Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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3のアプデで紅煉灰域って追加されましたけど、どうやってクリアしろと言うんだ……。


うっわ、キッモ……!

 店っぽい建物を見つけて中に入る。

 物を退かして漁りを暫く繰り返していると、地図の様なものが出てきた。

 

「うっわ、ボロボロじゃん。まあ、無いよりはいいが……うーん……」

 

 地図だと思うんだが……。形的に日本じゃねえな……。なんだこの形……?

 ああ、駄目だな。こんなん役に立たねえわ。そもそも地図を手に入れたってこの場所がどの辺なのかかが分からないと意味がない。

だからボロボロでまともに読めない地図じゃ駄目だな。

 

 手に取った地図を投げ捨て、お目当てのものを探すが全く見つからない。

 

 

「エレナ、見つからねえな。一回外に出るか。埃ぽくって敵わねえ」

 

「うん」

 

 一緒に外に出て、壁に寄り掛かる。

 

「ユウ、この辺りはペーウォートが近いから急いで離れた方が良いかもしれない」

 

「近いなら腕輪のビーコンで嗅ぎつけられるか。じゃあさっさと――ッ!」

 

 

 何かが飛んで来る気配を感じ、首を傾げると顔の真横を何かが通り過ぎ、壁へぶつかり消滅する。

 壁には弾痕、そしてそれはよく目にする特徴的な跡だ。

 

「オラクル弾か……」

 

 おっかない世の中だ。アラガミだけじゃなく、同じ人間にも殺されるかもしれないなんてな。

 

 

「動くな!」

 

 瓦礫の陰から帽子をかぶった男が銃の様な物を構えて出てきた。

 男は背中に神機を背負っており、右手首には腕輪を嵌めていた。

 

 

「ァ……ッ!」

 

 エレナが怯えて俺の後ろに隠れる。

 

「キサマ、何処のミナトの所属だ。そのAGEは我々の所有物だ。みだりに接触して物としての価値を貶めた責任を追及し、賠償金を請求する」

 

 何やコイツ……。

 

 困惑である。困惑の極みで候。

 突然攻撃してきた挙句に責任追及からの弁償しろってガイジかよ。いや頭おかしいにも程があるだろ。いきなり値下げ交渉してきたシュンが可愛く見えるぞ。

 

 

「テメエこそ何処のどいつだ?」

 

「ユウ、ペニーウォートの人間! 逃げて!」

 

 早速来やがったか、ロリコン野郎。

 

「ハウンドA、任務を放棄するとは良い度胸だな。度重なる命令違反、挙句に神機の損傷。そろそろ調教が必要だな? そう思わないか雌犬?」

 

 うっわ、キッモ……!

 コイツレ〇プ魔かよ……。気持ち悪すぎる。下水でも覗いている気分だ。

 なんか口の中で唾液が大量分泌され始めた。

 いやまあ、ただ子供が好きなら分かるんだが……そう言う考えを持つのはいかんだろう。全世界の子供好きな紳士たちに土下座するべきではなかろうか。

 

 男はニヤつきながらエレナを舐めるように見て、怯えたエレナは震えながら俺のシャツを掴んで縋るように抱き着いた。

 

 怯えているエレナの頭を優しく撫でて男に罵声を飛ばした。

 

「おい性犯罪者。お前YESロリータNOタッチって知ってるか? テメエみてえなキモい奴がいるからただの子供好きなおっさんが悪者にされちまうんだぞ?」

 

「貴様ッ! 轟弄するか!?」

 

「事実だろ。大体いい歳して何考えてんだお前、気持ち悪い」

 

 いきなり男は銃の引き金を引いた。

 オラクル弾が再び向かってくるが、今度も首を傾げて回避して男に中指を立てる。

 

「クッ! おのれェ!」

 

 男が銃を構えると、引き金を引くと数発の弾が迫るのに対し、俺はエレナを抱き上げて屋根へ飛ぶ。

 

 幾つもの弾が迫り、澄ました表情を意識して余裕を見せながら回避する。

 男は銃を捨てて背中の神機を取り出して、跳躍して斬りかかってくる。

 

 ただ振り降ろされた神機を躱すとすぐに追撃を仕掛けてくるが、何ともまあお粗末な動きだ。

 

 攻撃を回避しつつ呆れる。

 

 コイツ、アラガミとまともに戦闘した事無いんじゃねえのか?

