MACROSS-A.D.2048-   作:eisyama

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 宛もなく宇宙を漂流するタクヤとエスター。
 そんな彼等の前に現れたのは……



第19話ニュー・ホーム

 マクロスと巨人族の争いが激化する中、銀河中に少女の歌声が響き渡り、男と女に分かれて争いをしていた巨人族は争いを止めて少女の歌に耳を傾ける。

 そして、その歌声にのせて巨人族は手を取り合い、マクロスと共に敵基幹へと向かう。

 

 巨人族の協力を経たマクロスは、ついに敵基幹の突入に成功する。

 

 少女の歌にのせて、1機のバルキリーが敵中枢部目掛けて飛ぶ。

 道中の猛攻を次々とかわしてバルキリーは、敵中枢部へと辿り着く。

 

 少女の歌もクライマックスを迎えると同時にバルキリーは敵中枢部を攻撃する。

 敵側の断末魔が轟き、ついに戦いは終局を迎えるのだった。

 

 その様子を少年は、目を輝かせながらテレビ画面越しに見つめていた。

 

「ママ、僕も大きくなったらバルキリーのパイロットになる! そんで、パパを殺した奴をやっつけてやるんだ!」

 

 少年は、銃を構えて撃つ素振りを母親に見せる。

 

「ママ、僕もバルキリーのパイロットになれるよね?」

 

「ええ、タクヤならなれるわ」

 

 母親はタクヤの頭を優しく撫でながら、タクヤの問い掛けに微笑みながら話す。

 

 

 

 

……クヤ

 

「絶対に守ってやる」

 

……クヤってば!

 

「パイロットになるんだ……」

 

わあぁぁぁぁぁぁっ!

 

「どわあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 突然の大声にタクヤは、驚いて目を覚ます。

 

『やっと起きた』

 

 モニターに少し笑ったエスターが映る。

 

『んだよ、びっくりするじゃねえか!』

 

 気持ちよく眠っていた所を邪魔されて、タクヤは怒りを露わにする。

 

『だって、タクヤは普通に起こしても起きないじゃない』

 

『ぐ……』

 

 エスターの言葉に図星を突かれたのか、タクヤは言葉を詰まらせてしまう。

 

『……なあ、俺達って今は何処を飛んでるんだ?』

 

『ごめん、僕も分からないよ』

 

 ゼントラーディ人グランツの罠にハマり、苦戦を強いられたブラックバルチャー隊は、タクヤとエスターを逃がして壊滅した。

 そして、ブラックバルチャー隊基地が存在する惑星ローグもグランツの艦砲射撃により壌土と化す。

 

 二人は、ブラックバルチャー隊が完全に全滅したのをまだ知らない。

 

『一応、付近の統合軍基地やステーションに呼び掛けてはいるんだけど……応答が全然返ってこないんだ』

 

 統合軍との通信が繋がらない状態にエスターは、不安な表情を見せる。

 

『とにかく、何回か通信してみるよ。何処かの基地が拾ってくれるかも知れないし』

 

『意外にゼントラーディの基地に拾われたりして』

 

『タクヤ……怖い事を言わないでよ』

 

 タクヤの冗談にエスターは、思わず身を震わせる。

 しかし、その冗談も本当になる事もあるので、油断は出来ない状態だった。

 

『ねえ、タクヤ』

 

『何だよ?』

 

『僕達、どうなるんだろう……』

 

『バカ、不安を煽るんじゃねえよ!』

 

 不安を口にするエスターをタクヤは叱咤する。

 しかし、タクヤ本人も内心は不安感が募っていた。

 何処からも救援が無い場合、このまま野垂れ死ぬのは明白だった。

 

「しかし、こうも静かだと不気味だよなぁ……」

 

 辺り一面、音もなく深い闇に包まれ、時々デブリや星屑が見えるだけだった。

 

『ねえ、タクヤ』

 

 不安げな表情でエスターが通信を入れてくる。

 

『ん?』

 

『隊長達……無事だよね』

 

『あ、ああ……大丈夫だって、あのおっさんが簡単に死ぬ訳ねえって。今頃はゼントラーディを追っ払って、基地でふんぞり返ってるって』

 

 ドルチェフ達の安否を心配するエスターにタクヤは、冗談混じりに話して励ます。

 どんな危機的状況も仲間達と共に乗り越えてきたドルチェフ。

 タクヤ自身も、その実力は認めており、そう簡単に死ぬ様な人物ではないと内心思っていた。

 

『……なら、良いんだけど』

 

 タクヤの冗談混じりな話でもエスターの心には、何一つ通じていなかった。

 

『とりあえず、何回か通信して呼び掛けるしか他に方法は無いんだろ?』

 

『それしか無いよね』

 

『しゃあねえなあ。じゃあ、交代で呼び掛けてみようぜ』

 

 二人は、少しでも活路を見出す為に交代で救難通信を手当たり次第に出す。

 

「くそ、コレが最後のメシか」

 

 タクヤは非常食のチューブを絞り出すようにして強く吸う。

 

 そして、吸い終わった非常食のチューブを後部座席に放り投げる。

 

「あー、腹減ったなぁ……エスターなら予備を持ってるかな?」

 

 非常食を全部食べ尽くしたが、それでもお腹の虫が鳴っていたので、タクヤはエスターに通信を入れる。

 

『エスター』

 

『どうしたの?』

 

『悪ぃ、非常食の予備持ってない?』

 

『え? もう食べちゃったの?』

 

 タクヤの言葉にエスターは、思わず呆気に取られる。

 

『しゃあねえじゃん、育ち盛りなんだからさ』

 

