MACROSS-A.D.2048-   作:eisyama

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 突如、ブラックバルチャー基地への救難信号が入る。
 しかし、その救難信号は……


第14話デストラクション・オブ・バルチャー

 ある日の早朝。

 

 マリアは、食堂の厨房を借りて珍しく鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

 

「うん、こんな感じかしら」

 

 味見をして納得したマリアは、プレートに料理を盛り付けて完成させる。

 

「ドルチェフ、喜んでくれるかしら」

 

 マリアは出来上がった料理を見て、少しだけ照れ笑いをする。

 

「あら、マリア大尉。朝早くからどうしたんですか?」

 

 一番に食堂にやってきたアイナがマリアに声を掛ける。

 

「え? う、うん……ちょっとね」

 

 内緒で料理している事がアイナにバレて、マリアは少しだけ顔を赤らめる。

 

「あら、美味しそう。相変わらず、料理の腕は落ちていないのね」

 

「そ、そうかしら?」

 

 ジェニオスシティでラナを救出後、身寄りの無いラナを引き取ったドルチェフ。

 

 しかし、全く料理が出来ないドルチェフはレトルト物を食べさせていた。

 

 それだけでは栄養が偏ると思い、マリアは時間がある時には料理を作り、食べさせていた。

 

「早く隊長さんが気付いてくれると良いわね。フフ」

 

 料理を見たアイナは、マリアを茶化す。

 

「べ、別にドルチェフの事は関係ないでしょ!」

 

 茶化すアイナにマリアは、照れながら怒る。

 

「冗談よ、冗談」

 

(でもホント、分かりやすい人)

 

 そんなマリアを見たアイナは笑って謝る。

 

「ああ、腹減ったぁ!」

 

「一仕事すると、確かに腹が減るな」

 

「ちょうどお昼ですし、何か食べましょう」

 

 エスター、ネルと共に偵察任務を終えたタクヤは、空腹感を訴えながら食堂に入る。

 

 食堂では、ブラックバルチャーの面々がマリアの料理を試食していた。

 

「え? なになに、みんな何食べてんの?」

 

 興味津々にタクヤは、周りに声を掛ける。

 

「マリア大尉が料理を作ったんですって。だから、みんなで試食してるの」

 

 エミリアがマリアの料理を口に運びながら応える。

 

「え? あのマリア大尉が? 嘘だろ!?」

 

 普段のマリアを見ているタクヤは、マリアが料理をしている姿を全く想像出来なかった。

 

「タクヤ、マリア大尉が聞いたら怒られるよ」

 

 マリアを小馬鹿にした様な言動をするタクヤをエスターが咎める。

 

「へえ、マリア大尉が」

 

 他の者達が食べている料理を見て、ネルのお腹がグーグーと鳴り始める。

 

 お腹が空いている為、一刻も早く食事をしたいネルがマリアを探す。

 

「マリア大尉」

 

 調理場で料理を盛りつけているマリアを見つけてネルは声を掛ける。

 

「アタシにも料理を食べさせてくれよ」

 

 ネルは空腹感でいっぱいなのか、マリアを急かす。

 

「わかったわ、ネル。ちょっと待っててね」

 

 マリアは、作り終えた料理をプレートに順番に盛り付けていく。

 

「なあなあマリア大尉、俺にもくれよ! 腹減って死にそうなんだよ」

 

 タクヤは、カウンターから身を乗り出してマリアに注文する。

 

「わかったわ……あら、ごめんなさい。ちょうどネルの分で料理が全部無くなっちゃったみたい」

 

「うええぇぇぇぇ! ちょ、マジかよ!?」

 

 料理が全て無くなった事にタクヤは、カウンターに身を乗り出したままガックリとうなだれる。

 

「お待たせ、ネル」

 

 マリアは、料理を盛り付けたプレートをネルに渡す。

 

 プレートには、ハンバーグライスにオニオンスープ、それにパインサラダが乗っている。

 

 簡単な料理ではあるが、美味しそうな匂いがネルの鼻をくすぐる。

 

「おお、コレは美味しそうだ!」

 

 プレートに盛り付けられた料理を見たネルは、まるで子供の様に目を輝かせる。

 

「なあ、姉ちゃん。俺にも一口食べさせてくれよぉ……お願いします!」

 

 盛り付けられた料理を見たタクヤは、手を合わせてネルに頼み込む。

 

「やーだよ。レディーファーストって言葉を理解しなよボウヤ」

 

 タクヤのお願いを無視してネルは、ハンバーグをたいらげる。

 

「ボウヤじゃねえっての!」

 

「あー、美味しい~♪」

 

 タクヤの言葉には耳を貸さず、ネルはハンバーグを食べて優越感に浸る。

 

「何だよ、くっそー……」

 

 優越感に浸るネルを見たタクヤは、空腹感からかイライラも増して歯軋りをする。

 

「もう諦めなよタクヤ」

 

 イライラ感を募らせるタクヤをエスターが宥める。

 

「ん?」

 

 タクヤは、厨房カウンター奥に置いてある料理を見つける。

 

