Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
スタミナ LV10
ステップマスター LV10
ステップ距離 LV10
アスリート LV10
スタミナ自動回復 LV10
ふんばり LV10
ユーバーセンス LV10
連続ステップ LV10
他力本願 LV10
ユウ「何? ゲームにはないスキルもあるだと? これぐらい無いと凡人は生き残れないんだ。すいません許してください!何でもしますから!」
「お……い……ウ……」
「……ん?」
微かな声に意識を戻し、目を開けると、そこにはリンドウさんの顔があった。
「ん? リンドウさん?」
「なんでお前さん、こんな所で寝てるんだ?」
あ、そうだ。俺はエレベーターで……。
「い、いや……。嘆きの――」
「嘆き?」
「いや、なんでもないっす。色々と嘆いていたら嘆き疲れて寝てしまったらしいです」
「なんだその泣き疲れてみたいな……。調子悪いなら餌やりも無理しなくていいぞ?」
リンドウさんの優しさが染みるぜ……。やっぱ理想の上司ですわ。いいか、社会よ。
これが聖人だ。よく覚えておけ。
「いや、仕事をする分には支障はありません。大丈夫です」
「そうか。んじゃ、少し早いが出発するか」
「ええ、そうしましょう」
リンドウさんと共に車庫へ向かい、先ほど物資を積んだバギーに乗り込む。
ちなみに行きは俺が運転する。無免だがな。どうせ事故ったってアラガミのせいにすれば問題ないね。何かしらあったらあいつらの仕業にすればいい。
最高のスケープゴートとはあいつらの事だ。
防壁を出て数分後、リンドウさんと世間話をしながらバギーを走らせる。
「あ、ユウ。ライター無いか? 俺のやつ切れてた」
ポケットを探り、ライターを取り出してリンドウさんに手渡す。
「すまんな。ちょいと借りるぜ」
「あ、あげますよ。どうせまた後で吸うんでしょ?」
「おー良く分かってるなぁ。んじゃ遠慮なく貰っておくぜ」
隣で煙草の煙が上がり、独特の匂いが微かに鼻を刺激する。
俺は煙草を吸わないが多分肺は副流煙でボロボロだろう。昔は周りの人間は皆吸っていたのでニコチンやタールが溜まりに溜まっているだろう。
なんで非喫煙者が喫煙者よりも肺がボロボロになってるんですかね……?
しかしこのバギー前に整備出してからアクセルの感度良くなってるな。ちょっと踏んだだけで良い音を出しやがる。
あん? 数メートル先にコクーンメイデンが数匹生えてやがるな。
「リンドウさん、あれどうします?」
「放っておくか。群生している訳でもねえし、相手してたって面倒なだけだからな」
「んじゃ、少し迂回しますよ」
ハンドルを切りつつアクセルを踏む。
コクーンメイデンがこちらに気づき、オラクルの弾を撃って来た。高く飛んだオラクル弾はバギーの軌道を読んでいるかのように落ちてくるが、オラクル弾が俺の頭上数メートル辺りまで来たところで、真上を影が通り過ぎてオラクル弾を掻き消した。
隣でリンドウンさんが神機を片手に座っていた。
「やれやれ、良い狙いしてやがるな」
「まあ、勉強熱心な連中ですからね。もしかしたら、前に喰らった人間は狙撃のスペシャリストだったかも知ない。喰らったものを学習する……厄介な敵ですね」
人間とは常に進化する生き物だが、アラガミの進化スピードは速すぎる。いつかは神機が通用しなくなるアラガミも出現するかもしれない。
やっぱり人類には勝ち目がないかも知れないな。だが、それでも今生き残っているって事はすげえ事だ。進歩したよ、人間は。
「お、見えてきたな」
リンドウさんが指を指した先に森が広がっている。普通の森はアラガミに喰い荒らされ、その数は激減し、滅多に見る事は無い。だが、あの森は別だ。あの森の木はアラガミを喰う。流石にヴァジュラ程の大物となれば不可能だが、オウガテイル程度なら喰らってくれる。あの森を超えた先に極東支部では収容しきれなかった一般人が暮らしている。
バギーから降りて、ダンボールを開けて中から偏食因子のケースを取り出す。
「今日はこの辺りの餌やりだけですか?」
「ああ、とりあえずこの辺りの餌やりを済ませれば当分は餌やりの必要は無い。このまま食料を持って行って、餌をやりつつ進んで行って集落を目指すぞ」
リンドウさんは神機とケースを持ち、俺は小銃を背負い、食糧を詰め込んだバッグを片手に森に入る。
2人で木の根元に偏食因子を打ち込みながら進む。
