惑星オルファンでの戦いから1日が過ぎた。
エスターは、ベッドの中で布団を頭から被り塞ぎ込み、目は虚ろで心ここに非ずの状態だった。
「なあエスター、飯に行こうぜ」
普段はエスターに起こされてばかりのタクヤが珍しく早起きをして、エスターを食事に誘う。
しかし、エスターからは何も返事は無かった。
「確かに色々あったけどさ……元気だしなって」
少しでも元気づけようとタクヤはエスターに励ましの言葉を掛けるが、それでもエスターは、布団から顔を出そうとはしなかった。
「エスター、エスターってば!」
タクヤは、布団を被るエスターの身体を揺さぶるが、それでもエスターは起きようとはしなかった。
「おいいい!」
起きないエスターに業を煮やしたタクヤは、エスターの布団を無理矢理剥がす。
布団を剥がすと、そこには身体を丸めて横たわるエスターがいた。
「なあ、エスター。元気出しなよ……な!」
タクヤは、塞ぎ込むエスターを励ます。
しかし、当のエスターは、タクヤの言葉に全く反応する気配はなかった。
「……ダメだこりゃ」
エスターの様子を見たタクヤは、大きく溜め息を吐き、そのまま部屋を後にする。
「はあ……ったく、どうしたらエスターが元気になるかなぁ」
タクヤは、ブツブツと独り言を呟きながら食堂へと歩く。
「おはよう、タクヤ」
食堂へ向かうタクヤを見掛けてマリアが声を掛ける。
「おはようございます」
マリアに声を掛けられてタクヤは挨拶をするが、いつもの様な元気は無かった。
「エスター、そんなに酷いの?」
いつもエスターと連んでいるタクヤが一人だった事とタクヤ自身にいつもの元気が無かった為、マリアはエスターの様子を伺う。
「ぜーんぜんダメ。こっちが声を掛けても全く反応すらしない」
タクヤは、半ば諦めた表情を見せながらエスターの様子をマリアに説明する。
「そう……」
「しゃあない、後で飯でも差し入れしてやっかな」
「あら、優しいのね。明日は、雨が降るんじゃないかしら?」
タクヤの意外な優しさにマリアは、少しだけ感心する。
いつもはエスターを振り回している感じなので、尚更そう感じるのだった。
「俺だって、ちゃんとエスターの事は思いやってるんだぜ」
エスターの事を思いやっているアピールをするかの様にタクヤは、得意気な表情をする。
(いつもエスターに迷惑を掛けてる所しか見てないけど……)
そんなタクヤをマリアは、苦笑いしながら見ていた。
マリアと別れて食堂にやってきたタクヤは、トレイに色々な食べ物を掴んで置いていく。
(とりあえず、エスターの分は後で用意しておくかな)
食べ物を取り終えたタクヤは、空いたテーブルを見つけて椅子に座る。
ふとテレビに視線を向けると、昨日のオルファンでの戦闘がニュースで流れていた。
惑星オルファンでの戦闘は、統合軍の施設がほぼ全滅し、一部の島が反統合政府軍の反応弾により消滅した以外に大きな被害は無かった。
「あの人のおかげで、あの惑星は助かったんだよな……」
タクヤは、ケヴィンの事を思い出す。
ケヴィンの命懸けの特攻により、反応弾を搭載した爆撃機を撃墜する事に成功したのだ。
その事を知っているのは、ブラックバルチャー隊のパイロット達だけである。
「どうしたタクヤ、浮かない顔して」
スキンヘッド頭に巻いたターバンが特徴のマルスがタクヤの向かいに座る。
「マルスさん」
「あの、ニュース……」
マルスもニュースの視線を向けて、苦虫を?み潰したような表情をする。
「ところでエスターのヤツ、大丈夫か?」
塞ぎ込んでいるエスターを心配しながら、マルスはホットドッグを頬張る。
心配するマルスの言葉にタクヤは首を横に振る。
「……そっか」
「ねえマルスさん。俺、どうしたら良いと思う?」
自分なりに励ましてはみたものの、未だに明るい表情を見せないエスターにタクヤは思わず胸中を吐露する。
「そうだなあ……俺も戦争で親や友達を亡くしてるから、それに近い気持ちは解らないでもないなぁ」
タクヤの質問にマルスは、腕組みしながら考える。
マルス自身、故郷をゼントラーディの強襲により親や友人を亡くしている。
親しい人が亡くなると、人間と言うのは無気力になるものである。
「マルスさんは、どうやって立ち直ったんですか?」
マルスの心境を聞き、タクヤは再度質問する。
「俺か? そうだなぁ……俺の場合は、時間が解決してくれたな」
「……時間かぁ」
「下手に励ますのもダメだしな」
「ほっとけば良いんですか?」
「本来はな。ただ、ここは軍隊だ。そんな理由が通るとでも思うか?」