 能天気に答えるタクヤにエスターは、深い溜め息を吐く。

 

『もう……じゃあ、今から渡すから止まって』

 

『サンキュー』

 

 2機は、エンジンを止めてエスターは、自分の分の非常食を持って機体から外に出てタクヤ機に向かう。

 タクヤは、機体のキャノピーを開けてエスターから非常食を受け取ると手を振って合図する。

 

「助かった助かった」

 

 タクヤはエスターから貰った非常食のキャップを開ける。

 

『タクヤ』

 

 突然、エスターから通信が入る。

 

『な、何だよ』

 

『少しは我慢しなよ』

 

 非常食のキャップを開けようとしていたタクヤをエスターは咎める。

 

『はいはい、わかりましたよ』

 

 素っ気ない返事をしてタクヤは、非常食を後部座席にに放り投げる

 

「え?」

 

「何だ?」

 

 突如、2機のレーダーが機影をキャッチする。

 

『エスター』

 

『何だろう? データ照合しても味方でもないし、ゼントラーディの機体でもないみたい……』

 

 エスターがデータ照合をするも、その機影に該当するデータは一切表示されていなかった。

 

『ちょ、もしかしてヤバイ感じじゃねえか?』

 

『僕も分からないよ。しかも、結構速度が速いし……あと30秒で、こっちに向かってくるよ』

 

 

 徐々に近付いてくる機影にタクヤとエスターは、迫り来る恐怖感に思わず固唾を飲む。

 

『……5、4、3、2、1……来た!』

 

『うわぁぁぁぁ、助けてくれー!』

 

 恐怖感で顔を強張らせる二人の前に近付いてきた機影は、特に二人に何かをする訳でも無く、猛スピードでそのまま通り過ぎて行く。

 

『え?』

 

『あれ?』

 

 そのまま通り過ぎる機影を二人は、振り返って追い掛けるも既に姿は見えなくなっていた。

 

『何だったんだ?』

 

『さ……さあ?』

 

 二人は、お互いに顔を見合わせつつも何事も無かった事に胸を撫で下ろす。

 

『なあ、さっきの奴さあ……凄くボロボロだったよな』

 

『一瞬しか見えなかったけど、そうなんだ』

 

『あと、21って数字が書いてあったぜ』

 

『21?』

 

『ああ』

 

『あまり分からなかったけど、動体視力凄くいいんだね』

 

 音速の速さで通り抜けた機影の特徴を語るタクヤの凄さにエスターは感心していた。

 

「ん?」

 

 謎の機影が通り過ぎて数時間後、2機のレーダーに三つの機影らしき物が映る。

 

『タクヤ』

 

 レーダーを確認したエスターから通信が入る。

 

『俺達、助かったぜ!』

 

 タクヤは、救難信号が届いて救援が来たと思い喜ぶ。

 

『え……本当に救援なのかな?』

 

 喜ぶタクヤを後目にエスターは疑問を持つ。

 

 先方から全く連絡が来る事なく、そのまま機影が近付いてくるのは、どう考えても怪しかった。

 

『馬鹿だな、絶対に救援に決まってるって!』

 

 タクヤは、完全に救援と決めつけていた。

 

『待って、タクヤ……レーダーの機影スキャンでヌージャデル・ガーって出てるよ』

 

『……マジっスか?』

 

 エスターの言葉にタクヤは、そのままレーダーを確認する。

 

 レーダーには、機影がゼントラーディ軍のパワードスーツ兵器ヌージャデルガーである事を表記していた。

 

『ちょっ、マジかよ! やべえって!』

 

 敵機をレーダーで確認したタクヤは、慌てふためく。

 

 タクヤ達を確認した3機のヌージャデルガーは、二人が戦闘態勢をする間を与える事なく攻撃を開始する。

 

『タクヤ、戦うしかないよ』

 

『くっそー、武器も燃料もそんなに無いのに!』

 

 2機は、散開して迎撃態勢を取る。

 

 グランツとの戦いやここまで逃げ延びた状況で弾薬もプロペラントタンクの燃料の残りも少ない状況だった。

 

 2機は散開後、3機のヌージャデルガーを囲むように飛行する。

 

『タクヤ、このままフォーメーション12』

 

『おう!』

 

 3機のヌージャデル・ガーの真横に来た状況で、2機はいっきにミサイルを撃ち込んでそのまま反転行動をする。

 

 3機のヌージャデル・ガーは迎撃行動や回避行動をするものの、そのうちの1機は撃墜されが、それぞれがタクヤとエスターに仕掛ける。

 

 エスター機は、追い掛けて来るヌージャデル・ガーの攻撃をかわしながらミサイルを撃ち込みつつガンポッドで応戦する。

 対するヌージャデル・ガーもエスターの攻撃をかわしながら格闘戦に持ち込もうとする。

 

「もう少し……」

 

 ヌージャデル・ガーの攻撃を回避しながらエスターは、ヌージャデル・ガーとの距離を確認する。

 

「今だ」

 

 ある程度の距離をレーダーで見計らったエスターは、操縦レバーを引きつつ逆加速させながら機体をバトロイドに変形させて反転させる。

 そして、機体を反転させた勢いに任せたまま格闘戦を仕掛けて来るヌージャデル・ガーに体当たりを食らわせる。

 体当たりを食らって態勢を崩すヌージャデル・ガーの隙を突いて、エスター機はガンポッドで攻撃して撃墜する。

 

『タクヤ、そっちは大丈夫?』

 

 敵機を撃墜したエスターは、そのままタクヤに通信を入れる。

 

『こっちは、マジでやべえよ!』

 