「なんだよ、奥に二つもあるじゃん」

 

 タクヤは再びカウンターから身を乗り出して、奥に置いてある料理に視線を向ける。

 

「ダメよ、タクヤ。それはドルチェフとラナの分なんだから」

 

 料理に視線を向けるタクヤをマリアは注意する。

 

「ええー! いいじゃん、また作ればさあ。俺とエスターもマリア大尉の料理を食べたいよ」

 

「タクヤ、僕は別に……」

 

 エスターをダシに使って、タクヤは何とかしてマリアの料理を食べようとしていた。

 

「タクヤ、いい加減にしなさい。あまりうるさいと、殴るわよ」

 

 マリアは、バキバキと指を鳴らしてタクヤを威嚇する。

 

「なんだよ……ちぇ」

 

 さすがにマリアに殴られるのが嫌なのか、タクヤはふてくされた表情をする。

 

 惑星ローグ付近に一隻のゼントラーディ軍の標準艦スヴァール・サランがフォールドする。

 

 艦内のモニターに映る惑星ローグを二人のゼントラーディ人と一人のメルトランディ人が見ている。

 

「おい、テラード。この惑星にマイクローンの軍施設はあるのか?」

 

 緑色の肌を持ち、筋肉質なゼントラーディ人は、惑星ローグを見ながらテラードに問い掛ける。

 

「僕の調べだと、一応あるみたいだよ。ただ、それ程の規模でもないみたいだけど……」

 

 テラードは、先程のゼントラーディ人同様に緑色の肌を持ち、長いロングヘアーに知的な雰囲気が漂う感じである。

 

「ハッ、規模なんざ関係ねえ。久しぶりに戦いたいんだ!」

 

 筋肉質のゼントラーディ人は、久しぶりの戦闘に身体が疼いていた。

 

「ネエネエ、グランツ。ハヤク、マイクローンヲコロシタイヨ!」

 

 筋肉質のゼントラーディ人、グランツにロングヘアーの緑髪に猫目のメルトランディ人が寄りかかる。

 

 そして、その頬にキスをしながら抱きつく。

 

「ミネルバ、そう焦るな。後で、たっぷりと遊ばせてやる」

 

 グランツは、抱きついてくるミネルバの頭を優しく撫でる。

 

 頭を撫でられる事に快感を覚えているのか、ミネルバは、そのままグランツの唇に自分の唇を重ねる。

 

「いったい何の騒ぎだ?」

 

 賑わっている食堂を通りかかったドルチェフが食堂にやってきた。

 

「マリア大尉が料理を作ったんで、みんなで試食してる所です」

 

 フォルトは、料理を口に運びながらドルチェフに話す。

 

「そうか」

 

 フォルトの話を聞き、ドルチェフはマリアのいる厨房に向かう。

 

「マリア」

 

「ドルチェフ!」

 

「また作ったのか」

 

「う、うん……まあね。ちょっと待っててね」

 

 マリアは、カウンター奥に置いてある用意した料理を持ってくる。

 

「ほお、これは旨そうだ」

 

 プレートに置かれた料理を見て、ドルチェフは素直に感想を述べる。

 

「あ、ありがとう……」

 

 ドルチェフに感想を述べられたマリアは、少しだけ顔が赤くなっていた。

 

「いいなあ……隊長とマリア大尉」

 

「本当、羨ましいわね」

 

 エミリアとアイナは、二人のやり取りを羨ましそうに見ていた。

 他の者も二人のやりとりをにやけながら見ている。

 

『ブラックバルチャー全隊員に告ぐ、ポイントアルファより救難信号あり。繰り返す、救難信号あり』

 

 突如ラナの施設内放送により、穏やかな雰囲気が一転して緊張が走る。

 

『どうした?』

 

 施設内放送を聞いたドルチェフは、ラナに通信を入れて状況を確認する。

 

『ポイントアルファ付近より、ゼントラーディ人から救難信号が発せられています』

 

『わかった、すぐに行く』

 

 状況確認をしたドルチェフは通信を切る。

 

「ポイントアルファでゼントラーディ人が救難信号を出している。これより救出に向かう」

 

 ドルチェフは、パイロット達に指示を出す。

 

「なんだよゼントラーディ人を助けるのかよ」

 

 ドルチェフの指示にタクヤは不満を漏らす。

 

 タクヤの中では、今でもゼントラーディ人=悪者と言う認識があるようだ。

 

「タクヤ、困っている人がいたら助けろと学校の先生に習わなかったのか? ゼントラーディ人でも悪い奴もいれば、良い奴もいると言うを事を忘れるな」

 

 タクヤの不満に対してドルチェフは叱咤する。

 

「アタシは、隊長さんの言う事には賛成だ。同じ巨人族として礼を言う」

 

 ドルチェフの言葉に対してネルは礼を言う。

 

 元々は敵対していた自分を救ってくれたのはドルチェフである為、改めてネルは、ドルチェフの考え方を少しでもマイクローン(地球人)が持ってくれる事を心の底から思った。

 

「とにかく急ぐぞ!」

 

「了解!」

 

