Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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外で作業をしていたら野良犬にド突かれて「なんやねん」っていったら吠えながら逃げて行った。マジでなんやねん。


不一致‼

 

「………………」

 

 目を開ければ、綺麗な川が流れる草原が広がっていた。

 

「ふむ、死後の世界と言うやつか……。と言う事は、俺はあのアラガミの炎に灰にされたと言う事だな。癪だなおい」

 

 久しぶりに美しいと思える光景を目にした。

 神機使いになってからこれ程の景色は映像でしか見たことがない故にとても新鮮な気持ちになる。最後に見たのは……真人間の頃に戦場へ駆り出される前だったか。

 

 兎に角、歩いてみるとしよう。どうせ立ち止まっていても何にもならないだろうしな。

 しかし、行先は地獄だと思っていたのだが……まあなんだかんだ神機使いになってから人助けや人命救助を行って善行を積んだからだと思えば不思議ではないか。とは言っても、命を救った数より命を奪った数の方が圧倒的に多いので確証は無いが。 

 もしかしたらこの場所が天国行か地獄行を決められる場所かもしれん。

 それにしても死後の世界ってあるもんなんだな。全然信じていなかったが、これなら信じざるを得ないだろう。

 

 思い返しながら歩いていると、遠くに人影が見えた。

 

 

 あの人に尋ねてみるか。話の通じる相手だといいんだが……。

 

 近づいてみると徐々にはっきり見えてきた。女性だ。

 右手首には俺と同じ赤い腕輪、そして何度も見た灰色の髪の毛、そして何度も見つめた覚えのある黄金色の綺麗な瞳。

 

 しかし、俺が良く知る子とは顔はそっくりだが違いはある。エレナが成長したらこんな感じになるのだろうか。

 

 女性は俺を見て頭を下げた。

 

 

 

『ユウさん、でしたね。娘を救ってくれたこと、感謝します。本当にありがとうございました』

 

「あんたはエレナの……」

 

『ええ、あの子の母です。ずっとここから見守っておりました。それしか、できないですから』

 

 

 まあ、そうだよな。心配で仕方ないよな。だが、見ていたのなら俺はどう反応すればいいんだ? 肉体関係を持ってしまう直前だった故に、下手な事を言えない。

 とりあえず……謝罪するべきか?「お宅の娘さんと関係を持ってしまうところでした。申し訳ありません」とでも言うべきか……。改めて思うが俺って最低クソ野郎やんけ。

 いやまあ、実際そうだが……。

 

『良い名前も付けてもらえて、優しい子に育ってくれたみたいでホッとしています。でも、灰域――世界中であのような出来事が起こり、そのせいであの娘は辛い目に遭ってしまった。私は何もできずにただ見てるだけ、あなたが居なかったらきっと……』

 

 まあ灰域の発生がある種の分岐点と言っても過言じゃないかもしれん。灰域のおかげであの世界を生きる多くの人間の人生が大きく変わったのは容易に想像できる。

 

 

「俺はあの子を何度も泣かせた挙句、酷い嘘をついた。挙句に約束も破ってしまった。謝るのはこちらの方だ」

 

『いいえ、あの子はあなたの事を恨んだりなんてしませんよ。誰かの為に泣ける心優しい子です』

 

「だからこそ、こちらも胸が痛いんですがね……」

 

「ふふ、そう思うならあの子の元へ戻ってあの子の望みを叶えてやってください。私も孫の顔が見たいですから」

 

 覚悟はしていたが、いざそう言われれば血の気が引いていくのを感じる。そうりゃそうだ。アラガミになってでも身籠ったまま守り続けた愛娘が穢されるなんて気が気じゃないよな。

 俺も男だ、エレナから迫ってきたなんて責任転嫁はしない。身動きが取れなくなる前に拒否らなかった俺の落ち度だ。

 

「やっぱり……見てますよね?」

 

「当然です。私も旦那にあんな風に迫ったんですよ? 血は争えないと言う事ですね」

 

 この親にしてこの子ありとはこういう事なのだろうか……。旦那さん、あんたも大変だねぇ……。

 

 顔も知らないエレナの父親に同情する。でも美人に迫られるとか男としては最高なのでは……? 

 

『話の途中で悪いが、時間だぞ。ユウ』

 

 

 背後から気配を感じると同時に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「お前……」

 

 いつの間にか、戦友たちが周りに立っていた。

 

『ユウ、お前はまだ生きている。だから、元の場所へ戻るんだ』

 

 川があるので三途の川かと思ったが、どうやら俺は死んでいないので渡れないようだ。

 

『だが、これだけは覚えておけ。何故過去の存在であるお前が時を超えたのかは勿論、この世で起こる事は全てには必ず何かしらの理由がある』

 

『お前は呼ばれたのだ。誰に呼ばれたかは知らんが、あるとすれば人の世の神か。戦いに長けた者を呼ぶのなら理由も明白。相手は人か、お前たちがアラガミと呼ぶ獣かは分からんがな……』

 

