Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
まさかあのアラガミが来るとは……己の不運を呪うしかねえな……。
突然、無線に連絡が入りタツミが応答する。
『タツミさん! 識別不明のアラガミ反応を感知しました。対応できますか⁉」
「ああ、俺達は退く訳にはいかない。何とかするさ。ヒバリちゃん、オペレートを頼む」
『了解しました!くれぐれも無理をしないように!』
タツミが神機を構え直し、俺も即席神機を構えてすぐに動けるように態勢を整える。
「厄介そうね……」
ジーナも駆けつけてきた。
「距離を取りつつ、落ち着いて動きを見極めろ!」
タツミの指示を聞きつつ、2人よりも前へ出て構える。
「へっ、知った顔だ。俺が前に出る。両腕から展開されるブレードに注意しろ!」
俺が2人に警告すると、早速奴の両腕から青いブレードが姿を現した。
「ブレードってアレか?」
タツミの質問と共に奴は走り出してこちらに向かいながら周囲の小型や中型を邪魔だと言わんばかりに切り伏せながら突撃を掛けてくる。
「そうそう、アレだ。スパスパ斬れるから気をつけろよ」
「確かによく斬れてるな……って感心してる場合じゃねえぞ!」
2人と共に攻撃を避けて散開して立ち回る。
奴は回転と共に尻尾を振って周囲を薙ぎ払い、俺とタツミはジャンプで躱して滑空攻撃でそのまま奴に突き刺さるが当然アラガミは暴れ、俺達は必死に神機を更に深く突き刺そうと粘るが、突然頭上から光に照らされた。
無線に通信が入り、青いアラガミの他に大型の反応が検知されたと言う情報が入り、周囲を見渡した。
アラガミは居ないが、突然上空から光に照らされた。
2人して上を見上げれば、光の玉が宙にいくつも設置されており、眩しく輝いている。光の玉の向こうに浮かぶサリエルが不敵に微笑んでいるように見えた。
「げっ!?」
「やべッ! 退避だ!」
光弾は俺達に襲い掛かり、諸共青いアラガミを攻撃する。同士討ちである程度弱ればいいんだが……奴はまだピンピンしている。
「クソっ、この戦況でサリエルは厄介だな……!」
「ジーナ、頼めるか!」
悪態を突く俺を余所にタツミはすぐに対策を講じる。
「ええ!」
ジーナがオラクル弾を発射しながらサリエルを追うが、奴は軽快に銃撃を避けて更に上空へ逃げて行く。
「しかたねえ! ユウ、先にサリエルを始末するぞ!」
しかし青いアラガミはそうはさせないと片腕のブレードを展開してこちらに向かってきた。
「ユウ、行けるな」
「余裕だ」
防御の構えを取り、タツミは装甲を展開する。
共にブレードによる攻撃を受け止める。
衝撃に耐えられず後ろへ押されるが、歯を食いしばり腰を入れて踏ん張ると足元からズザザッと靴と地面が擦れる音が徐々に小さくなり、何とか受け止める。だが一瞬でも気を抜けば弾き飛ばされる故に一切の加減をしない。
「ぬう……!」
「ジーナ、こいつを踏み台にして行け!」
タツミの指示に従ってジーナは青いアラガミを踏み台にして高く跳ぶ。しかし、サリエルまでまだ高度が足りない。
「タツミ! 一気に押し返してジーナのサポートに行くぞ!」
「ああ! 合わせるぞ、せーのっ!」
「「オラァ!」」
同時に全力で力を込めて奴を押し返す。
俺とタツミは同時に跳躍し、俺は足を延ばす。俺の脛にタツミが両足を乗せて着地する。
そして伸ばした足を思い切り振り上げてタツミを高く飛ばす。
「ジーナ!」
タツミはジーナに近づき、手を延ばしてジーナの腕を掴んで振り上げる。
ジーナはサリエルより高く跳び、サリエルは自身の真上を舞うジーナを見上げていた。
そしてジーナが銃口を向けて引き金を引くと、レーザーの嵐がサリエルを蹂躙し、悲鳴を上げてズタズタになって墜ちて行った。
俺が着地してタツミも着地すると、アラガミは跳躍してジーナに攻撃を仕掛けようとしていた。
「くっ……!」
ジーナがスタングレネードを使って空中でフラッシュが起こり、アラガミは突然の光に怯んで地面へ落ちる。
『GUUUUU!』
アラガミは目が見えないながらも器用にバック中をして俺達から距離を取って氷の槍を右手に作り出し、視力が元に戻ったのか狙いを定めて投擲してきた。
「おいおい、冗談じゃねえぞ!」
タツミが文句を言いながら装甲を展開して防御するが、強力な攻撃に耐えきれず直撃は免れたが弾き飛ばされて地面へ転がる。