「ああ、確かに。おっさん、絶対に許してくれないしなぁ……」
マルスの言葉にタクヤも腕組みしながら考える。
今のエスターの状況をドルチェフに伝えたとしても、彼は絶対に許してくれるどころか、逆に説教されるだろう。
そして、そのとばっちりは間違いなく自分に降りかかって来るだろう。
「とりあえず、医者にでも見せたら少しは答えが見つかるんじゃないか?」
そう言いながらマルスは、ホットドッグを食べ終える。
「そうすっかな。マルスさん、ありがとうございます」
答えが見つかり安心したのか、タクヤは食事をバカバカと食べ始める。
エスターの事で色々と悩んでいた影響で食が進まなかったが、悩みが解決すると同時にお腹の虫も鳴り、食欲が出てきていた。
そして、「何で、こんな事で悩んでいたんだろう」と思えてくるようになる。
「ふー、食った食った」
食事を終えたタクヤは、食堂を後にして医務室へ足を運ぶ。
食堂から少し歩いた場所に医務室がある。
「……そう言えば、医務室の中に入るの初めてだなぁ」
ふと、医務室の前にやってきてタクヤは呟く。
軽い怪我や病気をしても殆どエスターが医務室から応急用の薬等を持って来てくれる為、タクヤ自身は医務室に一度も行ってた事が無いのだ。
「失礼しま~す」
ドアをノックしてタクヤは医務室に入る。
医務室に入ると、白衣を着た男性と看護士がコーヒーを飲みながら雑談をしていた。
「どうした? どこか調子でも悪いのか?」
医務室に入ってきたタクヤを見るなり医師は声を掛ける。
「えーと、俺じゃなくて、友達がちょっと……」
「友達が、どうかしたのかい?」
「その何て言うのか、えーと、昨日の戦闘で人が死んで、そのショックで塞ぎ込んでいると言うか、何て言うか……」
タクヤは、身振り手振りでエスターの状況を医師に説明する。
「あの……イマイチ何を言っているのか、よく解らないのだが……」
タクヤのしどろもどろな説明に医師は、内容を全く理解が出来ていなかった。
「だぁぁぁぁ! もう、とにかく来てくれ!」
説明が面倒くさくなったタクヤが医師の手を掴んでエスターの元へ連れて行こうとした、その時、
『全パイロットに告ぐ。これよりブリーフィングを開始するので、早急に徴収せよ。
繰り返す……』
アイナの施設内放送が基地内に流れる。
「何だよ、こんな時に……あー、クソ!」
アイナの放送を聞いたタクヤは、思わず頭を抱え込む。
医師に診てもらえば、エスターの症状が分かると思った矢先の出来事だけに余計にイライラ感が増す。
「呼ばれているみたいだし、とりあえず、行った方が良いんじゃないか?」
「はぁ……そうするか」
医師に急かされてタクヤは、掴んでいた手を放して急いでブリーフィングルームへと向かう。
ブリーフィングルームに到着したタクヤは、キョロキョロと辺りを見回すが、そこにエスターの姿は無かった。
(……やっぱり、来てないか)
エスターがいないのを確認したタクヤは、深い溜め息を吐きつつも後ろの席に座る。
しばらくして、ドルチェフとアイナがブリーフィングルームに入ってくる。
教壇に立ったドルチェフは、辺りを見回してエスターがいない事に気付く。
「タクヤ、エスターはどうした?」
「え? いや、その……昨日の件で、ちょっとばかし塞ぎ込んでまして」
ドルチェフの問い掛けにタクヤは、ドルチェフに目を合わせないように理由を話す。
「……タクヤ、もう一度、言え」
ドルチェフはドスが効いた様に声を低くくし、更に殺気立った視線をタクヤへと向ける。
「え、ええと……その、き、昨日の事で、ふ、塞ぎ、込んでて……」
ドルチェフの殺気立った視線とドスの効いた低い声にタクヤは、ビクビクしながら問い掛けに応える。
「……そうか。アイナ、俺の代わりに作戦の説明を頼む」
「え? は、はあ……」
「作戦説明はアイナから聞け、いいな!」
アイナに作戦説明を任せてたドルチェフは、ブリーフィングルームを後にする。
(こりゃ、ヤバいかな……)
ドルチェフがブリーフィングルームを出た後、タクヤは急に不安な面持ちになる。
おそらくエスターは、ドルチェフに思い切り怒られたりしているのではないかと、頭の中でますます不安になる。
不安な気持ちで居ても立っても居られなくなったタクヤが、こっそりとブリーフィングルームを抜け出そうとした、その時、
「タクヤ、待ちなさい!」
マリアに呼び止められ、タクヤは固まる。
「急にブリーフィングルームを抜けて何処へ行く気かしら?」
「え、えーと……ちょっとトイレに」
マリアの問い掛けにタクヤの表情は引きつる。
「くっ!」
