MACROSS-A.D.2048-   作:eisyama

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 西暦2048年。
 統合軍士官学校を卒業後、通称「統合軍の掃き溜め部隊」ブラックバルチャー隊に配属される事となった二人の少年。

 ブラックバルチャー隊に配属された二人の運命は?


第1話ブラックバルチャー

 地球から何万光年も離れた場所にある移民惑星ローグ。

 大きさ的には、太陽系内で言うと水星とほぼ同じ程の大きさである。

 

 今から十数年前にとある移民船団がこの惑星を発見して調査を始める。

 しかし、調査の結果、気候や生活環境等のデータが移民基準値に殆ど満たない為、移民船団は移民計画を中止し、その後もこの惑星への移民予定が無いまま、しばらくの間は放置されていた。

 

 それから数年後、統合軍は、この惑星を開拓して簡易基地を建造して利用していたが、数年程前からは統合軍の掃き溜めと呼ばれる部隊ブラックバルチャー隊の基地として使用されている。

 いつしか統合軍内では、使えない人員達がそこへ左遷されると風の噂で流れていた。

 

 その統合軍の掃き溜め部隊と呼ばれる基地がある、この惑星に1隻の小型艇がフォールドアウトする。

 フォールドアウトした小型艇は、そのまま惑星の大気圏内へと突入を開始する。

 大気圏内に突入を終えた小型艇は、そのままブラックバルチャー基地へと航路を向ける。

 

「タクヤ、エスター。基地に到着するから、そろそろ起きろ」

 

 ガッチリした体格に刈り上げた髪型。

 いかにも体育会系の外見が特徴な男性がシートで眠っている二人の少年に声を掛ける。

 

「ふぁ~あ、やっと着いたかぁ……」

 

 体育会系の男に起こされたブロンドヘアーにツンツン髪の少年、タクヤはアイマスクを外して大きな欠伸をしながらシートに腰掛けたまま背伸びする。

 ブロンドヘアーでツンツン髪の少年、タクヤは「やんちゃ坊主」と言う言葉が似合いそうな風貌を持つ。

 

「おい、エスター。着いたぞ、起きろよ」

 

 タクヤは、隣に座る青髪の少年、エスターをゆさぶり起こす。

 

「僕なら、もう起きてるよ」

 

 エスターは、アイマスクを外して膝元に置いた眼鏡を掛ける。

 青髪の少年、エスターは中性的な顔立ちが特徴的でパッと見では女性と間違えてもおかしくない風貌である。

 

「俺達の向かう基地ってどんな所なんだろう?」

 

「自然が綺麗な所だと良いなぁ……」

 

「俺は、カワイ子ちゃんがいるなら何でもいいや♪」

 

 二人が思い思いの事を考えているうちに、しばらくして窓の防護シャッターが開き、外の景色が映し出される。

 突然の明るさに二人は一瞬、目を覆うが、次第に明るさに慣れたのか景色に目を向ける。

 

「……な、何だこりゃ」

 

「……凄い所だね」

 

 二人は、窓に映る外の景色を見て目を白黒させる。

 

 二人の視界に映る景色は、まさに人が移住をしているような雰囲気ではなかった。

 地面は所々がひび割れ、周辺には森林が生い茂り、町らしき建物は全く無く、空は日が差さず、少し暗めの薄紫がかった空色しか見えない。

 まるでファンタジー小説の物語にでも出てくるような風景に二人は、言葉を失っていた。

 

「うわぁ……俺達、これからマジでこんなヤバイ所で生活するのかよ」

 

 景色を見渡しながらタクヤは、ゲッソリした表情で呟く。

 

「あ、あの……教官。ここには、本当に人が住んでいるんですか?」

 

 外の景色を見て不安を感じたエスターは、不安な表情を浮かべたまま二人を起こした男である教官に質問する。

 

「人が住んでるに決まってるじゃないか。そもそも人が住んでいなかったら、ここまで来るわけないだろ」

 

 教官は、不安そうな表情で質問するエスターに対して少しぶっきらぼうに答える。

 

「で、でもさぁ……コレって、どう見ても人が住んでいる様なレベルじゃなくね?」

 

「そ、そうだよね」

 

 外の景色を見て不安な表情を見せるタクヤの言葉にエスターは、思わず同意して頷くと同時に不安な気持ちは、いっそう強くなっていた。

 そんな二人の気持ちをよそに小型艇は、ブラックバルチャー基地へと進路を向けて進んでいく。

 

「つべこべ言ってないで、早く下船準備をしろ!」

 

「へいへい」

 

 教官に急かされて二人は、シート上部のカーゴ内から荷物を取り出して下船準備をし始める。

 

 しばらく進むと正面の森林の間から、やっと建物らしき物が見えてくる。

 

「タクヤ、見て」

 

 窓越しから建物を見つけたエスターは、建物に指を差す。

 

「お、やっと建物らしき物が見えてきたか!」

 

 今までの景色が森林しか無かった為、森林以外の物を見たタクヤは、思わずテンションを上げる。

 

「それにしてもタクヤはともかく。エスター、お前までタクヤと一緒にこんな場所に来なくても良かったろうに」

 

 教官は下船準備をするエスターに同情的な声を掛ける。

 