「タツミ!」
『GAAAAAAA‼!‼!』
アラガミはタツミへ向かってブレス攻撃の態勢に入った。
「ブレス攻撃か! 流石にまずいぞ!」
「くそ、バックラーで受け止める攻撃じゃねえぞあの槍……」
タツミが悪態をつきながら何とか立ち上がる。まだ万全じゃないタツミの前へ出てブレス攻撃を代わりに喰らうつもりで構える。
「任せなさい。2人とも下がって」
ジーナが俺の目の前の地面にオラクル弾を撃ちこむと、地面にめりこんだオラクル弾から炎が吹き上がり、炎の壁が奴のブレスを防ぐ。
俺の隣に来たタツミと顔を見合わせて互いに頷き、得物を構える。
奴のブレス攻撃が終わった瞬間、地面を蹴ってタツミと共に炎の壁を突っ切ってアラガミの両腕をそれぞれ貫く。
『GYAAAAAAAッ!?』
アラガミが悲鳴を上げている隙を突いてジーナが頭部にオラクル弾を打ち込み、着弾と共に爆発を起こして頭部を結合崩壊させる。
奴はブレードを展開して力任せに薙ぎ払おうと構え、俺は地面へ伏せてやり過ごし、タツミはバックステップで距離を取る。
攻撃を回避された直後、背中のブースターから冷気を放出して空中へ跳び上がる。
「飛行能力まで……」
「宙へ浮かんだ、つまり……デカいの来るぞ!」
雄たけびと共に片腕のブレードを展開すると奴の視線はジーナへ向き、狙いを定めた。
「ッ!? ジーナ狙いかッ!」
「ユウッ! カバーに回るぞ!」
タツミが指示と共に駆け出し、俺も続く。
『GUAAAAAAッ!』
奴がブレードを振り上げてジーナへ滑空し、ジーナは後方へ跳び退いて何とかブレードを躱すが奴はもう片腕のブレードを展開して構えた。
「クッ!?」
ジーナが険しい顔を見せつつアラガミを睨みつける。
「させるかァ!」
タツミが猛スピードでアラガミの股下を潜りつつ跳び、ジーナを片腕で抱え、装甲を展開して攻撃を防ぐが諸共空中へ吹き飛んだ。
「ユウッ! 今だ!」
タツミの指示に頷き、奴の背に飛び乗って即席の神機を構える。
「女執拗に狙うとは、見下げ果てた奴め! くたばっちまえ!」
罵声と共にブースターへ即席神機を突き刺す。
『GYAAAAAAッ!?』
悶絶しながら暴れ出して俺は吹き飛ばされる。
「ウッ!?」
地面に叩きつけられながらも、受け身を取って立ち上がる。
「無事か!?」
「何とかな」
タツミはすぐにフォローへ回るためにすぐ傍で神機を構え直し、ジーナも適切な距離を持って狙いを定める。
「助かったわ、2人とも。サポートは任せて」
『GUGYAAAAAAッ!』
奴は右腕に稲妻を纏い、空中へ浮かび上がると冷気の嵐が襲いかかる。
ジーナが咄嗟に先程ブレスを防いだバレットを使い、事なきを得るが空中の奴は稲妻を纏った腕を急降下と共に叩きつけようと向かってきた。
「下がるぞ!」
俺の声と共に2人は即座に従って後ろへ下がる。
腕が地面に叩きつけられると地面を電流が走り、俺とタツミは咄嗟にジーナを庇う。
「クッ!? スタンか……!」
身体が痺れて動けない。まさかこんな攻撃まで持っているとは……。
このアラガミ、本当に厄介極まりない。このまま動けない俺達に重い一撃をかます気だろう。
「グっ……小癪なァ……!」
「2人ともッ!」
そしては再びブレードを展開して振りかぶる。
「そういう事ね。なら……」
ジーナがブレードの付け根を狙撃して爆発が起きる。
『GYAAAAッ!? GYAAAAAAAッ!』
奴は攻撃を中断して再び空中へ跳び、もう片方の腕のブレードを展開する。
俺とタツミは体の痺れを気合で克服して神機を構える。
「タツミ、奴のとこまで吹っ飛ばせ!」
「ッ! しくじるなよ!」
タツミが神機を構えて俺が刃の腹に乗ると、勢いよく神機を振って奴のとこまで投げ飛ばされる。
「飽きたんだよその攻撃はよぉ!」
ブレードの根元を即席神機で渾身の力で突き刺す。先ほどの狙撃で薄くだが亀裂が入っていたブレードが砕けた。
そして砕けたブレードの破片の中でも特に大きいものを掴んで腕を伝って背中へ回ってしがみ付く。
『GAAAAAAAAAッ!?』
アラガミが悲鳴を上げて俺を振り落とそうと空中で暴れるが、しがみ付きつつブースターへ近づいてブレードの破片で表面を斬りつけ、傷口に即席神機を突き刺す。
更にアラガミは暴れる。
「この……! さっさと落ちろォ!」
突き刺した即席神機から手を離し、神機の柄頭に踵落としを決めて更に突き刺す。