『だが、今回の件は本来ならお前は関わるべきではなかった。まあ、俺達が首を突っ込ませたんだが……』

 

「関わるべきじゃない……それはつまり……」

 

『少なくても、神とは個人の事など考えない。恐らくお前が世話したあの子も見捨てるつもりだった筈だ。それを我々が手引きしてお前に首を突っ込ませた。もし、私が神なら自分の敷いた盤上を進まないお前には違反としてペナルティを与えるだろう』

 

「おいおい、それが事実ならその神ってただのクソ野郎やんけ」

 

 なんて身勝手な奴だ。頼んでもいねぇし頼まれた覚えもないのに勝手に契約紛いの事して規約も提示されてねえのに違反したり自分の気に食わないことをしたらペナルティって横暴だとかそんなレベルじゃねえぞ。

 なるほど、御伽噺で聞いたことがあるぞ。これが神の御業、身勝〇の極意か……たまげたなぁ……。

 

『恐らく、何らかの形でペナルティとなるものがある筈だ。くれぐれも用心しろ』

 

「分かった」

 

 

 言葉を紡ぐと、体が光に包まれ始めた。

 

『悪いが、もう俺たちは助けてやれない。分かっているな? 迷えば死ぬ。後の事は頼んだぞ』

 

 

『ユウさん、どうかお元気で。もし、あの子に再会出来たら……エレナをお願いしますね』

 

 エレナの母は笑顔で言った。

 

 

 そして視界も光に包まれ何も見なくなり、体が浮くような感覚を感じながら目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 凄まじい風を受けているのが分かり、瞼を開ければ俺は落下していた。

 

 遥か下には極東支部が見え、それは段々近くなっている。

 

 

 

「おわああああああぁッ!? いきなり落下死なんて冗談じゃねえェよぉおおおおおお!」

 

 

 クソがァ……よりにもよって遥か上空で投げ出しやがった……このままじゃ投身自殺現場になっちまうぜ……人間の所業ではない!

 いや、それよりもこの現状を打開しなければ!

 

 俺は今、落ちている。

 

 まずは落下する速度を計算して、それから地面にぶつかった時の衝撃を計算して、そのダメージを俺の防御力と引き算して残りHPを求めてこれが0じゃなければ……ってそんな事を計算する時間もねえし、そんなことして何になる!

 大体落下する速度を求める公式や最終的な数字を求める式も知らんし、電卓ないと計算できねえよ。

 

 そもそもな話だ。物体の落下する速度を求めるってそんな事をして一体何が楽しいんですかね?(唐突にして強烈な物理学ディスり)

 

 

 風を切る音が耳に響く。

 

 極東支部の屋上はすぐそこまで迫っている。

 

 

「うわああああああああもう終わりだぁー!」

 

 着地するとともに凄まじい衝撃が足を襲い、これはまた凄まじい激痛。

 

 

「不一致!」(迫真の表情)

 

 

 何故か分からんが、高いところから落ちて着地したらこう言わなければいけない気がした。

 

 

 

「お~痛ってぇ~……」

 

 つい痛みを感じたその箇所を手で擦ってしまう。

 両足を高速で擦る。

 

「ふぅ……」

 

 多分元の世界に戻ってきたのだと思うが……。

 もしかしたらここも平行世界でアナグラに戻ると平行世界の俺がエントランスで寛いでいて鉢合わせする可能性が無きにしろ非ず。多分俺の事だからドッペルゲンガ―だと思って問答無用で潰しにかかってくる可能性があるので気を付けなければいけない。

 

 と言うかこっちの世界の俺も見切りの極意を会得していたら勝負はどうなるんだろうな。見るに堪えない泥仕合になると思うのだが……。

 

 さて、こっからどうするか……とりあえずエントランスに……。

 

 

 

 

 ドゴォン!

 

 耳に響く轟音に、ため息をつきながら下の様子を確認するために柵から身を乗り出す。

 

「おいおい、なんだなんだ……」

 

 

 見てみれば、外壁が宙を浮く見た事のない2体のアラガミに破壊されていた。

 

 破壊された場所が心当たりのあるところで冷汗が出てきた。

 

 あの辺りは……ラボラトリ……。

 柵を乗り越えてアナグラの壁を駆け下り、ジャンプでバルコニーに着地して再び壁を駆け下って、急いでアラガミの元へ駆ける。

 

 

 

 

「シオォッ!」

 

 壁の穴からソーマの叫び声が聞こえる。

 アラガミを見ると人間の女性の様な姿をしたアラガミの腕には純白のドレスを身に着けている白い人形のような少女が抱えられていた。

 

 対アラガミ用ナイフを抜き、アラガミに近づくがもう1体の大柄なアラガミが背中から青い火を噴き出して上昇してきた。ナイフを振って頭上から奇襲をかけるが、大柄なアラガミの腕で弾かれて宙へ飛ばされるが空気を蹴って再び攻撃を仕掛けるも、急上昇でやり過ごされた。

 

 

「ちぃッ!」

 

