチェフの声にタクヤは、たじろぎながら冷や汗を流す。

 

「忘れたか?」

 

「は……はい」

 

 今のタクヤの頭の中は、真っ白になっており、返答するのがやっとだった。

 

「そうか。お前達の任務は惑星オルファンにある反統合軍の隠れ家を探す事だ。

思い出したか?」

 

「は……はい」

 

「任務遂行なのに何故お前は、ぼったくりバーの男達に追い掛けられる?」

 

 再びドルチェフは、ドスの効いた声でタクヤに問い掛ける。

 

「え、えーと……そ、その……」

 

 再びタクヤの足はガクガクと震えだし、すでに涙目状態だった。

 

「まあ、いい。お前の説教は、後でたっぷりとしてやるから楽しみにしておけ。今は、エスターを助けに行くぞ」

 

 ブラックバルチャー隊は、急いでエスターの援護に向かう。

 

『はー、俺の負けだ。潔く負けを認めるわ』

 

 ケヴィンは、両手を挙げて降伏の仕草をする。

 

『……すみません、何だか色々と』

 

 降伏する仕草を見せるケヴィンに対してエスターは、罪悪感を感じたのか申し訳無さそうに頭を下げる。

 

『まあ、仕方ないさ。お前は、ただ仕事を全うしただけなんだしな。それに済んだ事をいつまでも引きずるなんて、俺らしくないしな』

 

 潔く負けを認めて開き直ったケヴィンは、シートにもたれ掛かかるように寝転がる。

 その表情は、先程の闘争心を見せる表情とは違い、いつもの陽気で活発な表情だった。

 

『ケヴィンさん』

 

 ケヴィンの表情につられてエスターも笑顔を見せる。

 

『お疲れ様。でも、残念ですね』

 

 突如、何者かが二人の通信に割り込んでくる。

 

『誰だ!』

 

 割り込んできた通信を聞き、ケヴィンは辺りを見回す。

 エスターも辺りを見回しながら警戒する。

 

『せっかく、我々の試作機であるシルフィードを貸し出したのに、たった1機にやられるなんて本当に情けないですね』

 

 通信主である男は、物腰が柔らかく口調、且つ丁寧な言葉遣いでケヴィンを挑発する。

 

『うるせえ! 能書きはいいから、とっとと姿を見せろ!』

 

 声だけで姿を見せない男にケヴィンは、苛立ちを見せる。

 

『残念ながら、姿を見せる訳にはいきません。もうすぐ、この辺り一帯は消えて無くなるんですからね』

 

『消えるって、どういう事だ?』

 

『あなたは、我々の提示した任務を失敗したのですよ。その代償を受けるのは、当然ですよね? だから、この島一帯を消す事にしました』

 

『待てよ、任務に失敗した代償を受けるなら俺だけで充分じゃないのか?』

 

『所謂、連帯責任と言う物でしょうかね?』

 

『なんだと!』

 

『シルフィードで統合軍の研究施設を完全に破壊できれば良かったのですが、残念ながら、あなたは完全破壊はおろか、シルフィードを使い物にならないようにしてしまいましたからね。あなた一人で失敗の代償は償えませんからね。だから、この島にも責任を取ってもらいます』

 

 男は、相変わらず物腰の柔らかい口調と丁寧な言葉遣いで黙々と話す。

 

『ふざけるな! 勝手な事を言うんじゃねえよ!』

 

『まずは小手調べです。お二方、上をご覧なさい』

 

 男の言葉に二人が見上げると、4機の大型爆撃機VAB-2とVF-5000とVF-11の混成大部隊が徐々に降下を開始していた。

 

『な、なんて数……』

 

 エスターは、大部隊の数に固唾を飲む。

 その数はエスターとケヴィンだけでは、太刀打ちできないくらいだった。

 

『まずは、ほんの挨拶代わりです』

 

 男の通信が終わると、1機のVAB-2が付近の孤島に向けて1発の反応弾を発射する。

 

『まて、あの先にはティナが……』

 

『え!?』

 

 反応弾の発射先を見たケヴィンは、驚愕する。

 ケヴィンの言葉にエスターも同じように驚く。

 

 発射された反応弾は、徐々に孤島へと向かう。

 

「やらせるかよ!」

 