途中で、オウガテイルが数匹徘徊していたが、オウガテイルが木に触れた途端、気から巨大な棘が飛び出し、オウガテイル貫いてそのまま取り込む。
「相変わらず、不気味なもんですね……」
「まあな。だが、この不気味なものが住民たちを守っていると思ったら不思議なもんだろ?」
リンドウさんとオウガテイルが木に捕食されるところを見物していると、遠くからサイレンが鳴った。
「ッ!」
「集落にアラガミが侵入したらしいな」
「さっさと――」
リンドウさんが神機を担ぎ、駆けだそうとしたところで俺は通ってきた道の先から気配を感じ振り返る。リンドウさんが俺に話しかける。
「どうした?」
「いや、大物の気配が来てますよ」
「何? 大型か?」
「恐らく。森から離れた地点でヴァジュラの目撃が多いと情報があるので恐らくは」
「相変わらずの五感だな。それで適合率が低いなんて信じられないぜ」
リンドウさんが頭を掻きながら言う。リンドウさんの表情は先程までとは打って変わり、真剣な眼差しをしている。
「俺はヴァジュラの方へ行く。ユウはこのまま集落に向かって住人の避難だ。死ぬなよ」
「了解です。そちらもお気をつけて」
腰に下げてあるスタングレネードを1つリンドウさんに投げ渡し、リンドウさんはスタングレネードを受け取ると駆けて行った。
俺もスタングレネードを手に、地面を蹴って集落へ駆けだした。
ステップからステップを繰り出し、更にステップを繰り返して、集落へ高速で移動する。
気配を探ると、周りには小型のアラガミが潜んでいるようだ。
その内、木に喰われるだろう。ここは無視だ。しかし、補足されても厄介だ。偽装フェロモンを使っておくか。
ポーチから錠剤を取り出し、飲み込む。
もっと速く、アラガミよりも速く。更に足を速く、地面を蹴る時はより強く、ただひたすら急いだ。
獣道の先で光が見えた。警報の音も大きくなっている。間違いなく出口だ。
光へ飛び込み、一旦足を止める。
住民たちの悲鳴の中にアラガミの鳴き声はない。アラガミの気配はするがそこまで強くは感じない。まだ被害は出ていないようだ。
とりあえず広場へ行くか。
「あ、ユウさん! 急に警報が鳴って――」
「分かっている。落ち着いてくれ。住民たちの避難はどれくらいかかる?」
「皆一目散に逃げてるから、そう時間はかからない筈だ」
「まだアラガミの姿は見ていないんだな?」
「あ、ああ。貯水池の警報が鳴ったからきっと……」
「分かった。様子を見に行ってくる。今頃リンドウさんも向かっている筈だ。安心してくれ」
それだけ言って、俺は貯水池へ向かう。
どんなアラガミだ? 正直大型だとかなりまずい。気配を探りながら向かうか……。
気配の大きさ的には大型ではないが……2匹か……。
コンゴウやヤクシャなら厄介だな。あの2種は同種との連携を得意としており、1人で相手取るとしたら少し厄介だ。
貯水池に到着すると、そこには大きな砲門を携えた鰐――グボロ・グボロが唸っていた。
「ちっ、グボロか。厄介といえば厄介だな」
1匹しかいないって事はもう1匹は――
「ッ!」
その場から飛び退く。俺が立っていた場所に紫色の光弾が降っていた。
あのグボロに意識を集中し過ぎていた。おかげで周囲の気配感知が疎かになっていた。
一瞬の油断が命とり。だが、もう同じミスは犯さん。
俺に気づいたグボロも砲門をこちらに向けて、高圧の水の塊を発射してきた。
サイドステップで躱し、更に間髪入れずに連続ステップで移動し、隠れているスナイパーに狙いを絞らせない。
「あの光弾、ヤクシャか。攻撃の規模からヤクシャ・ラージャと考えにくい。さて、どう立ち回るか……」
対アラガミ用ナイフに小銃、スタングレネードが1つ。とても相手取る事は出来ない。くそ、神機があれば……。
リンドウさんが助太刀に来るまで、住民たちの方へ行かないように誘導しつつ粘るしかないか。
挑発フェロモンを使い、グボロの後ろに回り込む。
グボロが後ろの俺を押しつぶそうと後ろへ跳躍してきた。高く跳躍し、グボロのバックステップを躱し、空中で小銃を構えて引き金を引く。
しかし、小銃から放たれたオラクル細胞を塗布しただけの弾丸は通用しない。
「……ッ!」
グボロの正面降り立つと、グボロは飛び込みつつ噛みつこうとその巨体を弾ませた。グボロの下を潜るようにスライディングをして切り抜ける。
グボロの方に向き直ると、俺は大きな影に覆われた。俺は上を見ずに、バックステップでその場から移動する。
ドンッ!
