Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
それはともかく皆様、コロナはそうですが体調管理には注意してくださいね。
手洗いうがい規則正しい生活が一番の予防策だと思います。自分も周りもしっかりしないといけないですが、周りがダメならせめて自分だけでもしっかりしないといけませんね。
光が差しこんできて目を覚ます。
エレナはまだ眠っている。
あれから何度かアラガミの気配を感じて目を覚まし、こちらに来ないか息を殺してやり過ごすのを何回か繰り返した。
幸いな事にアラガミに気取られる事無く、一晩を過ごす事が出来た。
「ぅ……ん。ユウ、おはよう」
エレナも丁度目を覚ました。
「ああ、おはよう」
「うん。……へへ」
笑いながら、握ったままにしている俺の手を頬に当てる。
「飯食べたらすぐに出発するぞ」
「うん!」
兎に角東へ向かって歩き続けるが、時折見晴らしの良さそうな場所に登って遠くの景色から防壁を探す。
しかし、中々見つからない。エレナから詳しく聞くと、ミナト等は地下にあるらしい。
地上で見える施設とは灰域踏破船と言う移動要塞を受け入れる門の役割をしており、本当に港としての機能を果たしている訳だ。
地下にあるとはいえ、完全に安全という訳でもないらしい。灰域が活性化すると灰嵐という災害を引き起こし、それに飲み込まれて滅んだミナトもいくつかあるらしい。
例え防壁が見えたとしてもそこは既に滅んだミナトである可能性もある。
ペニーウォートの様な非人道的なミナトもあるかもしれないのでよく調べた上で接触するべきだろう。
途中でエレナが抱っこをねだってきたので抱き上げるとまた嬉しそうに頬を摺り寄せてくる。
まだ甘えたい年頃だし、近い内に別れがやってくる。今だけは存分に甘えさせてやろう。
しかし当てのない旅とはこの事だ。とりあえず東へ向かっているが、いくら歩いても目に見える景色は浸食された大地と灰が舞う異様な光景だ。
旅と言うものには憧れはしたが、実際には心細いものだ。偏食因子が必要なくなり灰域でも生きていける体になるとか都合の奇跡が起きて欲しいものだ。
だが現実は非常である……と。
エレナの頭を撫でながら歩を進める。頭を撫でてやると首に顔を埋めてきて少々くすぐったいが嬉しそうな顔を見るとそれも些細な事だ。
出発から大分時間も経ち、歩けば歩くほど辺りは暗くなっていく。
だが、まだ時間的には夜じゃない。何故暗くなっているか。見上げればすぐに分かった。
遥か彼方で真っ黒な煙が波のように動いている。
煙の嵐か。また妙な物を拝んでしまった。
「灰嵐……」
「灰嵐? あれがか……」
話を聞いて分かっていたが見るからにヤバそうだな。あれに飲まれたら問答無用でアウトだ。
おいおい、まさかこっちに来ないだろうな……。
流石に嵐から走って逃げるなんて俺には無理だぞ……。時折灰嵐を確認しつつ進むしかないか。あんなものがすぐ傍にあるなんて気が気じゃないが……。
このまま進めば渓谷地帯に入る。此処から見渡した感じだとかなり複雑に入り組んでいるように見えるのであまり通りたくはないが……。灰嵐がすぐ近くで発生している以上回り道も危険。だが渓谷に入ったとして灰嵐が進路を変えて渓谷地帯へ進行してきたら一巻の終わり。とても行動しづらい状況だ。
灰嵐が去るのを待つのが確実だが……あまり悠長にできないのが現状。
暫く様子を見てから今後の動きを決めるとしようか。
「エレナ、しばらく一休みだ。ゆっくりしよう」
「うん」
岩陰へ向かい、エレナを下ろして腰を下ろす。
「ユウは何処から来たの?」
唐突な質問に呆気を取られた。
「そっか、俺の事なにも詳しく話はしなかったな。あ、俺はずっと東から来たんだ」
