Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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コロナの脅威が着々と迫っていますね。
こういう日は外になんて出ないで酒を飲みながらアニメを見るに限る……だよな?


知恵を持つとは厄介である。

 クアドリガを一撃で沈め、姿を現したアラガミがこちらを睨む。

 全身を蒼い鎧のような鱗で覆っており、お伽噺に出てくる竜のような姿をしたアラガミだ。

 

 

「あらら……想像以上にヤバそうだな……」

 

 さて、どうする? 

 あんな化け物をどう料理したモノか……。此処が極東なら俺は戸惑うことなくユウナさん率いる第1部隊に応援要請をするが、流石に化け物じみた戦闘力を誇る彼らでもパラレルワールドに出張はできない。

 

 別におっぱじめるのは構わないが、戦闘音を他のアラガミが感知して集まってきたらエレナに危険が及ぶ。

 

 

 思考している間にアラガミは行動に出た。

 大きく息を吸い込み、こちらへ向かって青い炎の塊を飛ばしてきた。

 

「ッ!」

 

 エレナを抱き上げたまま、素早くその場から跳び退く。

 蒼い炎が俺達の居た場所へ着弾すると、その場所は凍りつき、冷気の余波が身体を包む。

 

 氷属性か……。ブレスの形状から炎かと思ったが……。氷属性を操るアラガミに碌な奴は居ない。無駄に硬いコンゴウやクアドリガ、クボログボロの堕天種然り。

 最近は鬱陶しくて活性化すれば硬くなるプリティヴィ・マータとかいクソ。どいつもこいつも硬すぎて近接攻撃がアホらしくなる。

 

「エレナ、悪いが頼む」

 

 俺が手を出すと、エレナは頷いて俺の手を握る。

 光の粒――オラクルが手を包み込み、オラクルは神機に良く似た剣を形成する。

 

「ありがとな。隠れてろ。もし他のアラガミが来たら大声で教えてくれ」

 

 エレナの頭を撫でて、俺は剣を片手にアラガミを見据える。

 

 

『GYAAAAAッ!』

 

 アラガミが咆哮を上げると、両腕に装着している変わった形の籠手から巨大な刃が展開された。

 

「えッ」

 

 背中の突起物から冷気を放出し、地面を滑るように一気に距離を詰めてきた。

 

 あの巨体にも関わらず、ただでさえ的の小さい俺の首を正確に狙った刃による一閃。

 

 

 間一髪屈んで回避するが、もう片方の腕の刃を振りかぶる。

 

 咄嗟であるが体を捻りつつ跳ぶ。

 俺の真下を青い刃が過ぎ去り、着地と共に背後へ回り込むように地面を蹴って短距離を移動する。

 

 背後を取ったからと言って油断はできない。攻撃に移りたいが、ここは様子見だ。

 相手の出方を伺うのは、戦闘では基礎中の基礎だ。

 

 案の定奴は腕を振りつつこちらへ向き直り、容易に俺の接近を拒否する。

 あのまま不用意に近づけば真っ二つにされていた。

 

 広範囲をカバーする巨大な得物。そして、その鈍重な得物を使いこなす隙のない動き。

 実に厄介だ。おまけに遠距離攻撃も完備ときたものだ

 

 遠近両刀のアラガミか……。骨格は全く似ていないが、スサノオを思い出す。奴も遠近を自在に使い分ける相手だった。

 星の数ほどいるアラガミの中で、よりにもよって第1種接触禁忌種と同等のアラガミと出会うとはなんたる不運だ。

 

 

「辺り一帯、凍らされるのは厄介だな」

 

 下手に距離を取ってブレス攻撃を誘発するとそこら一帯凍り漬けで足を滑らせる可能性がある。あまり近づきたくはないが、仕方ないか。

 

 地面を蹴り、一気に懐へ潜りこんで胴体へ斬撃を入れる。

 