 プロペラントタンクの推進剤が少ない為、思うように出力が上がらず、タクヤ機はヌージャデル・ガーの攻撃を避けるのがやっとだった。

 

『タクヤ、僕が行くまで何とか頑張って』

 

『へっ、エスターの助けなんか借りなくったって大丈夫だよ!』

 

 自身で敵機を撃墜したい意地があるのか、タクヤはエスターの救援を断る。

 

「これでも喰らいやがれ!」

 

 後ろから追跡するヌージャデル・ガーにタクヤ機は頭部レーザー機銃で応戦するが、簡単に避けられて瞬く間に間合いを詰められる。

 

「なら、こいつで」

 

 タクヤは以前使ったガウォーク・ファイターに変形しての逆加速で相手の隙を突く戦法を試みる。

 しかし、逆加速をするタイミングが早すぎたのか戦法を読まれてしまい、ヌージャデル・ガーはタクヤ機を上から羽交い締めにする。

 

「しまった!」

 

『タクヤ!』

 

 タクヤの救援に追いついたエスターは、ガンポッドでタクヤ機を羽交い締めにしているヌージャデル・ガーを狙おうとする。

 

 しかし、エスター機がこっちを狙っているのに気付いたヌージャデル・ガーは、羽交い締めにしたタクヤ機を盾にする。

 

「これじゃあ、タクヤに当たっちゃう」

 

 タクヤ機を盾にするヌージャデル・ガーを見たエスター機は、ガンポッドを撃つの躊躇う。

 

「くっそー、これでも食らえ!」

 

 タクヤは頭部レーザー機銃の発射ボタンを押すが、ヌージャデル・ガーに羽交い締めされた時に壊されたのか、ボタンを押しても発射されなかった。

 

「ゲ、何だよこんな時に使えねぇ……じゃあ、何とか足だけでも動け!」

 

 タクヤ機は、バトロイドの右膝を曲げて振り子の原理で脚部を振り上げて、そのままヌージャデル・ガー目掛けて一気にに振り下ろす。

 機体上部しか掴んでいないヌージャデル・ガーは、タクヤ機のキックを喰らい、一瞬だけ隙が出来る。

 

「よっしゃ、今だ!」

 

 一瞬の隙を突いたタクヤ機は、もう片方の足でヌージャデル・ガーを蹴って、そのままエンジン全開で急速離脱する。

 

『エスター、撃て!』

 

 タクヤ機がヌージャデル・ガーから離れるのを確認すると同時にエスター機は、ガンポッドを撃ち込み撃破する。

 

「ふぅー……」

 

 危機的状況を回避し、タクヤは胸を撫で下ろす。

 

『大丈夫?』

 

 エスターが心配しながらタクヤに通信を入れる。

 

『ああ、大丈夫。サンキューな』

 

『もう、あまり無茶しないでよ』

 

『悪かったよ。エスターには、ホント感謝してます』

 

 モニター越しにタクヤは両手を合わせる素振りをエスターに見せる。

 

『うかうかしていたら、またやって来るから急ごう』

 

 2機は、再び宛もなく宇宙を跳び続ける。

 

『こちら統合軍ブラックバルチャー隊、応答してください』

 

 相変わらずエスターは、可能な限り無線で呼び続ける。

 そんなエスターとは対照的にタクヤは、呑気に大きな欠伸をしていた。

 

『どうだ、エスター』

 

『駄目、全然繋がらないよ。はあ……』

 

 いつまで経っても繋がらない通信にエスターは、大きな溜め息を吐く。

 

『なあエスター。そんなにせかせかしたって何も変わらないんだし、少しはのんびりしていようぜ』

 

『……うん、そうだよね』

 

『そうそう』

 

 エスターは気楽にしているタクヤに呆れつつも、その気楽な考えに少しだけ納得して気を休める事にする。

 

「あ~あ、それにしてもヒマだなぁ。何かラジオやってないかな?」

 

 何もする事が無く、退屈になったタクヤは、コンソールパネルを弄ってラジオの周波数を色々と合わせる。

 

「やっぱ、全然繋がらないか……お?」

 

『皆さん……は。今週も始ま……シティ8ミュージック……この番組はマクロス8内シ……ら全銀河の……範囲へ向け……』

 

 ちょうどラジオ周波数が合ったのか、パーソナリティの話声が聞こえる。

 しかし、殆どノイズ混じりの為、時々途切れて聞こえる。

 

「んだよ、殆どノイズばっかじゃねーか!」

 

 タクヤは途切れ途切れに聞こえるラジオにイラつき、コンソールパネルを思い切り叩く。

 

「って、待てよ……」

 

 流れて来るノイズ交じりのラジオを聞いたタクヤはふと閃き、エスターに通信を入れる。

 

『なあ、エスター』

 

『なあに?』

 

『今、ラジオを聴こうとしたらマクロス8船団っぽい所からのラジオが繋がったから、もしかしたらマクロス8船団が近いかも知れないぜ』

 

『本当!?』

 

 タクヤの通信を聞いたエスターは、僅かな希望を持つ。

 

『ああ、嘘だと思うなら周波数を合わせてみなよ』

 

『う、うん』

 

 タクヤに言われるがままにエスターもコンソールパネルを弄ってラジオの周波数を色々と合わせる。

 

 しばらくすると、ノイズ混じりに音楽が聴こえてくる。

 

『今、ミンメイの天使の絵の具ぽいのが聴こえているけど、これがそうなのかな?』

 

『ああ、多分それそれ』

 

『じゃあ、救難信号と通信をしてみるよ』

 

『ああ、よろしくな。繋がったら教えてくれよ』

 

