Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
これ以上、妙な真似をしないためにもと思い、別の事に集中する。
エレナを抱き上げてただひたすら渓谷を駆け抜ける。
「ユウ…………」
「舌噛んじまうぞ? 大丈夫だ。やっぱ運動しないとな……!」
エレナの頭を撫でながら跳ぶように駆け、岩場を次々と飛び越えて進む。
身体を動かしてれば熱も気にならねえ。風邪気味でも仕事してれば気にならねえのと一緒だな……! 初めて気分屋な体が役に立った。
さあ、どんどん行くぜ……うん?
なんだこのゴゴゴゴゴって音……?
轟音が聞こえて後ろへ振り返れば灰嵐がこちらへ向かってきていた。
「ユウ……灰嵐、こっちに来てる……」
「やっべェ! しっかり掴まってろ!」
エレナをしっかり抱きかかえて走る速度を上げる。
最悪だ。運が悪いにも程がある。自然災害?と追いかけっこなんて冗談じゃない。
地鳴りで脆い足場が崩れ、瓦礫を渡って背後に迫る脅威から逃げ続ける。
道を選んでいる暇など無い故、アラガミが跋扈する道を突き進み、攻撃を仕掛けられれば何とか回避し、時にはエレナがオラクルのバリアを張って守ってくれる。
戦っている暇など無いのでひたすら躱しながら進むしかねえ。
時には壁を走り、時には切り立った崖を駆け下り、駆け上りただひたすら走り続ける。
「……………ユウ、灰嵐から飛んでくる! 気を付けて!」
「飛んで……?」
後ろを向けば灰嵐の中から電撃が一直線にこちらへ飛んできた。
「うおっ⁉ なんだよおい!」
跳んで躱すと次から次に電撃が飛んでくる。
ギリギリのところで電撃を躱しつつ駆け続けるが、周囲に気を配りつつ走るのも中々きついものがある。
「ふ……ふぅ……」
一瞬、気が抜けた直後に電撃が飛んできた。
「ユウ!」
エレナがオラクルのバリアを張って電撃を防ぐが、バリアと干渉した電撃は爆発を起こして背後からの凄まじい衝撃を受けて吹き飛んだ。
「ッ!」
何とか両足で着地してすぐに駆けだすが、エレナが呼吸を少し荒くしていた。
「エレナ、大丈夫か?」
「う、うん。平気」
心配させまいと笑顔で言うが、表情から無茶をしているのは見てわかる。
駆けつつ背後を見れば、灰嵐の中から何かが光を発しながらこちらへ向かっているのが見える。目を凝らしてよく見ると大きな人のような形に見える。
灰嵐の中の影が飛び出した瞬間、背中にゾクリと悪寒が走った。
「…………っ⁉」
光る巨大な右腕が電撃を纏い、骸骨の面を被った巨人が姿を現した。
アラガミ……か⁉ おいおい、シャレになってねえぞ……あんなもん……!
『GOOOOOOOッ!‼!!!』
かなり距離があるにも関わらず、その咆哮は耳までしっかり届く。
巨人の咆哮に灰嵐が呼応するかのように激しさを増して勢いが強まる。
「灰域種――違う、ユウ! 逃げて!」
聞きなれない単語が気になるが、エレナの言う通りあいつはヤバい……!
指定接触禁忌種、いやそれ以上じゃねえか……!
何だってあんな化け物が……!
『GOOOOOOOッ!』
巨人が電撃を纏った右腕を振り払うと電撃が幾つも飛びこちらへ雷の嵐が向かってくる。
駆けつつギリギリで躱し続けるも攻撃の激しさは増すばかりでこのままじゃどんどん追い詰められていく。
迫る電撃を大きく跳んで避けるも他の電撃が迫り、空中ステップで躱しつつ、対アラガミ用ナイフを抜刀して雷を受け止める。
「グゥ⁉…………ッ!」
なんだこの雷、今まで受けてきた雷とは訳が違う……! このままじゃ、受けきれねえェ……!
「ッ!」
エレナが咄嗟に手を右手に重ね、オラクルが集まってナイフは神機を模した剣に形を変え、何とか雷を受け止めきった。
「…………くぅ…………ウラァ!」
雷の斬撃をアラガミに返すが、雷の刃はアラガミが左腕で振り払って容易く掻き消され、骸骨から覗く眼光はこちらを睨み、電撃を纏う右腕を振るうと幾つもの雷球が生み出され、一斉にこちらへ飛んでくる。
「くっ……⁉」
消耗しきった体に鞭を打って縦横無尽に空中を駆けつつ飛んでくる雷球をひたすら躱しつつアラガミから逃げる。
神機となったナイフを握る手が震え、これ以上奴の攻撃は受けるなと訴えてくる。
たった一撃受け止めただけで体中の力がごっそり持っていかれた。それどころかエレナに手を貸してもらえなければ受けきれずに直撃したことだろう。
逃げるしかないが、逃げるのも困難とは……本当にどうかしている……!