 ドルチェフの命令にパイロット達は急いで出撃準備に掛かる。

 

「すまないマリア、料理は後でいただく」

 

「う、うん」

 

 好きな人に食べて貰いたいと言う思いで一生懸命作った料理を突然の緊急出動で食べて貰えない事にマリアは内心、緊急出動を疎ましく思っていた。

 

 ものの数十分で出撃準備を無理やり終わらせたブラックバルチャー隊は、ブロウニングでポイントアルファへと発進する。

 

 ポイントアルファ付近では、ヌージャデル・ガー3機が青色のヌージャデル・ガーを追い掛けていた。

 

 ただ、その状況は追い掛けているというよりは、子供の追い掛けっこである。

 

『おい、お前らちゃんと演技しろ!』

 

 青色のヌージャデル・ガーに搭乗するグランツは、適当な演技をする他のゼントラーディ兵に怒鳴りつける。

 

『アニキ、こんな事をしてマイクローンが来ますかね?』

 

 グランツ機を追い掛けるゼントラーディ兵が疑問を持ちながら通信を入れる。

 

 こんな子供騙しの様な作戦で本当に救助に来るとは、にわかに信じ難かった。

 

『何でもテラードが言うにはマイクローンは、人情とやらに弱いらしいからな。奴らが来たら、お前らはすぐに退散しろ』

 

『へい!』

 

『だから、ちゃんと演技をしろ!』

 

 グランツ機は、3機のヌージャデル・ガーに当たらない様に攻撃をする。

 

『なあ、どうする?』

 

『アニキがうるさいし、やるか』

 

『だな』

 

 三人のゼントラーディ人は、後でグランツに怒られるのが面倒だと言う理由で満場一致し、グランツ機に向けて攻撃を開始する。

 

「よし。いいぞいいぞ、お前ら」

 

 演技をし始める部下達にグランツは上機嫌になる。

 

 しばらくして、ブロウニングが姿を見せてバルキリー隊が次々と出撃する。

 

『奴らが来たぞ、ずらかれ!』

 

『へい!』

 

 ブラックバルチャー隊の姿を見せると同時に3機のヌージャデルガーは、一目散に退散していく。

 

『こちら、新統合軍所属ブラックバルチャー隊。大丈夫か?』

 

 ドルチェフは機体をバトロイドへ変形させてグランツに通信を入れる。

 

『あ、ああ……助かったぜ』

 

 グランツ機は、ドルチェフ機に徐々に近付いていく。

 

『!? 隊長さん、逃げろ!』

 

 異変に気付いたネルが急いでドルチェフに通信を入れる。

 

『何!?』

 

「ハッ、バカが!」

 

 突如グランツ機はドルチェフ機の頭部を握りつぶし、そのまま蹴りを喰らわせて吹き飛ばす。

 

「ぐおおおお!」

 

 ドルチェフは機体をガウォークに変形させて、各部のバーニアを吹かせながら体勢を立て直す。

 

『野郎ども、出て来い。暴れるぞ!』

 

 グランツの通信でスヴァール・サランが小惑星群からゆっくりと姿を現す。

 

「くっ、罠だったのか……」

 

 突如現れたスヴァール・サランにブラックバルチャー隊のパイロット達に戦慄が走る。

 

 しばらくして、スヴァール・サランが次々とバトルポッドが出撃する。

『確かアイツは、グランツ・シュティーム。第8934649艦隊所属のゼントラーディ人だ』

 

 青いヌージャデル・ガーを見たネルは、思い出したかの様に話す。

 

『おいおい姉ちゃん。知ってるならもっと早く言えよ!』

 

 タクヤは、思わずネルにツッコミを入れる。

 

『仕方ないだろう。アタシだって噂くらいしか聞いていないんだから!』

 

 タクヤのツッコミにネルは食ってかかる。

 

『お前達、喧嘩している場合じゃないだろうが!』

 

 ドルチェフが、いがみ合う二人に通信を入れて怒鳴りつける。

 

 そうしている間にも、グランツ達の機体が徐々に迫りつつあった。

 

『バルチャー1より各機へ。各機、散開して迎撃態勢を取れ!』

 

『了解』

 

 ドルチェフの命令でブラックバルチャー隊は、散開して迎撃態勢を取る。

 

「サア、オアソビノジカンダ」

 

 クァドラン・ローの最終量産機であるクァドラン・キルカに搭乗するミネルバは、子供のように無邪気に喜び、目を輝かせながら倒す相手を選んでいた。

 

「く……モニターが完全にイかれてやがる」

 

 ドルチェフは機体をバトロイドに変形させて、コンソールスイッチを色々と操作するが、モニターは砂嵐で何も映らない状態だった。

 

『ドルチェフ、大丈夫?』

 

 ドルチェフを心配してマリア機がドルチェフ機に近付き、マリアから通信が入る。

 

『俺は大丈夫だが、 モニターが完全にダメだ』

 

『わかったわ。私がブロウニングまで援護するわ』

 

 マリアは急いでブロウニングに通信を入れる。

 

『バルチャー2より、ホークス1』

 