 タクヤとエスターは、士官学校入学時から、ふとした切っ掛けで出会う事となる。

 出会いの切っ掛けは、入学時に上級生に絡まれていたエスターをタクヤが助けた事だ。

 しかし、実際はケンカ早い割には実力は伴わず、タクヤは上級生にボコボコにされると言う結末だった。

 例えボコボコにされたとは言え、結果的に助けてくれたタクヤにエスターは、とても感謝をしていた。

 それを機に二人は友達となり、お互いに学校生活を送る。 

 

 タクヤは、やんちゃ坊主の特徴通りに勉強はからっきしダメ、バルキリーの操縦ですらままならなく、時には授業をサボったりする事もあった。

 対するエスターは、真面目で勉強ならびにバルキリーの操縦も上位に食い込む程の実力を見せ、所謂エリートコースまっしぐらだった。

 

 元々ブラックバルチャー隊への配属はタクヤのみであり、エスターは統合軍特殊部隊への配属が決まっていた。

 人伝いにタクヤの配属先の情報を知ったエスターは、タクヤのみでは不安的な部分が多くなると思い、あえて自身の配属先を断り、タクヤと同じ配属先を希望していた。

 

「いえ、僕はタクヤと一緒の方が安心できます」

 

 同情的な教官の声掛けに対してエスターは、わざとらしく笑みを返す。

 エスターからの予想外の反応に教官は、不服そうな表情を浮かべる。

 

 やがて小型艇はランディングギアを展開し、ブラックバルチャー基地の滑走路へと着陸を開始する。

 

 小型艇のエンジンが止まり、搭乗口よりタラップが展開する。

 搭乗口から教官が先にタラップを降り、後に続いてタクヤとエスターが降りる。

 タクヤ達が基地に降り立つと、一人の男が腕を組んで立っていた。

 先程、部屋で書類を読んでいた厳つい表情の男だ。

 

「よく来たな」

 

 出迎えた男の少し無愛想な言葉に教官は、少しだけビクビクしながら敬礼をする。

 

「タクヤ・バーズラッド、エスター・ワードナ、二名。本日より貴殿の部隊へと配属になります。不束者でございますが、よろしくお願いします。ほら、お前達も敬礼しないか!」

 

 教官に急かされて二人もならって男に敬礼する。

 教官の態度は、タクヤとエスターに対しての高圧的な態度と違って、出迎えた男に対しては、やけにおべっかを使っている感じだった。

 

「わかった、後の事は任せておけ」

 

 男は、タクヤとエスターを下から舐めるように見ながら教官に返事をする。

 

「は! では、二人をよろしくお願いします」

 

 それだけ言うと、教官は小型艇へとそそくさと戻っていく。

 

 教官が戻るのを確認すると小型艇は急上昇をして、そのまま速度を上げて飛んで行く。

 その様子を見ていたタクヤとエスターは呆気に取られた表情をしていた。

 

「なんだよ、教官のあの態度。俺達にはエラそうにしやがって」

 

 タクヤは、教官の態度を思い出して不満を愚痴りだす。

 

「そうだよね……」

 

 そんなタクヤの言葉にエスターも思わず苦笑する。

 

「お前達、ムダ話はいいから荷物を持って着いて来い」

 

 男に言われて二人は、荷物を手にして男の後に着いて基地の中へと入る。

 

 基地内部は少し薄暗く、人の気配すら無い雰囲気だった。

 聞こえてくるのは、三人の足音と時々聞こえてくる水滴の音のみだった。

 時々ひんやりとした空気が流れて来るので余計に不気味な感じが増してくる。

 

(うへぇ、気味わりぃ……今にも何か出そうな雰囲気だぁ……)

 

 タクヤは、不安げな表情で歩きながら基地内をキョロキョロと見ている。

 タクヤの様子を見たエスターも釣られて辺りをキョロキョロと見回す。

 

「なあなあ、何か出てもおかしくない雰囲気だよな?」

 

 基地内の雰囲気を見ていたタクヤは、エスターにそっと耳打ちする。

 

「う、うん……何だかそんな感じだよね」

 

 タクヤの耳打ちにエスターは同意して頷く。

 不安げな表情をしつつも二人は基地内を見渡しながら男の後を着いて行く。

 

「ここだ」

 

 しばらく歩き、男はドアの前で立ち止まる。

 男は胸ポケットからカードキーを取り出してドアロックを解除し、ドアを開けてそのまま部屋に入る。

 

「入れ」

 

 男に声を掛けられて、二人は部屋の中に入る。

 部屋の中は閑散としており、目に付くのは机と本棚らしき棚、机の上に置いてある端末のみだった。

 

「紹介が遅れたな、俺がブラックバルチャー隊隊長のドルチェフ・ブライアンだ。ひとつ、よろしく頼む」

 

 少々無愛想な態度でドルチェフは挨拶する。

 

「隊長、質問いースか?」

 

 ドルチェフの挨拶が終わると同時にタクヤは、手を挙げて質問する。

 

「何だ?」

 

「ここに来るまで景色を見ていたんだけど、街みたいな物は無いんスか?」

 

「街か……残念ながら、そんな物は一つもない」

 

 タクヤの質問にもドルチェフは、相変わらず無愛想に答える。

 

「ちぇー、なんだよ。何かつまんねえ所だなぁ……」

 

 ドルチェフの言葉にタクヤは、口を尖らせて不満そうな表情を浮かべる。

 非番時には、街に繰り出して遊びたかったのだろう。

 

「タクヤ、そんな言い方は……」

 

 不満を呟くタクヤをエスターは咎める。

 

「いや、彼の言う通りだ。ハッキリ言って、ここはつまらん場所だ。俺がこの場所に来た時も同じ事を思ったもんだ」

 

