Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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windows 10が使いこなせない。これは慣れるのに時間がかかるゾ(確信)


脆い希望

 突然、帰還用のゲートが開いてそちらを見れば、俺は驚いた。

 

「ッ!?」

 

 まず、ボロボロになったソーマ。あのソーマがボロボロになっているなんて余程の事だ。

 そして同じくボロボロになりながらもアリサを背負っているユウナ。

 精鋭第1部隊のサブリーダーを務めているサクヤさんが、覇気の無い顔でフラフラした足取りで、こりゃまた手酷くボロボロのコウタの肩を借りて出てきた。

 

 

「え、どうしたお前らッ!?」

 

 慌ててソファーから立ち上がって第1部隊に駆け寄る。ソーマ、ユウナ、コウタは顔を伏せてサクヤさんは涙を流し、そしてアリサも涙を零しながら『ごめんなさい』と呟いている。

 

 後ろからドタドタと慌ただしく足音が響く。

 

「すいません! 退いて下さい! すぐに医務室へ!」

 

 医療班にアリサは担がれ、サクヤさんも肩を借りてエレベーターへ。

 

 唖然としているエリナの元に戻る。

 

「悪いけど、今日の勉強はここまでだ。今日はもう帰りな。また今度な」

 

「う、うん」

 

 状況が状況、幼い少女にだってただ事ではないと察する事ができるだろう。

エリナを見送ってコウタの元へ向かう。

 

 ソーマとユウナはそこまででもないが、コウタは傷だらけで服も泥だらけだ。

 俺はコウタに肩を貸して医務室まで同行する事にした。

 

「全く、無茶しやがって。まずは治療だ」

 

「あ、ああ。わりぃ……」

 

「ソーマとユウナもだ。おい、ソーマ。手当ぐらい受けてけ」

 

 

 ユウナは素直に頷き、ソーマは舌打ちをしてそのままエレベーターへ向かう。

 

 

 ソーマは案の定、途中で消息不明になって結局3人で医務室へ。

 

 

 アリサは集中治療室へ、サクヤさん別室に。

 

 そして手当を受けたユウナとコウタから事の経緯を聞いた。正直聞く前から嫌な予感がする。重要な人間が1人足りない故。

 予感は外れていてほしい。だが、そんな望みは絶たれた。実に脆い希望とはこのことをいうのだろうか。。

 

 

 リンドウさんが脱出不可能な孤立した状況下に追いやられ、そして新種アラガミの群れに襲撃された。

 リンドウさんが撤退命令を出して命辛々離脱したがリンドウさんは残って敵と交戦中。

 

「俺達と入れ違いで他の部隊が救援に向かっているって……」

 

 コウタが暗い声で言う。

 

「そうか、こればかりは祈るしか出来ねえな、クソッ」

 

 俺も神機があれば今すぐにでも……。

 くそ、所詮は戦いに敗北した負け犬である俺にはどうする事も出来居ねえってのか……。

 何の為に此処に来た、何の為にこの世界で生きるための力を得た……?

 恩人の1人もロクに救えないとは…………情けないにも程がある。

 

 いや、無力を嘆いても何にもならん。もしかしたらリンドウさんも何とか離脱しているかもしれねえ。周囲を手当たり次第に探してみるか。

 

「とにかく、良く生きて帰って来た。俺もちょいと周辺の探索に行ってくる。逃げ足の速いリンドウさんの事だ。離脱してその辺ほっつき歩いてるかもしれねえ」

 

「ユウ……」

 

「とにかく、今は休めよ。後は引き受けた」

 

 

 医務室を出てエレベーターに乗り、エントランスに出ると俺は一気に出口へ駆けてアナグラを飛び出し、外部居住区を突っ切って装甲壁を越えて壁の外へ。

市街地エリアへ駆けた。

 

 

 

 リンドウさん、一体何処にいるんだ……。

 

 気配を探ろうにも強力な気配がウジャウジャしており、その中で1人の人間の気配を探るのは困難だ。

 この強力な気配……明らかに大型種、だが並の大型とは違う。何度か遭遇した事がある接触禁忌種と同等の気配。おまけにこんなに数が居るとはな……。

急いでリンドウさんを見つけないと……。

 

 

 

 ある程度近くにいるなら感じ取れる筈――ッ!

 

 突然、影に覆われた。

 

 咄嗟にその場から身を投げる。

 

 先程まで立っていた場所に巨大な氷柱が突き刺さり、冷気が辺りへ漂う。

 

 そして氷柱の上から何かが降ってきて、氷柱は砕け散って白い霧が立ち上る。霧の中から、地下街で見たあのアラガミが現れた。

 アラガミは俺を睨み、雄たけびを上げた。

 

「この人面猫……テメエなんぞに構ってる暇はないんだが……なッ!」

 

 対アラガミ用ナイフを抜き、構える。

 

 今の雄たけびで仲間が集まってくるかもしれない。

 いや、待てよ……好都合だ。これなら救援部隊と捜索隊も負担が軽くなる。このままできる限りこいつらをおびき寄せて何とか市街地から離れたエリアまで引きつけるか。

 

