Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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3話目です。
タグにある通り、作者の知識は未熟なので間違いなどがあったらご指摘をお願いします。
主人公が普段こなす、フェンリル職員の業務内容などは全く分からないので詳しい方が居たら是非教えてください。


世の中には言って良い事といけない事がある。

「……さ……ん。ゆ……さ……ん」

 

誰だよ、気持ちよく寝てるのに。まったく、俺の至福の時間である睡眠タイムを邪魔するとはとんだ不届きものだな。他人の至福の時を邪魔するなど――

 

 

「人間の所業ではない!」

 

クワッと目を開いて大声で怒鳴る。

 

「きゃあ! ユウさん! びっくりさせないでください!」

 

可愛い悲鳴をあげるヒバリちゃん。叱られてしまった……。

 

「あ、すまん。ちょっと変な夢を見ていて……」

「そうですか……。あの、ユウさんはいつもエントランスで寝泊まりしていますが、まだ住居が見つからないんですか?」

「上に相談しても暫し待ての一点張り。部屋借りようにも俺の財布の中身はすっからかんだ。人生と言う名の賭博に負けて綺麗さっぱりすっちまったよ。素寒貧だ」

「ユウさんの歳ってまだ15、6ですよね? それで人生語られても……。それにフェンリル職員ならそれなりに給付を貰っている筈では?」

 

うぐ……世はフェンリルの天下、つまりフェンリルは勝ち組だ。必然的に給料は良いが……。ちょっとこの場では言えないんだよな~。どうやって誤魔化そうかな~。

 

「まさか……また賭博ですか……?」

 

ヒバリちゃんがジト目で俺を見てくる。や、やめてくれよ……そんな目で俺を見ないでくれ……。惨めになる自分と心なしか興奮気味の自分に板挟みにされちゃうから……。

あれ? 後者ってこれ只の変態じゃ……。

 

「ええと、まあ……。ほら、この仕事って結構運が関わって来るじゃない? つまり運試しをしようと……」

 

この後滅茶苦茶叱られた。こういう時に限って喜んで囮になってくれるタツミが居ないのだ。

こんな朝からお説教を受けるとはぁ……。今日は気が滅入るぜ。

 

よーし、今日も一日雑務をがんばるか。

今日は倉庫の棚卸を頼まれている。朝っぱらから棚卸はちょっときついが仕方ない。

 

 

 

「……………………それで何の用ですか、榊博士」

 

物資の個数を確認していると、普段、倉庫ではエンカウント率が1%にも満たない人物と顔を合わせた。

 

「いやー、ちょっとお願いがあってねー」

 

陽気と言うか、何と言うか……。

正に狐と形容される細目と、常に顔面に貼り付けた笑みで、感情の起伏が判然としない人物だ。これでもゴッドイーターの生みの親らしい。 人類を保護する対アラガミ防壁の技術基盤を開発したのも彼らしい。

俺も結構この人には世話になっているから無下にはできないんだが……厄介ごとばかり持ってくるのは勘弁していただきたい。

 

「ちょっとアラガミの素材をね……」

「はあ……。あのー博士は俺の事を工作兵かなんかと勘違いしてません? ちょろまかすのだって大変なんですよ?」

 

そう言いつつ、アラガミ素材を保管している倉庫のカギを取り出す。

 

「この前だって下手したらばれたかも知れないんですよ? 物品科の人も監視カメラの数増やすとか言ってるんですから……」

「大丈夫さ。明日にはちゃんと素材を取ってきてもらって、倉庫に戻しておくから」

「とりあえず、後でラボまで持って行きますよ」

「では、頼んだよ」

 

やれやれ、なんで敵の基地でもないのに監視カメラを警戒しないといけないんだ?

アラガミの素材じゃなかったら、偵察に行ったついでに資材を回収して持ってくるんだが、アラガミ素材は無理だ。この前なんてカレルに高い金払って素材を譲ってもらって数が合うようにしたのに。

あ、そう言えばカレルに払った金を榊博士が清算しておくとか言ってたくせしてまだ清算してもらってねえな。ラボに届けに行ったついでに聞いてみるか。

 

 

数時間後、頼まれた物を箱に入れて榊博士のラボに向かう。

すると、ラボから支部長が出てきた。

支部長に道を譲り、礼をする。

 

支部長は俺に目もくれず、去っていった。

まあ、彼からすれば神機壊した役立たずに構ってはいられないのだろう。

 

ラボに入ると、そこにはソファーの上で静かに眠っている少女と、その少女に注射器を刺そうとしている榊博士が居た。

 

俺は通信機を取り出し、警備班に所属している同僚に周波数を合わせた。

 

「俺だ、今ラボにちょいとヤバイ奴が。ああ、ヤろうとしていた」

「まあまあ待ちたまえ!」

「申し開きなら俺じゃなくて偉い人にしてくれ。じゃあな博士、あんたには世話になった」

「だから誤解だよこれは!」

 

 

 

「成程、その子が新型神機の……」

「そういう事さ。今から血液検査など、その他諸々の検査をするんだ」

「あ、そうだ。丁度いい、検査が終わったらその子を部屋まで運んでおいてくれ」

「あんた俺をパシリかなんかと勘違いしてるだろ!」

 

