Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
下ネタ注意です。
あとホモじゃないよ。
唐突だが大問題だ。金がねえ。無一文ってわけじゃけえねど金がねえ。別に浪費しただとかそんなわけじゃない。ギャンブルも最近は自重している。
じゃあなんで金がないのかと言うと……。
先日、車両整備班の手伝いをしている時だ。俺はシリンダーヘッド、まあ要するにエンジンで大事な部分だ。そのシリンダーヘッドにシートリングって言う名称のこれまた大事な部品をハンマーで打ち付けるんだが、これを打ち込もうとした時だ。
俺は一応神機使いであるが故に単純にパワー等は一般人を遥かに凌ぐ。だから絶妙な力加減でうまくハンマーで打ち付けなければいけないのだが……。
力加減が難しくて上手くリングをはめられなくてね。もうイライラして――
『あああああああ面倒くさいンゴォ! 力加減なんざ必要ねぇんだよォ!』
頭に血が上ったら自制心とか効かないから思いっきりぶっ叩いてシリンダーヘッド諸共粉々にしてしまったのだ。
『うっそだろお前wバカじゃね? 笑っちゃうぜ! 注文しねえといけねえじゃねえか。金額ちょっと負担しろよおい』
そう言われて全財産の殆どを持っていかれた。だから金がないのだ。
ぐぬぬ……。どうしたものか……。せや! スタングレネード売りつけて儲けたろw
とりあえずスタグレを大量に生産せねばいけないか。確か第2倉庫にマグネシウムと爆縮体が腐るほどあった筈……。全部引き出して合成して作るか。
そんな訳で倉庫からマグネシウム&爆縮体を袋一杯に詰めてよろず屋さんの隣に座って作業に取り掛かる。
「なあ兄ちゃん……。なんで俺の横でスタグレ作って売ってんだ?」
「いや、他に場所が無くてな。営業妨害するつもりは微塵もねえから勘弁してけれや」
よいか? ここに適量のマグネシウムと爆縮体があるじゃろ?
( ^ω^)
⊃マ 爆⊂
これを
( ^ω^)
⊃)マ爆 (⊂
こうして
( ^ω^)
≡⊃⊂≡
こうじゃ…
( ^ω^)
⊃スタングレネード⊂
「兄ちゃんそれどういう原理だ?」
よろず屋のおっちゃんが質問をしてきた。
良くぞ聞いてくれたぜ、おっちゃん。
「ふっ、素材合成士1級の資格を持ってりゃ誰でもできるさ」
おっちゃんと世間話に花を咲かせながらマグネシウムと爆縮体をくっつけてスタングレネードを作りながら籠に放り込む。籠がいっぱいになったところで一旦、生産を中止した。
「さて、いくらにして売ろうか……。500fcでいいか」
紙に500fcと書いて籠に張り付ける。そして俺はサングラスをかけて客を待つ。ホントはメッシュのタンクトップも準備したかったがそんな金は無い。
「お、ユウ。商売でも始めたのか?」
タツミが話しかけてきた。記念すべきお客さん第1号になるだろうか。
「あらいらっしゃい! ご無沙汰じゃないっすかー」
「いや、そこまでご無沙汰じゃない気が……。とりあえず8個売ってくれ」
おう、8個も買ってくれるとはこれは幸先がいい。しかし、タツミとは良くして貰っているので少し値引きしてやるか。
「かしこまり! お友達価格で400fcでええで」
「マジで? サンキュー」
タツミにスタグレを8個渡して3200fcを受け取る。
「またのお越しをお待ちしてナス!」
タツミに手を振り、俺は再び床に座り込んで次の客を待つ。
座っている俺の目の前に帽子をかぶった生意気そうなガキ……シュンが怪奇な目でこちらを見ていた。
「お前何やってんの?」
「よう、シュン。見ての通りだ。親切心でスタングレネードを売ってやってるんだ。買うか?」
「安くしろ。500は高い」
「いきなり値引き交渉とはたまげたなぁ……」
こ、こいつ……! 普通に済ました顔して安くしろって図々しいにも程があるだろ……。
こういう時は『もう少し安くできないか?』とかこんな感じで交渉するもんだろ……?
これって俺の偏見?