 挑発フェロモンを使い、俺は人面猫に中指を立てつつ移動して引きつける。

 

 

 

 

 人面猫の視界に捉えつつ駆け、周囲に意識を向けて他のアラガミの気配がする場所へ向かう。

 

 人面猫は冷気を放出し、青色に煌めく塊が俺の方へ飛んで来る。当たる直前、ステップで一気にスピードを上げて回避する。

再び向かってきた塊を跳躍で凌ぐが、次々と向かってくる冷気の塊。態勢を変え、軽く跳び、空中で体を捻り、時にはスライディングで体勢を低くして躱す。

 

 

 

『グルルッ!』

 

 人面猫は小賢しく動き回る俺に怒ったのか、今度はマントを光らせ、空中で俺の身の丈ほどある氷柱を数えきれないほど生成して一斉に、そして絶え間なく飛ばしてくる。

 

「チッ!」

 

 先程の塊よりもデカい……引きつけずに確実に躱すべきか……!

 飛んで来る氷柱を走りながら避けるが、これでは埒が空かない……。 

 

 道の先にそびえたつ廃墟からもう1匹が姿を現した。もう1匹も俺に気付いて駆けてくる。

 

 他の気配はほぼ逆の方向か……!

 何とか後ろの奴を躱して行くしかねえか。

 

 次に飛んできた氷柱を避けつつ、方向転換して氷柱の嵐に真っ向から向かう。

 ジャンプして氷柱の側面に着地、そして再びジャンプ。足が冷気で凍るよりも早く跳び、次から次へと氷柱を渡って人面猫へ近づく。

 

『ゴォッ!』

 

 人面猫が猫パンチ、スライディングでパンチを潜り避けて顔をナイフで斬りつけるが容易に弾かれる。

 

 やはり硬いか……!

 体に張り付いてマントの下に潜り込んでナイフを突き刺すと、すんなり刃は入って行った。

 どうやら胴体は斬撃でも通りそうだ。

 人面猫が吠え、周囲の気温が急激に下がる。ヤバイと頭が訴え、同時に思い切りその場を蹴って距離を取る。背後で冷気が放出されて冷たい空気が首を伝って背中へ回る。

 

 そのまま走り続けて3体目の元へ向かう。

 

 2匹を確認しつつ走るが、2匹は駆けながら冷気を放出して巨大な氷柱を作っていた。

 

「あいつら、互いの冷気を合わせて…!」

 

 俺は制服の上着を脱ぎ、走りながら巨大な氷柱を警戒する。

 

『『ガアァッ!』』

 

 2匹は共に咆哮を上げる。すると巨大な氷柱は一直線にこちらへ飛んできた。

 

「喰うだけの獣にしては中々……だが……!」

 

 高く跳躍して巨大な氷柱の上へ。上着を踏みつけながら巨大な氷柱に乗る。

 

 

「ヒュー。楽ちんだぜ。風も中々……おっと」

 

 

 上着が徐々に凍っていく。上着が凍りつくギリギリまで氷柱の上で待機しながら後ろの2匹を見るとまだ俺を追ってきている。

 

 廃墟の並びにチラッと3匹目が見えたので思い切り息を吸い込み、指を加えて指笛を鳴らす。3匹目が音のこちら側へ向かってきたのを確認する。

 

 そして飛んでいた氷柱が地面に擦れ初め、制服も凍っていないところがあと僅か。

 その場から思いっきりジャンプして地面に着地し、そのまま走り続ける。

 

 

 3匹目も合流して俺は3匹の人面猫に追い駆けまわされている。

 

 3匹は口に冷気を溜めこんでレーザーのように吐き出してきた。

 

「うおッ!? あぶねッ!」

 

 紙一重で回避する。レーザーが直撃した箇所は凍りつき、綺麗な氷塊ができていた。あれは何があっても食らってはいけない攻撃だな。

 

 

「まずいな。あんなものに被弾したら、もれなく芸術sん……もれなく芸術s、品に仕立t……芸術品にされる」(妥協)

 

 

 

 

「ん?」

 

 一瞬、何かが上空を通ったような……。

 

 

 上をちら見すると後ろの3匹とは別の個体、4匹目がいくつかの氷柱を作り出してこちらに飛ばしてきていた。

 

 

「ヌオオオオッ!? 秘義! ジグザグステップゥ!」

 

 説明しよう! 読んで字のごとくのステップである! 以上!

 って、こんなクソ忙しいときに解説なんてさせんなッ! 

 え? 別に頼んでない? それは失敬。

 

 

「しかし……! ぬおっ! 流石にッ! ぬうん! 4匹相手はッ! きついなッ!」

 

 冷気の塊、氷柱、冷凍ビームと次々に放たれる攻撃をすべて回避しながら走る。流石にきつくなってくる。思ったより遠距離攻撃が厳しいな……。引きつけられるのは精々5匹までか……!