 タクヤの態度を咎めるエスターにドルチェフは、基地配属当時の感想を正直に話す。

 

 ふと、エンジン音が耳に入ったドルチェフは、部屋の窓のブラインドを指で折り曲げて空を見上げる。

 空には、ちょうど偵察を終えたバルキリーが滑走路に向かっていた。

 

「ちょうどいい。偵察部隊が帰ってきたみたいだから、他のヤツにお前達の部屋と格納庫を案内させる。少し待っていろ」

 

 ドルチェフに言われて二人は、ドルチェフの部屋で案内係が来るのをしばし待つ事となる。

 ドルチェフは机の角に腰掛けて目を閉じ、タクヤは退屈そうな表情をしながら時々欠伸をし、エスターは不安げな表情をしながら待っていた。

 

コンコン

 

「隊長、よろしいでしょうか?」

 

「入れ」

 

 しばらく待っていると、ドアがノックされて一人の女性がドルチェフの部屋に入って来る。

 先程ドルチェフと一緒に書類を見ていた女性だった。

 

「マリア・ランカスター他二名、偵察任務完了しました。こちらが偵察報告書です」

 

 マリアは、ドルチェフに敬礼をして偵察報告書を渡す。

 

「ご苦労だったな、マリア。紹介しよう、コイツらが今日から俺達の部隊で世話をする新米達だ」

 

 報告書を受け取り、ドルチェフはマリアに二人を紹介する。

 ドルチェフに紹介されてエスターは、少し緊張した面持ちになる。

 

 マリアは、ドルチェフに紹介された二人を見る。

 

「よく来たわね、二人共。私はマリア・ランカスター、階級は大尉。ここでは副隊長も兼ねているから、よろしく頼むわね」

 

 マリアは、二人に敬礼する。

 

「エ、エスター・ワードナです。こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 エスターは、緊張した面持ちでマリアに挨拶をして敬礼をする。

 

「ちぃーっス! 初めまして、タクヤ・バーズラッドで~す。こちらこそ、よろしくお願いしま~す」

 

 エスターが緊張した面持ちで挨拶をする一方、タクヤは少しふざけた感じでマリアに挨拶をする。

 

 タクヤのふざけた態度にマリアの表情は険しくなり、そのままタクヤに歩み寄る。

 そして、マリアはいきなりタクヤの頬をひっぱたく。

 

「いってぇな、いきなり何するんだよ!」

 

 突然の事にタクヤは、ひっぱたかれた頬を押さえて思わず目を大きく見開いてマリアを怒鳴りつける。

 しかし、マリアはタクヤの怒鳴りつける態度を無視したまま胸倉を強引に掴む。

 

「あなたは、士官学校で上官に対しての礼儀を習わなかったのかしら?」

 

「んだと!」

 

 タクヤは、胸倉を掴んでいるマリアの腕を乱暴に振り解く。

 二人のピリピリした様子にエスターは、ただ何もせずにオロオロしていた。

 

「あなた、タクヤだったかしら? あなたの資料を見させてもらったけど、あんな最低な成績でよく士官学校を卒業できたわね」

 

 マリアは、タクヤの成績表を思い出して薄ら笑いをする。

 マリアの馬鹿にしたような様子にタクヤは怒り心頭になる。

 

「くっ……女でも言って良い事と悪い事の区別はつかねぇのかよ!」

 

 タクヤは、怒りに任せてマリアに殴りかかろうとする。

 だがその時、ドルチェフは突如二人の間に割って入り、タクヤの腹に蹴りを喰らわせる。

 

 ドルチェフに腹を蹴られたタクヤは、蹴られた勢いで壁まで吹き飛ぶ。

 

「う、うぇっ……ゲホッゲホッ……」

 

 タクヤは蹴られた腹を押さえて、呻き声を出しながらうずくまる。

 

「タクヤ!」

 

 もがき苦しむタクヤの様子に心配そうに駆け寄るエスターをドルチェフは押しのけて、うずくまるタクヤの胸倉を強引に掴む。

 

「タクヤ。今のは、お前が悪い……ガキじゃねぇんだから、それくらいはわかるよな?」

 

 ドルチェフは、タクヤを鬼のような形相で睨み付ける。

 

「……う、うぅ……ぐ、ぐぅぅ」

 

 腹を蹴られたダメージが大きいのか、タクヤは声もロクに出ない様子だった。

 

「ちゃんと謝れ」

 

「……くっ」

 

「返事は?」

 

「……」

 

 黙り込むタクヤに追い討ちを掛けるかの如く、ドルチェフは無言でタクヤの額に頭突きを喰らわす。

 

「ぐっ! うぅ……」

 

 ドルチェフの頭突きを喰らい、タクヤの額に青あざができる。

 

「返事は?」

 

「……ず、ずびば……ぜん」

 

 ドルチェフの頭突きが効いたのか、タクヤは弱々しい声で応える。

 

「すみませんじゃないだろ! 申し訳ございませんだろうが!」

 

 ドルチェフは、再びタクヤに頭突きを喰らわす。

 二度の頭突きを喰らいタクヤは目を白黒させる。

 

「た、隊長。あまりやりすぎるとタクヤが……」

 

 タクヤの様子を見て心配するエスターは、ドルチェフに声を掛けるが、その声は少し震えていた。

 

「フン、これぐらいでくたばる位ならウチの隊にはいらん! さあ、どうした!」

 