 ケヴィンは、ジョイスティックのトリガーを弾いて反応弾を撃ち落とそうとするが、先程のエスターとの戦闘で使い物にならない状態にされた為、ビームが発射される事はなかった。

 

「こんな時に、クッソォォォォォ!」

 

 何も出来ない事にケヴィンは、怒りに任せてコンソールパネルを思い切り叩く。

 

 やがて、発射された反応弾は、そのまま孤島に命中して辺りを焼き尽くす。

 一瞬の事に島民達は、あっという間に消し炭になる。

 勿論、その中にはティナも含まれていた。

 

「……ティナ、ティナァァァァァァァァ!」

 

 燃え盛る孤島の姿にケヴィンの悲痛な叫びがこだまする。

 

「……そんな」

 

 初めて見る反応弾の圧倒的な威力にエスターは、放心状態になる。

 

『私からの挨拶、喜んで頂けましたか?』

 

 あざ笑うかのような男の通信にケヴィンは、身体を震わせる

 

『エスター、大丈夫か?』

 

 ドルチェフから通信が入る。

 

『……隊長』

 

 ドルチェフの通信にエスターは反応するが、その表情は呆けており、声も涙声だった。

 

『あの爆発は、まさか反応弾か?』

 

 ドルチェフの言葉にエスターは、黙って頷く。

 

『くっ……反統合軍のヤツらめ』

 

 反応弾の恐ろしさを経験しているだけにドルチェフは、激しく怒りを露わにする。

 

『おやおや、他にも来客がいましたか。ちょうどいい、丁重に持て成しましょう』

 

 男の通信と共に混成部隊がブラックバルチャー隊に襲い掛かる。

 

『バルチャー1から各機へ。各自、散開して迎撃態勢を取れ。カイルとトールは、通信主の索敵ならびにVAB-2の攻撃進路の解析だ』

 

『了解』

 

 ドルチェフの通信を受け、ブラックバルチャー隊は散開して迎撃態勢に移る。

 大多数の混成部隊に屈する事なく、ブラックバルチャー隊は次々と混成部隊の機体を撃ち落としていく。

 

『隊長。俺、エスターの様子を見てくる』

 

『わかった。気を付けて行け』

 

 ドルチェフに通信を入れて、タクヤ機はエスターの元へと向かう。

 途中、混成部隊がタクヤ機に攻撃を仕掛けようとするが、仲間達の援護により、事なきを得て無事にエスターの元へと向かう。

 

『エスター。お前、大丈夫か?』

 

 ケヴィン機ことシルフィードに肩乗りしたエスター機を見ながら、タクヤがエスターに通信を入れる。

 

『タクヤ、お願いだから相手の機体は撃たないで!』

 

 タクヤ機の存在に気付き、エスターはタクヤに通信を入れる。

 それでもケンカ早いタクヤの場合、あらかじめ通信を入れても攻撃をする可能性が高いので、エスターは内心、不安に感じていた。

 

『わ、わかった。それにしても、前のブラッドなんとかもデカかったけど、コイツもデケぇなぁ……』

 

 タクヤは、機体をガウォークに変形させて近づき、マジマジとシルフィードを見る。

 ネルが元々所属していた反統合軍組織レッド・バタフライにも大型の機動兵器であるブラッド・ザンバインが搬入されていたが、シルフィードもブラッド・ザンバインに劣らない程の大きさだった。

 

『ケヴィンさん』

 

 ケヴィンの様子が気になり、エスターはケヴィンに通信を入れる。

 

 モニターには、顔を伏せて肩を震わせるケヴィンの姿が映し出される。

 最愛の妻を反統合軍に殺されて悲しみに暮れるケヴィンの姿は、モニター越しからも伝わってきていた。

 声を押し殺して泣くケヴィンの姿を見て、思わずエスターは居たたまれなくなる。

 

 反統合軍とブラックバルチャー隊の戦いは、熾烈を極めていた。

 

「クソ、数が多すぎる」

 

 ドルチェフ機は、攻撃を仕掛ける混成部隊の機体を次々と撃ち落とす。

 しかし、上空から次々と援軍が来る為、苦戦を強いられる一方だった。

 

『マリア、そっちはどうだ?』

 

『ダメ、数が多すぎるわ』

 

 マリアの方も次々と来る援軍の数に徐々に押されていた。

 