『こちらホークス1』

 

 マリアの通信にアイナが応答する。

 

『バルチャー1が機体を損傷しているから帰還する。格納庫のハッチを開けておいて』

 

『了解』

 

 マリア機に牽引されて、ドルチェフ機はブロウニングへと帰還する。

 

 戦況はブラックバルチャー隊が圧倒的に圧されていた。

 

「ヒィィィヤッハアアァァァ!」

 

 奇声を上げながらグランツは、バルチャー10ことポール機に襲いかかる。

 

 ポール機はバトロイドに変形してガンポッドで攻撃するが、グランツ機は素早い速度で次々と攻撃をかわしていく。

 

「くっ! は、速い。クソ!」

 

 攻撃が当たらないと思ったポール機は、ファイターに変形して逃げながら頭部レーザー機銃でグランツ機を攻撃するが、あっさり回避されて追い付かれる。

 

「ウロチョロウロチョロと逃げんじゃねえよ!」

 

 グランツ機はポール機にしがみつき、そのままポール機のコクピットに殴りかかる。

 

「うわ、うわあぁぁぁ!」

 

 ポールの断末魔が響き、グランツ機のマニピュレータがコクピットを貫く。

 

「まずは1機」

 

 グランツ機はポール機から離れて、パイロット不在の機体をマシンピストルで蜂の巣にして撃墜する。

 

「ポールが……」

 

 ポール機の発信源が消え、ブラックバルチャー隊は固唾を飲む。

 

「クソ、よくもポールを」

 

 フォルト機は、デブリの陰からグランツ機にスナイパーライフルの照準を合わせる。

 

 しかし、グランツ機の速い機動力にフォルトもなかなか照準を捉えられず、焦りからイライラしていた。

 

「!?」

 

 突如機体が大きく揺れ、照準が真っ暗になる。

 

「な、なんだ? どうしたんだ?」

 

 突然の出来事にフォルトは動揺して辺りを見回す。

 

「アハハハ、ミィツケタ」

 

 ミネルバ機がフォルト機の上に乗っかり、スナイパーライフルの照準をマニピュレータで隠していた。

 

 ミネルバ機は、そのままフォルト機の頭部をもぎ取り、続けざまに機体を蹴り転がして仰向け状態にする。

 

「うわあああ!」

 

 状況が分からないまま、フォルトは機体の中で転がされる。

 

 そして、ミネルバ機はコクピット付近を殴って、中からフォルトを引きずり出す。

 

「あ……ああ」

 

 ミネルバ機に掴まれたフォルトは、恐怖のあまり言葉が出なかった。

 

「シネ」

 

 ミネルバ機のマニピュレータに力が加わり、マニピュレータの間からフォルトの血液と臓器が飛び散る。

 

「ウフフフ……」

 

 飛び散り、漂うフォルトの血液と臓器は見てミネルバは舌なめずりをする。

 

 ブロウニングに帰還したドルチェフは再度スイッチ類を弄るが、グランツ機の蹴りが余程強烈だったのか、その衝撃でモニターや計器類が正常に動作しなかった。

 

『隊長、バルチャー10とバルチャー7の発信源が……消えました』

 

 何も映らないディスプレイにエミリアからのパイロットLOSTの報告が入る。

 

 その声は悲しみに満ちており、今にも泣きそうな感じだった。

 

「……そうか」

 

 エミリアの通信を聞いたドルチェフは肩を落とし、油断して何もしてやれなかった自分に対してとグランツに対しての怒りに奥歯を噛み締めながら拳を強く握る。

 

「ポールとフォルトが……」

 

 マリアも仲間の死を聞き、肩を震わせる。

 

「この機体も完全に使い物にならないか……」

 

 ドルチェフは、頭部を潰された機体を降りる。

 

 バーミリオンセイバー配属時から長年使用しており、自分のクセをストレートにトレース出来ていただけに廃棄と分かると妙にもの悲しくなる。

 

「後は……コイツだけか」

 

 ドルチェフの視線先には、フルアーマードVF-11の姿が映る。

 

「マリア、俺はコイツで時間を稼ぐ。その間に皆に逃げるように伝えてくれ」

 

「……嫌よ」

 

 ドルチェフの命令をマリアは受け止めなかった。

 

「マリア!」

 

「どうして、あなたは、いつも人の気持ちを考えずに自分勝手に行くの? 少しは人の気持ちを考えてよ!」

 

 マリアは、自分の思いをドルチェフにぶつける。

 

 突然の事にドルチェフは、思わず言葉を失う。

 

「私は……ドルチェフを失うのはイヤよ。今でも、これからも」

 

 マリアの目から涙がこぼれ落ちる。

 

 マリアの言葉を聞いたドルチェフは、マリアが自分に何を言いたかったのかを薄々と気付き始める。

 

「マリア……」

 

「私は……私は、あなたの事が好きよ。こんな事、女性から先に言わせないでよ!」

 

 マリアは自分から告白した事が恥ずかしくなり、顔を赤らめ、只でさえこぼれ落ちていた涙が更に溢れてきていた。

 