 エスターが再び救難信号を入れる事を確認すると、そのままタクヤは通信を切る。

 

(タクヤ、一緒にしてくれないんだ……)

 

 結局口だけで協力すらしてくれないタクヤにエスターは、深い溜め息を吐きつつもマクロス8船団への救難信号と通信を入れる。

 先程の戦闘で既にお互いに弾薬もスーパーパックの燃料も底を尽き掛けていた為、エスターにとっては藁にも縋る様な気分だった。

 

 新たな新天地に向けて銀河を航海中のマクロス8船団。

 今日も平穏無事に広い銀河を航海していた。

 今の所は特に大規模な戦闘も無く、殆どが哨戒任務を主としている。

 

「あら、救難信号?」

 

 ブロンドヘアーに髪を緩くウェーブにし、小麦色の肌が特徴的な女性オペレーターはエスターからの救難信号に気付く。

 

「どうしたの、カレン」

 

 紫色のロングヘアーに大きなリボンが特徴の女性オペレーターがエスターの救難信号に気付いたカレンに声を掛ける。

 

「ラーラ、何か救難信号が出てるみたい。ちょっと確認してくれる」

 

 カレンからの救難信号確認うを受けて、ラーラはレーダー探索を行う。

 

「うん……あ、ホントだ」

 

 レーダーには、救難信号を発信している機影がハッキリと映し出されていた。

 

「艦長、2000km11時の方向より救難信号をキャッチしました」

 

 救難諡号をレーダーで確認をしたラーラは、振り返って艦長であるアンナに救難信号の件を報告する。

 

「救難信号ですか?」

 

「はい、識別コードは統合軍からです」

 

「分かりました。では、こちらからも通信を入れてください」

 

「了解。こちら、第8次長距離移民船団マクロス8船団です。応答してください」

 

 ラーラは、救難信号を出しているエスターへ通信を出して呼び掛ける。

 

『……ちら……船団……してく……マク……応……』

 

 マクロス8船団の通信が僅かながら聞こえてくる。

 

「!?」

 

 マクロス8船団からの通信にエスターは、驚くと同時に安堵感を感じていた。

 

『タクヤ、マクロス8船団に……マクロス8船団に繋がったよ!』

 

 嬉しさのあまり、エスターは思わずタクヤに通信を入れる。

 

『マジか! やったな、エスター』

 

『うん!』

 

 エスターは、マクロス8船団からの通信に応答する。

 

『こちら、統合軍第427航空部隊所属ブラックバルチャー隊。マクロス8船団応答願います』

 

『……ち……8船……回線……ので聞き……』

 

 相変わらず回線状況が悪い為、マクロス8船団からの通信はノイズ混じりだった。

 

「やはり、もう少し近付かなきゃダメかな」

 

 エスターは回線状況が良くなるまで必死に通信を繰り返す。

 

『タクヤも通信してよ』

 

 先程からコクピットで欠伸をしているタクヤにエスターは通信を入れて、マクロス8船団に呼び掛けるように促す。

 

『ええー! 俺もやるの?』

 

『当たり前でしょ』

 

『何か、めんどくさ……』

 

 面倒くさい態度を取ろうとするタクヤにエスターは、睨んだ目付きで訴えかける。

 

『わ、わかったよ。やればいいんだろ』

 

 エスターに睨まれたタクヤは、まるで蛇に睨まれた蛙の様に大人しくなり、黙ってマクロス8船団へ通信を入れ始める。

 

『……ら、ブラッ……ワード……願い……』

 

『……タク……聞こ……して……』

 

 マクロス8船団も同様にエスター達の通信は、殆どノイズ混じりで聞き取れなかった。

 

「艦長、ノイズが酷くて通信が出来る状況じゃありません」

 

 通信を続けるカレンは、通信状況の酷さをアンナに報告する。

 

「分かりました。では、救援部隊を向かわせましょう。カレン少尉、救難信号の発信源は?」

 

「現在、発信源は12時の方向を2,500kmです」

 

「わかりました。近隣の部隊を至急救援に向かわせてください」

 

「了解。こちらバトル8ブリッジ、12時の方向2,500kmにて救難信号をキャッチ。至急、救援部隊を発進させてください」

 

 アンナの指示を受けたカレンは、救援部隊の発進を要請する。

 

『こちらライジングリーダー。丁度これから偵察任務へ行くところだ。偵察ついでに救難信号の発信源へ向かいます』

 

『バトル8ブリッジ了解』

 

「これで一安心ですね」

 

 ライジングリーダーとカレンの通信のやりとりを聞いたアンナは、ホッとした表情をしていた。

 ライジングリーダーとの通信を終えたカレンもアンナの方を振り向いて笑顔を返す。

 

 数分後、第三次防衛ライン駐在のステルスフリーゲート艦よりライジングリーダー率いる3機のVF-11がエスター達の元へ向けて発進する。

 

「ノイズが酷いから、もっとマクロス8船団に近付かなきゃ」

 

 エスターはマクロス8船団に早く近付く為、エンジンの出力を上げる。

 しかし、プロペラントタンクの推進剤が底を尽きそうな為、思うようにエンジンの出力が上がらなかった。

 

「僕の機体も推進剤が無くなったか……」

 

 モニターにプロペラントタンク内の推進剤容量が0に近付いているのを確認し、エスターは溜め息を吐く。

 

「? 機影」

 

 レーダーが3機の機影を捉える。

 

『エスター、レーダー見たか!』

 

 レーダーを確認したタクヤがエスターに通信を入れる。

 その表情は、迫り来る恐怖感に怯えていた。

 

『う、うん……さっきから僕の方にもレーダーアラートが鳴っているよ』

 