 それぐらい粗末な神機捌きだ。基礎訓練とか絶対やってねえぞコイツ。

 いや、ただ単に禁忌種パレードが頻発する極東がイカレテいるから俺の眼にはそう見えるだけか?

 

 

「おいおい、丸腰の相手になに手こずってんだお前」

 

「クッ!」

 

 男が神機を銃形態へ切り替えて、銃口がこちらを向いていた。

 

「ほう、新型か。良い物持ってやがるな。だがテメエの様な三流には勿体無いんじゃねえのか?」

 

 

 挑発を飛ばすとともにオラクル弾がこちらへ向かってくる。片手でエレナを肩に担ぎ、弾を避ける。

 対アラガミ用ナイフに手を掛けるが、この程度の相手には武器も必要ないと判断を下してナイフから手を離す。

 

「貴様、……投降する気になったか?」

 

「いや、全く? お前みたいなルーキー相手に武器使うのは可愛そうだと思ってな」

 

「舐めるなァ!」

 

 男がキレているのを尻目に、エレナを降ろして肩に手を置く。

 

「エレナ、ちょっと待てってくれ」

 

 

 男が剣形態に移行して斬りかかってくるが、斬撃を紙一重で躱して男の腹部に拳を叩き込む。

 

「ぐッ!?」

 

「おいおい、こんなもんか? 殴り殺すのも時間の問題かもしれんな」 

 

 男の首を掴んでそのまま体ごと持ち上げて手に力を込めると、男は悶え苦しみながらも俺の手を離そうと抵抗する。

 

 このまま握りつぶそうかと考えた直後、轟音が聞こえて振り返ると、大きなオラクル弾が錐もみしつつ飛んで来た。

 

「…………!」

 

 

 男をそのまま弾へ投げつける。

 

 次の瞬間、男は爆発と共に吹き飛び動かなくなり、体からは焼かれたのか煙が微かに立ち上っている。

 

「肉の壁とは便利なもんだ」

 

「ちっ、使えん奴め」

 

 もう1人仲間が居たか。

 

「投降しろ。命は助けてやる。それでも、我々の所有物を貶めた責任は追及するがな」

 

「お前もかよ。どんだけこの子に御執心なんだよ」

 

 なんでどいつもこいつエレナに執着してるんだ。

 ペニーウォートには性犯罪者しかいないのか……(偏見)

 果たしてペニーウォートにまともな人間は居るのだろうか……。俺はまともな奴は居ないに1fc賭けるぜ。

 え? 賭ける金額少なすぎだろうって? こっちも金欠なのさ。

 

「その犬は他の犬と違って特別だ。一定量のオラクル細胞を意のままに操作し、偏食因子の投与も不要。そしてガキ共の中じゃ群を抜く戦闘能力。食事はアラガミの肉片で済む。コストがかからない便利な狂犬だ」

 

「はっ、耳寄り情報だな」

 

 成程、そいつは驚きだ。だから神機の様な物を自在に作れたり、子供にしては高い能力を誇っている訳だ。だが、偏食因子の投与が不要なのは朗報だ。

 これでエレナが暮らせる場所をゆっくり探す事が出来る。

 

「バランに引き渡せば、億は下らん。お前の様な放浪者に価値が分かるか? それとも、その犬を連れ去って売り捌くか? ハウンドA、そいつも考えている事は同じだ。バランならば待遇も良いだろう。さっさと戻って来い」

 

「嫌だ! 私はこの人と一緒に行く! ユウとずっと一緒に居る! 来ないで!」

 

 エレナが俺に抱き着いて拒絶を示す。

 

「ちっ雌犬がッ……! 分からんようだな!」

 

 

 

 男も神機を構えて、襲い掛かる。

 

 エレナを下がらせ、迫る神機を躱して距離を取る。男は追撃を繰り出してくるが、すべての攻撃を最小限の動きで回避して懐に潜り込み、腹に拳を打ちこむ。

 

「ガハッ!?」

 

 悶える男の腹に突き蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

「しつこい奴は嫌われるぜ? そして俺もしつこい奴は嫌いだ」

 