 ドルチェフは、タクヤの胸倉を掴んでいる腕に更に力を入れる。

 

「……も、もうしわ……け……ご、ございま……せん」

 

 蚊の鳴くような声でタクヤは、ドルチェフに謝る。

 

「聞こえねぇぞ、バカ野郎!」

 

 弱々しい声で謝るタクヤの態度にドルチェフは、更に怒鳴り散らす。

 

「も、申し訳ございません!」

 

 タクヤは、腹の底から精一杯の声を出して謝る。

 

「フン!」

 

 ドルチェフは、タクヤの胸倉を掴んでいた手を強引に離す。

 ドルチェフから開放されたタクヤは、尻餅を付いてそのまま床に倒れ込む。

 

「タクヤ、だ、大丈夫?」

 

 エスターが心配そうにタクヤに駆け寄り、表情を覗き込む。

 

「だ……大丈夫じゃねぇ……」

 

 タクヤは、既に元気が出ないくらいのグロッキー状態で起き上がれる気力すら無かった。

 

「まったく……このバカのお陰で時間がムダに過ぎたな。マリア、とりあえず二人を部屋に案内した後、格納庫に連れて機体の確認をさせろ」

 

 ドルチェフは、イラついた態度でマリアに命令する。

 

「了解。二人共、着いてきなさい」

 

 エスターは自分とタクヤの分の荷物を持ち、フラフラ状態で立ち上がる気力の無いタクヤを支える感じでドルチェフの部屋を後にしてマリアの後を着いて行く。

 

 先程通った薄暗い通路を三人は歩いていく。

 

「あ、あの……」

 

 先程のピリピリした雰囲気に息が詰まりそうな状態に耐え兼ねたエスターがマリアに恐る恐る声を掛ける。

 

「何かしら?」

 

「タクヤが失礼をして、申し訳ございません」

 

 エスターは、タクヤに肩を貸したまま頭を下げる。

 

「あら、あなたが謝ることないわよ」

 

「そうだそうだ、お前は悪くない。ケンカを売ってきた、そっちが悪いんだ」

 

 エスターの肩に凭れながらタクヤが不平不満を言う。

 

「あなたねぇ……もう一回殴られたい?」

 

 タクヤの悪びれない態度にマリアは指を鳴らす素振りを見せる。

 

「タクヤ!」

 

 自分が悪い事をしていると思っていないタクヤをエスターは、慌てて一喝する。

 

「……」

 

 エスターに一喝されたタクヤは、そっぽを向いてふてくされた表情をする。

 反省している様子の無いタクヤを見たエスターは、深い溜息を吐く。

 

「確か、エスター君だったかしら?」

 

「は、はい!」

 

 マリアに声を掛けられてエスターは、少しビクッとする。

 

「あなたもこんなのと一緒で大変ね」

 

 マリアは、哀れみの表情でエスターを見る。

 その目は同情をする様な感じではなく、少し小馬鹿にしたような感じである事にエスターは気付いていた。

 

「で、でも……タクヤにも良い所はあると僕は思っています」

 

 士官学校で共に過ごしてきただけにエスターは、タクヤの良い部分を知っていた。

 初対面だけでは、全てを把握はできないからこそである。

 

「ふーん……そう」

 

 エスターは、タクヤをフォローするもマリアは何も感じる事も無く、少し呆れたような表情をする。

 

 しばらく歩いた所で部屋のドアが見えてくる。

 その部屋のドアの前でマリアが立ち止まる。

 

「この部屋よ」

 

 マリアが鍵を開けて部屋のドアを開けると、少しカビ臭い匂いが鼻をつく。

 マリアが部屋に明かりを点けた後、明るくなった部屋の中を二人は見渡す。

 部屋の中は少し狭い感じはするが、そこそこ綺麗に掃除された部屋だ。

 

「ここがあなた達の部屋よ。部屋に着いて早速だけど、これから格納庫へ案内するから荷物だけ部屋に置いて」

 

 エスターは自分とタクヤの分の荷物を部屋に置き、マリアの後に着いて格納庫へと向かう。

 先程の部屋からしばらく歩くと大きな入り口が見える。

 今までの暗く不気味な雰囲気から一転、基地内が明るく見えてくる。

 

「ここが基地の格納庫よ」

 

 格納庫は思った以上に広く、各々の機体が戦闘機形態であるファイター形態のまま配備されている。

 

「スゲェ……」

 

「結構広いですね」

 

 タクヤとエスターは辺りを見回し、格納庫内の広さを実感する。

 格納庫の奥では、数人のメカニックマンが作業用デストロイド等で作業をしている姿が見える。

 

「質問していいスか?」

 

 エスターの肩に凭れつつタクヤが質問の手を挙げる。

 

「どうしたの?」

 

「何だか、ここに配備されてる機体って古くね?」

 

 タクヤの言う通り、格納庫内に配備されている機体は、現在統合軍の主力機で新星インダストリー社製のVF-11サンダーボルトとその主力機の座を争った対抗機であるゼネラルギャラクシー社製のVF-14ヴァンパイアしか見当たらなかった。

 

「仕方がないわ……私達の部隊は統合軍からは厄介者扱いだから。その証拠に、ここに配備されているVF-11は全部旧式のB型だし、宇宙戦装備のスーパーパックすら無い状態よ」

 

 自分達の部隊が厄介者扱いされる事にマリアは険しい表情をする。

 マリアの表情を見たエスターは、ここの部隊の闇の部分を少なからず感じていた。

 

