Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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ご近所さんがコロナに感染したと聞き「終わったな。何もかも」と言いつつ手洗いうがい・消毒を徹底する我が家に困惑を禁じ得ない。


あぁ^~味方が頼もしすぎるんじゃぁ^~

 エイジスへ繋がる通路の扉の前に立ってパスワードを入力するがモニターに文字が表示される。ちょっと難しい単語が並べられているが要約すると「第1ロック解除、解除キーを使えやオラ」だ。

 

 解除キーをもっていない俺は当然頭を抱えた。

 

「やべぇ……解除キーとはな。先に行って空けておくなんてかっこつけた事言ったのに……」

 

 大分遡るが第3部隊への支給品を届ける為にこの通路を使ったときはパスワードだけで開いたのだが……。いや、支部長は用心深い。リンドウさんやサクヤさんが嗅ぎ回ったこともあって厳重にしない筈がない。

 

「仕方ねえ、扉ぶっ壊して無理やり開けるか。この状況だ。ぶっ壊したところで問題もクソもないだろう」

 

 

 どうやら……義父より伝授された技を使う時が来たらしい。ただの全体重をかけたドロップキックだが、猪の突進にさえ打ち勝つ最強のドロップキックだ。神機使いになって身体能力が強化された今の状態ならばこの程度の扉なら容易くぶち敗れる筈。例え1発で開かなくても結局はただの蹴りだ。何度でも打てばその内開くだろう。

 

 扉から距離を取り、助走をつけてドロップキックをかまそうとしたら後ろから襟を掴まれて渾身のドロップキックは不発に終わった。

 

「何をしている馬鹿者」

 

「こ、これはこれは……雨宮教官、本日もお綺麗で――」

 

「口説き文句は不要だ。お前には聞きたい事と言わなければいけない事が山の様にあるのだが……」

 

 何という事だ……! ここで雨宮教官に捕まってしまうとは……! まずい、ここで一戦交えるしかないのか……だが雨宮教官は強い。まだ俺が入隊して半月の頃だったか、支部内にまで侵入してきたオウガテイルを鉄骨で突き刺して床へ縫い付けほんの一時凌ぎであるが動きを止めて見せたことがある。

 少なくてもこの人を止めるのに……1人は囮が必要だな……!

 

 

 皆、済まん! 扉は神機でなんとかぶっ壊して俺の屍を越えて行け!

 

 

「ツバキさん……!」

 

 背後からサクヤさんの声が聞こえて俺と雨宮教官は振り向く。第1部隊のメンバーは集合して神機を担いでいた。

 ああもう、君たち間が悪すぎィ! 

 

「結局、全員集まったようだな。心配するな、誰もお前たちを捕えたりはしない。この通り、アナグラも箱舟騒動でメチャクチャだ」

 

 あれ、別に戦う必要ない的な話の流れかこれは?それならそれで良いのだが……。

 

「箱舟賛成派はとっくに行ってしまったよ」

 

 

「雨宮教官は……?」

 

 ユウナが雨宮教官に聞くと、教官は笑みを零した。

 

「弟の不始末は、姉が片を付けねばな。さて、解除キーは私が持っている。行くのだろう?」

 

「はい!」

 

 ユウナが答えると全員が頷いた。

 

 

 

 その時、警報が鳴った。

 

 

 

『緊急事態発生! アラガミが外部居住区に侵入! アナグラに残っている神機使いの皆さんは至急現場に急行してください!』

 

 

「そんな!」

 

「ちっ! こんな時に……」

 

 奴らめ、人出不足なのが分かってて攻め込んできたわけじゃあるまいな……。

 

「仕方ない。2手に分かれて……」

 

 

 あの害獣どもホント空気読まないな。いや、待てよ? 賛成派が行ったって事は反対派は残っているって事だな?