「黙れッ! 物の価値すら分からん放浪者が!」

 

 男が怒りと共に叫びながら神機を振りかぶるが、今だにエレナを物扱いする奴の言葉に普段は温厚な俺も流石にカチンときた。

 

「口の利き方に気をつけろよ若造」

 

「ヒッ――」

 

 男が一瞬怯え、攻撃が俺を捉えるよりも早くカウンターを打ち込んだ。首を掴んでそのまま地面へ叩きつけて肘を男の腹に叩き込む。

 

「グアッ!?」

 

 倒れたまま悶える男の帽子を取り、髪の毛を掴んで再び拳を叩き込む。

 鼻血と口からの出血で血まみれの顔を鷲掴みにして持ち上げる。

 

 

「全く、おめでたい奴だ。テメエよりも星条旗掲げた兵士達の方が遥かに手強かったぜ?」

 

 そして後頭部を壁に叩きつけて男の掌に護身用ナイフを突き立てて壁に縫い付け、もう片方の腕を圧し折る。

 

 

「ギャアアアアッ!?」

 

「騒ぐな。アラガミが集まって来るぞ?」

 

「さて、見事にナイフが刺さったな。ここまで深く刺したら、もう片方の手で引っ張らないと抜け……ああ、そうか。圧し折れていてな。悪かった」

 

 地面へ垂れている手を踏みつけると苦痛に顔を歪ませるが、生意気にも睨みつけてくる。

 

 男の眼前に対アラガミ用ナイフを突きつける。

 

「ここから近いミナトの場所を吐け。そしたら助けてやる」

 

「東だ! 東に行けばミナトがある! 早く抜いてくれ!」

 

「OKだ」

 

 手を貫いているナイフを握り、更に差し込む。

 

「ギャアアアアッ!? 何でッ!?」

 

「お前が嘘ついた可能性もあるしな。それにただ東って言われてもな。抽象的すぎる。それにな、ナイフを抜いてやるなんて一言も言ってないぜ? 助けてやるよ、この腐った世界の柵からな」

 

「き、貴様……!」

 

「まあ、悪い行いをしたら返って来るって事さ。神様なんて居ないから天罰なんて下らんが、代わりに俺が裁いてやる。ありがたく思え」

 

 ナイフをもう1本取り出す。ひと思いに楽にしてやるために首に突き付けて、切っ先が刺さり喉から血が漏れ出して男は悲鳴を上げる。

 

「ユウ、待って」

 

 

 エレナの声で俺はナイフを止めた。

 ナイフを持つ俺の手を握って、真っ直ぐに俺を見て言葉を紡ぐ。

 

「私が……やる」

 

 エレナがそう言い、俺はナイフを男から離して後ろへ下がる。

 

 

「…………!」

 

 黙ったまま、苦しそうに息をする男に近づいてエレナは手を翳す。

 エレナの手にオラクルの光が集まり、神機の様な形になる。

 

「ま、待てハウンドA! 俺を助けたなら待遇を改善してやる。お前の望むモノもくれやる。だから、ソイツを殺して俺を助けろ!」

 

 

 男の命乞いを聞き、黙っていたエレナがようやく口を開いた。

 

「ふざけないで。私はハウンドAなんて名前じゃないし、ペニーウォートでもない。私は皆を奪ったお前達を、絶対に許さない」

 

 エレナが手を震わせているのを見て、気が変わった。

 神機を握るエレナの手を優しく両手で優しく包む。するとエレナが神機を持つて手の力を緩め、俺は神機を持つ。

 

「やっぱりエレナが殺すまでもない。その男にはそれすらの価値がない。せっかく綺麗な手をしているんだ。こんなクソ野郎の血で汚すなんてとんでもない」

 

 そうだ、これ以上……この子を汚すわけにはいかない。恐怖に震える男に刃を突き立てた。

 

 

 男は目を見開いて崩れ落ち、ナイフに縫い付けられた手が一瞬痙攣して動かなくなる。

 

 

「エレナはやっぱり優しいな。だって、優しい顔をしているんだから。だからそれでいいんだ。優しいままで居てくれ」

 

「ッ……! うんッ……!」

 

 

 エレナが涙を零し、俺に抱き着いてくる。

 抱き上げると頭に手を回して頬を擦り寄せてくる。静かに泣くエレナの背中を優しくさすりながら、旧繁華街を後にした。

 