「確か、今はアビオニクス改良のC型が主力でしたよね?」 

 

「あら、詳しいわね」

 

「ホント、エスターは勉強大好きだもんなぁ」

 

 エスターの知的な部分を誉めるマリアにタクヤは、エスターに皮肉めいた言葉を言う。

 

「……あなたも少しは彼を見習って勉強してみたら?」

 

 エスターに皮肉を言うタクヤをマリアは、冷ややかな視線で見る。

 

「ハッ、俺は俺のやり方があるからいいんだよ!」

 

「はいはい。じゃあ、あなた達の機体を案内するわ」

 

 タクヤの言葉を適当にあしらい、マリアは二人の機体を案内する。

 

「これがあなた達の機体よ」

 

 案内された場所には、2機のVF-11が配備されていた。

 しかし、配備されたその機体もどことなく古ぼけた感じがしており、機体の所々は傷や汚れが目立っていた。

 その機体の状態に二人は、何とも言えないような表情をする。

 

「とりあえず、11番機がタクヤで12番機がエスターだから覚えておいてね」

 

「はい」

 

「ちぇ、なんだよ。旧式のVF-11にしか乗れないのかぁ……俺、VF-19に乗りたかったなぁ」

 

 配備されたVF-11を見たタクヤは、ふてくされて愚痴をこぼす。

 

「あなたにはVF-11すら勿体無いわよ」

 

 配備された機体に愚痴をこぼすタクヤにマリアは皮肉を言う。

 

「別に理想ぐらい言ったっていいだろ!」

 

 マリアの皮肉にタクヤは食って掛かる。

 

「二人共、ケンカは止めてください!」

 

 状況を見かねたエスターが二人を抑える。

 

「さて、部屋の案内と機体の確認は終わったから、後は自由にしてていいわよ。それから18時にブリーフィングルームでブリーフィングがあるから遅れないでね」

 

「ブリーフィング?」

 

「マリア大尉、ブリーフィングルームの場所は?」

 

「ここの格納庫から、そう遠くは無いわ。それに案内板を見れば5分も掛からないから大丈夫よ。じゃあね」

 

 簡単な説明だけしたマリアは、そのまま格納庫を後にする。

 気が付くと格納庫には先程までいたメカニックマンの姿も見えなくなり、二人だけになっていた。

 

「あーあ……ったく! 何か俺達、とんでもねぇ所に配属されちまったなぁ」

 

 タクヤは、辺りを見回して愚痴をこぼす。

 

「そうだね」

 

 タクヤの愚痴にエスターは苦笑いする。

 

「なあエスター、別にお前まで俺に着いて来なくて良かったんだぜ。お前の実力なら特務部隊の配属だったのにさ」

 

 成績が悪く配属先をたらい回しにされて最終的に自分だけが配属される予定だったが、わざわざ自分に着いて来たエスターに対してタクヤは少なからず罪悪感があった。

 

「うーん、何て言うのかな……何だかタクヤの事、ほっとけなくってさ」

 

 罪悪感を感じているタクヤに対して、少し照れながらエスターは答える。

 

「……そうか、ありがとなエスター」

 

 エスターに礼を言いつつタクヤはエスターの腕を退ける。

 

「大丈夫なの?」

 

「ん? ああ、何とかな」

 

 タクヤは右腕をグルグル回して笑顔で応える。

 

「このタクヤ様がアレくらいでヘバるかって……あ、痛っいててて……」

 

 しかし、すぐにドルチェフに頭突きと蹴りを喰らった部分を手で押さえて前屈みになる。

 

「もう、すぐに調子乗るんだから……無理はよくないよ」

 

 そんなタクヤを見て、思わずエスターは溜息を吐く。

 

「よお、見かけない顔だな」

 

 一人の男が格納庫にやって来る。

 男は浅黒い肌を持つ黒人系の青年だった。

 

「初めまして。本日付けで配属になりました、エスター・ワードナです」

 

「お、同じくタクヤ・バーズラッドです」

 

 二人は浅黒い肌の男に敬礼をする。

 タクヤも流石に学習したのか、ふざける事なく真面目に挨拶をする。

 

「そうか、俺はレオン・フレデリック。よろしくな。お前達、機体の確認は済んだのか?」

 

「ええ、先程マリア大尉に教えてもらいました」

 

「そうか。機体、酷いだろ?」

 

 レオンは配備されているVF-11を見て、二人に問い掛ける。

 

「見た見た。いくらなんでもヒドいっスよね」

 

 レオンの問い掛けに古ぼけたVF-11を見たタクヤは不満を漏らす。

 

「メンテナンスはちゃんとしとけよ。結構酷い任務をやらされたりして、すぐに機体にガタが来るからな」

 

「え? メカニックがやってくれるんじゃないの?」

 

 自己メンテナンスを推奨するレオンにタクヤは驚く。

 機体のメンテナンス等は専属のメカニックが行うものだと思っていたからだ。

 

「残念ながらウチの部隊はメカニックが五人しかいないのさ。だから基本的にメンテナンスは各自で行うように隊長に言われているのさ」

 

「そうなんですか」

 

 レオンの言葉にエスターは、少し不安な表情をする。

 

「俺達の部隊は、掃き溜め部隊だからロクな物資も人材も来ないのさ。タクヤだっけ? お前さんはメンテナンスは?」

 