 頭上を見れば大柄なアラガミが拳を突き出し、咄嗟に防御するが空中で衝撃を受け止めるなど不可能故にそのまま地面へ吹き飛ばされる。

 

「ぐッ……」

 

 エレナに塞いでもらった肩の傷に痛みが走り、見れば傷が開いて血が流れてきている。どうやら傷口が広がったらしい

 

「…………ぬぅ……ッ!」

 

 痛みを無視して態勢を変え、無理やり空気を蹴って奴が破壊した壁の横穴に飛び込んで、転がりながら床に着地するとそこにはユウナとソーマが立っていた。

 

「ユウッ!? 今まで何処に居たの!? ってどうしたのボロボロだよ!?」

 

 ユウナが俺に近づいてきて傷を見ると驚いている。

 

「ああ、気にするな。ピターにちょっかい出したら返り討ちにされてしばらく寝てただけだ。さっきのいざこざで傷口が開いたな。それより奴は……」

 

 

 ピターにやられたなんて嘘だが、我ながら見事な咄嗟の嘘だ。

 

 

「そんな事言ってる場合じゃない! 早く手当てを!」

 

 ユウナが救急箱を持ってきて俺を無理やり床に組み伏せてシャツを剥いで傷の手当てをしてくれた。

 

 

「で、お前ら一体何が在った訳? 痛ててててッ!? ユウナさん、もうちょっと優しく――」

 

 治療を受けながら経緯を聞こうと思ったら、ユウナが中々の荒治療をしてくるもので悲鳴を上げる。

 

「動かないで!」

 

「あ、はい」

 

 

 

 

 えーと、とりあえずまとめると……。

 

 アラガミに攫われた人形は実は特異点とか言う終末捕喰のコアで、第1部隊で匿っていたけど支部長にばれた矢先にあのアラガミに襲撃されて見事に攫われてしまったと。

 めでたしめでたし。

 

 いや、やばくね? 

 俺がアナグラを暫く離れていたら全人類絶体絶命のピンチに陥ってるやん。流石に展開が速すぎるんじゃないんですかね支部長? 

 俺が平行世界で色々やってる間に間にとんでもない事になっていた。

 最早話しについて行けなんですがそれは……。

 

 最早世界滅亡の危機でピターとかリンドウさんの仇どうこうの話じゃなくなってて失笑を禁じ得ない。

 

 

 さて、これからどうすれば良いのだろうか。元の世界に戻ってきたのも束の間、絶体絶命の危機に瀕しているとは己の不運を呪うしかない。

 

 

 

「シオが攫われたのね?」

 

 サクヤさんの声が聞こえて振り向けば、サクヤさんとその隣にアリサも居る。

 

「お前ら、戻ってきたのか……」

 

 真剣な表情をしているサクヤさんとアリサにソーマが少し驚きながら言う。

 

「勝手に縁を切ったんじゃなかったのかよ」

 

「あなた達だけじゃ心細いと思って戻ってきたんですよ」

 

 え、何。なんかこいつら喧嘩でもしてたのか? 

 俺の場違い感が半端じゃないんだが……しばらく黙ってよう。

 

「実はエイジスへの再侵入の方法を探っていたんだけどね……。正直打つ手無しなの」

 

 

「きっと、アナグラの地下にエイジスへの道はあるよ」

 

 皆が振り返ればそこにはコウタが居た。

 おぉ、続々と第1部隊員が集まってると思ったら集結したぜ……。

 

「コウタ……! アーク計画に乗ったんじゃ……。ううん、戻ってきてくれてありがとう」

 

 あ、アリサがコウタにデレた……!? なんかいつの間にか第1部隊の絆深まってね? 

 なんかソーマも雰囲気が柔らかいと言うか……まあ、丸くなっているし……。

 

「でも、いくつかのルートがあるからどれが一番早いかは……」

 

「一番早いルートなら知ってるぞ」

 

 俺が口を開くと、皆がはっとして俺を見る。

 第三部隊への物資配達へ行った時に一番早いルートを使った事がある。扉のパスワードも覚えている。まあ、仮に変えられていてもブチ破るがな。

 

「ユウ! 消息不明になったって聞いて心配していたのよ!」

 

「というか何時からそこに……?」

 

「ご心配をお掛けして申し訳ないです、サクヤさん」

 

 そしてコウタも驚いた顔をしている辺り、俺は完全に蚊帳の外だったらしい。

 話をしながらも肩の傷を治療していたユウナさんに優しさを感じた。

 

 

 さて、話の空気を感じるに第1部隊はエイジスに向かうのだろう。

 俺もなんの抵抗も無しに終末捕喰とやらで死ぬ気は毛頭ない。支部長には応援すると言った手前申し訳ないが全力で妨害させてもらおう。

 

 

「俺は先に行って扉を開けておく、準備ができたら地下まで来てくれ」

 

 

 ユウナに礼を言い、立ち上がってシャツを着てエレベーターに乗った。

 

 




車の運転中に歩道のど真ん中でネコがパコってて困惑した。犬にド突かれた件と言い今日は何か変な一日です。
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