 マリアの告白にドルチェフはマリアに近付き、優しくそっと抱き締める。

 

「すまなかった、本当に」

 

「バカ、バカ……鈍感よ本当に……」

 

 マリアは、ドルチェフに抱かれてドルチェフの胸元で嗚咽を漏らしながら泣く。

 

 自分が好きな事を理解しないドルチェフに対して苛立つ時もあったが、理解し受け入れてくれた事が嬉しく、ドルチェフの温もりをパイロットスーツ越しに感じながらマリアは、少しだけ心が安らいでいた。

 

 気が付くと、二人は互いの唇を重ね合わせていた。

 

 格納庫に残されたフルアーマードVF-11に搭乗したドルチェフは、機体の起動スイッチを入れる。

 

 フルアーマード装備は、ミサイルの装填数も従来のバルキリーと比較すると多い為、その分のコストも多大に掛かる。

 

 その為、特殊任務以外での使用は殆ど使われる事は無い。

 

 久しぶりの起動でも異常無く動くのは、ミラン達メカニックのお陰なのだろう。

 

『バルチャー1よりホークス。これより出撃する。』

 

 ドルチェフは、エミリア達に出撃の通信を入れる。

 

『了解。隊長、バルチャー9の発信源も途絶えました』

 

 アイナの声は、若干涙声だった。

 

『……わかった』

 

 ドルチェフは、アイナの通信に奥歯を強く噛み締める。

 

 ブロウニングのカタパルトが展開し、ドルチェフのフルアーマードVF-11とマリアのVF-14が出撃する。

 

「ハッ、あんな所に隠れていやがったのか」

 

 グランツは、ドルチェフ達の機影の先にあるブロウニングを見つける。

 

 そして、二人の出撃と入れ替わりでグランツ機がブロウニングに迫る。

 

「しまった!」

 

 ドルチェフはグランツ機に気付き、機体を反転させて追い掛けようとする。

 

『アイナ、エミリア、逃げろ!』

 

 ドルチェフは、大急ぎでブロウニングに通信を入れる。

 

「ハ、死ねや」

 

 ドルチェフの通信も虚しく、グランツ機はブロウニングのブリッジに向けて攻撃を開始する。

 

 瞬間の出来事にアイナもエミリアも何も出来ずにグランツの攻撃で吹き飛ばされる。

 

 ブリッジを破壊されたブロウニングは、やがて内部から爆発を起こして轟沈していく。

 

『ブロウニングが……』

 

『そんな……』

 

 ドルチェフとマリアは、その様子をただ呆然と見る事しか出来なかった。

 

『バルチャー1から各機へ、生きている者がいたらポイントB-13に集結。繰り返す、ポイントB-13に集結』

 

 旗艦を失った状況を見兼ねたドルチェフは、残ったパイロット達に通信を入れてマリアと共に小惑星郡が漂うポイントB-13へと向かう。

 

 敵の攻撃をくぐり抜けてポイントB-13に到着したパイロット達は、ドルチェフのフルアーマードVF-11を確認して次々集合する。

 

 ドルチェフ機の周りにやってきたのは、マルス、レオン、カイル、ネル、タクヤ、エスター、マリアの七名だった。

 

『隊長、どうしたんだよ、急に』

 

『お前達に命令だ。今からこの空域から離脱しろ』

 

『隊長、何を馬鹿な事を言っているんですか!』

 

 突然の撤退命令にマルスが食ってかかる。

 

『さっき、ブロウニングが墜ちた。だから、お前達だけでも逃げろ』

 

『ブロウニングが!?』

 

 ドルチェフの言葉にマリアを除くパイロット達は驚く。

 

『ブラックバルチャー隊は、このままでは全滅だ。お前達だけでも生き残れ』

 

 ドルチェフは、パイロット達に撤退命令を出す。

 

『イヤだよ。俺だって、まだ戦えるぜ』

 

 ドルチェフの撤退命令にタクヤは反発する。

 

『タクヤの言う通りだ。俺は、この部隊に入った時点で隊長に命を預けてるんだ』

 

 レオンはタクヤの意見に賛同する。

 

『……まったく、お前達は。仕方がない、タクヤとエスター。お前達だけでも逃げろ』

 

『は? 何でだよ』

 

『とにかく逃げろ! お前達二人は足手まといになる。エスター、このバカを連れて逃げろ!』

 

 ドルチェフは、エスターにアイコンタクトをする。

 

 モニター越しにドルチェフの考えを悟ったエスターは頷く。

 

 ドルチェフもエスターもタクヤが素直に言う事を聞かないのは、既に分かっていた。

 

『タクヤ、隊長の言うとおりにしよう』

 

『エスター、お前まで何を言ってんだよ!』

 

『タクヤ!』

 

 ドルチェフの命令を聞かないタクヤ機にエスター機は、ガンポッドを向けて威嚇射撃をする。

 

『エスター……』

 

 タクヤはエスターの行動に言葉を失う。

 

『次は、本当に狙うよ』

 

『わ、わかったよ。ちくしょう!』

 