タクヤは、隙を見てブリーフィングルームを抜け出す。
「タクヤ、待ちなさい!」
マリアの呼び掛けを無視してタクヤは、急いでドルチェフの後を追い掛ける。
「もう、タクヤったら! アイナ、そのまま説明を続けて」
そう言ってマリアもタクヤの後を追い掛けるようにブリーフィングルームを出ていく。
タクヤが急いで自室に戻る頃、ちょうどドルチェフが部屋に入ろうとしていた。
「隊長、待ってくれ!」
部屋に入ろうとするドルチェフにタクヤは大声で呼び掛ける。
「何だタクヤ、ブリーフィングに戻らんか!」
ブリーフィングを抜け出してきたタクヤをドルチェフは怒鳴り散らす。
「隊長。頼むからエスターの事は、そっとしておいてくれよ」
「うるさい!」
タクヤの言葉を無視して、ドルチェフは部屋に入る。
「タクヤ!」
後を追い掛けてきたマリアがタクヤに追い付く。
「エスターの事は隊長に任せて、あなたはブリーフィングに戻りなさい!」
マリアは、タクヤの後ろ襟首を掴んで連れ戻そうとする。
「クソ、離せよ! 離せっつってんだろ!」
タクヤは、マリアの手を強引に振り解いて部屋の中に入る。
「エスター!」
タクヤが部屋に入ると、エスターはドルチェフに布団を剥がされ、そしてシャツの首元を掴まれていた。
「ちょ、止めてやれよ!」
タクヤは、エスターのシャツの首元を掴んでいるドルチェフの手を強引に離そうとする。
しかし、それに構わずドルチェフは、無言でタクヤを強引に振り払う。
「エスター、いつまで塞ぎ込んでいるつもりだ? ここは軍隊だ。感情や情けで毎回毎回塞ぎ込んでいるんじゃねえ!」
ドルチェフは、エスターのシャツの首元を掴んで強引に身体を揺さぶる。
「……僕の、僕のせい……なんだ。僕が……僕が、ちゃんと任務を……遂行していれば……ケヴィンさんやティナさんは……死ななかったんだ」
エスターは、目から涙をこぼしながらポツリと自責の念を呟く。
「く……この大馬鹿野郎!」
その様子を見かねたドルチェフは、エスターを思い切り殴り飛ばす。
その反動でエスターは、身体を壁に強く打ち付ける。
それでもエスターは、殆ど微動だにしなかった。
「エスター!」
殴られたエスターを心配して、タクヤが傍に駆け寄る。
「エスター。おい、しっかりしろよ!」
タクヤは、動かないエスターに必死に呼び掛ける。
しかし、エスターはタクヤの呼び掛けには全く応じる事は無く、その瞳の奥は光を見せていなかった。
「なあ、隊長。頼む、お願いだから止めてくれよ! エスターは、一生懸命やれる事はやったんだから許してあげてくれよ! マリア大尉も隊長に何か言ってやってくれよ」
タクヤはエスターを庇うように前に立ち、そしてドルチェフとマリアに土下座をして必死に頼み込む。
普段、いい加減な行動ばかりをしているタクヤしか目にしないドルチェフとマリアには、今のタクヤの姿は滑稽に見えていた。
「じゃあ、タクヤ。お前さんがそう言うのなら、俺は何回も人の死に様を見たんだから休んでも良いんだな?」
「え?」
今までの戦いでドルチェフは、同僚のパイロットや信頼していた仲間達の死に様を目の前で多く見てきていた。
その問い掛けに対して、タクヤは言葉を詰まらせていた。
「そ、それは……その」
「どけぇ!」
ドルチェフは狼狽えるタクヤを蹴り飛ばして、再びエスターの首元を掴む。
「いいか、エスター。戦争は遊びじゃないんだ! ちょっとした感情で死ぬ事だってあるんだぞ!」
「……それなら、僕は……死んだ方が良かったです」
「貴様ぁぁぁぁ!」
エスターの自虐的な屁理屈にドルチェフは激高し、エスターに往復ビンタをする。
「止めろ、止めろっつってんだろ!」
タクヤは、思わずドルチェフに飛びかかり、そのまま右腕に噛みつく。
「タクヤ、止めんか!」
「止めなさい、タクヤ!」
しがみつくタクヤをドルチェフは必死に振り払い、マリアも加勢してタクヤを掴んでドルチェフから引き離そうとする。
「は、離すもんかぁぁぁぁぁ!」
タクヤ自身もドルチェフに必死の形相でしがみついて離れようとはしなかった。
「そんなに殴ったら可哀想だろ! エスターはな……エスターは、女なんだぞ!」
「!?」
「え!?」
これ以上ドルチェフに殴られるエスターを見たくなかったのか、思わずタクヤは叫ぶ。
タクヤの言葉にドルチェフもマリアも一瞬、動きが止まる。
「タクヤ、嘘をつくならもっとマシな嘘をつかんか! そんな言葉、誰が信じる!」
タクヤの言葉にドルチェフは思わず怒鳴り散らし、その勢いに任せてタクヤを投げ飛ばす。
「ぐえ!」
