Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

33 / 78
ゴッドイーターオンラインが1年ちょっとでサービス終了してかなり驚いたのが懐かしい。時間が過ぎるのは早いですね。


怖気ろ

 

 

 

 

 

「なっ――」

 

 驚きながらも咄嗟に装甲を展開して1つの斬撃を防ぐが、別の軌道を描くもう1つの斬撃は肩に深い刀傷を与えた。

 ゴウは傷を負いつつも飛び退き、着地してすぐに膝を突く。

 

『迷えば、死ぬ』

 

 戦いの心理でもあるこの言葉、かつて上官の口から何度も聞いた言葉だ。

 

 

 だから忠告した。この斬撃、迷えば首が飛ぶ故。

 

 

 

「凌いだか。やっぱ完全に会得しないと意味はないか」

 

 予測はしていたがやはり凌がれたか、完成には程遠いので当然だが。普通の奴なら突然の出来事に困惑している間に首が飛んでいるところだが、この男には通用しないようだ。

 

「ニケ、今の……なに……?」

 

「神機を……ただ振っただけ。あれで未完成って……冗談きつい……」

 

 

 

 おうおう、皆さん驚いていらっしゃる。小太りとペニウォのクソは今俺が何をしたか気づいていないようだが……。

 ルルとか言ったか、あのガキ……。何かは分からないが何か起きたのかは察したらしい。そこに気づけるあたり、天武の才か、師の教えが良いのか。こんな恐ろしいガキンチョが居るとはねぇ……怖い怖い……。

 

 

 

「バーストアーツとは似て非なるものか…………」

 

「残念ながら、今のは真人間の頃に覚えた技だ。そんな大層なもんじゃねえさ」

 

 

 そう、ただ大昔の事だ。燕を斬ろうと思い付き、見事切り払った男の絶技だ。

 

 それが受け継がれてきただけだ。だが、その男の絶技を完全に再現した者は存在しない。最初に受け継いだ者もあと一歩で完成に至らず。

 絶技になりそこなった技は、また受け継がれ、受け継いだ者もまた完成させるには至らず、それが脈々と続いた。

 

 巡り巡って師は完成直前までこぎつけたようだが、惜しくも帰らぬ人となり、師を失った上、何より俺自身の才能も及ばなかった。

 故に独学で会得しようとした結果、劣化に劣化を重ねて同時に2回しか斬れない上に狙いも甘い。

 

 ただ勘の良い奴や目の良い奴、迫った危険を本能的に直感できる奴にも当たらなければ、甲冑を着て全身ガッチガチのフル装備の奴にも通用しない。

 生憎とただの刀で鉄を切るなんて領域になんて達していない。

 

 

 「次は当てる」と言いたいが、同じ技が2度も通用する程この男も甘くはないだろう。

 戦友達には『一発限りの不意打ち。おまけに狙いも甘い、防御される可能性も高い。お前のその技はクソッタレな三流技だ』とバカにされたものだ。

 

 実際、ゴウと相対していたのが俺よりも剣技に秀でていた戦友ならば一太刀は凌がれるも、二の太刀で肩ではなく首を断っていただろう。

 

 もし、神が居たとして俺をこの世界に呼んでいたならそれは思いっきり人選ミスである。

 まあ神話とか見れば分かる通り神って思考回路おかしいから当然と言えば当然なんだが。

 だがしかし、それに振り回されるのはいつの時代も我々人間だ。こちらとしては本当に堪ったもんじゃない。

 

「さて、リベンジするか? ただ構えて斬るだけだから何度でもできるぞ?」

 

 当然のように嘘をつく。

 

「くっ……」

 

 ゴウが慌てて立ち上がろうとした時、背後から気配を感じ、咄嗟にその場から飛び退く。

 

「おっさんはやらせない!」

 

 ニケが一対の神機を手に、ゴウの隙をカバーするように立ちふさがる。

 

 ニケの背後でゴウは態勢を整えて神機にオラクルを纏わせて空気を切りながら突きを繰り出してきた。切っ先を覆うオラクルが螺旋を描いて大きなドリルのように迫る。

 

「ちっ!」

 

 神機を構え、片足を高く浮かせて神機を豪快にフルスイングする。

 

 

ガキィン!