『なあ……もしかして、敵なんじゃね?』

 

 先程の戦闘を思い出したタクヤは、不安な表情を見せる。

 

『こ、怖い事を言わないでよ……もう弾も燃料も殆ど無い状態なんだから、ここで戦っても勝てるかどうか微妙だよ』

 

 先程の戦闘でお互いに殆どのガンポッドとミサイルを打ち尽くした為、ガンポッドの弾も10発撃てるかどうかの状態であり、プロペラントタンクの推進剤は無いに等しい為、逃げる事も出来ない状態だ。

 

『うあぁぁぁぁ、俺、まだ死にたかねえよぉぉぉぉ!』

 

 どうする事も出来ない状況にタクヤは、絶望感を感じて泣き叫ぶ。

 

『こちらマクロス8船団所属ライジング小隊。聞こえるか、どうぞ』

 

 男からの通信がタクヤとエスターに入る。

 

「……え?」

 

 絶望感に打ちひしがれていた二人は、男の通信に目が点になる。

 レーダーには、3機のVF-11の機影がスキャンされていた。

 

「た、助かったぁ……」

 

 レーダーに映った機影が味方と分かると、タクヤは安堵感から身体がヘナヘナと崩れていく。

 

「よ、良かった……本当に良かった」

 

 エスターは、味方の救援通信である事に涙目になって喜びを噛みしめていた。

 

『おい、生きているのか? 生きているなら返事をしろ!』

 

 再びライジングリーダーから通信が入る。

 

『す、すみません。こちら、統合軍ブラックバルチャー隊のエスター・ワードナとタクヤ・バーズラッド二名です』

 

 エスターは、ライジングリーダーからの通信で我に返り、慌てて通信を返す。

 

『おお、生きていたか。二人ともマクロス8船団まで飛べるか?』

 

『すみません、プロペラントタンクの推進剤も底を尽きそうで、正直飛べるかどうか……』

 

『そうか。なら、今から船をこっちに寄越すように手配をするから待ってろ』

 

『ありがとうございます』

 

『イヤッホー! 船だ船だ』

 

 お礼を言うエスターとテンションを上げて喜ぶタクヤをよそにライジングリーダーは、マクロス8船団へ回線を開ける。

 

『ライジングリーダーよりバトル8ブリッジ』

 

『こちらバトル8ブリッジ』

 

 ライジングリーダーの通信にラーラが応じる。

 

『連絡のあった、やっこさんを確認。どうやら推進剤が切れてるらしく、そっちへの巡航は困難と思われる。すまないが船を1隻手配をしてくれ』

 

『了解』

 

 通信を終えたラーラは、アンナの方を振り返る。

 

「艦長、ライジング小隊が救難信号場所に到達して生存者も確認したそうです」

 

「そう、それはよかった」

 

 救難信号を出した生存者を確認出来た報告を受けたアンナは、ホッと息を吐く。

 

「それから救難信号の機体が推進剤が切れて航行が難しい為、救出にフリーゲート艦の手配依頼が来ています」

 

「わかりました。後方支援部隊の1隻を至急向かわせてください」

 

「了解」

 

 アンナの指示を受けたラーラは、後方支援のフリーゲート艦に通信を入れる。

 

『バトル8ブリッジより、Dフィールド艦隊へ。12時の方向2,500kmの救難信号発信源へ1隻を向かわせてください』

 

『こちらDフィールド艦隊。これより救難信号発信源へ向けてフリーゲート艦を1隻向かわせます』

 

 ラーラからの通信を受けたDフィールド艦隊は、哨戒任務待機中の艦隊の中から1隻のフリーゲート艦を選出してがタクヤ達の元へ向かわせる。

 

『船の手配は済んだから、しばらく待っていてくれ』

 

『ありがとうございます』

 

『船が来るまで俺達が護衛しているから休んでいてくれ』

 

『でも……』

 

 エスターは、わざわざ救援に来て貰いつつも護衛をしている中、自分達が休むのも申し訳ないと言う気分だった。

 

『いいじゃん。せっかく休めって言ってくれているんだからさ。お迎えが来るまで休んでいようぜ』

 

『そうそう。休めるうちに休んでおくのも大事だぜ』

 

 タクヤの提案にライジングリーダーも賛同していた。

 

『……分かりました。では、お言葉に甘えて休ませて頂きます』

 

 ドルチェフの命令で戦場から離脱し、宛もなく宇宙をさまよっていた二人は、余程疲れたのか、しばらくして眠りに入る。

 

『あー、こちらブラックバルチャー隊のタクヤ・バーズラッド。どうぞ』

 

『こちら第8次長距離移民船団マクロス8船団所属、小型フリーゲート艦ナギサ。艦長の命令で貴君のお迎えに上がりました。これよりカタパルトを展開しますので、サーチライトに合わせて着艦願います』

 

『りょーかいりょーかい。すぐに向かっちゃいますよ』

 

 ナギサからの通信を終えたタクヤは、エスターに通信を入れる。

 

『おいエスター、迎えが来たぞ』

 

『……』

 

 タクヤからの通信にエスターからの反応は無かった。

 ふとエスター機の方を振り向くと、エスターは深い眠りについていた。

 恐らく、今までの緊張感からの解放から疲れが一気に来ていたのだろう。

 

『おい、エスター。起きろって!』

 

「ん……」

 

 タクヤの通信にエスターは、目を覚ます。

 

『迎えが来たんだね』

 

『ああ。着艦許可が降りてるから行こうぜ』

 

 ナギサからのサーチライトを頼りに2機は残りの推進剤を使って、そのままカタパルトへと着艦する。

 