ドルチェフに思い切り投げ飛ばされたタクヤは、壁に叩き付けられてカエルの潰れた様な声を上げる。
そして、壁に叩き付けられて伸びているタクヤの胸倉を思い切り掴む。
「タクヤ、エスターが女だなんて見え透いたような嘘をつきやがって……謝るならまだ間に合うぞ」
こんな状況下で嘘をつくタクヤに対して、ドルチェフのイライラ感は更に増していた。
「……本当です」
エスターは、俯き加減な顔を上げて呟く。
「え?」
エスターの呟きにドルチェフとマリアは、エスターの方を向く。
「……タクヤの言っている事は本当です。正しくは、元女性です」
エスターは、ドルチェフに殴られた顔をさすりながら黙々と話す。
「どういう事だ?」
エスターの言葉にドルチェフは、思わず問い掛ける。
「僕は元々、女性として産まれました。でも、1歳くらいの頃に家族と旅行に出掛けた時のフォールド中に宇宙病に掛かって、性別が逆転したと両親から聞きました」
エスターは、黙々と過去の思い出を話す。
まだ幼き頃に旅客艇で両親と共に旅行に出掛けた時、突如フォールド航行中にフォールド断層へと旅客艇が落ちかけた。
パイロットの機転によりフォールド断層へと落ちる事は無かったが、その際に数名が体調不良を訴えていた。
ただ、体調不良を訴えた人の殆どは軽い吐き気等であった。
だが、その時にエスターは性別が徐々に変わっていたのである。
それを知ったのは、丁度オムツ交換をした母親であるエスティナである。
旅行から帰ってからしばらくして、オムツ交換の際にエスターの股間部分に男性器が生えていた。
女性であるはずのエスターに男性器が生えていた事に驚いたエスティナは、夫であるジェイルに連絡を入れて医師に診断をしてもらう。
しかし、医師から返ってきた答えは「原因不明」であった。
医師の回答にジェイルとエスティナは何も言えず、表情も青ざめていた。
そして、まだ幼いエスターに現実を突きつけるのは残酷だと思った二人は、この事を黙っていようと誓うのだった。
だが、エスターが13歳の時に、たまたま二人の会話を聞いて事実を知ってしまい、動揺して泣き崩れてしまう。
事実を知ってしまったエスターに二人は、少しずつ現状を受け入れさせる為に必死にメンタル面のケアを尽くした。
いくら綺麗事を言った所で現実と言うのは変わらないからだ。
メンタルケアは長く続き、中々心を開かないエスターに二人も憔悴しきっていた。
当初は悲観的な表情しか見せなかったエスターだが、両親が自分の為に必死に尽くしている事を感じ取り、やがて現実を受け入れるようになった。
黙々と話すエスターの話を聞いたドルチェフとマリアは、ただ言葉を詰まらせる。
「タクヤは、この事を知っていたの?」
「まあね。流石に最初は俺も驚いたし、ウソなんじゃないかって思ったけど、アイツがマジな目で語っていたから信じたけどさ」
マリアの問い掛けにタクヤは、自分の胸倉を掴んでいるドルチェフの手を振りほどいて立ち上がりながら答える。
「例え、そんな事情があろうが、それとこれとは話は別だ!」
ドルチェフは、再びエスターに向けて怒りを露わにする。
「……僕は、隊長の言う通りに精神的に甘ったれています」
エスターは、怒りを露わにするドルチェフに対して顔を上げて応える。
「ああ、その通りだ」
「こんな甘ったれた根性では、僕はいつか死にます。でも、仲良くなれた人が死ぬのを目の当たりにした時、僕が代わりに死ねば良かったって思っていたのは分かってください」
真剣な眼差しでドルチェフを見ながらエスターは話す。
「……もういい、 勝手にしろ」
ドルチェフはエスターの信念に呆れ果て、部屋を出て行く。
「エスター……」
呆然と立ち尽くすエスターにタクヤは声を掛ける。
「ゴメン……ゴメンね。タクヤ」
エスターは涙を流しながら、その場にへたり込む。
「エスター、お前は悪くない……悪くねえよ!」
タクヤは、へたり込んで泣きじゃくるエスターの肩をそっと抱く。
「タクヤ。エスターの事は私に任せて、タクヤは出撃しなさい」
エスターを宥めるタクヤにマリアは出撃を促す。
「イヤだよ、俺もここにいるよ!」
出撃を促すマリアにタクヤは食ってかかる。
友達としてタクヤも傍にいたかった。
「タクヤ、お願いだから言う事を聞いてちょうだい」
いつものマリアならタクヤの態度に反発するが、彼女にしては珍しく物腰を低くしてお願いしていた。
そんなマリアの姿を見たタクヤは、少しだけ胸を締め付けられる思いを感じる。
「……わかったよ。おっさんと顔を合わせるのはイヤだけど、行ってくるよ」