 レオンに聞かれてタクヤは首を横に振る。

 士官学校時代に一応、機体メンテナスの科目もあったが、タクヤは授業を度々サボっていた為、メンテナンスの知識は殆ど無い状態である。

 

「一応言っとくけど、あんましメカニックを酷使するなと隊長から命令が出てるからな。命令違反は隊長にブン殴られるぞ」

 

「うぇぇ……マジかよぉぉ」

 

 既にドルチェフに頭突きと蹴りを入れられたタクヤは、レオンの言葉に嫌そうな顔をする。

 

「ハハッ、そんなにビクビクするなよ。半分冗談だからな」

 

 レオンは笑って言うが、タクヤには冗談には聞こえなかった。

 

「じゃあ、タクヤの機体のメンテナンスは僕も手伝うよ」

 

「お、さすが我が友エスター君! 頼りにしてるぜ!」

 

 エスターの手助けにタクヤは急に元気になりエスターの背中をバンバン叩く。

 

「痛いからそんなに叩かないでよ」

 

「ああ、悪ぃ悪ぃ」

 

(……このタクヤっての大丈夫か?)

 

 調子づくタクヤを見たレオンは、他人事ながら一抹の不安を感じていた。

 

「エスター、部屋に戻ろうぜ」

 

「うん。レオン先輩、失礼します」

 

 エスターはレオンに一礼して、先に行ったタクヤの後を追い掛けていく。

 

 部屋に戻ったタクヤはベッドに横になり、エスターは荷物の整理をしていた。

 

「いてて……まだ痛むぜ」

 

 タクヤは頭突きを喰らった場所をさすっていた。

 

「大丈夫?」

 

「ああ、なんとかな」

 

「それにしてもタクヤはタフだよね。あれだけ隊長に殴られたのに動けるんだから……僕が同じ事をされたら動けないな」

 

 エスターはタクヤのタフさに感心する。

 

「あのおっさん、いつかぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

 タクヤは右ストレートを突き出す素振りをする。

 

「やめなよ、また殴られるよ。それより、もうすぐミーティングの時間だから行こうよ」

 

「えー、もうそんな時間かよ。あー、ブリーフィング行くのめんどくせぇなぁ……」

 

 ミーティングへ行くのが面倒くさく思いつつもタクヤは、ベッドから嫌々起き上がる。

 

「そんな事を言うと、また隊長に殴られるよ」

 

「はいはい、わかりました」

 

 素っ気ない返事をするタクヤを連れて、エスターはブリーフィングルームへと向かう。

 

 部屋を出て案内板に従って歩くと、マリアの言う通りに5分も掛からないうちに辿り着く。

 ブリーフィングルームに入ると既に数人が着席しており、メンバー同士が会話をしている。

 

「タクヤ、何処に座る?」

 

「んなの、後ろの隅っこに決まってるだろ」

 

 タクヤは一番後ろの隅側の座席に座り、エスターもその隣に座る。

 

 ブリーフィング開始時間が近付くに連れて次々とメンバーがブリーフィングルームにやって来て着席していく。

 しばらくして、その後からドルチェフと二人のオペレーターがやって来る。

 

 ドルチェフは、そのまま教壇に立ち、二人のオペレーターは教壇横の席に着く。

 教壇に立ったドルチェフは、部屋の中を見回して全員が揃っているかを確認する。

 

「よし、みんな揃ったな。ブリーフィングを始める前に本日より我が隊に配属になった新米達を紹介する。新米、前に出てこい」

 

 ドルチェフに呼ばれてタクヤとエスターは教壇の前に出て行く。

 

「お前達、自己紹介しろ」

 

「じゃあ、俺から。タクヤ・バーズラッド、18歳。バルキリーパイロットに憧れて入隊しました。よろしくお願いします」

 

 自己紹介を終えたタクヤはVサインをする。

 

「エスター・ワードナ、18歳です。不束者ですが、皆さんのお役に立てるように頑張りますので、よろしくお願いします」

 

 エスターは自己紹介を終えて深くお辞儀をする。

 

 二人の自己紹介が終わると周りから拍手が湧く。

 マリアとレオンが手を振っているのに気付いたエスターは軽く手を振る。

 

「タクヤ、エスター。彼女達は作戦遂行時にオペレートするエミリアとアイナだ」

 

 ドルチェフはタクヤとエスターに二人のオペレーターを紹介する。

 

「エミリア・ガーフィールドです。よろしくお願いします」

 

 少し幼い顔立ちに薄桃色のストレートヘアーを靡かせて、エミリアは二人に敬礼をする。

 

「同じく、アイナ・エルラインです。よろしくお願い致します」

 

 栗色のボブカット、そして大人の女性の雰囲気を漂わせるアイナもエミリアに続いて敬礼をする。

 

「よろしくお願いします」

 

 二人もエミリアとアイナに敬礼をする。

 

(おおおお! マリア以外にも、こんなカワイイ子や綺麗なお姉さんがいるなんて、ここってスゲエ良い所じゃん)

 

 マリア以外の女性を見たタクヤは心の中でテンションを上げていた。

 

「タクヤ、鼻の下を伸ばすのは構わないが、人の見えない所でやれ」

 

 エミリアとアイナに鼻を伸ばしているタクヤをドルチェフは咎める。

 その様子に気付いたエミリアとアイナはクスクスと笑う。

 

「以上だ。お前達、席に戻れ」

 

 自己紹介を終えて二人は席へと戻る。

 