 着艦後、二人は案内係に部屋へと案内されてマクロス8船団到着まで部屋でくつろいでいた。

 

「あー、やっとラクになったぁ~♪」

 

 タクヤは、部屋のベッドに寝転がり開放感を実感する。

 約3日間、二人は救難信号を出しながら遭難生活を強いられていたので、まさに地獄から天国の様な感じだった。

 

「移民船団に拾って貰えて良かったよね」

 

「ホントホント。コレが変な部隊とかだったら、また同じ事の繰り返しだったかもなぁ」

 

「……隊長達、無事だといいね」

 

 自分達が無事に助かった事で安心したのか、ふとエスターはドルチェフ達の事を思い出す。

 

「……ああ」

 

 エスターのドルチェフを心配する言葉にタクヤも心の奥底では、ブラックバルチャー隊の仲間達の無事を祈る。

 

 グランツ達の奇襲から約3日間が過ぎており、二人はブラックバルチャー隊が奮闘してグランツ達を追い返している事に僅かな望みを賭けていた。

 力不足な自分達を囮になって逃がしてくれた仲間達を早く助けに行きたい気持ちが一層強まる。

 

 しばらくしてナギサは、マクロス8船団に到着する。

 初めて見る大型移民船団にタクヤとエスターは、キョロキョロしながら興味津々に眺めていた。

 

「すっげー、これが大型移民船団かぁ……」

 

 タクヤは大型移民船団の凄さに思わず溜め息を漏らす。

 様々な戦艦や空母や色々な施設艦が駐留しており、色々と目移りしてしまう。

 

「今までテレビとかでしか見てなかったけど、実際に見ると凄いよね」

 

 エスターもまた、タクヤと同じく目に映る移民船団の様子に思わず見入っていた。

 

ピピー

 

 部屋のインターホンが鳴り、エスターは対応する。

 

『はい』

 

『間もなくバトル8に到着しますので、下船準備をお願いします』

 

『わかりました』

 

『それから、艦長があなた方にお会いになりたいそうなので、後程お部屋までご案内致します』

 

『はい、わかりました』

 

「何だって?」

 

 会話の内容が気になったのか、タクヤがエスターに話し掛ける。

 

「もうすぐ到着するから降りる準備をして欲しいのと、何でも艦長が僕達に会いたいから後で案内してくれるんだって」

 

「あー、そうなんだ。どうせ、艦長つったって厳つい顔のおっさんか、むさ苦しいおっさんだろ? 俺は別に会いたくもないんだけどなぁ……」

 

 エスターの話を聞いたタクヤは、さほど興味を示さずにそのままベッドの上でゴロゴロと横になる。

 

 別に艦長と会った所で何かしてくれる訳でもなく、何が悲しくてむさ苦しいおっさんと楽しくもない話をしなければならないんだと。

 どうせ話をするなら可愛い女の子が艦長だったら良いのに……と叶わぬ願いを心の中で思っていた。

 

「でも、助けてもらったんだから、お礼くらい言わないと失礼だよ」

 

 ヘソを曲げて艦長に会いたがらないタクヤをエスターは注意する。

 

「はいはい、わかりましたよーだ」

 

 エスターの注意もタクヤには全く意味も無く、タクヤ本人も上の空で聞いていた。

 

 エスターは乗り気の無いタクヤを連れて、部屋を出て迎えに来た係員と合流する。

 その間にナギサは、バトル8付近で巡航を一旦停止し、バトル8との通路ゲートを展開する。

 通路ゲートが開通後、タクヤとエスターは係員に案内されてバトル8内へと搭乗する。

 

 係員の後をタクヤとエスターは着いてくる。

 

「すっげー! ここがバトル8の中かあ~♪」

 

 タクヤは、物珍しそうにキョロキョロと艦内を色々と見渡す。

 エスターもタクヤほどではないが、艦内を色々と見ていた。

 

 テレビ等でしか見た事が無く、余程の事が無い限りは大型移民船団の中核であるバトル級クラスの中を自分達が歩いている事自体が夢のように思えているのだから、二人がキョロキョロするのも無理はない。

 

 やがてタクヤ達は、部屋の前にやってくる。

 

「艦長は、少し遅れてくるそうなので先に部屋の中に入ってお待ちください」

 

 係員に案内されてタクヤ達は、部屋の中に入る。

 広い部屋には、大きめの来客用ソファーとテーブルが置かれていた。

 

「では、失礼いたします」

 

 係員が部屋を後にして、とりあえずタクヤは、大きなソファーに腰を下ろす。

 

「うぉ! このソファーすっげーフカフカしてて気持ち良い!」

 

 タクヤは、ソファーの座り心地を実感していた。

 

「エスターも座りなよ。マジでフカフカしてて気持ち良いぞ」

 

 タクヤは、子供っぽくはしゃぎながらソファーに座って跳ねたりする。

 

「タクヤ、みっともないから止めなよ。それに艦長が来たら怒られちゃうよ」

 

 ソファーの上ではしゃぐタクヤをエスターは咎める。

 

「そんな細かい事は、気にすんなって。」

 

 エスターの話を無視してタクヤは、ソファーに座ったまま跳ねて無邪気にはしゃぐ。

 

「もう……」

 

 話を全く聞かないタクヤにエスターは、深い溜め息を吐く。

 

コンコン

 

 ドアのノックが聞こえてタクヤとエスターは、急いでソファーに腰掛けて姿勢を正す。

 先程まで子供の様にはしゃいでタクヤも急に姿勢を正していた。

 

「タクヤ、はしゃいでいても良いんだよ」

 

「バカ言え。そんなみっともない事出来る訳ねえだろ」

 