いや、しかし……あんまり安くすると俺が損をしてしまうので……。
「とりあえずカレルでも呼んで来い。俺が言えた事じゃないが、シュンよ。言っちゃ悪いがお前交渉には向いてないぜ」
「んだとぉ!?」
「どうどう落ち着け、値引きはできんが10個買ってくれるなら1個サービスしてやる。これでどうだ?」
「ちっ、わーったよ!」
「毎度あり」
シュンに11個スタグレを渡してfcを受け取る。
シュンを見送り、その後も見知った顔が来たので商売を続けて籠に詰め込んでいたスタグレは空になった。とりあえず在庫を補充しようと思ったが一休みしようかと思い、自販機へ向かう。
後ろから誰かに袖を引っ張られた。
誰だと思い振り返れば、袖を引っ張っていたのはエリックの妹だった。
「…………どうしたお嬢さん?」
「神機使いの事……教えてください」
上目づかいが可愛いのだが、神機使いの事教えろってどういう事や?
何を教えればいいんだ?
「私、神機使いになりたいんです」
「そ、そうか……。頑張れよ」
ぶっちゃけ適合する神機が無いと、なるもクソも無いから俺がどうこうできる問題じゃないんだが……。それに適合試験通って初めてトレーニングとか座学を受けるわけで……。
「だから教えてください」
「…………いや、ほら……適合する神機が無いと神機使いの勉強だとかトレーニングだとかできないからさ……」
「適合する神機ってなんですか?」
Oh……そこからか……。
参ったね。取りあえず、一服したいな。
「OK、色々詳しく教えるよ。とりあえず、何か飲みながらのんびりやろうや」
「はい! よろしくお願いします!」
そんな訳で一服してからエリックの妹に神機使いについて色々教えている。
そして今更だがエリックの妹はエリナと言う名前らしい。とても可愛らしい名前である。数年後が楽しみである。
あ、俺ロリコンちゃうで? YESロリータNOタッチ。
エリナは一生懸命俺の言った事をノートに書き込んでいる。途中で話が派生してアラガミの事とかアナグラの施設の事やら色々喋っている。
「ところでエリナ……もう20:00なんだが……」
ぶっちゃけ晩飯抜いて説明していて腹が減ってるんだが……と言うか疲れて眠いのだが……いつになったらこの説明会に幕を下ろす事が出来るのだろうか……。
「あともうちょっと! もうちょっとだけ! おねがーいー!」
「ああ、分かったよ。分かったから肩を揺さぶらないでくれ」
*
「お兄さん! 今日はありがとう! また教えてねー!」
お父さんに手を引かれながら無邪気に手を振るエリナに手を振りかえし、俺はソファーにドカッと座り込む。
「…………疲れた……。子どもの体力ってすげえな」
きっとエリナは家に帰った後に今日学んだことを復習するんだろうな。俺にはできない芸当だ。
今日も中々ハードな1日だったな。茶でも飲んで寝るかな。
「あ、ユウさん。偵察任務をお願いしたいのですが……」
「いいよ! こいよ!」
限界を通り越しているが最早ヤケクソである。
*
市街地エリア
22:00から任務だったので仮眠を取って出撃した。
とりあえずアラガミを見つけ次第入電して今はヴァジュラの動向を追っている。
小型しかいなかったのだが、大型の気配が近づいてきたの放っておく訳にもいかず、気配のする方へ来てみればヴァジュラが我が物顔で廃墟が並ぶ街を徘徊していた。
しかし、今日は雲1つ無い満月で助かった。月が出ないと夜道はマジで暗い。そして真っ暗闇でライトを使うのはあまりよろしくない。
ヴァジュラは大して目立った行動はしていない。オウガテイルに奇襲をかけて喰ったり瓦礫を食べたりしているだけだ。
『ガァ……』
「ん?」
ヴァジュラが呻き声を上げながら奇怪な行動を始めた。
「ええ……」
これを見たら誰もが困惑するだろう。これで困惑しないならそいつは中々図太い神経をしている。
聞いて驚け、ヴァジュラがガーゴイル座りをしている。
もう1度言うぞ。ヴァジュラがガーゴイル座りをしている。
誰もが困惑するだろうが、事実だ。あの電気猫はガーゴイル座りをしているのだ。
『ガァ……ガガッ(で、でますよ……)』
「は?」
今鳴き声と共に何か聞こえた気がするが気のせいだろう。俺は万物の声を聞ける耳なんて持ち合わせていない。だが、先ほどの幻聴とガーゴイル座りから俺は嫌な予感を感じた。
1つだけ言える事はある。
飯食ってる奴とその手の表現を不快に思う奴は今すぐ左向きの矢印を押すか、マウスのホイールを思いっきり回せ。
スマートな板で見てるなら、思いっきりスワイプしろ。
どうなっても知らんぞ! いいか!? 俺は忠告したからな!