『GYAAAAAAッ!?』
たまらず落下し、俺はタツミにブレードの破片を投げつける。
「後は頼むぞ!」
「任せろ!」
タツミは破片をチャッチして二刀流になるが、アラガミは接近するタツミへ氷弾を吐くが紙一重で避けて、地面に落ちたアラガミに接近して2つの武器を構えて踏込む。
「斬ッ!」
タツミが2つの刃を交差させて奴の頭部を切り裂くと、鮮血が飛び散って奴はぐったりと倒れた。
「流石だ」
俺は呟いて地に伏せたアラガミから飛び降りて着地し、タツミへ近づく。
呻き声が聞こえ、俺と2人も表情を硬くする。
「まさか……!」
「こいつ、まだ……!」
奴がまだ生きているのに気付き、距離を取る。
「へッ、中々タフだな!」
タツミが油断することなく構えて不敵に笑い、続いて俺も構え直す。
「なら、とことんやってやろうじゃねえか」
「2人とも、油断しないで」
得物を構え、次の攻撃に備える。
『GUUUUU……!』
アラガミは起き上がり、俺達を睨みつけるもそのまま去っていった。
「逃げた……?」
「いや、ただの他力本願だろう。見ろ」
タツミの指さした方向を見ると、ため息が出る。
「極地適応型クアドリガか……。それに小型もワラワラと……」
「まあ、あのアラガミよりかはまだマシね」
3人で神機を構え直す。
「2人とも、片づけるぞ」
「「了解」」
タツミの言葉に頷き、共に得物を手に斬り込みを掛け、ジーナも狙撃するために標準を合わせた。
*
小型を切り伏せつつ、クアドリガの攻撃を避けながら接近して数回斬りつけ離脱を繰り返していた。
「ああ……硬いな。こんな時ブレ公が居ればな……」
「居ない奴の事言っても仕方ねえさ。こじ開けてジーナに始末してもらおう」
「だな……。んじゃ、もう一回連携としゃれ込もうか」
「よし、突っ込むぞ!」
2人で得物を構え、クアドリガへ突撃を掛けた。
クアドリガはミサイルを何発も発射して周囲を手当たり次第に爆破するが俺とタツミはノンストップで駆ける。爆撃が激しさを増し、砂埃が舞い上がる。
タツミと距離を取って走り、爆撃を分散させつつ掻い潜る。
一気にステップで砂埃を突破すると、視界の端に同じく爆撃の嵐を掻い潜って砂埃を突っ切ったタツミが見えた。奴もこちらが視界に入ったようでこちらへアイコンタクトをしてきた。
仕掛けるか、班長。俺もタツミに目で返す。
「ユウ、続け!」
タツミが叫び、跳躍して滑空攻撃でクアドリガの前面装甲の隙間に突き刺さる。指示通り俺も続いてステップで前面装甲に接近してタツミと同様、隙間に即席神機を刺しこむ。
タツミは先程のアラガミから奪い取ったブレードの破片も突き刺した。
「さあ、合わせるぞ!」
「okだ」
呼吸を合わせて神機を振り抜き、無理やり前面装甲をこじ開けて弱点をむき出しにする。その瞬間、幾つものオラクル弾が弱点部位に着弾した。そしてタツミと共に距離を取ると、装甲は閉じる。
直後に奴の内部から凄まじい音が木霊し、前面装甲から大量の血液を噴き出してクアドリガは倒れた。
他の小型と中型も掃討しようと神機を構えた時――
地鳴りが聞こえた直後、地面が揺れる。
「地震か!」
「ちょっと揺れが大きいわね……」
「なんだウロヴォロスか? 冗談きついぜ」
周囲を見回すと、遥か遠くでとてつもなく大きさの形容できない何かが空高く昇って行っているのが見えた。
「なんだありゃ……!?」
「アラガミ…………?」
2人も空へ飛んでいく何かに驚きを隠せないでいる。
アラガミの様な何かは空高く飛び去り、光の粒の様なものが舞ってくる。
あのデカブツ……方角的にエイジスか……? ユウナ達、やったのか……?
「きれいだが、まずはこいつらだ」
俺がアラガミ共へ振り向くと、アラガミ達は背を向けてゆっくりと去っていく。
「こいつら……どうしたんだ?」
「さあ……だが……」
タツミは地面に座り込み、俺は地面へ仰向けになる。
「守り切ったぜ……皆の帰る場所をな……」
タツミの言葉に頷いて目を閉じる。
ああ、疲れた……。
あの平行世界から殆んど休む間もなく、ずっと連戦だったな。今日はぐっすり眠れそうだ。
「おし、帰るぞお前ら。お疲れさん」
「そうね。第1部隊も迎えてあげないと」
「だな。さっさと帰るか」
立ち上がって得物を担ぎ、3人並んでアナグラへ歩き出した。
極東と言っておけば何とかなるこの世界。