「ありがとう、タクヤ」
マリアの言葉をタクヤは、しぶしぶ受け入れてブリーフィングルームへと戻っていった。
「エスター、ドルチェフを悪く思わないでね。彼も戦争で親しかった人を多く亡くしてエスターよりも辛いのよ」
「……その事は、僕も分かっています」
エスターを諭すように語りかけるマリアは、ポケットからハンカチを取り出して洗面所でハンカチを水に濡らしてエスターに渡す。
「……ありがとうございます」
マリアからハンカチを受け取ったエスターは、ハンカチを殴られた箇所に当てる。
「……マリア大尉も僕みたいな事は、あったんですか?」
ドルチェフだけでなく、他のパイロット達も恐らく同じ思いをして来たのであろう。
唯一、マリアなら自分に心を開いてくれると思い、エスターはマリアに問い掛け、その問い掛けに対してマリアは、黙って頷く。
「ええ……あれは、私がまだ幼かった頃、とても仲が良かったお兄さんがいたの」
・
・
・
―私も妹も、よくそのお兄さんに遊んでもらっていたわ
どこかの原っぱで一人の少年と二人の少女が遊んでいる。
「フィリア、早く来ないと置いてっちゃうよ」
「ふえーん、マリアおねえちゃん待ってよぉ」
髪の毛をお団子頭に結った少女フィリアは、ポニーテールの少女であるマリアを必死に追い掛けていた。
「マリアちゃん、フィリアちゃん、早くおいでよ」
少年は先に土手に上がり、二人の少女を大声で呼ぶ。
「うん、今行く! さあ、行くよ。フィリア」
「うん!」
マリアはフィリアの手を取って、少年の待つ土手を登っていく。
「ほら、早く」
「おねえちゃん、歩くの早いよぉ」
マリアにとっては何て事が無い坂でも、幼少のフィリアにとっては、登るのも一苦労だった。
「わあ、綺麗」
土手を登った先は地平線が続き、ちょうど陽が沈もうとしていた。
「きれーい」
マリアと同じく夕陽を見たフィリアは、大きく目を見開いて夕陽を眺める。
地平線に沈もうとする夕陽は眩く光り、空を赤く染め上げていた。
邪魔をする障害物も特に無いので、夕陽を端から端まで全て見渡せていた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「ココって確か、立ち入り禁止区域じゃあ……」
今、自分達が夕陽を見ている場所が立ち入り禁止区域である事を思い出し、マリアは少年に問い掛ける。
「ま、まあ……ね。あはは……」
マリアの問い掛けに少年は引きった表情で笑う。
「でも、綺麗だね」
「うん」
夕陽を眺めていたマリアは、夕陽の美しさに思わず溜め息を漏らす。
「僕ね、大きくなったらパイロットになって空を飛ぶのが夢なんだ」
そう言って、少年は夕焼けの空を見上げる。
ちょうど見上げた空には、3機のバルキリーが一直線の飛行機雲を描きながら飛んでいた。
「お兄ちゃんは遊んでいる時も、いつも空ばっかり見ているもんね」
「そ、そうかな?」
少年は、マリアやフィリアと遊んでいる時、ふと空を見上げる癖があった。
その様子をマリアは、いつも気にしていた様である。
「じゃあ、いつか私をお兄ちゃんの飛行機に乗せてよ」
「うん、わかった。約束するよ」
マリアのお願いに少年は、優しく微笑みながら頷く。
「あ、それか私もパイロットになればいいんだ!」
自分もパイロットになれば一緒に少年と飛べる事にマリアは気付いた様である。
「あたしも空を飛びたーい!」
フィリアは空に手を振りながら叫ぶ。
「フィリアは、小さいしトロいから無理よ」
そんなフィリアをマリアはからかう。
「むー、できるもん!」
マリアにからかわれてフィリアはムキになって言い返す。
「ムリムリムリムリ!」
「できるもんできるもんできるもん!」
マリアとフィリアは、お互いに意地の張り合いをする。
「大丈夫、二人ともできるよ」
意地を張り合う二人を少年は宥める。
「本当?」
「うん! それは僕が保証するよ」
二人の問い掛けに少年は笑顔で応える。
「私、絶対にパイロットになってお兄ちゃんと一緒に空を飛ぶ!」
「私もー!」
マリアとフィリスはパイロットになって、いつか少年と共に空を飛ぶ夢を大空に向かって宣言する。
・
・
・
―彼は、私達にとって大切な友達だった。
でも、そんな幸せは長く続かなかった。
ある日、私達の住んでいる故郷にはぐれゼントラーディ軍が攻めてきたの。
・
・
・
はぐれゼントラーディ軍の猛攻に辺り一面は、焼け野原と化していく。
はぐれゼントラーディ軍奇襲の知らせを受けた駐在部隊は、直ちに支援へと向かうが、実戦慣れしていない故に次々と撃墜されていく。