結局言いくるめられて、俺は今博士の検査が合わるまで茶を啜って寛いでいる。

 

「いやはや、実に興味深い! この数値には驚いたよ!」

「俺に言われたってチンプンカンプンだよ。あんたがそこまで驚くって事は相当すごいんだろうけどよ」

 

さっきから榊博士がうるさい。「これは……!」とか「素晴らしい!」だとか研究者でもなんでもない俺に話を振られたって分かんねえよ。

それにしても……。

 

静かに眠る少女を見る。

一言でいえば銀髪が特徴的だ。年は俺と同じぐらいだろう。

こんな少女も戦いに行くのか……。そうだよな、そんな世の中だよな。

いかんな……自分の価値観ってのは、この世じゃ役に立たないらしい。

 

いつも世も、戦いだらけ、虚しいな。 ユウ、今日の一句。

 

 

「よし、検査は終わったよ。それじゃあ、彼女をお願いするよ」

「はいはい、とりあえず頼まれた物は箱に入ってるからな。あと、清算の件忘れないでくれよ」

「ああ分かっているよ。あ、彼女の部屋は新人区画の101号室だよ」

「元・俺の部屋じゃねえか!」

 

 

そんな訳で俺は今新型ちゃんを背負って元・マイルームに向かっている。

 

あ、待てよ。確か部屋にはちょいと過激な本を置きっぱなしにして居た筈。丁度良い機会だ。回収してしまおう。なんだかんだ言って結構良い値がしたんだよなあの本。

やっぱ俺も男だからな。まあ、本能には抗えない訳よ。

 

彼女の部屋に到着し、彼女をベッドに寝かせて本を捜索する。

うーん、何処にしまったかな。あんまり部屋に他人を入れたりしないからそこまで複雑な場所に隠さないと思うんだが……。3か月も前だからなぁ……。記憶を必死に辿るが思い出せんぞ。

 

「う……ん……」

「ッ!?」

 

まずい! 彼女が起きてしまう! 眠っている女性の部屋を物色しているところを見られたら社会的にまずい……! 状況的に見つかったら弁解の余地は無いぞ!? 

ええい! 撤退だ!

 

 

俺は連続ステップで部屋を飛び出した。

 

 

 

「ええと……予備部品の在庫数が……15個か……2、4、6、8、10……よし、合ってるな」

 

俺は再び倉庫で物資の数を確認している。

次はバッテリーか……あん? 数が合わねえぞ? まあ、取り合えずリストに加えておくか。

 

 

「よぉ、今日も楽しそうだな」

 

陽気な声がした方を向く。

 

「これはこれは、リンドウさん。こんな所で珍しい」

「いつものやつと、配給の食糧を少しだけ出して欲しいんだが」

「出して欲しいじゃなくて、ちょろまかして欲しいの間違いでは?」

「ははっ、そうとも言うか」

 

リンドウさんの頼みとは、コロニーに収容しきれなかった人たちを集めた村の防護壁として試験的に栽培している「アラガミを喰らう木」の餌の事だ。オウガテイルやザイゴートくらいの小型アラガミは食ってくれるので気休めにはなる。そして配給の食糧とは集落の人達に配るものだろう。今までは俺が裏ルートから仕入れたり、リンドウさんが権力行使で何とかしていたが、とうとう供給が追い付かなくなったのだろう。今度よろず屋のおっさんに他の安いルート紹介してもらうか。

 

「あっちの方には餌のストックはどれぐらい残っているんですか?」

「ん? あー……まあ、そこまで……」

「あんまり多くは持っていけませんよ? ぶっちゃけると物資をちょろまかすのはそろそろ限界ですよ。食糧の方は何とか裏ルート見つけて確保しますから」

「おお助かるぜ。頼れる雑用が居ておじさんは嬉しいねぇ」

 

リンドウさんが笑いながら言う。頼れる雑用って……。まあいいや。

 

「あ、お前さんも一緒に行かねえか? あの数に餌やるとなると1人じゃどうもな……」

「時間が掛かりますが、棚卸が済んだら手伝いに行きますよ。」

「仕方ねえな。とりあえずおっさん1人で餌やりに行くか」

「ソーマでも連れてきゃいいじゃないですか。サクヤの姉さんだっていますし……」

「んーと言ってもなぁ……」

 

まあ、周囲に秘密にしているのでそう気軽に連れていけるもんじゃないか。

 

「んじゃま、取り合えず頼んだ物出していつものバギーに積んどいてくれ」

「了解しましたよ」

 

リンドウさんが手を振りながら倉庫の出口へ向かっていった。それを見送り、すぐに物資の数を確認する作業に戻った。

 

 

とりあえず、餌と食糧をバギーに積んでおくか。

 

ダンボールに餌と食糧を詰め込んで両腕に抱えて早歩きで車庫へ向かう。

訓練所の前を通りかかると、使用中のランプが点灯していた。

誰が使っているか分かるように使用者の名前が表示されている。

 

神薙ユウナと藤木コウタ……? 聞き覚えがあるようないような……。

 