『ガアアアアッ!(ああああああッ!)』ブツチチ
俺は壁を背に体育座りをして自分に問う。別に難しい問いではない。だが、答えを導き出すまでにかなりの時間を有するだろう。それだけは確かだ。
そして俺は今一度、自身に問いかける。
俺はただ偵察任務に来ている筈なんだが、一体何を見せられているんだろうか。
*
衝撃の光景からどれ程の時がほど経過したか。真っ暗だった空はいつの間にか明るくなっている。
解は導き出せなかった。だって、なんでこんな事で悩まねばいけないねんって結論に至った故。
だが、各地で見る鍾乳石のように見える物体はアラガミの排泄物が硬化したモノらしいので決定的な瞬間を見る事が出来てしまったと言う訳だな。
「いや、嬉しくねえよ。見たいとも思わねえよ」
無線に連絡が入り、俺は応答する。
『ゆ、ユウさん!? ご無事ですかッ!? 腕輪のビーコン反応は有ったのですが、何度呼びかけても応答が無かったので……!』
「ああ、済まない。色々あってな。偵察に関しては問題ない。今のところヴァジュラしか確認していない。一旦帰投する」
*
帰還用のゲートをくぐってエントランスに着くとリンドウさんとアリサを除いた第1部隊員がブリーフィングを行っていた。
邪魔になるとまずいな。
自販機でジュースを買い、誰も通らないであろう場所で手すりに寄り掛かって
ああ、炭酸飲料うめえ……。いくらでも飲めるぜ。
第1部隊の話を盗み聞きすると、これから市街地エリアへヴァジュラの討伐に行くらしい。
確実に俺にとんでもない光景を見せてくれたヴァジュラだろう。
悲しいな……。見られたくない所を見られた挙句の果てにアラガミスレイヤーとベテラン2人と期待の新人にぶっ殺されるとは……。まあ、これも自然の摂理よ。
第1部隊が解散していくのを見ると俺は空いたソファーに腰を下ろしていつもの如く寛ごうかと思ったが、任務後は報告書を提出しないといけないので書類を広げてペンを取り出して記入を始める。
まあ、書く事なんてどんなアラガミに遭遇しただとか、民間人が襲われていたので手助けしただとか、体調に不良は無かったとか、後は俺には関係ないが神機に不調は無かったかだとかそんなもんだがな。
偵察任務の報告書は何処のエリアのあの地点が崩落してああなっただとか、アラガミが根城にしているとか書くものが多い。ただアラガミを見つけて入電するだけじゃなくて戦場の状況も細かく書かないといけない。書類を1枚1枚片づけていると俺の横に誰かが座り込んで書類の横に見覚えのあるノートが置かれた。
「お兄さん! 今日も神機使いの事教えて!」
エリナが目を輝かせながら座っていた。
ああ、報告書書いたら寝ようと思ったけどそれは叶わぬ願いになりそうだ。
今日こそは夜に任務が無い事を祈ろう。
「書類書き終わったら教えてあげるからちょっと待っててくれ」
それだけ言って俺は書類に向かってペンを走らせた。
「よし、終わりっと。受付の人に書類出してくるからちょっと待ててくれ」
「うん!」
書類を纏めてオペレーターに提出する。今日はヒバリちゃんではなく、男性のオペレーターだ。
「これ、さっきの任務の報告書だ」
「確かにお預かりしました。お疲れ様です」
オペレーターに挨拶だけして、エリナの元へ戻る。
*
「まあ、近距離の立ち回りについてはこんなもんだな」
「遠距離の立ち回りはどうするの? 私が神機使いになる頃には新型神機が普及してるかもしれないんだよね? それなら遠距離の立ち回りも教えて欲しいの」
「悪いが、遠距離は俺には教えられない。その内、腕の良い先生を紹介するから勘弁してくれ」
ジーナ辺りなら射撃のプロフェッショナルだから暇な時間があるか聞いて頼んでみるか。カレルとかだと面倒くさがって絶対引き受けねえだろうしな。金を払えば別だろうがいくら持っていかれるか分かったもんじゃない。
「訓練って見学はできるんですか?」
「見学?」
まあ、別にトレーニングルームの申請さえすれば訓練はできるが……いくら大富豪の一族とはいえ見せてよいのだろうか?