大きな着地音を立てながら、右腕に遠距離型神機・ブラストと似ている、銃火器とも呼べる武装をしたアラガミがこちらを睨んでいる。
「やれやれ、すばしっこい
右手に小銃、左手にスタングレネードを構える。
乱戦こそが戦の華ってか? 昔の連中ってのは余計な事を言いやがる。
さてどうしたもんか……。
先に動き出したのはヤクシャの方だった。ヤクシャが大きく跳躍する。
ヤクシャを目で追うと同時に、一瞬だけグボロがこちらに砲撃を撃ったところを捉えた。ヤクシャから目を離さずに横へ移動する。砲撃をやり過ごしたところで、ヤクシャは右腕の砲門からオラクル弾を撃ちだす。なんだコイツらの連携抜群じゃねえか!? クソっタレが!
オラクル弾を、身を反らして紙一重で回避する。
すぐに連続ステップで距離を取りつつ様子を探る。
グボロが自身の砲門を天に向け、砲弾を発射した。砲弾は空中で拡散し、俺へ向かって降り注いできた。
「上等だ! そんなへなちょこ弾に当たると思うなよ!」
小銃を背負い、対アラガミ用ナイフを抜いて駆けだす。
拡散した分、弾は大きくない。最低限の動きで躱せる! まずはヤクシャだ。降り注ぐ砲弾を躱しつつヤクシャへ突撃する。
ヤクシャはしゃがみ込み、一際大きなオラクル弾を撃ちだす。体を捻り、弾を避けて
一気にステップで加速――そして跳躍。
ヤクシャの肩に飛び乗り、対アラガミ用ナイフでヤクシャの目を切りつける。
「ガアッ!?」
ヤクシャが短い悲鳴を上げ、俺を狙ったグボロの砲撃に晒される。暴れ出す直前にヤクシャから飛び降りて、すぐにグボロへと向かう。
砲弾の雨が止み、グボロは俺を近づけさせまいと砲門を向ける。だから当たらねえって言ってるだろ?