「よし、これよりブリーフィングを始める。先日の任務で俺達が壊滅させた反統合政府の残党が潜伏しているアジトだが、どうやらアレは囮だと言う事が判明した。ここ数日の偵察で、マリアが情報を掴んだようだ。報告してくれ」

 

「はい。では、スクリーンを見てください」

 

 マリアが卓上の端末を操作をするとスクリーンに基地と資料らしき映像が映し出される。

 

「先日の統合軍からの依頼のあった反統合政府軍基地襲撃後に再度、基地周辺を偵察した所、資料らしき物を発見。内容は武装関連の取引でした。ただ、一部が焼けていたので詳しい事までは分かりませんが、明日ここから28000km離れたポイントガンマにある放棄された施設で行われるとの事です」

 

「マリア、この取引をどう見る?」

 

「距離が離れている所と施設の大きさから見て、恐らく大型兵器の搬入もあると思われます」

 

「大型兵器?」

 

「放棄された施設は大型であり、放棄されているとは言えど恐らく施設内の機能は生きて可能性がありますので、そこを隠れ蓑に大型兵器を搬入するには、うってつけの場所だと思います」

 

「敵の数は?」

 

 ドルチェフの問い掛けにマリアは少し険しい表情をする。

 

「予想が難しいですね。距離が離れているので少数で行うかも知れませんし、逆に大型兵器搬入で厳重にしている可能性もあります」

 

「この場所を攻めるなら何処がいい?」

 

「その件に関してはカイルが計算していますが、出せそうかしら?」

 

「ええ、出せます」

 

 マリアに声を掛けられてカイルは立ち上がる。

 カイルの風貌は、いかにも学者と言う言葉が似合いそうな感じの外見だった。

 

 カイルがマリアと同じく卓上の端末を操作をすると、スクリーンの映像が宇宙空間座標に切り替わる。

 

「ポイントガンマ付近は小惑星群が多いのと先程の放棄施設がある為、よく闇取引の場所に使用されているようです。私の計算してみた所、攻撃ポイントは4時の方向が一番やりやすいですね」

 

 スクリーンに映し出されるポイントガンマに対して、時計の4時方向から攻撃するシミュレーションが表示される。

 

「ただ、小惑星群が少ないのが難点ですが、こちらからジャミング電波を流して敵の通信網を混乱させてしまえば一気に行けそうです」

 

 スクリーンにはジャミング展開を行い攻撃をする映像が映し出される。

 カイルの説明を聞いたドルチェフは納得して頷く。

 

「よし、そこを攻め込むとしよう。とりあえず部隊コードはバルチャー2~5をファイヤー、バルチャー6~10をウィンド、俺と新米二人はウォーターで行く。なお、索敵とジャミングはカイルとトールの2名で行う。出撃は明日02:00だ。ここまでで質問のあるヤツは?」

 

 ドルチェフは質問を投げかけた後、辺りを見渡す。

 ふと、後ろの席で居眠りをしているタクヤを見つけたドルチェフは、ゆっくりとタクヤの方に歩み寄る。

 

「タクヤ、起きなよ」

 

「んだよ、うるせぇなあ……」

 

 ドルチェフが近付いてくるのに気付いたエスターがタクヤの身体を揺さぶって急いで起こそうとするが時既に遅く、ドルチェフの鉄拳がタクヤの脳天に炸裂する。

 

「い……ててて」

 

 ドルチェフの鉄拳を頭に受けてタクヤは頭を押さえる。

 

「ブリーフィング中に居眠りとは、新人なのになかなかナメたマネをしてくれるな。え?」

 

 ドルチェフの言葉に周りからは冷ややかな視線が二人に注がれる。

 冷ややかな視線にエスターは思わず居た堪れなくなる。

 

「とりあえず解散だ。各自、出撃前に機体のチェックをしておけ」

 

 メンバーは白い目でタクヤとエスターを見つつ、ブリーフィングルームを後にする。

 

「タクヤ、俺はお前のようなヤツをパイロットと認めたくは無い。だが、ここに来た以上はパイロットとしての心得を骨の髄まで教えてやるから覚悟しておけ。ふざけたマネをしようものなら、遠慮無く撃ち殺してやるからな」

 

 ドスを利かせた声でタクヤに警告を入れたドルチェフは、ブリーフィングルームを後にする。

 

「タクヤ……」

 

「……クソ、あの野郎……俺の実力を見てビビんなよ!」

 

 心配するエスターをよそにタクヤは怒りに任せて壁を思い切り殴る。

 

「イテ、いっててて……」

 

 しかし、壁を思い切り殴りつけた為、後になって痛みが増してタクヤは壁を殴った拳をさする。

 

(本当に大丈夫かなぁ……)

 

 そんな痛がるタクヤを見たエスターは、深い溜息を吐く。

 

「タクヤ、とりあえず部屋へ戻ろうよ」

 

「おう」

 

 ブリーフィングを終えた二人は、誰もいなくなったブリーフィングルームを後にして部屋へと戻る。

 

「それにしても、あのおっさんムカつくなぁ……」

 

 タクヤの自分勝手で自分が悪い事をしているのに反省する様子も無く、他人のせいにしている部分を見ているとエスターはタクヤと一緒に着いて来て良かったのかと今更ながら後悔の念を感じずにはいられなかった。

 

 部屋へ戻る途中、格納庫が慌ただしい様子だったので二人は覗いてみた。

 

「隊長のVF-14の弾倉補填が終わったら、次は4番機と8番機の電子戦装備換装を急げ!」

 