 先程まで気にするなと自分で言っていたのに誰かが着た途端に急に態度を変えるタクヤの姿にエスターは、思わずクスクスと笑う。

 

「入ってもよろしいかしら?」

 

「ど、どうぞ」

 

「失礼します」

 

 ドアが開き、女性が部屋の中に入る。

 艦内職員とは違った制服を着用し、橙色の少しウェーブの掛かったミディアムショートヘアが特徴的だった。

 

「初めまして。マクロス8船団艦長、アンナ・エヴァンスです」

 

 部屋に入ったアンナは、二人に敬礼をする。

 二人はアンナが艦長だと知り、驚きのあまり目を白黒させる。

 

 特にタクヤは艦長に関しては厳つい顔のおっさん、もしくは、むさ苦しいおっさんの固定概念があったのと、入って来た艦長がその固定概念と違い美しい女性である為、尚更である。

 

「は、はじ、初めまして。ブ、ブラックバルチャー隊所属、タ、タタ、タクヤ、タクヤ・バーズラッド伍長であります!」

 

 タクヤは急に立ち上がり、アンナに敬礼をして元気な声で自己紹介をする。

 しかし、緊張しているのか声が上擦っており、アンナもそれに気が付いて思わず苦笑いしていた。

 

「ウフフ。バーズラッド伍長、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

 

「は、はい! じ、じじ、自分、自分は、だ、だだ、大丈夫であります!」

 

「タクヤ、落ち着きなよ」

 

「ば、ばばば、馬鹿言うなよ、エスター君。俺……じゃない、じ、自分はお、落ち着いているぞ!」

 

 いつもの悪ふざけは成りを潜め、タクヤは言葉遣いまで丁寧だった。

 エスターには、そんなタクヤの姿が滑稽に見えた。

 

「初めまして、艦長。自分は、統合軍第631特務部隊ブラックバルチャー所属エスター・ワードナ伍長です。この度は危ない所を助けて頂き、ありがとうございます」

 

 タクヤに続いて、エスターもアンナに敬礼をして自己紹介をする。

 

「ワードナ……もしかして、あなたはエスティマ・ワードナ大佐の?」

 

「はい、息子です。父をご存知でしたか?」

 

「ええ。昔、同じ艦隊でご一緒だった時の先輩でした。あの時は本当に色々とお世話になって……」

 

 エスターがアンナの先輩の息子だと分かり、アンナとエスターはタクヤそっちのけでワードナ大佐の話で盛り上がる。

 

「それにしても色々な経緯はあれど、ワードナ大佐のご子息が私達の移民船団に来られるなんて。お父様が聞いたら、さぞビックリするでしょうね」

 

「い、いえ……そんな。自分なんて父に比べたらまだまだです」

 

「ウフフ。ワードナ大佐の言う通りね」

 

「父が?」

 

「『エスターは、私にとって自慢の息子だ』って褒めていました」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 アンナ経由で父親の自慢話にエスターは、耳まで真っ赤だった。

 

(……もしかして、俺ってハブられてる?)

 

 タクヤは、いつの間にか自分が会話に入れずにハブられてる事に気付き始めていた。

 

「エスター、ちょっといいか?」

 

 アンナと話に花を咲かせるエスターにタクヤは話し掛ける。

 

「どうしたの?」

 

「なあ……お前、お偉いさんの息子だったの?」

 

「う、うん……ゴメンね、今まで隠してて」

 

「何で、それを早く言わねーんだよ!」

 

 今まで身分を明かさなかったエスターにタクヤは思わず激高する。

 

「だって、クラスメートに僕の身分を明かしたら、みんな遠慮して普通に接してくれなくなるし……」

 

「その気持ち、何だか分かる気がしますわ。身分を明かしたら、きっと周りも気を使ってしまわれて、エスターさんも学校生活も楽しめなかったかも知れませんしね」

 

 エスターの内に秘めていた葛藤を聞いたアンナは、その内容に納得する。

 

「な、なあ……エスター」

 

「なあに?」

 

「お、俺さ、お前に今まで色々と酷い事をしたりもしたけど、もしかして……その事を父ちゃんに……」

 

 タクヤは、今までエスターにしてきた事を思い出して恐る恐る話す。

 もしかしたら、その事が父親の耳にでも入っていたら、後でとんでもない事が自分に降り掛かるのではないかと思っていたのだ。

 そんな事を考えているうちにタクヤの顔が、みるみる青ざめ始めていた。

 

「嫌だなあ。僕は、そんな事でいちいち告げ口をする程、子供じゃないよ」

 

 タクヤの問い掛けにエスターは、笑って応える。

 

「ほ、ホントか?」

 

「本当だよ」

 

「実は、陰で俺の事を……」

 

「タクヤ、いい加減にしないと怒るよ」

 

 不信感を募らせるタクヤにエスターは、ジト目でタクヤを見る。

 

「わかった、お前を信じるよ。やっぱり、持つべきは友達だよな!」

 

 安心しきったのかタクヤは、笑顔でエスターの右肩を叩く。

 

「!? そうだ、艦長。一つお願いがあります」

 

 アンナやタクヤと会話をして本来の目的を忘れかけていたエスターは、思い出したようにアンナに話し掛ける。

 

「何かしら?」

 

「僕達ブラックバルチャー隊は、現在はぐれゼントラーディ部隊の奇襲攻撃を受けて苦戦を強いられているんです」

 

「それは大変。すぐにでも援軍を手配します。場所は?」

 

「ポイントアルファ、惑星ローグです」

 

「わかりました」

 

 アンナは、部屋の回線を使用して急いでブリッジへ連絡を入れる。

 