斜め右にステップをし、続いて斜め左にステップ、ジグザグを描く軌道でグボロに近づく。
グボロとの距離まであと数メートルといった所で。グボロは体を捻った。
身体が勝手に反応し、高く跳躍すると同時にグボロは勢いよく鰭で殴りかかってきた。グボロの背後に降り立ち、対アラガミ用ナイフで尾鰭を数回切りつけ、バックステップで距離を取る。
「人間みたいな真似しやがっ――ッ!」
ヤクシャがグボロの陰から飛び出し、猛スピードで駆けてきた。
一瞬で距離を詰め、左手の爪で俺を引き裂こうと左腕を振ろうとしてきた。凶爪をギリギリ躱す。しかしヤクシャはもう1度腕を振るう。もう1度紙一重で躱すと、今度は右腕の砲門で殴りかかってきた。
「ウッソだろ!?」
ヤクシャの股下へ飛び込み、難を逃れる。しかし、視線の先で既にグボロが攻撃態勢に入り、背びれの模様の目が俺をロックオンしているかのように見つめていた。
背後からも危険を感じ、振り返るとヤクシャが左腕を振り上げていた。
「ッ! クソ生意気な!」
対アラガミ用ナイフを口に咥え、ヤクシャの攻撃を誘う。ヤクシャの左腕を回避しつつ両腕で掴み、ヤクシャに背を向ける。
「ハハっタナハホがッ!(かかったなアホがッ!)」
渾身の力でヤクシャを引っ張る。
「ヌオオオオオオッ!」
ヤクシャの体が浮き上がったと同時に、グボロの砲門から巨大な砲撃が放たれる。
砲撃が俺に届くまであと数メートルの所で、ヤクシャを盾代わりに背負い投げる。砲弾はヤクシャに炸裂した。だが、あまりの衝撃にヤクシャ諸共吹き飛ばされてしまった。
「ハア……直撃よりはマシだが……なぁ……」
「グウぅ……」
ボロボロになったヤクシャが俺を睨みつけながら立ち上がる。肩鎧や左腕が吹き飛ばされ、大量の血液を垂れ流している。
「おうおう。随分辛そうじゃねえか? どうした? お得意の遠距離攻撃でかかって来いよ」
俺は中指を立てながら挑発する。
ヤクシャは砲門を俺に向ける。撃たれる前に、一気にヤクシャとの距離を詰め、ヤクシャの顔に対アラガミ用ナイフを突き刺す。
「グゥオ!」
ヤクシャは悲鳴を上げながら地面へ転がる。片腕を失くし、バランスが取れなくなったこと、そして大きなダメージによる体の限界この2つの要素がヤクシャを地面へ倒す要因となった。
地面をのたうち回るヤクシャを放り、グボロへと意識を向ける。
「へっ……」
笑みがこぼれる。勝利を確信した。
俺の様な凡人とは違い、桁外れの実力を持つ猛者が赤い神機を手に疾走していた。
俺はスタングレネードを見せながら、彼を見る。彼の眼差しから俺は全てを察した。頷きながらスタングレネードの安全ピンを引き抜き、地面へ叩きつける。
バシュッ!
破裂音が響き、閃光が辺りを包み込む。
光が消えると、そこには突然感覚を奪われ、困惑と共に地面へぐったり伏せるグボロ。奴の後ろでは既に猛者が神機振る直前であった。
猛者が神機を振ると同時に、大量の鮮血が飛び散り、グボロは一太刀で絶命した。
「リンドウさん、ちょいと遅いですよ」
「悪いな。相手が中々のじゃじゃ馬……いや、じゃじゃ猫でな。まあ、まずは片づけるか」
リンドウさんは再び神機を構え、高く跳躍し、横たわっているヤクシャに赤い神機、ブラッドサージを突き立てた。
ヤクシャは一突きで生命活動を停止した。断末魔を上げる事も無く……。
残ったのは、いつか蒸散するオラクル細胞の塊2つと、絶対的強者と戦う術を失った兵士だけ。
さっきまで1対2で絶望的な状況だったのがあら不思議、規格外が1人加わっただけで覆るどころかこっちの勝利で終わってしまった。なんてこった、ホント桁外れな実力だよリンドウさん。もうこの人1人で良いんじゃないかな?
雨宮リンドウ (26)
俺が世話になった人ベスト5にランクインしている。俺の大恩人だ。
普段は軽口を叩いているが、冷静な判断力と行動力を兼ね備えた人物でもある。
他の隊員の信頼も厚く、彼とミッションを出撃した者は生還率90%を越えているらしい。
偏食因子の適合率が極めて高く、平均値の3.2倍を記録している。
つまり一般的な神機使いの3倍以上の身体スペックを持つ。 また戦闘力もかなり高く、正に激戦区・極東支部のエースとも言える人物だ。
ちなみに、軽口を叩きながらコンゴウやオウガテイルなど中型・小型を小突くようになぎ倒していた。この人、人間じゃねぇなと思った瞬間である。
ビールが大好きなので物頼むときはビールを持参すると、快諾してくれる可能性が高くなるぞ!