「チーフ、9番機の弾倉装填完了しました」

 

「よし、そのままアビオニクスと電装系のチェックをやってくれ」

 

「了解」

 

 帽子を被ったメカニックマンが他のメカニックマンに指示を出しながらリストを見ている。

 

「忙しそうっスね」

 

 タクヤは帽子を被ったメカニックマンに声を掛ける。

 

「ああ、まあね。そう言えば君達、見掛けない顔だよね。あ、もしかして隊長が言っていた今日配属されたのって君ら?」

 

「はい、エスター・ワードナです。よろしくお願いします」

 

 エスターは帽子を被ったメカニックマンに敬礼する。

 

「俺、タクヤ・バーズラッド。よろしく!」

 

 タクヤはVサインをする。

 

「そうか。俺はミラン・フォスターだ、よろしくな。一応、ここの部隊で整備士長をやってる」

 

 ミランは帽子を深く被り直して二人に挨拶をする。

 

「俺と一緒に妹もやってるんだ。ちょっと待ってなよ。おーい、メイア」

 

 ミランはマリア機の作業している少女に声を掛けて呼ぶ。

 

「なあに? お兄ちゃん」

 

 ミランに呼ばれた少女は、作業を止めてミランの元に駆け寄って来る。

 少女はショートカットの髪型に少し幼い感じがする容姿だった。

 

「この二人が隊長さんの言っていた新人さんらしい」

 

 ミランがメイアにタクヤ達を紹介する。

 

「そうなんだ。初めまして、メイアです。よろしくお願いします」

 

 メイアは二人に頭を下げる。

 

「エスター・ワードナです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 エスターはメイアに敬礼をする。

 

「わわ、そこまで堅くならなくてもいいですよ」

 

 エスターの真面目な対応に思わずメイアは焦る。

 

「エスターはホント固いんだよなぁ。あ、俺、タクヤ・バーズラッド。よろしく!」

 

 タクヤは、いつもの調子でメイアに挨拶する。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 堅い挨拶のエスターに対して、調子のいい挨拶をするタクヤにメイアは思わず笑顔を見せる。

 

「それにしても、女の子がメカニックやってるなんて珍しいなぁ」

 

「そうだね」

 

 タクヤの言葉にエスターも珍しそうにメイアを見る。

 

「おかしい……ですか?」

 

 二人の言葉にメイアは少し悲しげな表情を浮かべる。

 男性の多い職場に女性がいる場合、珍しがられる事はよくあるが、メイア自身は、そう思われる事が嫌だった。

 

「いやいや、そんな事ないよ。な、なあエスター」

 

「う、うん。女の子がメカニックをしてて偉いなぁと思って」

 

 落ち込む様子のメイアを見たタクヤとエスターは慌ててフォローする。

 

「あ、いえ……私こそ、ごめんなさい。気にし過ぎちゃって……お兄ちゃん、マリアさんの機体整備は終わったよ」

 

「そうか。じゃあ、トールさんとカイルさんの電子戦装備換装作業を手伝ってきてくれ」

 

「うん。じゃあ、タクヤさん、エスターさん、また後で」

 

 三人と別れてメイアは、そのまま他のメカニックマンの作業の手伝いに戻っていく。

 

 整備士をしていたミランに憧れて、メイアは自ら進んで整備士の道を目指していた。

 特に女性の整備士が少なかった為、メイアは周りから珍しがられたり、時にはからかわれたりしていた。

 周りからの影響で挫けたり落ち込みそうになった時には、ミランが影から支えてくれたお陰でメイアは兄と同じ整備士に就く事ができた。

 

「悪いな、メイアは変に特別扱いされたりするのを嫌っていてね」

 

「いや、俺達の方こそ」

 

「すみません、ミランさん」

 

 ミランはメイアの方に視線を向ける。

 メイアは他のメカニックマンと共にトールとカイルの機体の換装作業を手伝っていた。

 

「悪いな、俺も作業に戻るよ。また暇な時にでも声を掛けてくれよ」

 

「そうするよ」

 

「わかりました」

 

 ミランは作業に戻り、二人は格納庫を後にする。

 

「タクヤ、作戦時間までまだありそうだから、もう寝ようよ」

 

「え、もう寝るのかよ?」

 

 まだ19時を過ぎた時間帯で寝ようとするエスターにタクヤは驚く。

 

「でも、今から休んでおかないと後でしんどくなるよ」

 

「はいはい、わかったわかった」

 

 二人は作戦開始時間まで体力温存の睡眠を取る為、自室へと戻る。

 

「あーあ、それにしても今日は最悪な日だぜ。来て早々にマリアにはビンタされるし、おっさんには蹴られるわ頭突きされるわで……ホント最悪。早く昇進して、こんな部隊とは、とっととオサラバしたいよ」

 

 ベッドの中でタクヤは今日の出来事の不満をぶちまけていた。

 

「でも、あれはタクヤも悪いと思うよ」

 

「そうかぁ? あんな事くらいで怒るのも、俺はどうかと思うぜ」

 

 エスターの忠告を聞いたタクヤは悪びれる事も無く屁理屈をこねる。

 そんな反省の色を見せる事が無いタクヤの態度にエスターは溜め息を吐きつつ、いつしか眠りに入っていた。




次回予告

 初の実戦にそれぞれの思いを見せる二人。
 果たして、生き残る事ができるのか?

次回「ファースト・ミッション」
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