「東? でも、ユウはこのあたりの事は……」
「東って言っても海の向こうさ。アラガミが出る前は元々島国だった」
「ユウは何時からゴッドイーターになったの?」
「うん? ああ、そうだな……。一応半年以上前になったばかりだ。でも、気絶して目を覚ましたらあの礼拝堂の前に突っ立っていたんだ。少なくとも俺がゴッドイーターになった時なんて灰域なんてなかったからな。数年単位で気絶していたらしい」
思ったんだが、この世界には極東支部はあるのだろうか……。実際、調査していた島の洞窟内で眩しい光に包まれて気が付けばあの礼拝堂の前に居た。人に話しても信じてもらえないようなことが起きているんだ。実際に何が起こったのかわからない。だが、灰域なんて俺は知らない。
ここは御伽噺でよく出てくる平行世界なのか、それとも何年も先の未来なのか……。
「ユウも1人ぼっちになったんだね……。寂しいね」
「そうだな、友達にもう会えないかと思えば心に来るものがある。でも、平気さ。独りには慣れているからな」
「ううん。独りじゃないよ? 私が居るもん。だから、ずっと一緒」
「そうか。そりゃあ……寂しくなんて無いな。ありがとな、エレナ」
隣に座っているエレナに体を寄せられる。頭を撫でると腕を両手で掴まれてそのまま抱きしめられる。
「ユウ、暖かい……。ユウ、ギュってして」
エレナが胡坐の上に乗って抱き着いてくる。俺も両腕を回して軽く抱きしめる。
此処まで懐かれると照れ臭くもある。まだエレナは多感な時期に入っていないのだろう。誰にも隔てなく懐くと変な男に引っかかるかもしれないのでそこが心配でもある。
「…………ッ!」
「ユウ?」
エレナが首を傾げると、すぐに抱き上げて身構える。
向こうからアラガミが群れを成して迫ってきていた。
オウガテイルにザイゴート、礼拝堂でエレナを襲った蜘蛛に角を持った4足歩行の獣……大きさから察するに小型だと思うが……。
しかし数が数だな。此処で戦ったら中型や大型が乱入してこないとも限らない。アラガミだって互いに捕食し合うことがある。大型が小型を喰うのはある意味自然を再現している。強い個体に弱い個体が喰われるとの同じだ。
ましてやエレナを守りながらは厳しい。防衛班の連中ならこういう時は手慣れたもんだろうが、俺は偵察班だ。タツミのようなことはできない。
「エレナ、渓谷に逃げてそのまま抜けるぞ。大分長い渓谷だ。悪いが我慢してくれ」
「大丈夫、ユウも無理しないでね?」
「もちろんだ、無茶は嫌いなんでな」
エレナにそう笑いかけ、奴らに捕捉される前に渓谷入っていった。
渓谷は危険極まりない場所だ。足場の悪さに逃げ道の少なさ。アラガミにこんなところで襲撃されようものならひとたまりもない。
足早に駆けつつ意識を集中させて周囲の気配を感じ取りつつ、接敵しないように渓谷を進む。
それでもアラガミの巣でアラガミに遭遇しないなんてコイントスで連続で10回以上同じ面を出すのと同じようなものだ。
遥か向こうでシユウがオウガテイル捕食しており、もし奴が俺達を見つけたら間違いなく食いにかかるだろう。
「エレナ、頼めるか?」
「うん」
エレナを下ろして剣を頼む。
手を翳すとオラクルが集まり、剣が形成されて俺は手に取ってそのままスピードを上げて食事中のシユウに不意打ちを仕掛けた。
シユウがこちらに気づくと同時に目に斬撃を入れてシユウの視界を潰してそのまま首に剣を突き刺して振り抜く。
血飛沫が上がってすぐに離れてエレナを迎えにいき、抱き上げるとすぐに駆けだす。
ある程度広く、足場も安定している場所へ出て少し気が抜ける。
「ユウ、ずっと向こうに凄い気配が居る」
エレナが進行方向を指さして言う。
「俺が感じ取れないってことは、まだ近くではないな。どこかで進路を変えて――」
『GAAA!』