 アラガミは後退した後に宙返りしつつ距離を取るが、すぐにステップで距離を詰めて剣を振る。

 数回斬りつけた直後、奴は半歩後ろへ下がって刃を振ってくる。

 

「ッ!」

 

 跳躍で斬り払いを躱し、奴の真上を位置取る。剣を構えて奴の尻尾の付け根へ剣先を向けて滑空する。

 奴の尻尾の付け根に剣を突き刺してそのまま背中の突起物へアラガミの体を伝って向かい、剣で斬りつける。

 

 この部位を破壊できれば、こいつの機動力をある程度下げれるかもしれん。

 

『GUu……!』

 

 アラガミが両手を地面へ付け、身構えると突起物から冷気が漏れ出して辺りを包む。

 

「おい、まさか」

 

 察すると共に避けろと頭の中に考えが過り、即座に跳び退いて距離を取る。

 

 

『Guuuuuuッ!』

 

アラガミの雄たけびと共に青い冷気が周囲を包み、あまりの余波に剣を地面へ突き立てて膝を付いて堪える。

 

「…………くそ」

 

悪態をつかざるを得ない。ブレスの誘発を防ぐためにハイリスクを承知で接近戦をしたのに、あんな範囲攻撃まで持っているとは……。

 あの攻撃を誘発させない為には、奴と正面から斬り合うしかねえって事か……。

 

 奴の周囲は凍りつき、冷たく青い結晶が渓谷の景色を映している。

 

 

 こちらが次の攻撃に備えようと、構えた直後に奴は高く跳んで鋭い爪を叩きつけようと一回転しながら振り降ろす。

 軽く横へ跳び、その後隙を狙うように展開された刃が迫る。

 

 素早い追撃であろうが視界に映った時点で回避は余裕だ。所謂見てから回避。

 なら、見えない攻撃はどうだと言う話だが……。

 

 次の手は既に分かる。

 

 僅かだが冷気を感じ、追撃は最低限の動きで回避する。

 

 振り終わった腕で口元を隠したらしいが、口元からの冷気でバレバレだ。見えないなら感じ取れ。正しくこれである。

 見る、聞く、感じる。これらを極めた技能こそが見切の極意だ。

 

『GAAッ!』

 

 案の定、腕を退かして即座にブレスを撃って来たが、こちらは既に回避態勢万全だ。

 横へ軽く跳んで余裕を持って躱す。

 

 しかし今の攻撃を見るに、喰う事しか能のない癖に中々頭の回転は良いらしい。

 

 

 獣が知恵を持つのは本当に厄介極まりない。

 例えば人を喰った事のある熊がそうだ。人を喰い人間の味と匂いを覚えた熊は山に迷い込んだ人間が山の何処にいるか御見通しらしい。だが、御見通しだから襲いに行くのではなく、待ち伏せをする。人間が通るであろう場所でだ。

 

 腕に付いた刃による攻撃に注意を向けさせ、振った腕で口元を隠してブレス攻撃を悟らせぬようにした。こいつは人間が情報を認識する際、殆んどを視覚に頼っていると言う事を知っている。人間喰い続けた進化なのかは不明だが、これは中々の脅威だ。

 

 

 アラガミの背後から何かが伸びて、上空から俺目掛けて降ってきた。

 

 咄嗟に後ろを跳んで躱すと、それは奴の尻尾だった。

 まさか地面に突き刺さしてくるとは思わなかった。見た感じでは、ただしなやかな尻尾で薙ぎ払うか叩きつけるぐらいしか攻撃手段が予想できなかった。

 

 尻尾が引き抜かれ、尻尾の先端は氷で覆われて先端が尖っていた。

 

「マジかよ……」

 

 恐らく冷気を放出した際に尻尾の先端を凍らせて俺と戦いつつ地面に擦りつけて削って尖らせていたのだろう。

 

「ああ……知恵を持つってのは本当に厄介だ」

 

 悪態を突きつつ、剣を構える。

 アラガミが姿勢を低くする。何か仕掛けてくると思い、慎重に見極める。

 