 

 

 今まで打ち合った剣戟の音とは比較にならな程の金属音が響く。

 

「ぬぅ……! ハァ!」

 

 ゴウの神機の切っ先に更にオラクルが集合し、盛大に弾けた。

 

「クッ……!?」

 

 

 神機から何かが割れる音が聞こえた刹那、凄まじい衝撃に吹き飛ばされ、視界には神機の破片が宙を舞っているのが見えた。

 

 

 

「ちぃッ!」

 

 受け身を取って着地する。折れた神機の刀身が徐々に光の粒に変わっていき、対アラガミ用ナイフに戻ってしまった。

 

 

「降参しろ。貴様の負けだ」

 

 

 

 ゴウがこちらへ神機を向けて勝利を宣言する。

 

 

 

 

「へっ、ほざきやがる」

 

 やれやれ、慣れない剣術なんてやるもんじゃないな。久しぶりに強者と戦ったせいで熱くなりすぎたようだ。熱くなったら見切りの極意も意味がない。

 そもそも未完成の技をかます時点で俺はまだ奴を甘く見ているという事だ。

 

 油断も慢心もしちゃならねえよなぁ……なら本気も本気、一丁やってやるとするか。

 俺をここまでやる気にさせたのは、この世界じゃお前らが初めてだ。

 

 

 

 心配そうに俺を見つめるエレナに、薄く微笑む。

 

「エレナ、お前は……必ず俺が護り抜く」

 

 

 

 

「誇りに懸けてな」

 

 

 

 

 対アラガミ用ナイフを逆手に持って、構える。

 

 

 さて……俺は冷静にやる方が向いているのでな。悪いが、得意分野でやらせてもらおう。

 

 

 

「見切りの極意、見せてやろう。ここが勝負所よ」

 

 宣言と共に一気に距離を詰め、ゴウの側面を通過するとともに斬りつけると、確かな手応えを感じる。

 手元を見れば、ナイフには血が付着していた。

 

「ゥ……ッ!」

 

 一瞬の一撃を受け、焦りを見せたゴウが得物を振る前に間合いを詰めてナイフを振ると、奴も攻撃を中断して防御しつつ反撃の時を伺い、瞬時に反撃を仕掛けてくる。

 

 反撃を回避して、側面へ回り込んでナイフを振るも刀身で防御されるが、反撃の暇を与えないように何度も斬りつける。

 

 元から正面からぶつかり合う気など無い。軽い攻撃であっても急所へ入ればそれで終わりだ。故に、全力で攻撃を仕掛ける必要など皆無である。

 

 反撃を紙一重で回避して懐に潜り込み、首目掛けて突きを繰り出すも防がれ、巧みな足裁きで距離を離されるが、こちらも軽い足取りで流れるように間合いを詰めて死角へ回り込む。

 

 目、首、胸と急所を的確に攻める。

 

 奴はこちらの素早い攻撃に防戦一方、弾き返そうにもこちらの攻撃が軽く速い上に、ほぼ零距離での戦闘でこちらは小回りが利くナイフである故に弾こうと構える事も出来ないだろう。

 

 例え攻撃を割り込まれたとしても、紙一重かつ軽かに回避してすぐに攻めに転じる。

 

 

「はあっ!」

 

 急所を庇いつつ、横薙ぎを繰り出してきた。

 

 ナイフがゴウの体に傷をつけ、こちらが即座に離脱すると奴はそのまま攻めてきた。次々に迫る連撃を後退、サイドステップ、体を捻る、反らせるなど最低限の動きで凌ぐ。

 

 絶妙な足裁きで攻撃を凌ぎ、反撃を入れると防がれ、また反撃が迫ると今度はこちらが避けてやり返す。

 

 振ったナイフが防がれると金属音と共に小さな火花が散る。

 得物だけじゃなく打撃による打ち合いを展開し、全身を最大限に活用して攻めと守りを両立させる。

 

 ゴウが渾身の横薙ぎを振る。

 

 体を屈めて攻撃を躱した直後に滑るように真横へ回り込み、反応されるよりも早く攻撃を繰り出すが狙った個所を腕で庇い、振り向いてこちらの連撃に防御を割り込ませたが、防がれることは想定済み、このまま攻撃を続ける。

 

「くっ……!」

 

 良く反応しているが、険しい顔をしている。

 

 フェイントをかけて背後へ回り込んで攻撃するが天性の勘か、うまく防がれる。

 

 こちらの動きに慣れたか、攻撃が届かない絶妙な距離で速さに重点を置き、神機を軽く振って牽制を兼ねた攻撃を仕掛けてくるが、こちらも僅かに後退してギリギリで避けつづけて隙を伺う。

 回避と共に側面へ回り込んでも、素早い攻撃に付け入る隙を与えてくれない。何度か後退しながら攻撃を凌ぎ、再び攻撃を仕掛けられた直後に神機の刀身の腹に攻撃を叩き込んで弾く。

 