迫る雷球を何とか躱す。
1人で躱すなら訳ないが、抱いているエレナの事を考えて回避しなければいけない。俺が当たらなくてもエレナに被弾したら何の意味もない。
アラガミの様子を見れば、奴は動きを止めてこちらを睨みつけている。
しかし、骸骨面の口元に電撃が集中して徐々にその大きさを増している。
危険を感じてひたすら遠くへ飛ぶように空気を蹴る。
『GUOOOOOOOOOっ!』
凄まじい雄たけびと共に巨大な雷弾が口から放たれ、辺りを照らす。
巨大な雷弾が迫り、とてもじゃないが躱しきれない。せめてエレナだけは……!
「エレナ、少しだが何とか抑える! 俺を踏み台にして地面へ跳んで逃げろ!」
エレナを背中に回らせ、巨大雷弾に対して得物を両手で構えて突きを繰り出す。
「ガああああァァァ⁉クソがァ!死ぬっつーのッ……‼」
切っ先から電撃が弾けて体が衝撃に襲われる。
エレナ、早く……!
エレナに逃げろと伝える為振り向く。
「ダメェ!‼!!」
エレナが叫び声をあげ、大量のオラクルが彼女の背中に集まってオラクルは赤く煌めきながらエレナの背中から飛び出し、翼のように形を変えた。
「なっ――」
驚いた瞬間、翼に包まれて赤い翼が雷弾を防ぎ、凄まじい衝撃が走るがすぐに翼は振り払うように広がり、その拍子に雷弾をアラガミへ打ち返した。
『GUOOOOOOOO⁉』
アラガミが悲鳴を上げて爆発に巻き込まれ、エレナは俺の腰に手を回してそのまま飛び立つ。
「ハァ……ハア……」
「エレナ、これ以上無理したら……!」
「嫌ァ……。ユウは……私が……! もう、酷い事なんてさせない……! 絶対、絶対……!」
エレナに何度も呼び掛けるが、エレナは譫言のように俺の名を口にしていた。
暫くそのままエレナに抱えられたまま飛び、呼び掛けてもやはり無反応。しかし、エレナの瞳から涙が流れたその様を見た瞬間――
「ッ⁉」
また熱が……くそ、こんな時に……!
「ハァ……うぅ……」
エレナが呼吸を荒くして苦しみだすと高度が下がり、下には水面が広がっている。渓谷の下流域に出たか。
翼は徐々に形が崩れ始めて光の粒子を振りまきながら、小さくなっていく。
灰嵐は遥か遠くに見え、今の飛行で大分距離を離したようだ。
「ハぁ……ぁ……ゆう、ごめん……。もう、飛べない……」
エレナがぐったりし、慌てて抱きかかえる。しっかり抱きしめて水面へ落ちつつ空気を蹴って陸地へ向かう。しかし、陸地につくより落下する方が早い。
俺もさっき雷を受け止めたせいで大分消耗し、体に鞭打たないと動けない。
「く……。エレナ、冷たいけど……ごめんな」
「大丈夫、ユウ。一緒なら、私は大丈夫だから……」
疲れた表情をしつつ笑って答えてくれる。
川へ落ち、エレナをしっかり抱いて泳ぎ、陸地へ向かう。
「ハアッ! ハァ……」
何とか陸地へ上がろうと岸に手を掛けて上体を乗り出すと辺り一帯に小型アラガミが徘徊しており、慌てて身を屈めて姿を隠す。
「エレナ、暫く我慢できるか? このまま岸を辿って泳いでいく」
「うん、大丈夫……。ユウも、無理しちゃだめだよ?」
「ああ、分かってるさ。さ、泳ぐぞ」
エレナを背負って音を立てないように静かに泳ぎ、アラガミの気配や音を頼りに周囲に気を配りつつ泳いでいく。
アラガミに見られそうになったらエレナに教えてもらい、一回潜って暫く泳ぎ、エレナに顔を出してもらって周囲を確認してもらう。
暫く泳ぎ、アラガミの気配も無くなりエレナに確認してもらっても敵影はなさそうだったので急いで陸に上がる。
「ふぅ、流石に……堪えた……」
地面に膝を突いて、少し休む。
「ユウ、大丈夫? すごく疲れてる」
「ああなに、これぐらい平気だ。さ、急ごう」
「うん」
エレナと手を繋いで小走りで川に沿って進む。
途中で雨も降ってきた。
これ以上、身体を冷やすのはまずいな……。まだ幼いエレナには辛い状況だ。雨風凌げる場所があれば……。