 エスターの真剣な眼差しを見て悟ったのか、タクヤは渋々受け入れる。

 

 タクヤとエスターは、機体をファイターに変形させて戦線から離脱する。

 

『とにかく、今は遠くへと逃げろ。いいな!』

 

 ドルチェフは、二人に念を押して迎撃体制を取る。

 

『了解』

 

『……』

 

 エスターが応答する中、タクヤは未だに納得がいかないのか返事をしなかった。

 

『タクヤ、返事をせんか!』

 

 返事をしないタクヤをドルチェフは一喝する。

 

『うるせえ、聞こえてるよ!』

 

 ドルチェフの一喝にタクヤは、やけくそに返事をする。

 

『エスター、この馬鹿から絶対に目を離すな。もし引き返そうとしたら、遠慮なく撃て』

 

『……了解』

 

 ドルチェフからの命令にエスターは、ポツリと返事を返す。

 

『バルチャー1より各機へ。二人の為にも少しでも時間を稼げ、いいな!』

 

 ドルチェフの指示にパイロット達は迎撃態勢を取る。

 

『……みんな、聞こえるか』

 

 しばらくして、タクヤが通信を入れる。

 

『タクヤか。ちゃんと逃げているか?』

 

 ガンポッドでバトルポッドを迎撃しつつ、ドルチェフが応答する。

 

『ああ、ちゃんと逃げてるよ』

 

 ドルチェフの通信にタクヤは、ふてぶてしく応える。

 

『ボウヤ、アンタ達の時間稼ぎはアタシ達に任せときな』

 

 ネル機はマリア機、レオン機と共にフォーメーションを組み、次々とバトルポッドを撃墜する。

 

『みんな……今までホントにすまねぇ』

 

 タクヤは、モニター越しに頭を下げる。

 

 色々と迷惑を掛けたにも関わらず、ここまで自分やエスターの為に命を張ってくれている事にタクヤは感謝していた。

 

『おいおい。頭を下げるなんて、タクヤらしくねえなあ』

 

 頭を下げるタクヤの姿を見たマルスが茶化す。

 

 その間にもマルス機は、接近するバトルポッドの攻撃をかわしながらミサイルを撃ち込んで撃墜する。

 

『確かにそうだね』

 

 マルスの言葉にカイルは、笑って応える。

 

『なんだよ、ひっどいなぁ……せっかく俺が謝ってんのにさあ』

 

 周りの反応にタクヤは口を尖らせる。

 

『日頃の行いね、フフ』

 

 マリア機はミサイルで威嚇射撃し、怯んだ隙を狙ってバトルポッドをガンポッドで次々と撃墜する。

 

 ブラックバルチャー隊の戦いぶりをグランツとミネルバは遠巻きに見ていた。

 

 その戦いぶりを見て、巨人族の闘争本能が擽られたかの様にグランツの身体が疼き始める。

 

『ク、クククク……久しぶりに歯応えのあるヤツらだな。いくぞ、ミネルバ』

 

「アハハハハ! マイクローンハ、ミナゴロシダ!」

 

 グランツ機とミネルバ機は、ブラックバルチャー隊に襲い掛かる。

 

 マルス機とレオン機を標的にしたグランツとミネルバは、2機に襲い掛かる。

 

「野郎!」

 

「ここからは行かせないぞ!」

 

 2機はガンポッドとミサイルで攻撃するが、次々とよけられて間合いを詰められる。

 

「当たらねえんだよ!」

 

 グランツ機はマルス機に、ミネルバ機はレオン機に狙いを定めて、そのまま格闘戦に持ち込む。

 

「うわああああああ!」

 

「ギャアァァァァァァ!」

 

 グランツ機とミネルバ機は、2機のそれぞれのコクピットを殴り潰す。

 

 そして、機体を蹴り飛ばして蜂の巣にして撃墜する。

 

「アハハハハ、タノシイー!」

 

 ミネルバは、子供の様にはしゃぎながら戦闘を楽しむ。

 

「ミネルバ、次行くぞ!」

 

「ウン!」

 

 そして、そのままカイル機とネル機に標的を定める。

 

「来るぞ!」

 

 迫り来る2機にネル機とカイル機は迎撃態勢を取る。

 

「せめて、フォルトの仇討ちとして一発くらいは!」

 

「こんちくしょう!」

 

 カイル機とネル機はフォーメーションを組み、グランツ機とミネルバ機を迎え撃つ。

 

「雑魚は引っ込んでろ!」

 

「グランツ、ヤッチャエ!」

 

 グランツ機は攻撃をかわしつつ、背部キャノンとマシンピストルを撃ち込み、カイル機とネル機に命中させる。

 

「フォ、フォルト……」

 

「ア、アタシは……まだ」

 

 グランツの攻撃を受けた2機は爆発する。

 

「ワー、キレイ」

 

 まるで花火を見るかのようにミネルバは目を輝かせていた。

 

『……』

 

 次々と撃ち落とされて消えていく仲間の発信源にタクヤは言葉が出なかった。

 

『……マルスさんや姉ちゃんまで……くっそぉぉぉぉ!』

 