いや、ばれなければいいか。
「分かった。特別に見せてやる。でも、誰にも言うなよ? ばれたら後で兄ちゃんが怒られれちまうからな」
ターミナルで申請をしてエリナを連れてトレーニングルームに入り、エリナはオペレータ室から訓練を見てもらう事になる。
近接型神機のモックアップを用意して構える。
俺の本来の神機はショートブレードだ。
他種ブレードに比べて格段に小型かつ軽量で設計された刀身で手数の多さ、攻撃スピードは全ブレード中ダントツのピカ一だ。
機動力に極振りしているステータスを持つ俺とは相性抜群の神機だ。
ブザーが鳴ると殺風景のトレーニングルームが市街地に代わり、オウガテイルやコンゴウのダミーアラガミが姿を現して襲い掛かって来る。
オウガテイルの飛び掛かりを躱し、踏込と共に神機を振って首を斬り落とす。すぐさまその場から動き、次の標的へ距離を詰めて2匹目の片足を切断して頭部に神機を刺し入れる。
そして高く跳躍して前方へ神機を構え、一直線にコンゴウへ滑空して背中に突き刺さる。
暴れるコンゴウに振り落されないように神機を抜き、後頭部へ突き刺して斬り上げ、その勢いを利用して再び空中へ。
今度は空中ステップを連続で発動して、宙を浮くザイゴートを斬り裂く。再び神機構えて地上のオウガテイルにダイブして突き倒す。
「ッ!」
背後から気配を感じて振り向きながら勢いに任せて神機を振って、殴りかかってきたコンゴウの拳を斬り裂く。
片腕を潰されてもしぶとくもう片方の手で殴りかかってきたが、拳を躱して懐に潜り込んで突き蹴りを腹に打ち込んで吹き飛ばす。
ダミーアラガミなら攻撃を弾けるのだが……実際のアラガミは訓練用のダミーとは違って力も桁違いなので実戦じゃそんな芸当はできないだろう。
ユウナの奴、どうやってアラガミの攻撃を弾いているんだろうな……。
正直、あいつの中にいるとんでもないモノが関係しているとしか思えないわ。あれこそ、生まれ持った天武の才と言うやつかね……。
思考に耽っている間に次の標的が向かってくる。こちらも距離を詰めて神機振って返り討ちにする。
被弾しないように立ち回っている内に訓練終了のブザーが鳴って夕日に照らされた市街地は殺風景なトレーニングルームに戻った。
「ま、訓練はこんな感じだな」
「すごい! 凄いよお兄さん! すごくかっこよかった!」
「ははっ、ありがとよ」
かっこよかった……ね……。できればエリックに言ってやってほしい言葉だ。
「さて、少し休憩でもするか」
「うん!」
自販機で買ったジュースを飲みながらエリナにどうして神機使いになりたいのか尋ねると
最初はエリックが死んだなんて信じようとしなかったが、悲しむ父親を見てやっとエリックの死を受け入れた。
エリックの様な神機使いになって、アラガミの居ない世界を作りたいと思い、こうして神機使いの勉強を始めたらしい。ちなみに父親には内緒で勉強しているらしい。
エリックが聞いたらどう思うだろうか?
大事な妹にそんな危険な事をはさせられないと言うだろうか?
それともエリナの夢を応援するだろうか?
俺はエリックではないので何も言えない。ただ、1人の人間が俺に聞いてきたので俺も1人の人間として答えるだけだ。
エリックよ、別に俺の事を恨んでくれても構わないぞ。エリナが危険な道を歩むのを止めなかったからな。
エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ(11)
裕福そうな少女だ。何を隠そう、あの上田……じゃなくてエリック・デア=フォーゲルヴァイデの妹君である。
最愛の兄貴を失ってとても気の毒であるが、それが当たり前の世の中だ。
しかしやはり、まだ幼いこの子には本当に酷である。
それでも前を向いて進む決心……実に素晴らしいものだ。
頑張れエリナ! 応援してるぞ!