駐在部隊の攻撃をかわし、いくつかの部隊は街の中心部へと進み、次々と破壊活動を行っていく。
はぐれゼントラーディの奇襲に自警団が防戦態勢をするが、はぐれゼントラーディ達の前では赤子同然であり、瞬く間に蹴散らされ、市民達は為す術もないまま逃げ惑う事しかできなかった。
逃げ遅れた市民達の中には、撃ち殺される者や破壊された建物の下敷きになる者もおり、犠牲者は次々と増えていく。
「マリア、フィリア、急いで!」
「早くしなさい!」
「う、うん。ほら、フィリア!」
「ママ、怖いよぉ……」
はぐれゼントラーディ人の奇襲の知らせを聞いたマリアとフィリアの父ランドルと母でメルトランディ人のセリナは、マリアとフィリアを連れて急いで避難する。
「マリアちゃん」
避難の途中、少年に声を掛けられる。
「お兄ちゃん」
「みんな無事なんだね」
「うん」
「よかった。さあ、早く逃げよう」
少年達の家族と合流して、マリア達はシェルターへと急ぐ。
ふとマリアが上空を見上げると、戦闘の爆光が次々と上がり、知らせを受けて支援に向かうバルキリーの姿もいくつか見えたが、遠くの方であっという間に撃墜されていた。
「どうして……どうして、私達の街を襲うのよ」
逃げる途中、破壊されたクラスメートの家や家族を亡くして泣いているクラスメートを見掛け、マリアの心の中で理不尽な事に対してのイライラ感とはぐれゼントラーディの強襲に迫りくる恐怖感が交差していた。
「はあ……はあ……フィリア、もう……疲れて走れない……よぉ」
体力と疲労の限界が来たのか、フィリアの走る速度が段々と遅くなり、やがてへたり込んでしまう。
「もう、フィリアったら! こんな所にいたら死んじゃうわよ!」
フィリアの手を繋いでいたマリアがへたり込むフィリアを怒鳴る。
「だって、フィリア疲れたもん。もう走れないよぉ……うえぇぇぇぇん!」
フィリアは、泣きながらマリアに訴える。
「だってじゃないでしょ!」
「マリア、フィリア。早くしなさい!」
遠くからセリナが二人を呼ぶ声が聞こえる。
「ほら、ママが急ぎなさいって言ってるでしょ!」
マリアは泣きながら訴えるフィリアの手を無理矢理掴んで引っ張る。
「痛い、離してよぉ!」
マリアに手を強引に引っ張られてフィリアは、ズルズルと引きずられる。
「ママ、フィリアは私がなんとかするから先に行ってて!」
心配するセリナにマリアは声を掛ける。
「ほら、早くして!」
マリアは、ぐずるフィリアの手を引きながら歩いていく。
「痛い、痛いよぉ……」
フィリアは泣きながらマリアに引っ張られていく。
「マリアちゃん」
二人のやりとりを見て心配になったのか、少年がやって来る。
「お兄ちゃん」
「大丈夫?」
「私は大丈夫だけど、フィリアが……」
フィリアは、未だに泣きながらその場にへたり込んでいた。
「僕におぶさりなよ」
少年は、しゃがんでフィリアに背中を向ける。
「うん!」
フィリアは、少年の背中におぶさる。
「さあ、急ごう」
三人は急いでシェルターへと急ぐ。
戦闘は相変わらず遠方で続き、統合軍が押されている様子だった。
遠方で戦闘が行われているとは言え、爆発音は響き渡り、いつ戦火がこちらに来るか分からない為、不安に迫りくる恐怖をマリアは感じていた。
しばらくすると、少年の息が微妙に上がっている事にマリアは気付く。
「お兄ちゃん、代わろうか?」
マリアは、心配そうに少年に声を掛ける。
「だ、大丈夫だよ……僕なら」
少年は強がって見せているが、既に声が疲れ切っていた。
「もう、無理しないでよ」
「……ゴメン。じゃあ、フィリアちゃん。降ろすよ」
「えー!」
マリアに悟られて少年は、フィリアを背中から降ろす。
「ほら、今度はお姉ちゃんにおぶさって」
マリアは、しゃがんでフィリアに背中を向ける。
「フィリア、お兄ちゃんの背中がいい」
フィリアは、少年の背中が余程心地よかったのか、我が儘を言う。
「ワガママを言うとぶつよ!」
我が儘を言うフィリアをマリアは睨みつける。
睨み付けるマリアに恐怖を感じたのか、フィリアはマリアの背中におぶさる。
「大丈夫?」
マリアの様子を見て、少年が声を掛ける。
「大丈夫よ。急ごう」
再び三人は、シェルターへと急ぐ。
しばらくするとシェルターが見えてくる。
「マリア、フィリア。ここよ、急ぎなさい」
セリナがシェルターの外から三人に呼び掛ける。
マリアと少年は顔を見合わせて、シェルターへと急ぐ。
「マリア、危ない!」
突然、セリナが叫ぶ。
セリナの叫び声に二人が振り返ると、はぐれゼントラーディ軍の機体が猛スピードで二人に迫ってくる。