『こちらバトル9ブリッジ』

 

『アンナです。至急援軍の手配をお願いします。場所はポイントアルファ、惑星ローグです』

 

『了解。至急、駐在艦隊を手配します』

 

 アンナの通信を受けたラーラは、駐在艦隊へ援軍の手配を始める。

 

「あなた達を迎えに来た船をまた手配しておきますので、あなた達も急いでください」

 

「はい。急ごう、タクヤ」

 

「ああ」

 

 二人は部屋を後にして、元に来た場所へと戻る。

 心の中で自分達が駆けつける間に少しでも仲間達が無事である事を祈りながら、二人は必死に駆け出す。

 

 二人が戻る頃、ちょうどナギサへのゲートが開通しており兵士が立っていた。

 

「間もなく出撃しますので、お急ぎください」

 

「ありがとうございます」

 

 兵士に急かされて二人は、再びナギサに搭乗する。

 

 出撃準備が整ったナギサを含む4隻のフリーゲート艦は、惑星ローグへ向けてフォールドを開始する。

 

 タクヤ達が惑星ローグからマクロス8船団までバルキリーで約3日くらい掛かった距離をたった1回のフォールド航行を行い、約数分で辿り着いた。

 

 ポイントアルファ付近に辿り着いたタクヤ達は、そこで惑星ローグの状況を目の当たりにする。

 

「これは……」

 

「何て事をしやがるんだ……」

 

 ポイントアルファ付近には機体の残骸が散らばり、惑星ローグの表面は壌土と化していた。

 

「エスター、ローグに行こうぜ」

 

「う、うん」

 

 タクヤ達は部屋を飛び出してブリッジへと急ぐ。

 

 ブリッジに入ると同時にタクヤ達は、艦長に出撃許可をお願いする。

 

「艦長、俺達をローグに行かせてくれ!」

 

「お願いします」

 

「今は状況が分からないし、危険だからそれは出来ないよ」

 

「もしかしたら、生存者がいるかも知れないだろ!」

 

 なかなか出撃許可が下りない為、タクヤは苛立ちを見せる。

 

「お願いします。僕達にとっては、思い出のある場所なんです」

 

 エスターは、艦長に頭を下げて必死にお願いする。

 

「お願いします」

 

 タクヤもエスターにならって艦長に頭を下げる。

 

「……わかった。ただし、あまり時間は掛けないでくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 艦長の許可にタクヤとエスターは、頭を下げて礼を言う。

 

 出撃許可を取った二人はブリッジを後にして格納庫へ向かう。

 

 格納庫で自分達の機体を見つけるが、機体は着艦時のそのままの状態だった。

 

「この機体じゃ、すぐに燃料切れを起こしちゃうよ」

 

「くっそー、どっかに予備機とか無いかなぁ……」

 

 タクヤは、辺りを見回して予備機を探す。

 

 ちょうど格納庫の奥に副座機のVF-11Dが配備されているのをタクヤは見つける。

 

「エスター、あの機体を借りちゃおうぜ」

 

「そうだね」

 

 VF-11Dを借りる為にエスターは、近くのメカニックマンに声を掛ける。

 

「すみません。艦長から発進許可を貰っているので、この機体をお借りしたいのですが……」

 

「あの機体かい? ああ、使っていいよ」

 

「ありがとうございます」

 

 メカニックマンに使用許可を貰い、二人はVF-11Dに搭乗する。

 

 操縦担当の前部座席にエスター、後部座席にタクヤが搭乗し、エスターはエンジンを入れて、ゆっくりと機体をカタパルトデッキへ向かわせる。

 

 エスターは、そのままナギサブリッジに通信を入れる。

 

『艦長、エスターです。これからローグへ向けて発進します』

 

『わかった。気を付けるんだぞ』

 

『はい』

 

 カタパルトデッキの発進準備ランプがレッドからグリーンに変わるのを確認したエスターは、スロットルを回して機体を発進させる。

 

 発進後、エスターは惑星ローグに機体を向けて、そのまま大気圏に突入する。

 

 惑星ローグの成層圏内に入り、タクヤとエスターは辺りを見回す。

 あれほど生い茂っていた森林やひび割れていた大地は壌土と化し、草の子すら生えていない状態だった。

 

「ひでえ……」

 

「……うん」

 

 二人は、悲惨な状況を目の当たりにして思わず言葉を詰まらせる。

 

「!? おい、あれって……」

 

 タクヤが後部座席から指を指した先には、建物の残骸が散らばっていた。

 

「……ブラックバルチャー基地だ」

 

 建物の残骸を見たエスターは、ポツリと呟く。

 自分達が本来還るべき場所は、見るも無残な姿と化しており、基地の残骸を目の前にして二人は、仲間達の生存に絶望を感じていた。

 

 基地付近に降下した二人は、それぞれ基地の周りを調べる。

 建物の殆どは崩れてしまっているが、所々に基地の面影は残っていた。

 

「!?」

 

 タクヤはボロボロになった帽子を見つけて拾い上げる。

 その帽子は、タクヤやエスターにとって見慣れた物だった。

 

「ミランさん……」

 

 タクヤは拾い上げたミランの帽子を眺め、いつしか涙を流していた。

 

「クソっ、クソっ、クソぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 仲間を殺したグランツ達への怒りと何も出来なかった自分に対しての自責で、タクヤは泣きながら怒りに任せて壁を思い切り殴っていた。




次回予告

 仲間を失い、新たにマクロス8船団に配属となったタクヤとエスター。
 彼らの配属先で思わぬ人物に出逢う

次回「ボーイズ・ミーツ・ガール」
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