『ホークス2から、各機へ。こちらの確認でオルファン上空には、大型艦クラス3隻、巡洋艦クラス7隻を確認しました』

 

 エミリアからブラックバルチャー隊に通信が入る。

 

『かなりの大部隊だな』

 

『隊長、こちらも支援要請を出しますか?』

 

 反統合軍の艦隊を見たエミリアがドルチェフに支援要請を提案する。

 

『俺達がいくら支援要請を出しても、統合軍は援軍を寄こしはしないだろう。なんせ、俺達は掃きだめ部隊だからな』

 

『そんな……』

 

 統合軍からしたら掃きだめ部隊故に全滅してもらった方が有難いとドルチェフは思っていた。

 

『隊長。これじゃあ、いくら撃ち落としてもキリがありません』

 

 物陰からスナイパーライフルで援護射撃をするフォルトがボヤく。

 

『このままでは、こちらが消耗するのも時間の問題です』

 

 戦況を見たカイルが通信を入れる。

 

『隊長、大変です』

 

 トールが慌ててドルチェフに通信を入れる。

 

『どうした?』

 

『爆撃機の進路報告を索敵したところ、進路報告先には都心部が見えます。恐らく、ヤツらの狙いは反応弾による都心部の攻撃だと思います』

 

 索敵情報を元にトールは爆撃機の情報をドルチェフに伝える。

 

『やはり、そうか……バルチャー1より各機へ、爆撃機を止めろ。急がないと都心部が反応弾で攻撃される!』

 

 ドルチェフは、ブラックバルチャー隊に通信を入れる。

 

『ドルチェフ、こっちは敵に阻まれて行けないわ』

 

 反統合軍の攻撃を防ぎながらマリアから通信が入る。

 

『バルチャー5。こちらもダメです』

 

『バルチャー6。同じく追撃が出来ません』

 

 マリアを筆頭に次々と爆撃機追撃不可能の通信がドルチェフに入る。

 それだけ反統合軍の部隊数が多く、且つ増援も多いのだろう。

 次々と入る通信にドルチェフの表情が次第に険しくなっていく。

 

『くそ。あと近いのは……タクヤとエスターか』

 

 正直、タクヤとエスターに爆撃機の追撃は荷が重すぎると内心思っていた。

 しかし、今の現状を考えると、そうも言ってはいられない。

 ドルチェフは、タクヤとエスターに一縷の望みを賭けて回線を開ける。

 

『タクヤ、エスター、聞こえるか? 爆撃機がそっちに向かっている。何としても止めるんだ!』

 

 タクヤとエスターにドルチェフからの通信が入る。

 その声からは焦りが感じられる。

 

「隊長の声からして、かなり状況的にマズいんだろうな」

 

 普段、あまり焦るような様子を見せないドルチェフが、声のトーンからここまで追い詰められているのを感じたエスターは、危機感を持ち始める。

 

「あ、アイツか」

 

 タクヤは、肉眼で4機のVAB-2と混成部隊で編成された爆撃部隊を確認する。

 

『タクヤ、急がないと』

 

『おう!』

 

 タクヤとエスターは、機体を浮上させる。

 

「あ、あれ。出力が上がらない」

 

 エスターは必死にスロットルを上げるが、機体のエンジン出力があまり上がらなかった。

 

『タクヤ、エンジンの出力が上がらない!』

 

 エスターは、出力が上がらないエンジンに焦りながらタクヤに通信を入れる。

 

『ちょ、マジかよ!?』

 

 エスターの通信にタクヤは急に焦りだす。

 

『勘弁してくれよ。俺一人で爆撃機を追撃なんて出来ねえよ』

 

 エスターの状況にタクヤは、不安と焦りで苛つきだす。

 

『ゴメン……タクヤ』

 

 いざという時に何も出来ない自分に対してエスターは、嫌悪感を募らせる。

 

『エスター』

 

 焦る二人にケヴィンがエスターに通信を入れる。

 

『ケヴィンさん……』

 

『あの爆撃機。俺が止めてやる』

 

 ケヴィンは、伏せていた顔を上げる。

 その表情は、怒りに燃えていた。

 

『俺の生まれ育った故郷を……あんなヤツに滅ぼされてたまるかよ!』

 