 奴の背後で尻尾が地面と水平になっているのが視界に入った。こちらが跳躍すると同時に、半回転と共に尻尾で薙ぎ払いを繰り出してきた。

 

 躱されると思っていたのかアラガミは体を捻りつつ跳び、背中から冷気を放出してこちらへ向かいつつ、爪を振り降ろしてきた。

 空気を蹴って空中を飛ぶように移動して追撃を回避する。しかし、逃がさないと言わんばかりの連撃が迫る。

 

 態勢を変えて両足を上空へ向けて空気を蹴り、地面へ向かって空中を跳ぶ。

 連撃から逃れたがすぐに奴へ向き直ると、奴は背中から更に冷気を放出しながら刃を展開して腕を薙ぐ。

 

 スライディングで刃を躱して懐に潜り込んで奴の脇腹に一太刀いれ、続けて剣を払いつつ横へ跳んで斬りながら距離を取る。

 

 アラガミは宙へ跳び、空中で巨大な氷の槍を作り出してこちらへ投擲してくる。

 

 巨大氷槍を躱すと、物量作戦に変更したのか小振りであるが氷の槍を両手で作り出しつつ片方の手で投げつけてくる。

 

 回避で捌ききれない氷槍は剣で砕き、アクロバティックに動いて上手く氷槍を躱す。そして再び巨大な氷槍が飛んできたのに対して回避と同時に氷槍へ跳び、そのまま氷槍を足場代わりに蹴ってアラガミへ向かって跳ぶ。

 

 奴は刃を展開し、それを対抗して俺は剣の上に両足を乗せてスケボーの感覚で奴の攻撃を待つ。

 

 迫ってきた刃の腹をスケボーの要領で滑りつつやり過ごして跳び、剣を構えて肩へ滑空して突き刺さる。

 

『GAAAAッ!?』

 

 アラガミが態勢を崩して諸共地面へ落下する。

 地面へ衝突する寸前に跳び、距離を取った。

 

『Guuuuu……!』

 

 アラガミは再び刃を展開して駆けてくる。こちらも剣を構えて駆ける。

 まずは懐へ飛び込んで刃をやり過ごし、数回剣で斬りつける。そしてすぐにステップで奴から離れて相手の動きに合わせて距離を調整する。

 

 奴が攻撃態勢に入り、こちらも身構えて攻撃を待つ。

 

 刃が振られると共に回避に専念し、付け入る隙があると即座に判断を下して剣を振る。

そして再び距離を取り、近接攻撃を誘発させる。

 

『GAAAAA!』

 

 アラガミが両腕を振りかぶる。

 両の刃を交差させるつもりか、大振りな攻撃になる筈だ。

 

 

 交差する刃をバック宙で躱し、着地と共に腰を落としたまま剣を構え、渾身の突き攻撃を奴の片腕にかます。

 

 そして剣を引き抜き、そのまま腕を伝いながら跳躍して奴の上空へ。

 

 

「セアァッ!」

 

 

 剣を上段で構えて奴の頭部目掛けて振り降ろす。

 

 

 奴は頭部を守るように腕を交差させ、驚くことに自身の両腕にブレスを吐いた。

 

 腕は瞬く間に氷に覆われ――

 

 

 ガキィッ!

 

 

「こいつ……ッ!?」

 

 自身の腕を凍らせて分厚い氷で覆い、こちらの攻撃を防いだ。

 

『GYAAAAAAAッ!!!!』

 

「ぬおっ!?」

 

 雄たけびと共に両腕を振り解くと共に氷は割れ、俺は空中へ弾き飛ばされる。

 刃が氷を貫いて飛び出した。

 

 そしてそのまま俺目掛けて刃が振られる。

 

「ユウ!」

 

 エレナの声を聞いて歯を食いしばり、すぐに態勢を整えて空気を蹴りつけて空中ステップで攻撃をギリギリ回避する。

 