 タクヤは、何も出来ない自分への苛立ちから泣き叫ぶ。

 エスターも同じくして、声を押し殺して泣いていた。

 

『タクヤ、エスター、聞こえているか?』

 

 ドルチェフから通信が入る。

 

『隊長……』

 

『……聞こえます』

 

 二人は、泣き顔でくしゃくしゃな顔でドルチェフの通信に応える。

 

 回線状況が悪いのか、時々ノイズが混じっている。

 

『最後にお前達に頼みたい事がある』

 

『何でしょうか?』

 

『これから先、色々と辛い事があるだろうが二人で立ち向かえ。お前達一人一人は弱いだろうが、二人で立ち向かえば、きっと乗り切れ……』

 

 突然回線が切れてモニターは砂嵐状態になり、ドルチェフとの通信は途中で途絶える。

 

『おっさん! おい返事しろよ、おっさん!』

 

『隊長、応答してください!』

 

 タクヤとエスターは、必死にドルチェフに呼び掛ける。

 

「とうとう、回線も通じなくなったか……」

 

 砂嵐状態のモニターを見てドルチェフは呟く。

 

 それは、タクヤ達が通信回線が届かない場所まで逃げた事を意味する。

 

(二人共、上手く逃げ切ってくれよ)

 

 タクヤとエスターが逃げ切る事を心の中で祈りながら、ドルチェフは覚悟を決める。

 

『マリア……申し訳ないが、覚悟を決めてくれ』

 

 ドルチェフの通信を聞いたマリアは、黙って頷く。

 

「クソ! まさかここまでやるとはな」

 

 ドルチェフとマリアの反撃に過半数以上を撃ち落とされ、グランツは焦りを感じていた。

 

『グランツ、モシカシテ、ビビッテル?』

 

『馬鹿野郎! この俺がビビる訳ないだろう! 久しぶりに骨のある相手に震えてるのさ』

 

 ミネルバの通信にグランツは強がりを言う。

 

「いくぜ!」

 

 グランツ機とミネルバ機が2機に仕掛ける。

 

 マリア機はファイターで翻弄しつつ、ドルチェフ機はガンポッドと肩のビームランチャーで応戦する。

 

 グランツ機とミネルバ機はギリギリで攻撃をかわしつつ、ドルチェフ機に迫る。

 

(さあ、もっと近付いてこい……)

 

 ドルチェフは、ミサイル発射ボタンに親指を乗せてミサイルを発射するタイミングを待つ。

 

(あと少し……)

 

 グランツ機とミネルバ機の攻撃に必死に耐えながら徐々に近付いてくるタイミングを見計らう。

 

「これでも食らえ!」

 

  そして、射程圏内に入ったのを確認すると同時にドルチェフは、ミサイル発射ボタンを押す。

 

 フルアーマードパーツの全ミサイルハッチが展開され、中から大量のミサイルが発射されて次々と2機に襲い掛かる。

 

「何!?」

 

「ナニナニ!?」

 

 グランツ機とミネルバ機は、突然の事にミサイルを撃墜しながら回避する。

 

「コイツはオマケだあぁぁぁぁ!」

 

 ドルチェフ機は、なおも追い撃ちをかけるかの如く、ガンポッドと肩のビームランチャーで追撃する。

 

 ミサイルの回避で気を取られていた2機は、ガンポッドとビームランチャーを数発食らって火花を上げる。

 

「うわあぁぁ、くっそー!」

 

「キャアァァァァ!」

 

 被弾したグランツ機とミネルバ機は、火花を散らしながらも体勢を整える。

 

『グランツ、キタイガ、ヒヲフイテル』

 

 普段、あまり攻撃を食らった事が無いミネルバは、初めての被弾に慌てふためいていた。

 

「ちくしょー! コイツ、動け! 動けよ!」

 

 ドルチェフ機の攻撃を食らって動力系が思うように動かず、グランツは必死に操作レバーを動かす。

 

「逃がすかあぁぁぁぁ!」

 

 ガンポッドと肩のビームランチャーを撃ちながらドルチェフ機は特攻を駆ける。

 

 しかし、スヴァール・サランからの艦砲射撃により、ドルチェフ機の特攻は遮られてしまう。

 

『グランツ、ミネルバ、撤退して。艦砲射撃でアイツ等を攻撃する』

 

 グランツ達の状況を見ていたテラードが二人に通信を入れる。

 

『テラード、余計な真似をするんじゃねえ! 俺はまだ戦える!』

 

『アタシダッテ、マダ、タタカエル!』

 

 テラードからの援護射撃による撤退指示に対して、グランツとミネルバは猛反発する。

 

『そんな機体で無理をして何になるんだ! 大人しく撤退するんだ!』

 

『……クソ!』

 

 グランツとミネルバは、テラードの助言を受けて渋々後退をし始める。

 

『マリア、追うぞ!』

 

『了解』

 

 ドルチェフ機はアーマードパーツを排除し、エンジン全開でマリア機と共にグランツ達を追う。

 

 だが、残存部隊が2機の行く手を遮る。

 