 そして背後へ回り込んで攻撃を当てる直前で寸止めをし、再び側面へ回り次の攻撃も寸止めし、奴が振り向くと共に死角へ回り込み、急所を狙って攻撃を入れるが、体を逸らして急所からは逃れた。

 

 そのままこちらのペースを崩さないでフェイント、寸止めや本気の攻撃や打撃を打ち込み続ける。何度か反応されて反撃を貰いかけるが紙一重で避けて即座に打撃を打ち、それなりの隙にはナイフで攻撃する。

 

 側面や背後、死角への回り込みも併用して更にゴウを追い詰める。

 

 

「速い……おっさんが……手も足も出ないなんてね……」

 

「そんな、師匠……」

 

 外野の声が聞こえるが、今はこいつを何とかすることに集中しよう。

 

 

「ゴウ、何を手こずっている! さっさと始末しろ!」

 

「今のうちに移動するべきだ。時期に応援も来るはずだろう。来い、ハウンドA!」

 

 ペニーウォートの男の声が聞こえてはっとする。早くこいつを片付けないと逃げられる。

 

「い、痛い! 引っ張らないで!」

 

 エレナの悲鳴が聞こえ、すぐに終わらせると決意し懐に潜り込み――

 

「邪魔だ」

 

 言葉と共に腰を落としつつ肘鉄を叩き込み、素早く踏み込んで両手に持ったナイフでゴウの腹部を突き刺す。

 

「ヌウっ⁉」

 

「師匠!」

「おっさん!」

 

 2人から驚きの声が発せられ、俺はそのままゴウを蹴飛ばしてエレナの元へ向かいつつスタングレネードを準備する。

 

 

「何っ⁉」

 

「クソ! おい、奴を何とかし――」

 

 小太りの怒鳴り声が響くがスタングレネードを投げつける。

 

閃光の中で俺は視覚以外の五感を頼りに取り戻すべき者の元へ駆ける。

目の前の気配、手で触れると柔らかく、温かい感触を感じて優しく抱きかかえてその場から何回か飛び退く。

 

 

 光が収まると抱えた少女の顔が目に映る。

 

 

「…………っ! ユウぅ!」

 

 エレナが胸に頬を擦り付けて泣き出す。

 

「よしよし、もう大丈夫だ」

 

 エレナの声に気づいた連中が一斉にこちらを向く。

 

「な、実験体が! 何してやがる! 早くあいつを殺して取り戻せ!」

 

 ゴウが神機を銃形態へ変えてオラクル弾を発射するが、好機と見てオラクル弾へ跳ぶ。

 

 運がいいぜ……オラクル弾は雷属性の弾、これは利用しないなんてただの馬鹿さ。

 ナイフでやるのは初めてだが……。

 

 空中でオラクル弾を受け止めて雷を対アラガミ用ナイフに纏わせて小太りへ迫る。

 

「こ、このガキィ!」

 

 小太りの男がピストルを取り出してこちらへ向けてくる。

 

「妬くな妬くなロリコン親父、感電すっぞ~! 秘技・雷返しぃ!」

 

 雷を纏ったナイフで目の前を切り払う。

 

 電撃の刃が小太り男を飲み込む直前、ゴウが割って入り装甲で防ぐが周囲は薙ぎ払われて周辺の機器は爆発を起こして部屋は黒煙に包まれる。

 

 

 今の内だ、エレナは取り返した。もうここに長居する必要はない。

 

 ドアをへ接近するとともに蹴り破り、広間を出て通路を走る。

 

 

 とにかく上を目指す。此処が地下なら上を目指せば必ず外に出られるはずだ。

 

 

 

「逃がさんぞ!」

 

 通路の先からペニーウォートの制服を着た神機使いが向かってくる。

 

「邪魔だ!」

 

 エレナを片手で肩に担ぐ。

 迫る斬撃を回避して、逆手に持ったナイフで切ると見せかけて、右ストレートを顔面に叩き込む。

 

「ぶあぁ⁉」

 

 男を殴り飛ばし、そのまま通路を突き進むが向こうからバランの制服を着た神機使いや、AGEが神機を手に向かってくる。背後を見れば同じように既に囲まれている。

 

 

「ハアアッ!」

 

 幼いAGEが神機を片手に斬りかかってくる。

 

「エレナ、目を閉じろ」

 

 エレナの視界を空いた手で覆い、斬りかかってきたガキを睨みつける。

 

 

 

 

             

            「怖気ろ」         

 

 

 

 

 

「ひっ」

 

 一言紡ぎ、気迫でガキを威圧すると、顔を青くして俺を化け物に見えているとでも言わんばかりに怯えて神機を床に落とす。

 

 周囲に居た子供たちは皆、戦意を喪失して床にへたり込んだ。

 