 愛する妻を殺され、そして今、自分の生まれ育った故郷も破壊しようとする反統合軍のやり方にケヴィンは復讐に燃えていた。

 

『そんな、その機体では無理です!』

 

『そうだよ、止めとけよ』

 

 タクヤとエスターは、怒りに燃えるケヴィンを説得する。

 既にボロボロな機体で爆撃機を追撃する事自体が無謀だった。

 

『うるせえ、黙ってろ!』

 

 ケヴィンは、説得する二人を怒鳴り散らす。

 その怒鳴り声に二人は、ビビって黙り込む。

 

『おい』

 

 ケヴィンは、タクヤに通信を入れる。

 

『……な、なんだよ』

 

 怒り狂うケヴィンに声を掛けられ、タクヤは少しビビった状態で通信に応じる。

 

『エスターを連れて遠くに逃げろ。それも、なるべく遠くにだ。お前達の仲間にもそう伝えろ』

 

 それだけを伝えて、ケヴィンは機体を動かす。

 

『ケヴィンさん!』

 

 エスターの叫びも虚しく、シルフィードは爆撃部隊に向かって飛ぶ。

 

『エスター、あの人の言うとおりにしよう』

 

 タクヤは、ポツリと呟きの通信をエスターに入れる。

 ケヴィンの言葉は、既に死を覚悟していた事をタクヤは悟っていた。

 

『どうして、そんな事を言うのさ! タクヤ、そんな事を言わないで助けに……』

 

『ワガママ言ってんじゃねえ!』

 

 エスターの言葉を遮り、タクヤは怒鳴る。

 突然の事にエスターは、言葉を詰まらせる。

 

『タクヤ……』

 

『今、行った所で俺達に何が出来るんだよ。あの人は……あの人はなあ……もう覚悟を決めたんだよ。俺達は、あの人の言う通りにしてやろうぜ』

 

 タクヤは、目に涙を浮かべながら話す。

 タクヤやエスター、そして、ブラックバルチャー隊を巻き込まない為に死を覚悟して生まれ故郷を救おうとするケヴィンの想いを無駄にしない為だった。

 

『う、うぅ……うあぁぁぁぁ』

 

 エスターの目から涙が零れ落ち、そのまま泣き崩れる。

 エスターにとって、何一つケヴィンに対して恩返しが出来なかった事への悔しさの想いがいっぱいだった。

 

『エスター、いつまでも泣いてんじゃねえよ』

 

『……うん』

 

 二人は機体をファイターに変形させて、その場から離れる。

 出力が上がらない機体を何とか必死に上げながらエスター機は飛ぶ。

 

 やがて2機は、戦場へと近づく。

 

『エスター、援護するから早くおっさんに連絡しろ』

 

 出力の上がらないエスター機を護る為、タクヤは周りの状況を確認し始める。

 

『うん……バルチャー12から、バルチャー1』

 

 エスターは、ドルチェフに通信を入れる。

 しかし、その声は涙声で震えていた。

 

『エスターか。どうした?』

 

『隊長、急いでその場から離れてください』

 

『どういう事だ?』

 

『彼が……彼が、い、命懸けで、爆撃機を……破壊します。だ、だから……だから、爆発に……巻き込まれないように……に、逃げてください』

 

 ケヴィンの事を思い出したエスターは、溢れる涙を抑えながらも涙声でまともに喋られない声を必死に出しながらドルチェフに話す。

 

『……わかった』

 

 ドルチェフは、エスターの涙声から内容を理解したのか、エスターの言葉に頷く。

 

『バルチャー1から各機へ。至急、この場から急いで脱出しろ。間もなく反応弾が爆発する』

 

『了解』

 

 ドルチェフの通信を受けてブラックバルチャー隊は、混成部隊に攻撃しながら次々と脱出する。

 

『隊長、エスターの機体が出力が上がらないんだ』

 

『わかった。俺も援護に回る』

 

 タクヤの通信を受けてドルチェフもエスターの援護に加わる。

 

『エスター』

 

 エスターが退避する最中、ケヴィンから通信が入る。

 

『ケヴィンさん……』

 

『本当に短い間だったけど、色々と楽しかったぜ』

 

『僕も……僕も、楽しかったです』

 

 エスターは、止めどもなくなく溢れ出る涙を拭う。

 

『もう少し色々と話をしたいけど、そろそろ切るわ。じゃあな、エスター……あばよ』

 