「うわあああ!」
「キャアアア!」
二人は、咄嗟に地面に伏せてゼントラーディ軍の機体をやり過ごす。
そして、その機体を追い掛けて来た2機のバルキリーと戦闘状態になる。
2機のうちの1機が撃墜され、撃墜されたバルキリーが、そのまま二人に向かって墜落してくる。
「あ……ああ」
突然の事にマリアは、足が竦んで動けなかった。
「マリアちゃん!」
足が竦んで動けないマリアを少年は、思い切り体当たりをして草むらへ突き飛ばす。
突き飛ばされたマリアは、フィリアと一緒にそのまま草むらへと転げ落ちていく。
「うわああああああ!」
逃げ遅れて、そのまま墜落したバルキリーの巻き添えを食らい、少年の断末魔の悲鳴がこだまする。
そして、墜落したバルキリーは、地面に墜落した反動で更に両親達が避難しているシェルターへと突っ込み大爆発を起こす。
突然の出来事にシェルターに避難していた人々は、逃げ場が無いまま爆発の炎に焼かれ、その断末魔は爆発音によって掻き消されていた。
辺り一面は真っ赤に燃え盛り、ゼントラーディ軍の機体を追ってきた残りのバルキリーも撃墜される。
辺りに敵機がいない事を確認したゼントラーディ軍の機体は、再び街へと向かう。
「う……うう」
少年に突き飛ばされて草むらに転げ落ちたマリアは、身体を起こして草むらを掻き分けて辺りを見回す。
「お兄ちゃん……パパ、ママ……」
マリアの瞳には燃え盛る炎が映り、そこには少年の姿も、そして、最愛の両親の姿も無かった。
「お兄ちゃん……パパ、ママァァァァ!」
・
・
・
「両親と親しい人を一度に亡くした時の記憶は、今でも覚えているわ。そして、街を襲ったゼントラーディ人に対しての理不尽な怒りもね」
マリアの瞳には、悲しみの感情と怒りに満ちた表情が満ち溢れていた。
「……すみません、何だか辛い事を思い出させたみたいで」
「ううん、気にしないで」
「……マリア大尉は大切な人を失ってから、どうやって立ち直ったんですか?」
肉親を失っても、それでも普段から健気に振舞うマリアの姿をエスターは、気になっていた。
「……多分、時間ね。そして、フィリア」
マリアは、エス ターの問い掛けにポツリと応える。
両親を亡くした自分が、ここまで生きてこられたのも妹であるフィリアのお陰である事をマリアは理解しており、きっとフィリアもそう思っているだろう。
「エスター」
「……はい」
「あなたが親しい人を亡くして辛い気持ちなのは、よく分かるわ。でもね、あなた以上に辛い気持ちになっている人も大勢いる」
「……」
マリアの言葉にエスターは、黙ったまま顔を伏せる。
「その辛く悲しい気持ちは、時間とあなたの気持ち次第でしか解決できないわ。でもね、私達は、その辛い気持ちを忘れさせる手助けはできるわ」
マリアは、エスターの手を握る。
女性らしく柔らかいが、長年のパイロットとしての経験を積んだ誇らしく逞しい感じがする感触だった。
エスターもマリアの手を握り返して顔をマリアの方へと向ける。
「それにエスターには、タクヤと言う一番頼れる友達がいるじゃない。違うかしら?」
マリアは、少しだけ優しく微笑む。
「……はい」
「彼、朝からずっとエスターの事を心配していたわよ。それは、気付いていたかしら?」
「……はい。何だかタクヤに悪い事をしちゃったなぁ」
エスターは自分を心配したり、庇ってくれたタクヤの事を思い出す。
「彼の事を思うなら、少しでも元気を出さなきゃね」
「はい」
少しずつだが、エスターの表情が和らいでいく。
「もし、タクヤに言い難い事なら私でもいいわ」
「ありがとうございます、マリア大尉」
エスターは、深々とマリアに頭を下げる。
「とりあえず、暗い話はこれでおしまいね。ドルチェフ達が戻ってきたら、ちゃんと謝ってきなさい」
「は、はい」
元気になったエスターを見て大丈夫だと思いマリアは、そのまま部屋を後にする。
(ケヴィンさん、ティナさん……僕は、二人の分まで頑張って生きます。だから、見守ってください)
エスターは、心の中でケヴィンとティナに二人の分まで頑張る事を誓う。
「隊長達が戻って来たら謝らなきゃ」
エスターは、部屋を後にして格納庫へと向かう。
誰もいない格納庫でエスターは一人、出撃したドルチェフ達を待っていた。
マリアとエスター自身の機体が格納庫に佇むだけなので、格納庫がやけに広々と感じる。
既に空は暗くなりかけていた。
陽があまり当たらない惑星とは言え、夜が近づけば暗くなる事が分かる。
「ようエスター、もう大丈夫か?」