岩山を超えて、さらに続く川の先に少し大きな建造物が見えた。
「ミナト……かな……? 装甲壁に灰を飛ばすためにプロペラが設置してたら多分ミナトだと思うよ」
「しかし、プロペラは回ってないぞ……? なんだか壁も食い荒らした形跡がある」
急いで近づいてみると、エレナの言った通り装甲壁にプロペラが設置されていた。しかし、既に停止し、壁には食い千切られた跡が見える。それに壁の向こうには灰が舞っており、誰が見ても廃墟にしか見えないだろう。
装甲壁よりも大きな建物が灰域踏破船を受け入れる為の設備、つまりあの地下にミナトがあった筈だ。雨風凌げるなら何でも良い。とにかく中に入ろう。
喰い破られた後のような場所から侵入し、中は真っ暗で天窓からうっすらと差す光が頼りだ。地下へ続く階段を発見するが、明かりがないので降りる訳にはいかない。
困っていたら事情を察したのかエレナがオラクルを集めて小さな火の玉を作って照らしてくれた。
さて、アラガミの気配はしないが……。いやアラガミなんぞいなくて良い。居たら居たらで斬るけど。周囲の安全確保は基本中の基本だ。
歩いていると、扉を見つけた。開けようとするが中々開かず、別に物音立ててもアラガミは近くに居ないのだから扉を蹴り飛ばす。
部屋の中を照らしてもらうとそこには牢屋が並んでいた。
牢屋の通気口から光が差しており、この部屋は地上に近い場所なのだろうか……。
エレナも複雑な表情をしている。
牢屋の中には硬そうなベッドが並び、せめてもの情けなのか掛布団代わりに布が床に落ちている。
丁度良い。体も拭けるし、服が乾くまで包まる事もできる。
牢屋の扉は開いており、中の布をすべて取ってその部屋を後にする。
先程の階段を上って今度は施設の上を散策する。
襲撃されても緊急脱出できるように窓のある部屋を探す。そこで今日は休もう。エレナもかなり消耗しており、これ以上は体に掛かる負担が大きくなる。
エレナは左手をしっかり握って懸命についてくる。エレナを左腕で抱え上げて探索を進める。
目当ての部屋はすぐに見つかり、すぐに休む支度をする。
しかし、水に入り雨に濡れたおかげでびしょびしょだ。さっさと体を拭いて、そのあとはある程度服が乾くまで包まっていないとな……。
「体拭かないと風邪ひいちまうな。エレナ、一回脱いで体を拭こう」
「うん」
エレナが上着を脱いでいる間、外を見るが雲行から雨は一晩続きそうだ。
しかし、あんな化け物まで居やがるとは……。
脳裏には奴の姿が焼き付いて離れない。エレナが灰域種云々言っていたが……どうやらその灰域種とは違うようだ。だが、間違いでもあるまい。あの巨人は灰嵐の中から飛び出し来たのだ。そして奴の咆哮に呼応するように灰嵐は激しさを増した。
灰域と何か関係がある筈……。
「ユウ、体拭かないと……」
振り向けばエレナが布だけ持って生まれたままの姿で立っていた。
「体冷えるぞ。早く包まって……」
「嫌、ユウも一緒じゃないとダメ」
駄々を捏ねられ、仕方なくシャツとズボンを脱いで体を拭く。
ちなみにパンツは絶対に脱がない。
自分で言うのあれだが、股間にぶら下がっている俺のムスコは中々に可愛げのないモンスターだ。そんなグロテスクのモノを多感な時期が近い女の子に見せる訳にはいかない。
だから駄々を捏ねられてもこれだけは譲れん……!(絶対にして確固たる決意)
体を拭いている間にエレナはシャツもズボンも棚に掛けて干してしまい、身体を拭き終わったら手を引っ張っられ俺はそのまま布の上に座らせられ――
「えい」
布を羽織ったエレナに抱き着かれてそのまま横に押し倒された。
あ、ちょっと柔らかい感触。うんうん、成長途中でまだまだ期待だな…………ってもう完全にロリコンじゃん! だからロリコンじゃねえって言ってるダルルォ⁉
戒めよ、戒めよ…………煩悩退散煩悩退散。
俺だっていい年だぜ? 何考えてねん、ぺ二カスの奴らと同じやんけ。
次回はR指定の限界に挑戦しちゃうぞ