 正面には廃墟、丁度窓ガラスがある。

 

「ッ! しゃらくせぇッ!」

 

 意を決し、顔を腕で覆いながら窓を突き破って中へ入り、そのまま横穴を抜けて外へ。

 

 人面猫共は廃墟をものともせずに崩しながら追ってくる。

 次に目に留まるのは食い荒らされて所々に穴が開いている高層ビル。

 

 高層ビルの壁を駆け上り横穴に入って内部から屋上を目指す。

 

 

 

 

 

 階段を登ろうとした瞬間、危険を感じて屈む。

 

 轟音と共に冷気が吹き荒れ、崩れて落ちていく壁の向こうに人面猫2匹が冷凍ビームをあちこちに放っていた。

 

 轟音と共に揺れが襲い、まともに歩けない。どうしようか思考していると床が崩れ落ちてそのまま下へ落ちていく。

 

「クソっ!」

 

 空中ステップで大きめの瓦礫に向かい、落下する瓦礫から次の瓦礫へ。崩れ落ちて行くビルの瓦礫を伝いながら昇っていると、上の階から人面猫が飛び出しこちらに降りてくる。

 先回りしていたか……遠距離でビルを崩す役と、接近してくる役に分けたか……!

 

 スタングレネードを取り出し、ピンを引き抜いて投げつけると爆音と共に光を放つ。

 

『ガアアッ!?』

 

 人面猫は目をやられ、体勢を崩してそのまま落ちてくる。

 そして人面猫の体に飛び乗り、体を足場にしてジャンプをし、ビルの内部に再び飛び込む。

 何とか凌いだかと一息つこうとすると、煩い音が壁の向こうから聞こえ、耳を澄ますと音はすぐ傍まで来ていた。慌てて壁から離れる。

 

 壁を突き破って1匹が姿を現した。

 

 俺の背後で壁と床が崩れ落ち、断崖絶壁になる。

 

 目の前の獣が前足を振り上げ、俺は獣の懐へ飛び込んで前転して転がる。

 前足が床を崩し、獣は態勢を崩す。

 

 咄嗟に鉄骨が視界に映り、無理やり引き抜いて獣の後ろ脚付近の床に鉄骨を思い切り突き刺して蹴りつける。

 鉄骨は床を崩し、獣諸共落ちていった。

 

「へッ! 下で寝てろ! うおっ!?」

 

 ビルが先程よりも揺れ、床が角度をつけ始めた。

 どうやら、ビルが斜めに倒れ始めているようだ。

 

「げっ!? 流石にやべぇか!?」

 

 確か、ビルの傍は地盤が崩れて崖になって居た筈……。このまま倒れて丁度そこの地盤が緩かったりしたらビルが滑りながら落ちていって真っ逆様だ。

 

 

 

 屈んで衝撃に耐えながらビルが倒れるの待つ。

 

 

 重力に引っ張られて壁が床になる。

 真横になったらしいな。一回外に……。

 

 天井の穴から外に出ると、その先には奴らが待ち伏せしていた。

 

 奴らは俺を見つけると一斉に駆けだしてくる。すると、再び轟音と共に地面――ビルが斜めになっていく。

 

 まさか、今地盤が崩れた系? 

 そして奴らは普通に向かってくる。あいつらマジでしつけえな!

 

 

 俺は奴らに背を向けて下り坂を走り出すが、奴らの氷柱や冷凍ビームが襲いかかってくる。おまけに瓦礫やがけ崩れによる落石も降りかかってくる。

 足場にも注意しながらなんとか攻撃を凌ぐが、途中で角度が更に急になって獣たちはバランスを崩して転び、そのまま滑りながら落ちてくる。

 

 俺もバランスを崩して尻で滑りながら落ちる。先は切り立った崖になっており、対アラガミ用ナイフを抜く。

 

 摩擦でケツが熱い。

 

 このままじゃケツに火がついて悲鳴を上げて爆走する事になる。

 

 ギリギリの所で地面にナイフを突き刺して落ちないように踏ん張る。瓦礫と共に人面猫共は無様に崖下へ落ちて行く。

 

 そして揺れが止んで俺は立ち上がる。

 すぐに退避しようと崖に背を向けた。

 

 

『ガアッ!』

 

 背後から鳴き声と共に気配を感じ、その場で高く跳躍する。

 

 崖を登って来たのか……獣が1匹だけ上体を乗り出し、前足の爪が俺の居た場所の空気を切る。

 そのままナイフを構え、獣の顔に着地と同時に目玉に突き刺して獣から飛び降りる。

 

『ガアアアッ!?』

 

 獣は前足を滑らせながら足掻き、前足で地面にしがみ付こうとするが爪は地面を抉り、更に崖が崩れただけだった。

 そのまま獣は悶絶して悲鳴を上ながらが崖下へ落ちて行った。

 

 

「ふう、なんとかなったか。とりあえず、暗くなるまで何とかリンドウさんを探してみるか」

 

 

 リンドウさん、どうか無事で。

 

 

 その後、夕日が完全に沈むまで俺は市街地エリア周辺を探索したが、リンドウさんは愚か人影1つも見つからない。今日はここまでだ。

 明日、任務や仕事が入らなければまたリンドウさんを捜索しよう。

 




明日は大晦日ですね。今年も色々悪い事ばかり起きたので来年こそは良いことがあって欲しいですね。
皆様、良いお年を。
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