 

 俺の脳裏には、明らかにアナグラに残っているであろう、ある2人の神機使いが思い浮かぶ。幸い2人ともベテランの神機使いだ。

 

「雨宮教官。箱舟反対派の神機使いはある程度は居るんですね?」

 

「ああ。と言っても殆んどが賛成派だがな。極僅かだ」

 

「ユウナ、部隊を分ける必要は無い。こっちは何とかする」

 

「何言ってるのユウ!? 神機も無いのに!」

 

「神機はねえが、俺が挑発フェロモンで引きつければいいだろう。お零れは残っている連中に任せる事になるが」

 

 全部見切って躱しながら壁の外まで連れて行って、残ってる神機使いが片づけるまでの耐久競争だろ? 

 俺の回避技術は更に磨きがかかった。あの異世界でもそれなりの激戦で極限状態に陥ったおかげでまた限界を越えちまったよ。そろそろ俺が生まれた時より有している素質、成長限界が近そうだが……。

 

「神薙、こいつなら大丈夫だ。お前たちの戻る場所、必ず守り通そう。だから行け」

 

「…………分かりました。皆、行くよ」

 

 ユウナの言葉に全員が頷き、雨宮教官が扉を開ける。

 そして第1部隊は通路の先へ消えて行った。

 

「さて、我々も向かうとしよう。残りの者達も準備が出来次第、すぐに向かう筈だ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

「ところで、相当の深手を負っていたようだが支障はないだろうな?」

 

 雨宮教官がボロボロのシャツから見える傷を指摘しながら確認を取ってくるが、別に動けない程ではないし、ある程度処置もされている。戻ってきてからの処置で問題あるまい。

 ロッカーから取り出した予備のポーチに携行品を積み込みながら問題ないと返答する。

 

「今現在、人手不足の為斥候や偵察を送ることができない故、侵入してきたアラガミの種や規模は把握できていない。先日より新種も活発化しており、イレギュラーが起こるものと考えておけ」

 

「分かりました。何とか対応します」

 

「貴様が帰還したら反省文と始末書が雁首を揃えて待っている。必ず帰還しろ」

 

「了解。出撃する」

 

 

 

 

 補強しているエリアから偏食因子が練り込まれている鉄骨を拝借し、それを肩に担いで雨宮教官に敬礼。

 そして出撃ゲートを潜る。

 薄暗い通路を歩き、ヘリポートへ向かう。

 

 

 さて、一世一代の大立ち回りをしてくるか。だが、役者が足りないな。具体的には後2人。

 

 

 通路の先の扉が開き、光が差しこむ。

 

 通路を出てヘリポートへ出ると他の通路から出てきた神機使いが横を歩いていた。しかも見慣れた顔だ。

 

 左横にはショートブレードを携え、赤い制服に身を包んだ防衛班・班長、大森タツミ。

 

 そしてタツミの更に横には、クールビューティーで眼帯が特徴的な凄腕スナイパー、第3部隊のジーナ・ディキンソン。

 

 それぞれの得物を携えて俺達はヘリへ向かう。

 

 ここで、大分前にノルンで鑑賞した復讐者達のテーマが流れれば最高であった。

 

 

 

「なあユウ。詳しい話は後で聞くが、その傷で大丈夫か?」

 

「ああ、問題ない。やっぱりお前なら残っていると思ってたぜ?」

 

「そりゃ、俺は死ぬまで防衛班だからな」

 

 当たり前だと言わんばかりに答えるタツミ。

 こんな異常事態にも拘らず、やはり我らが防衛班・班長は通常運行であった。

 

「全く、人が心配していたのに何食わぬ顔してひょっこり帰って来るのね? 損したわ」

 

 ふぅっと軽く溜息をつきながら呆れるジーナだが、普段無表情の彼女が薄く笑みを浮かべている。どうやら満更でもなさそうだ。

 

「悪いな、ジーナ。でも心配してくれてありがとよ」

 

「防衛戦終わったら3人で飯でも食いながら箱舟を見送ろうぜ?」

 

「だな」

 

「あら、お行儀悪くない?」

 

 

 あぁ^~味方が頼もしすぎるんじゃぁ^~

 むしろ今まで単独で立ち向かって時間稼ぎばかりしていたのだ。今回位、味方に甘えても罰は当たらないだろう。

 