 地面へ着地して、剣を構える。

 

 

 アラガミも自身の腕に張り付いた氷を砕いて、俺を見据える。

 背中の突起物から冷気が放出され、すると奴は宙へ浮かび上がり、再び刃を展開する。

 

 そしてこちらへ猛スピードで迫ってくる。

 

 奴との距離が数十メートルといった所で突然、奴の背中で爆発が起きて奴はそのまま地面へ激突して不時着する。

 

 

『GAAAAAAAッ⁉』

 

 

 周囲を見渡せば、周りに幾人もの神機使いが銃形態で構え、青いアラガミと俺を包囲していた。

 

 

 こいつらは……ッ! あの制服、ペニーウォート……!

 

 連中の中には見覚えのある制服を着ている神機使いもいる。

 

 

「やれ!」

 

 

 連中の内の1人が叫ぶと、一斉に射撃が始まりオラクルの弾丸が嵐のように飛び、俺は回避に専念する。

 

 

『GYAAAAAA!?』

 

 青いアラガミが何発かは掻き消したり被弾しても耐えたようだがすぐに悲鳴を上げて砂埃と共に血飛沫を飛ばし、地面へ倒れる。

 

 銃声が止み、顔を上げるが砂埃で何も見えない。

 

 

「ハウンドAの拘束を急げ! 腕輪のロックを施行!」

 

「大人しくしろ雌犬が!」

 

 ハウンドA――エレナか!

 

「嫌ァ!」

 

 ガチャンと音がしてエレナの悲鳴が聞こえてすぐに声のした方向へ走って砂埃を抜けると、そこには両手を手錠のように腕輪で拘束され、男2人に両腕を掴まれて首輪をつけられたエレナが怯えながらも助けを求める目で俺を見ていた。

 

「ユウ! 逃げ――」

 

 助けを求めているのに紡いだ言葉は俺を案じての言葉だった。

 当然放っておくことなんてできない。

 

「発言の許可はしていないぞハウンドA! 大人しくしろ!」

 

 帽子をかぶった男がエレナに怒鳴って頬を殴りつけた。俺は地面を蹴りつけて一気にエレナの元へ向かう。

 

「女子供に何しやがる! さっさとその子を開放しろや!」

 

 叫びながらエレナを殴りつけた男に飛びかかろうとするが、背後から何かが飛んでくる気配を感じ、振り返るとともに剣を振る。

 

 飛んできた物体――オラクル弾を斬ると爆発を起こして体に熱と激痛を感じて吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ⁉」

 

地面へ叩きつけられてすぐに起き上がる。

 

「ユウ! 逃げ、ンンッ⁉」

 

 エレナは口を縛られ、そのまま連れていかれる。

 

「おいクソが! 待て!」

 

 追おうとするとすぐに銃声が鳴り響き、傍で爆風に吹き飛ばされて地面へ転がる。

 

 

「もういい。やれ」

 

 誰かがそう言うと、1発銃声が鳴り、上空から爆音が聞こえ、地鳴りが聞こえてきた。

 何事かと思い、上を見れば周囲の岩壁が崩れて上から岩が雪崩のように落ちてきた。

 

「っ⁉」

 

 咄嗟に剣の腹で体を守るようにしゃがみ込んで衝撃に備えたが、頭に何かがぶつかった感覚がした直後、痛みと共に気が遠くなる。

 

 くそがぁ……俺は、まだ……。エレナ…………。 

 

 




ペニーウォート

エレナが所属させられていた組織だな。AGEを捨て駒扱いしているらしい。
まあ、アラガミ出現前の過去にも奴隷だのなんだの色々あったからアレだがホント人間って変わらないな。

でもなんの罪もない子どもにとんでもない事をするのはどうかと思う。
子どもって一応俺達からすれば宝みたいなもんだし? 誰だって宝物を壊されたり傷付けられたりすれば怒るよね?

まあ要するにな……ペニーウォートもう許せんぞおい!(憤怒)
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