Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
脳死切断特化近接勢からすればセクメトは最早剛炎タワーの神融種。
銃使えよって話ですけど使ったら近接レートが100%じゃなくなる故に使いたくない(痛切)
「地下街じゃ世話になったな蠍野郎。いや、あの時の個体かどうかは知ったこっちゃないが」
目の前には既にボロボロのボルグ・カムラン。
大方他のアラガミと縄張り争いでもしてコテンパにされたのだろう。そして今、そのイライラを俺にぶつけようとしている。
例の如く偵察任務に来ており、市街地の偵察を行っていたのだが任務の途中、廃材を拾いに来た民間人がカムランに襲われているのを発見し、民間人を逃がしてどうやって逃げようかと考えていたところだ。
スタングレネードは残り1つ、ホールドトラップも残り1つ。足止めできる回数は2回。ホント神機が無いとやってられんぜ。
カムランが飛び掛かかってくるがバックステップで避けて注意を向けながら、周囲を小走りで回り位置取りをしつつ、次の攻撃に備える。
カムランが咆哮と共に尻尾を振り上げ体を捻り、こちらも即座に跳ぶ。
予測通り、尻尾による回転攻撃で周囲を薙ぎ払った。空中ステップで一気に接近し、対アラガミ用ナイフを抜刀して頭に突き刺すが金属音と共に火花が散り、俺は急いでカムランから跳び退いて距離を置く。
「ちっ! これだから硬い奴は嫌いなんだ」
悪態を突きつつ冷静に動きを観察して攻撃を躱し続ける。
瓦礫を持ち上げて投げつけても、両腕を合わせて鬼の顔を思わせる盾で防がれ、盾を構えたまま走り出してこちらに向かってくる。
跳躍で躱し、カムランを踏み台にしてもう一度跳び再び距離を取る。すると奴も大きく跳び上がり、尻尾を叩きつけてきた。
大きく後ろへ跳ぶが、着地の隙を突くかのように針を飛んでくる。
空中ステップで地面にギリギリ足がつかない高度で躱し、空中ジャンプで再び高く跳んで建造物の屋根に上る。
「仕方ねえ。少し遊んでやるか」
屋根から降りてカムランが飛ばして壁に刺さった針の中でも特に長い針を引き抜き、槍術の構えを取る。
「かかって来い」
『キェァァッ!』
咆哮と共に巨体を弾ませて飛び掛かってくるが、体当たりを躱して跳躍で顔付近に張り付き、口に針を突き入れる。
カムランが悲鳴を上げながら暴れ、俺を振り落とそうとする。
お望み通り、降りてやるか。
カムランを思い切り踏みつけて大きく跳躍し、距離を取って着地する。
カムランの口から赤い液体が漏れだしているのが見え、ざまあ見ろと言葉が漏れる。
外殻が硬い奴にはこうやって内側を攻撃するに限る。
カムランが尻尾を振り回して周囲諸共薙ぎ払おうとするのを察知し、宙へ身を投げつつ翻す。
俺の真下を尻尾が凄まじい速度で通り、着地と同時にダッシュで距離を取るがカムランは飛び掛かりと共に盾で叩き潰そうと襲い掛かってくる。加減をしながら地を蹴り、距離を調整しつつバックステップで躱し続ける。
カムランが妙な動きを見せ、後ろではなく横へのステップを繰り出すと同時に尻尾を叩きつけてきた。あのままバックステップをしていたら間違いなくペシャンコだった。
カムランが隙を晒した好機。ここで攻めるか。
一気に接近して他のアラガミによって傷つけられたであろう足の傷に針を突き刺し、宙返りで大きく距離を取る。
カムランが振り向くと再び針を飛ばしてきた。手に持つ針で飛んでくる針をすべて弾き落とす。そしてもう1本長い針を手にしてそれをカムランに投げつける。
針を盾で弾かれるがすぐに別の針を投擲する。足元には無数に針が転がっている。何本でも投げれるぞ。
針を弾かれては再び針を投げ、針が刺さってもまた針を投げ――
針針針針――針ばっかじゃねえか! お~すっげぇ針針してんぜぇ~?(錯乱)
何本かはカムランに刺さり、僅かに動きが鈍くなっている。
1本を軽く投擲し、すぐに別の針を拾い上げて距離を詰める。
再び足の付け根に針をありったけの力で突き刺す。
カムランは悲鳴を共に態勢を崩して、盾を地面について倒れ込む。そして足に針を突き刺して地面に縫い付ける。もう1本の針も同様に使い、地面に縫い付けて動きを止める。
カムランを尾先の巨大針で俺を貫こうしたが、当然躱す。そしてカムランの胴体に刺さっている針を引き抜き、ついでに腕も縫い付ける。そして尻尾も縫い付けて完全に動きを止める。怒りの声を上げて足掻くが針は抜けない。