「何をした……! 囲め! 奴と目を合わせるな!」

 

 バランの制服を着た神機使いが大声で叫び、周りもハッとして戦闘態勢に入って囲まれる。

 

 ちっ、せいぜい子供騙しが関の山……大人には通用しねえか。

 

 

 エレナをしっかり抱きかかえて対アラガミ用ナイフを構える。

 

「ユウ、私が」

 

 突然エレナにシャツの袖を引かれると、深呼吸したエレナの表情は強張り眼から闘志を感じ、雰囲気が一転する。

 

 

「……ッ!」

 

エレナから何かが放出され、抱き上げている俺が真っ先に呑まれたにも関わらず、特に体に変化はない。

 

「ぐぅ……なん……だ……これは……」

 

「力が……入らん……!」

 

 しかし、周囲の神機使い達が床に膝を突き、幼いAGE達に至っては気を失い、倒れながらも意識を保っているのは僅かだ。

 

 今、気迫で威圧したのか……? 俺がさっきやった事のを見ただけでここまで……。 

 

 

 エレナが拘束された両手で対アラガミ用ナイフに触ると、オラクルに包まれて刀身が再生して先程のような神機になる。刀身がオラクルを纏って眩い光に包まれた。

 

「ユウ、上に向けて!」

 

 言われた通り天井へ向けて神機を掲げると、切っ先から金色の斬撃が飛んで天井に激突、轟音と共に天井が崩れると、遥か上に青空が見える。

 

「ユウ! 行こう!」

 

「ああ! しっかり掴まってろ」

 

 エレナをしっかり抱いて天井の穴を通り、壁や瓦礫を伝って空を目指し、灰が舞う青い空へ駆けあがった。

 

 

 

 

 

 

 さーて、外に出ればこっちのもんだ……! アラガミとの追いかけっこで鍛えた足を活かす時が来た。

 

「エレナ、飛ばすぞ」

 

「うん!」

 

 エレナをしっかり抱き寄せ、思いっきり地面を蹴って短距離を飛ぶように走り続けると、既にバランのミナトは徐々に小さくなっていった。

 

「凄い。飛んでるみたい」

 

「その気になれば空だって走れるぞ」

 

 そう言って跳躍し、更に空中ステップで空気を蹴りつけて前へ進み、高度が落ちつつも再び空中ステップで空を跳ぶ。

 

「わぁ……!」

 

「いいもんだろ? 疲れるがな」

 

 

 しかしさすがに息が切れかかり、地面へ着地して息を荒くして必死に酸素を貪る。

 

「ふぅ、中々跳んだな。多分自己新記録だ」

 

 岩に座って、少し休んでいるがエレナはずっとくっついて離れようとしない。

 

 そういえばエレナの腕輪って手錠みたいにロックされてるけど、これどうすればいいんだ?

 うーむ、よし……ぶった切るか。

 

「エレナ、腕輪を離そう。両手を向けて少しじっとしてくれ」

 

「うん…………」

 

 

 対アラガミ用ナイフを抜刀して2つの腕輪が繋がっている境目をよく狙う。

 剣術、ちゃんとやっておけばよかったな。

 

「…………そこだ」

 

 言葉に合わせてナイフを振り下ろすと、腕輪は綺麗に分断されてエレナの両手が自由になった。

 

 ふう、うまくいって良かった。俺って寸法を測って物を切ったら絶対に数ミリずれているんだが、測らないで目視で適当に切ったらピッタリなんだよな。

 

 エレナは夢でも見ているかのように腕輪を見ている。そして――

 

 

「…………っ、ふええぇ……ユウ……ひっく、ユウぅ……ユウぅ!」

 

 エレナは我慢が解けたのか、涙を流しながら抱き着いてきた。

 

「うあああぁ……痛い、痛かった……怖かったよぉ……ユウぅ……」

 

「ごめんな。ちゃんと護ってやれなくて……」

 

 泣きじゃくるエレナの背中に手を回して背を摩り、優しく抱きしめる。

 

「ユウが、死んじゃうかもって……怖かった……! 嫌だァ……ユウぅ、ずっと一緒に居てよぉ……1人にしないでェ! ふあああああぁ!」  

 

 幼くて優しい子が吐くこの言葉は、とても聞くに堪えない。

 悲痛な叫びをあげて体が痛みを訴えるぐらい強く抱き着かれるが、それを黙って受け入れる事しかできない。

 

 

 

 それからエレナはずっと泣いた。泣きじゃくるエレナをただ優しく抱き上げて撫でる事しかできない。

 

 本当に……情けない男だよ、俺は……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。