聞き覚えのある雄たけびが聞こえ、振り向くと高台に立つクアドリガがこちらを見据えて前面装甲を展開していた。
大きなミサイルが飛び出し、ミサイルは俺を追ってくる。岩壁に背を向けてミサイルをギリギリまで引き付けて跳躍で躱す。
「何っ⁉」
ミサイルがスピードを落として曲がり、岩壁に激突しないでそのまま俺についてくる。
「おいおい、此処のクアドリガ極東よりつえぇぞ⁉」
地面へ向かって空中ステップで空を駆け、一気に地面へ着地して駆けるが後ろを振り返ればミサイルはまだ追尾してきている。
どんだけ誘導性が高いミサイルなんだ……。
「ユウ、私に任せて」
抱き上げているエレナが手を翳すと掌にオラクルが集まり、それを後ろのミサイルへ発射した直後に背後で爆発が起きる。
エレナの迎撃が成功したらしい。
「サンキュー!」
「どういたしまして」
しかし安心はできない。後ろをチラ見すればクアドリガが追ってきている。
図体の割には素早く、中々距離を離せないでいる。
奴の背中に添えつけられたミサイルポッドが蓋を開くのが見えた。
「おいおい、まさか……」
『GAAAAAA!」
雄たけびと共に大量の小型ミサイルが飛び出し、徐々に迫ってくる。
走りつつ跳び、着弾してきた小型ミサイルを躱すがキリがない。仕掛けるしかないようだ。
途中で方向転換してクアドリガへ向かって駆ける。
ミサイルもちゃんとついてきているのを確認してクアドリガと距離を詰め、奴の下をスライディングで潜り抜けると爆発が背後で何発も起こり、そのまま距離を取って様子をうかがう。
流石に倒れはしないか、だがそれなりに痛い思いをしたらしい。前面装甲が結合崩壊を起こしている。
『GAAAAAAッ⁉」
クアドリガが咆哮を上げると、跳びあがって前足のキャタピラで踏みつぶそうと振り下ろしてくる。
飛び退いて躱すが、着地するとまだ地鳴りがする。奴の口が大きく開くと炎が噴き出して業火に背を向けて逃げる。
まさかあんな攻撃を仕掛けてくるとは……!
少なくとも俺は奴のあんな攻撃を見たことない。更に捕食して攻撃手段を覚えて俺の知るクアドリガとはまた違う進化を遂げたのだろう。
奴がミサイルポッドを開き、遥か上空に大量のミサイルを打ち出す。
「…………こいつ、やりやがった」
嫌な予感しかしねえし、その予感はすぐに当たるだろう。
何かが落ちてくる音と共に、上から無差別攻撃ともいえるミサイルの雨が降ってきた。
エレナをしっかり抱き寄せ、被弾しそうになりつつも何とか回避して凌ぎ続ける。その間にも奴は既に大型ミサイル発射準備をしている。
このまま撃たれたらまずいと言うのは分かるが、状況が状況だけに阻止するのは難しい。
「任せて!」
エレナが俺の考えを察してくれたのか再び掌にオラクルを集めてクアドリガの前面装甲の中にセットされているミサイルに打ち込むと、大爆発を起こしてクアドリガが悲鳴を上げて、態勢を崩す。
次の瞬間、蒼い装甲を纏った竜のようなアラガミが突然クアドリガを吹き飛ばして吠える。
「なんだありゃ……!」
「さっきの強い気配……!」
クアドリガも吠え返して前脚で叩き潰しに掛かるが、蒼いアラガミは拳を握って前脚をパンチで弾き返してそのまま空いた手をクアドリガの頭部に叩きつけた。
頭部を潰されてクアドリガは倒れ、蒸散すると蒼いアラガミは咆哮を上げてこちらを睨んできた。
エレナ (10~12?)
灰域で活動できる次世代ゴッドイーター・AGEの女の子だ。
なんでもこの子は特別で偏食因子の投与不要、オラクルを一定量だが自在に操れる力を持っており、それを応用した傷の修復や再生など何度か助けられている。
この世界が未来なのか、平行世界なのか分らんが泣いて助けを求める子を放っておくことなど断じて認めない。
今はこの子の事を一番に考えてやらなければ。