これが極東式数分クッキング『カムランの針疑獄』だ。お味は保証できないがな。まあ、ソーマが捕食攻撃をする際に不味そうな肉だと言っているので不味いのだろう。
無線を起動してオペレーターに連絡を入れる。後は近場の神機使いに任せよう。
しかし、動けない獲物を見逃すバカな獣は居ないから他のアラガミに喰われる可能性が大きいだろう。
神機が無くても何とかなる時は何とかなるもんだな。まあ、カムランみたいに武器になる物を飛ばしてくるアラガミ限定だが。
「よし、帰るか。なんか針針して疲れたわ。しかしなぁ……帰ったらまた雑用か……せや! 徒歩で帰って定時まで時間稼いだろ!」
帰投の連絡だけしてのんびり歩いて帰る。アラガミが居たら入電だけして逃げるけどさ。
一応仕事はしているので文句は言われない筈。
いやーにしても昨日は凄い夢を見たぜ。
俺って昔からかなりの頻度で武装した人間とかと戦う夢を見ているんだが、昨日の夢は刺激があった。
俺が荒野で車を運転(多分無免)していたらいきなり霧が立ち込めて、禿頭で額に数字が書かれているおっさんが4人現れてな。
4人のおっさんはフラフラしながらこっちに向かってきて、「邪魔くせぇな轢くか」って思ってアクセル全開にして突っ込もうとしたらおっさんが俺を見た瞬間、眼を光らせて何処からともなく銃を取り出して俺は「ファッ!?」って声を上げたんだ。
そしたら無線が入って「逃げろ! 髑髏部隊だ! 今は逃げる事だけを考えろ!」って言われてな。
そのまま俺は頭を低くしてアクセル全開でおっさん4人に突っ込んだんだが、おっさんたちは姿を消して轢逃げアタックは不発に終わったんだ。そのまま全速力で逃げていたらおっさん4人が凄まじい速度で追っかけて来てな。
その時察したね……。俺の轢逃げアタックは姿を消して躱したんじゃなくて、単純に身体能力にもの言わせて躱したって事をな。
あいつら化け物やで……。普通に走って車と並走するわ、牽制を兼ねて銃を撃ったら見事なステップで躱すわ、ジャンプして車を飛び越したと思ったら銃を乱射してくるわでとんでもねえ奴らだったぜ。
挙句の果てにマチェットを車に刺してきて車両をスクラップにされた俺は地面に投げ出された。
あいつらマチェット片手に歩いてきてある程度近づいたら瞬間移動して斬りつけて来たんだ。攻撃を受け流しつつマチェットを奪い取っておっさんの腹に突き刺したところで夢から覚めた。
いやー俺よく生きてたな。しかし、あの走りとステップとジャンプは実に見事だった。
そんな訳で彼らの真似をして帰投しよう。
まずはあの走り、腕を高速で振って足も高速で動かして――いや、いつもやってるがな!
まあいい、次はステップだ。こう、地面を思い切り蹴ってビュンビュン連続で――いや、既に会得してるわ! それどころか空中でもやれるわ!
次はジャンプだ。こう……なんて言うか、目の前に障害物があると仮定してそれを大きく飛び越えるイメージで――いや、それただのジャンプやん! 空中でもできるしスタミナが続く限り連続で何回でも跳べるわ!
なんだよ……結構できんじゃねえか……。
やっぱ神機使いって人外だわ。
あ、俺もその人外に仲間入りしていたわ。
ん? 待てよ? アラガミをぶっ潰すのに俺なら全力攻撃が数発必要だが……小突いただけでぶち殺しているリンドウさんやソーマは人外の中の人外と言う事か。
本当の化け物は身内にありってか。おっそろしいぜ……。
*
そんな訳で無事、帰投して報告書を書いたら丁度定時なのでお疲れっした―と足早に退散してエントランスで寛いでいる。残業? 必要ねぇよそんなもん。時間までに仕事を終わらせられないそいつの落ち度だ。俺? 勿論余した仕事は明日に回したさ。
当たり前だよなぁ? 明日本気出して終わらせれば何の問題も無いさ。
暇だな。ターミナルでサーフィンでもするか。
ターミナルの腕輪はめ込むところに腕を突っ込んで腕輪認証を済ませてモニターを弄る。
自室ではなく態々エントランスでデータベースを閲覧することで嫌いな奴の邪魔をするのは気持ちいいZOY♪ まあ自室なんて無いんですがね!
「お、週間アラガミ討伐数ランキングだと? 見てみるか」
第5位 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
ほう、あの露人中々やるじゃない。
第4位 スマイル・一太郎
いやすげえユニークな名前だなおい。誰だよスマイル・一太郎って……。なんか逆に読んだらしっくりくるのは気のせいか……?