 

「しかし、よくもまあ人のいないタイミングで攻め入ってきたな……」

 

 タツミが呆れながらある方向を指さすとその先には黒煙が上がり、騒がしそうなのが容易に想像できる。

 

 

 

「ヘリの操縦者、見つかったわ。今此方へ向かっているわよ」

 

 通信機を切ってジーナが神機を床へ下ろす。

 

「操縦者居なかったら徒歩であそこまで歩く羽目になったな」

 

 ジーナは装填するバレットを確認して戦闘準備を整え、タツミも軽く体を伸ばして準備運動をする。俺も軽くストレッチをした後に鉄骨を軽く振って体を温めた。

 

「さて、気張っていくか」

 

「班長、どういう作戦で行く?」

 

「んーそうだな……」

 

 タツミが少し考え込んだ。すぐに思いついたのか笑いながら言う。

 

「戦線を一気に押し戻し、そのあとは臨機応変に敵を殲滅する。シンプルに行こうぜ」

 

「3人でできるとは到底思えないけど……」

 

「ジーナ、嬉しそうに否定しても説得力無いぞ」

 

 ジーナこそ否定はしたが、きっと心の中では心行くまで命のやり取りができると思って楽しみにしているようだ。

 

「何、俺達ならできるさ。見せてやろうぜ」

 

 タツミが神機を掲げながら俺達を見る。

 

「そうね。こんなに面白い事、そう経験はできないわ」

 

 ジーナも神機を掲げてタツミの神機に銃身を当てる。

 

「とことんやってやろうじゃないか。俺も乗ったぜ」

 

 対アラガミ用ナイフを取り出して2人の神機に重ねて当てる。

 

「さあ、行こうぜ!」

 

「ああ!」

「ええ」

 

 

 戦前の儀式を済ませると丁度ヘリの操縦者が到着した。早速ヘリに乗り込む。

 

 

 

「あの、ユウさん。ちょっと鉄骨が嵩張るんで離陸したらスキッドにぶら下がってもらっていいですか?」

 

「あ、うん。了解」

 

 そしてヘリが離陸するのを確認して操縦者からもOKサインを貰って、鉄骨を片手に持ったまま身を乗り出してスキッドに掴まってぶら下がる。

 

 

 最後まで締まらねえなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリは丁度アラガミの大群の真上。装甲壁に穴が開き、そこからゾロゾロ入ってきている。

 

 

「よし、この辺りで十分だ!」

 

「分かりました。少し降下します」

 

 操縦者が徐々にヘリの高度を落とし始めるのと同時にジーナが身を乗り出した。

 

「さあ、始めましょう?」

 

「出撃だ! 何としてでも此処を守るぞ!」

 

「あーこちらユウ、大森班長の指揮下に入る。交信終了」

 

 無線を切ると目の前をジーナが降りて行き、それに続いてタツミも降りていく。

 俺もスキッドから手を離してタツミに続く。

 

 ケースを取り出し、筋力増強剤錠と体躯増強錠を乱雑に口にいくつも放り込み、かみ砕いて飲み込む。

 よし、薬もキメて準備OKだ。

 

 

 どれ……ちょいと気合入れてくか!

 

 

 

 鉄骨を振り上げながら落下する。

 

 

 そしてザイゴートを思い切り殴りつけながら地面へ着地する。

 目の前を向けばそこはアラガミの群れ、ジーナが神機を構えて俺達の前にタツミが出てきて神機を構える。

 

「此処を簡単に抜けれるとは思うなよ。まとめて相手をしてやる、掛かってこい!」

 

 タツミが宣戦布告をした直後にアラガミ達は我先にと襲い掛かってきた。

 

 

 前方には多種多様なアラガミの群れ、対するはタツミ率いる即席の防衛班。

 今ここに、たった3人の防衛戦が幕を開けた。

 

 




DLCで黒いカリギュラと戦えるのを楽しみにしていた人挙手。✋
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