「どけえぇぇぇ!」

 

 ドルチェフ機とマリア機は、残存部隊の攻撃を次々とかわしながら残存部隊を撃墜してグランツ達の後を追う。

 

 しかし、あと少しと言う所でグランツ達はスヴァール・サランに収容されてしまう。

 

「機体の収容、完了しました 」

 

「よし、艦砲射撃、急げ!」

 

 グランツ達の収容を確認後、スヴァール・サランの執拗な艦砲射撃が2機を襲う。

 

 マリア機は必死に回避するが、やがて艦砲射撃が次々と命中する。

 

「ドルチェ……フ……」

 

 マリア機は、火花を散らして爆発する。

 

「マリアァァァァ!」

 

 共に戦い、そして自分を愛してくれた者が今、目の前で爆光の中に消えていく。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

 愛する者を失ったドルチェフは、怒りと悲しみの混じった感情を露わにする。

 

 艦砲射撃をギリギリで回避しつつ、ドルチェフ機はスヴァール・サランに攻撃する。

 

 生き残った残存部隊もドルチェフ機を食い止める為に迎撃に向かう。

 

 次々と攻撃を食らい、満身創痍ながらもドルチェフは、トリガーから指を離す事なく攻撃を続けて残存部隊を撃破し、スヴァール・サランを僅かながら小破させる。

 

 やがて集中放火を浴びたドルチェフ機は、爆散して宇宙のチリと化した。

 

「敵ながら大した奴だ……」

 

 ドルチェフの命を懸けた攻撃にテラードは感心する。

 

「このままヤツらの基地も攻撃するんだ」

 

 テラードの命令で艦砲射撃は、惑星ローグ内のブラックバルチャー基地へと向けられる。

 

「照準完了」

 

「撃て!」

 

 テラードの命令と共に多数のビームの雨が惑星ローグへと降り注ぐ。

 

 艦砲射撃は、まるで流星群を見るかのような雰囲気だった。

 

「ねえねえ、流星群みたいなのが見えるよ」

 

 外の様子を見ていたメイアがミラン達を呼ぶ。

 

「流星群?」

 

「こんなへんぴな惑星で流星群が見られるなんて珍しいですね」

 

 メイアの呼ぶ声にミランや他の仲間達がやってくる。

 

「何だ、あれは?」

 

 外の様子を見るなりミランは、流星群の様子に違和感を感じる。

 

 その流星群は、徐々にミラン達の方に近付いて来ていたのだ。

 

「あれは……流星群じゃない、ビームだ!」

 

 ミランの言葉に周りは混乱する。

 

 しかし、そんな事もお構い無しにビームの雨は、ブラックバルチャー基地に降り注ぎ、施設を次々と破壊していく。

 

 流星群がビームだと判明してミラン達は逃げようとするが、逃げる間も殆ど無い状況でミランやメイア、そして基地で待機していたラナ達もビームで一瞬に焼き尽くされていく。

 

 惑星ローグのブラックバルチャー基地辺りの表面は、どんどん焦土へと変わっていく。

 

 その様子をグランツ、ミネルバ、テラードが艦橋で眺めている。

 

「アハハハ、キレイ」

 

 次々と起きる爆光を見てミネルバは、手を叩きながらはしゃぐ。

 

「ヒャーッハッハッハ! コイツは綺麗な花火だ。おい、テラード。もっとやれ!」

 

「わかっているさ」

 

 テラードは、ゼントラーディ兵に攻撃続行の指示を出す。

 

 やがて、ローグの表面の半分以上は焦土と化していく。

 

 スヴァール・サラン一隻による数時間に渡る艦砲射撃でローグは死の惑星へと変わってしまった。

 

「ハーッハッハ! フン、俺達の手に掛かれば惑星の一つや二つくらい、こんなもんさ!」

 

 死の惑星と化したローグを見て、グランツは高笑いする。

 

「だが、テラード。こっちもかなりの被害は出ている。ヌージャデル・ガーだけでも50機以上は撃破されているからな」

 

 高笑いするグランツにテラードは、冷静に被害状況を報告する。

 

100機近く搭載していた機動兵器の半数が1部隊によって撃墜されている事は、それだけブラックバルチャー隊のパイロット達が優れている証拠でもある。

 

「……わかってるよ。とりあえず補給をしに戻るぞ」

 

 補給の為、スヴァール・サランはポイントアルファからフォールドアウトを開始する。

 

 こうして、統合軍の掃き溜めと呼ばれたブラックバルチャー隊は、タクヤとエスターを残して全滅する形となった。

 

 なお、元々統合軍の掃き溜め扱いされている為、ブラックバルチャー隊が全滅した事は、統合軍本部にすら報告は挙げられていない。

 

 




次回予告

 星間大戦が集結後、統合軍は種族繁栄の為に大規模な移民計画を開始する。

 次々と移民船団が出航する中、2038年、第8番目のマクロス級大型移民船団が惑星エデンより出航。

 そして、出航から3年後。
 マクロス8船団で新たなプロジェクトが始動する

次回「プロジェクト・エスペランサ」
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