第3位 ソーマ・シックザール
まあ、第1部隊だからなそりゃそうか。でも意外だな。俺の予測じゃ1位と2位はリンドウさんとソーマで独占しているもんだと思っていた。
第2位 雨宮リンドウ
ファッ!? あのリンドウさんが2位……だと……?
おいおい、こりゃとんだ番狂わせだぜ……! 1位誰だよ……!
第1位 神薙ユウナ
ファファファのファッ!? ウッソだろユウナ! リンドウさんとソーマを差し置いて1位ってどんだけ逸材なんだよッ! アラガミスレイヤーかな?
いや、しかし……あんまり想像できないぞ……。結構穏やかな性格だと思ったんだが……戦場に出たら「アラガミは皆殺しだ」とか「ぶっ殺せ! ぶっ殺すんだ!」って言いながらヤクザの如く暴れ回っているのでは……?
「…………見なかったことにするか。今日からユウナじゃなくてユウナさんだな」
画面を切り替え、別の記事を見ようと思った矢先――
「あれ? ユウ、戻ってたんだ」
「ふおぉ!?」∑(゚Д゚)
ユウナさんに声を掛けられて驚いて情けない声を出した。
「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
「い、いや……気にしないでください。勝手に驚いた俺が悪いんです。ユウナさんには非はありません」
いかん。じつに遺憾。いや、残念に思ってどうするねん。確かに衝撃の新事実を知った直後に件のユウナさんとエンカウントするのは俺の人生的に残念かもしれんが……。
と……とにかくユウナさんの逆鱗に触れないよう、口を慎まなければ……!
「なんで敬語なの……?」
「い、いえ! お気になさらず! ただ、週間討伐数ランキングでトップだったので敬意を示さねばと思い――」
だ、駄目だ! 紡ぐべき言葉が見つからない! このままで機嫌を損ねてしまう可能性が無きにしろ非ず……!
「あ、ああ……。そういう事……。ただ視界に入ったアラガミを倒していただけだから多いだけだよ」
苦笑いしながらとんでもねぇ事言いましたよこの人。ただ視界は入ったってそれ要するに視界に入った奴を片っ端からぶちのめしたって事じゃん。しかも俺は見逃さなかったぞ。
討伐数内中型アラガミ6体、大型アラガミ1体って書いてあったぞ。視界に入ったら大型中型であろうが躊躇なくぶちのめしに行ったって事じゃん。まさかこの前医務室から少しだけ怪我したって言って包帯巻いて出て来たけど、その時大型とやり合ったわけじゃあるまい。
「一応聞いておきますけど、この前怪我したって言って包帯巻いてたけど……」
「うん、丁度その時だよ。ヴァジュラの攻撃を装甲で弾こうとした時に力加減間違えてちゃってさ。衝撃を受け止めきれなくてちょっとね……」
「装甲で……弾く……? 弾く…………弾くッ!? What!?」
弾くってアレだろ? 武術で相手が繰り出してき攻撃を弾くあっちの弾くだろ?
「うん。上手く弾けたらアラガミがバランスを崩して大きな隙が生まれるから積極的に狙ってるんだけどね。雷球とかなら弾き返しやすいんだけど、咄嗟だったのもあるけど前足のフックを弾くときにミスしちゃってさ」
対人戦闘で相手の攻撃を弾くならともかくアラガミの攻撃って弾けるのか……。いや、そもそも雷球を弾き返すってどういう事やねん。理解が追いつかんぞおい。
「やっぱりアラガミが近接攻撃をしてきたら剣形態でカウンターした方がいいかな……。でも臨機応変にできないといざと言う時に困るし……ユウならどうする?」
いや、俺に聞くなよ。組手とかならともかくこっちの倍の体格誇る敵に対してカウンターやら弾きなんぞできねえよ。俺だってただ半年早くフェンリルに入っただけで実際には名ばかりの先輩やぞ?
やっぱりアラガミスレイヤーじゃないか!
信じられないだろ? この子、フェンリルに入隊してまだ1ヶ月程度しか経ってないんだぜ?
「すまん。3か月しか神機握ってない俺にそのアドバイスは無理だわ」
アリサ・イリーニチナ・アミエーラ(15)
2070年フェンリルロシア支部入隊→2071年フェンリル極東支部転属
ロシア支部から赴任してきた、新型神機使いだ。実力は高いらしいが、高飛車な性格と新型を扱うが故のエリート意識を持っていて気位が中々高い。
美少女ではあるのだがな……。
後、俺の予測が当たっていれば結構ズボラな性格だと思う。部屋に服とか散らかってそう。