一人で佇むエスターを見掛けて、ミランが声を掛ける。
「ミランさん」
「マリア大尉から話は聞いたよ」
「そうですか。色々とご迷惑をお掛けしてすみません」
エスターは、ミランに頭を下げる。
「おっと、その言葉を本当に言わなきゃいけない相手は、俺じゃないと思うけどな」
ミランは耳を澄ませて音を聞き、何かを感じたのか格納庫の外に出て、空を見上げる。
その様子にエスターもミランに続いて格納庫の外へと出る。
そして、ミランの見上げた先には、ブロウニングが基地へと徐々に降下する姿が見えていた。
「隊長……」
「そう言う事さ」
謝る相手を理解したエスターを見て、ミランは帽子を深く被り直す。
「隊長さん、それと他のみんなにも、ちゃんと謝っておきなよ」
別れ際にエスターの右肩に手を置いて、ミランは格納庫を後にする。
基地へと戻ったブロウニングから、任務を終えたパイロット達が次々と戻ってくる。
パイロット達は、それぞれ任務に対しての事やこれからの予定の事等を話していた。
エスターは、物陰からその様子を伺いながら話し掛けるタイミングを待っていた。
(落ち着け……落ち着け)
物陰から覗いてビクビクするエスターは、自分自身に言い聞かせる様に心の中で呟く。
そして、そのままドルチェフの元へと歩いていく。
その様子がパイロット達の目に入り、全員がエスターに視線を向ける。
「た、隊長」
エスターの声は少し上擦っていた。
「……何の用だ?」
エスターの声にドルチェフは、視線をエスターへと向ける。
しかし、先程の事でドルチェフの声は、少しぶっきらぼうな感じだった。
「あ、あの……」
声が上擦っている事に気付き、一旦咳払いをしてエスターは心を落ち着かせる。
「先程は、自分の精神的な弱さでご迷惑をお掛けして、申し訳ございません!」
エスターは、ドルチェフに深々と頭を下げてお詫びをする。
「他の方々にも色々とご迷惑をお掛けして、申し訳ございません!」
タクヤを含む他のパイロット達にもエスターは、深々と頭を下げる。
「気にするなよ」
「俺達、仲間だろ」
「次、頑張れば良いじゃないか」
それぞれのパイロット達は、エスターに励ましの声を掛ける。
非難される事を覚悟していた為、逆にパイロット達の励ましの言葉を聞いたエスターは、少しだけ心が軽くなった気分になった。
そんな中ドルチェフだけは、そのまま歩きだしてエスターの横を通り過ぎる。
(やっぱり……駄目だったんだ)
エスターは、落胆してお辞儀をしたまま身体が固まっていた。
いくら他のパイロット達が励ましてくれたとしても、今回自分が一番迷惑を掛けてしまったのはドルチェフだ。
その本人から許しが得られない限り、心が晴れる事は無い。
「明朝0700にシミュレーションルームに集合だ。今日サボった分をしごいてやる」
ドルチェフは、後ろを向いたままエスターに話す。
「あ、ありがとうございます!」
ドルチェフの言葉にエスターの表情は明るくなる。
「よかったな、エスター!」
タクヤがエスターに駆け寄る。
「うん。それはそうと、タクヤにも色々と迷惑を掛けちゃってゴメンね」
「俺とお前の仲だろ? 気にすんなって!」
タクヤは笑顔でエスターにVサインをする。
「お疲れ様」
部屋へ戻るドルチェフにマリアが声を掛ける。
「マリアか」
「エスター、ちゃんと謝っていたかしら?」
「ああ」
マリアの言葉にドルチェフは、相変わらずぶっきらぼうに応える。
「マリア、色々とすまなかったな」
「いいのよ。何だかエスターを見ていたら、昔のドルチェフを思い出したわ」
マリアは、昔のドルチェフを思い出したのか、少しだけはにかんだ笑顔を見せる。
情に脆く、時に任務よりも人命を優先していた、あの頃。
いつしか、そんな感情は徐々に減りつつあるのも、隊長として部隊を指揮しなければならない故なのかも知れない。
「……そうかもな。だが、今の俺があるのは、マリアのサポートのお陰でもあるさ」
部屋に到着したドルチェフは、部屋のドアを開ける。
「ふぅ……誰かさんもエスターみたいに、もうちょっと素直になってくれれば良いのに」
マリアは、自分の心理を気付いてくれないドルチェフに対してポツリと呟く。
「何か言ったか?」
「何でも無いわ……鈍感」
マリアは少しむくれた表情のまま、そのまま自分の部屋へと戻っていく。
ドルチェフは、マリアの言葉の意味も分からず、そのまま部屋へと入っていった。
次回予告
突如、ブラックバルチャー基地への救難信号が入る。
しかし、その救難信号は……
次回「デストラクション・オブ・バルチャー」