 

 

 

 エレナと暫く歩き、日が暮れ始めたのでそろそろ腰を落ち着ける場所を探そうとも思い、東へ向かいつつ目ぼしいところが無いか探しながら歩いていると、丁度雨を凌げそうな廃墟を見つけて今夜はそこで休む事にした。

 

 

 夜も更けてくると、肌寒くなる。俺とエレナは神機使いであるが故にある程度環境に適応できる。といってもまだエレナは子供だ。いくら神機使いとはいえ、心配になってくる。

 

「エレナ、寒くないか?」

 

「うん、くっついてれば温かいから平気」

 

 さっきからずっとベッタリくっついてくるので少々対応に困ってしまう。子守なんてしたことが無いので甘えてくる子供に対して精一杯甘えさせてやるべきか、それとも多少は厳しく接するべきか等全く分からない。

 

「腹、減ったな。ホラ」

 

 気付けば腹が減ったのでレーションを取り出してエレナに手渡す。しかし、レーションを受け取ったエレナは不思議そうに手にしたレーションを眺めている。

 

「これって食べ物?」

 

「ああ、ちょっと味は薄いがな」

 

 レーションを口にしながら説明すると、エレナも俺と同じように口に放り込んで齧る。

 

「美味しい……」

 

「そうか。なら良かった。まだあるから食べな」

 

「うん。でも、ユウの分がなくなっちゃう。私はもう大丈夫」

 

「育ち盛りは食うのが仕事だ。気にするな」

 

 エレナにもう1個手渡す。

 育ち盛りだからな。よく食べないといけない。

 

「……そうだ。はい、半分こ。あーん」

 

 暫く考えた後にそう言って、俺にもう半分を食べさせようとしてくる。

 いい歳した男が小学生ぐらいの女の子に食べさせてもらうとか、かなり恥ずかしい。

 ぶっちゃけ、知り合いにこんな所を見られでもしたらある意味悶絶する。

 

 しかし、笑っているエレナを見ると拒むのも気が引けるので大人しく受け入れる。

 

「ああ、ありがとう」

 

「うん、どういたしまして」

 

 眩しいぐらいの満面の笑み。ああ、この子を助け出せて本当に良かった。

 だが、まだ終わりじゃない。まだエレナが安心して暮らせる場所を探さないといけない。

 いつかはきっとお別れする時が来るのだろうが、そんな現実を今教えるのは心が苦しい。

 もし、このまま帰れなかったら俺は戦友たちの加護が無くなって灰域で命を落とす事になるだろう。

 まだタイムリミットが俺にしか無いだけまだマシか。

 

 

「…………っ」

 

「どうした?」

 

 エレナが急に力一杯シャツの裾を握り締めてきた。

 どうしたかと思い声を掛ける。

 

「ユウ、行っちゃヤダ……」

 

 暗い事を考えていたのが読まれたのか、エレナが泣きそうな声で抱き着いてきて胸に顔を埋めてくる。

 

 

「どこにも行かないから大丈夫だ」と、言ってやりたいがそれは後々エレナの気持ちに酷い嘘として重くのしかかるので黙ってエレナを抱いてあやす事しか出来ない。

 

 泣き疲れたのか、いつの間にか寝息を立てて眠っていた。起こさないようにエレナを横にして膝枕をして頭を撫でると、手を掴まれた。

 そのまま手を抱え込むように、体を丸めて嬉しそうな顔をしながら眠っている。

 

 俺も眼を閉じる。

 ある程度気を張って眠れば、アラガミが近くに来たら気配で起きれる。

 単独行動をする上で大事な技能だ。2人で交代しながら眠ればぐっすり眠れるが、エレナはまだ子供だ。ペニーウォートで酷い扱いを受けており、心も体も弱っている筈。

 出来るだけ食事や睡眠などをしっかりさせないといけない。

 

 

 

「ュゥ……ずっと……」

 

 夢の中でも俺が出てきているのか寝言を口に出す。随分懐かれたものだ。だが、悪くない。

 子を持つ親の気持ちってのはこれに近いかも知れないな……。

 




なんだかんだ3も発売から1年3か月程ですね。長いような短いような……。

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