 死を覚悟したのか、涙が零れそうになる姿をエスターに見られたくないのか、ケヴィンは俯いたまま通信回線を切る。

 

『ケヴィンさん!』

 

 エスターはケヴィンへの通信回線を開けるが、ケヴィンからの応答は返って来る事は二度と無かった。

 

「さて……今日は、大型のエイが4枚にカジキやマグロと大量だな!」

 

 ケヴィンは、目の前に見える爆撃部隊を魚に例えて、スロットルレバーを一気に上げる。

 

 シルフィードに気付いた混成部隊は攻撃を仕掛けるが、それに怯む事もなくシルフィードはVAB-2目掛けて突っ込んでいく。

 

 次々と攻撃を食らいボロボロとなるシルフィード。

 それでもなお、怯む事無く目標であるVAB-2へと向かう。

 

「ティナ、今日は大漁だったぜ……もうすぐ、お前の元へ行くからな」

 

 そして、1機のVAB-2に取り付くと、ハードポイントに懸架されている反応弾を殴り壊す。

 

 シルフィードにより破壊された反応弾は、大爆発を起こし、シルフィードを含めた爆撃部隊は爆発の中へと消えてゆく。

 

 そして、巨大な爆光と大きな振動が全体に響き渡る。

 その衝撃や爆風は、ブラックバルチャー隊やそれを追いかける混成部隊にもやって来る。

 

『来るぞ、全機回避行動に移れ!』

 

『了解』

 

 間もなく反応弾の衝撃が来る事に気付いたドルチェフは、反応弾の衝撃に備えるようにパイロット達へ通信を入れる。

 

 混成部隊は、爆風により次々と巻き添えをくらって撃墜され、ブラックバルチャー隊の機体も爆風の煽りを受けて吹き飛ばされる。

 

「うぉあああああ!」

 

 パイロット達は、必死に操縦桿を引きながらバーニアを吹かせるが、爆風の勢いで機体が制御できずに機体をそのまま地面や海水に叩き付けられた状態で不時着を余儀なくされる。

 

「おやおや、最後は反応弾と心中ですか」

 

 大きな爆光が輝くオルファンを見て男は呟く。

 

「こちらの戦力もかなり被害が発生しておりますが、いかがいたしますか?」

 

 オペレーターが男に戦況を報告して指示を仰ぐ。

 

「この惑星にもう用はありません。残存機収容後、撤退します」

 

 オルファン内に残存する機体は、男からの指示で次々と惑星内から撤退を始める。

 残存機を艦艇に収容後、艦隊はフォールドして撤退する。

 

『バルチャー1より各機へ。全員……無事か?』

 

『バルチャー2、こっちは大丈夫よ』

 

『バルチャー9、こっちも大丈夫です』

 

 ドルチェフの安否確認に次々と応答が入る。

 

『タクヤ、エスター。お前たちも無事か?』

 

 タクヤとエスターから応答が来ない為、ドルチェフは二人に通信を入れる。

 

『と、とりあえず、ぶ、無事……』

 

 タクヤは、目を回しながら通信に応える。

 

『……ぼ、僕も……無事……です』

 

 エスターは、弱弱しい声で通信に応答する。

 二人の安否を確認したドルチェフは、ホッとした表情を見せる。

 

『ホークス3から各機へ。敵部隊は艦載機を収容後に撤退しました』

 

 ラナから敵部隊撤退の通信が入る。

 

『バルチャー1より各機へ。ご苦労だった。これより帰還する』

 

 ドルチェフの命令でブラックバルチャー隊は、ブロウニングへと帰還する。

 

「それにしても、今回は本当に危なかったな」

 

 ドルチェフは、ヘルメットのバイザーを開けて流れる汗を拭う。

 

 ケヴィンの命懸けの特攻により、反応弾による都心部攻撃は防がれた。

 しかし、エスターにとって、その代償はあまりにも大きかった。

 

「ケヴィンさん……」

 

 ブロウニングに機体を収容後もエスターは、機体から降りず、コクピットの中で声を押し殺して泣いていた。

 




次回予告

 惑星オルファンでの戦いで精神的に傷ついたエスター。
 彼は、立ち直る事が出来るのか?

次回「フラッシュ・イン・ザ・ダーク」
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