「あ、新型ちゃんと……新人君か?」

 

すると、使用中のランプが消えた。訓練がどうやら終わったようだ。

あ、扉の前に居たら邪魔になるな。

扉の前から退くと、スライド式の扉が開き2人の神機使いが出てきた。

 

新型の子ともう一人……ニット帽を被った男子の方が藤木コウタだろう。

旧型のアサルトか……。あれって確かツバキさんの神機じゃねえの? そうか、引継ぎか。運が良いな。ツバキさんの神機は様々な改良を施されて居た筈。最初から良い相棒に恵まれたようだ。

 

「なあユウナ、博士の講習まで時間あるけどどうするんだ?」

「私は予習でもしようかなって思ってるよ」

「うおっ、真面目だな……」

 

2人は何気ない会話をしながら去っていった。

 

訓練どうだった? みたいな感じで気の利いた事を言うか迷ったがやめていおいた。

あの2人はきっと第1部隊に配属されるだろう。多分、関わりなんてそこまで持たない。

 

現にリンドウさん以外の人とはそこまで関わりは無い。

ソーマとはまだ神機が健在だった時に一回だけ一緒に任務に言ったぐらいだ。大して口もきいていない。その時にはエリックも居たな。エリックは本当にいい奴だ。神機無くして凹んでいる俺を慰めてくれた。貴族みたいな権力あるやつって嫌な奴しか居ねえが、あいつだけは別だ。彼には命を落とすことなく神機使いを引退してもらいたいもんだ。

 

あとはサクヤさんか。彼女とも2回ほど任務に同行させてもらった。衛生兵をやっているだけあって優秀だ。もうぶっちゃけ優秀としか言えない。そしてあの服装は実にけしからん。ついでに雨宮教官もけしからん。俺が入隊した時点で上乳と横乳のダブルコンボが完成していた。

 

リンドウさんとは「アラガミを喰らうの木」の件でもそうだが、よく関わる。

彼は一言でいうと……うん、最早何も言うまい。普段はあんな暢気なように見えるが、隙が無い。戦闘時、気だるそうにしながらも一切の容赦がない。油断とは何かを考えさせられる。

 

 

 

 

あ、なに1人で熱く語ってるんだろ俺。さっさと行くか。

 

 

物資をジープに積み込み、車庫から出てくると、物品科の職員に遭遇した。

いかん、ちょろまかしたのを悟られないようにしなければ……。

 

「お、ユウ。午後からの棚卸はやらなくていいぞ。ついさっき部下が出張から時間よりも早く帰ってきてな。部下にやらせる」

「あ、そうですか。了解しました」

 

よっしゃー今日の仕事片付いたぞー! 後はリンドウさんの手伝いをして今日の仕事は終わりだ。

 

通信機を取り出し、リンドウさんに連絡する。

出発まで時間があるな、さてどうやって時間を潰すか……。

そうだ、エントランスでソファーに座って金縛りごっごでもするか。(唐突)

 

早速エントランスでソファーに座り姿勢を正し、そのまま身動きせずに固まる。

 

「…………」

 

なんかあれだな、虚しいな。いや、逆に考えるんだこの虚しさが心地よいと……。

いや、思えねえよ。虚しさが心地よいってどういう事やねん。

自分が悲しくなってきたよ……。だがここでやめたら男が廃る。もう少し続けるか。

 

ん? あれは……! ジーナ!

 

俺の視界に移ったのは凄腕スナイパーのジーナ・ディキンソン。第3部隊に所属しており、アラガミを狙撃しないとソワソワする変わった女性だ。

間違っても「嘆きの平原」とは言ってはいけない。

 

あれ? 今一瞬睨まれたような……?

 

何か睨まれるようなことをしたか俺? 「嘆きの平原」と心の中で思ったが口には出していないからセーフの筈……。

 

ジーナはそんな俺の隣に腰を掛けた。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

む、無言の圧力……! 怖ぇよ! ああもう無理ですー!

金縛りごっこを中断してソファーから立ち上がり、足早に去ろうとエレベーターに向かう。

 

「次は無いわよ?」

 

 

背筋が凍りつきながらも、エレベーターに入る。

 

「はあ……ビビったぁ……。やっぱ嘆きの平原は禁句だn」

 

 

ズドン

 

何故だぁ……?

 

幻聴だと思いたいが……銃声を聞き、俺は気を失った。

 




ジーナ・ディキンソン (22)

自己中のシュンや金の亡者カレルといった曲者が所属している第三部隊隊員の中では比較的、まともな性格の持ち主……だと思ったけど実はかなりの戦闘狂もとい狙撃狂。
出世や名声といったものに興味が無く、アラガミを撃ち抜くことを生き甲斐としている。
アラガミとの戦いを「生と死の交流」と呼ぶ。
独特の価値観を持っているせいか、戦闘時には自分の身を省みない無茶な行動をとることも多い。

胸元の大きく開いたカシュクールを着て、中々大胆な格好をしている。俺も出会った時は胸元に目が引き寄せられたよ。これが万乳引力の法則だ。

あ、間違っても「嘆きの平原」と心の中で思ったり、口に出してはいけn


ズドン
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