Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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ハンニバル種は戦いやすくてあぁ~いいっすねぇ~


ほう、手品か。他に特技は?

 

「こちら、ユウ。目標を再度補足した」

 

『了解。そのまま追跡をお願いします』

 

「了解した。交信終了」

 

 

 無線を切って俺は先日遭遇した白いアラガミ――ハンニバルを追っていた。

 

 先日、第1部隊がハンニバル討伐作戦を実行して見事にハンニバルを倒し、コアを回収したと思ったらハンニバルが復活し、攻撃を仕掛けてきた。ユウナがコウタを庇い、神機が大きく損傷したらしい。

 

 正直、耳を疑ったね。

 倒したはずなのに復活して襲い掛かって来るとか恐ろしいにも程がある。つまり、今ハンニバルを倒す手段が無く、叩きのめしてコアを奪ってすぐに撤退してという感じで文字通り撃退の姿勢でなければならない。

 

 ハンニバルの不死性を破る為の会議も行い、大方の対策を講じる事が出来た様でその準備をしている。流石は最前線の極東支部、対策が早いぜ。

 そして俺は更なる情報収集の為、こうしてハンニバルを追っている訳だ。

 

 つい先日、平原エリアにてタツミとブレ公、そしてカレルがハンニバルと交戦した後に無事撃破してコアを回収した。対策の為に奴のコアが必要になったらしく、一度倒したら撤退してを繰り返しながら対策を進めつつ追い詰めていくとの事。

 タツミ達は一度戻り、俺はこのまま追跡を続けた。

 

 そして地下街エリアに移動したので俺も後を追って、今はマグマが一帯を埋め尽くす煉獄の地下街にて任務を行っている。

 

 

「さて、今のところは特に動きに変化なし。ただ、雑魚アラガミを見つけたらぶっ潰して喰っているだけか」

 

 

 この地下街を自分の新たな縄張りとでも言うように我が物顔で歩いている。

 視界に映るアラガミは片っ端から襲い掛かって喰らう。正直、同じ大型にも果敢に戦いを挑んでいき、果てには倒して喰らう。

 同じ大型でも上と下があると言う事を認識させられる。

 

 

 水筒の蓋を開けて水を飲み、水分補給をしながらハンニバルを追う。

 

 場所が場所なのでこまめに水分補給をしなければいけない。空腹は何とかなるが、喉の渇きは早急に何とかしなければいけない。

 しかし、水も少なくなってきたのでそろそろ一回戻らなければいけない。いやまあ、地下街から外に出れば水溜りだとかはあるんだが、飲むのはちょっとな……。雨水溜めたり、木の枝から滴る水滴を溜めて飲み水にしていた事はあったが……。それをすると赤痢がやばい。

 あと贅沢ではあるんだが、くっそ不味い。

 

 

 仕方ない。一回戻――ッ!

 

 

 敵意を感じて、上を向くとハンニバルが拳を握って急降下して拳を叩きつけようとしたのに対し、咄嗟に後ろへ跳んで距離を取る。

 

 何度か跳び退いて様子見すると、奴はこちらを睨み、雄たけびを上げて大きな足音を響かせながら向かってくる。そして腕を広げて爪を構えた。

 

 十分に引きつけ、爪を交差させ始めると同時に跳んでハンニバルの逆鱗を踏み、再びジャンプして背後へ回り込む。

 

 ハンニバルも素早く前方に跳びながら反転し、火球を吐きだしてきた。

 

 火球を躱すとハンニバルは右手に炎の槍を持って地面へ突き刺し、槍が地面にささると衝撃波が発生して吹き飛ばされる。

 

 

「ッ! 油断したな……!」

 

 受け身を取って立ち上がると、既にハンニバルが距離を詰めて爪を振り降ろしてきた。

 振り降ろされる爪を最小限の動きで回避して対アラガミ用ナイフを抜いて斬りかかるが、容易く籠手で防がれる。

 

 そして危険を感じてバックステップで距離を取ると、同時に裏拳を繰り出された。

 

 少しでも反応が遅れれば手痛い一撃を貰うところだった。

 

「人間みてえな動きには驚いたが、俺には通用しないぜ?」

 

 攻撃パターンは人間とあまり変わらない。ただデカくて炎吐けて、衝撃波も出せる人間だと思えば対処には困ら…………それ最早人間じゃ無くね?

 

『GUUUU…………』

 

 呻き声を上げて尻尾を捻ると、半回転と共にこちらを薙ぎ払ってくる。

 尻尾が真横まで迫ってきたと同時にバック宙で躱す。

 

 間髪入れずにハンニバルが右手に炎を纏って地面に叩きつけると、足元が赤く光りながら熱を発する。

 慌ててステップで跳び退くと、赤く光った地面から炎の柱が出現する。

 

 

「ほう、手品か。他に特技は?」

 

 ハンニバルに中指を立てて挑発すると今度は炎の剣を右手に作り出した。

 情報通り、炎を武器の形状に変えて扱うか。搦手が来なければ対処は容易いが……さて、あんな化け物に搦手を考える知恵があるのか確認させてもらおうか。

 迫ってくる炎剣を最小限の動きで躱すが、再び炎剣を振ってくる。

 

 2発目を紙一重で躱し、今度は足元を薙ぎ払うように振ってきた。

 

 跳んで躱し、空中の俺に炎剣を突き刺そうと構えた。

 空気を蹴って宙を移動し、炎剣から逃れて壁の瓦礫に捕まってぶら下がる。

 

 「ッ!」

 

 ハンニバルも跳んで炎剣を構えながらこちらへ向かってくる。

 

 突き出された炎剣をその場から跳んで回避するが、後隙を狙うように尻尾を叩きつけられて吹き飛ばされる。

 

「グァッ……ッ!」

 

 痛みを堪えるが、真下から強い熱気を感じ見てみれば下は一面マグマ。

 

 

 何とか態勢を整えて空気を蹴って壁へ掴まるが、既にハンニバルがマグマを掻き分けながら迫っており、咄嗟に手を離して壁に足を着き、壁を走って逃げるがハンニバルも俺を追い駆けつつ、火球を吐き出してきた。

 

 

「流石に……きついな……」

 

『GAAAAッ!』

 

 

 マグマに沈んでいない地面を見つけると同時にハンニバルが吠え、炎剣をこちらに投げつけてきた。

 炎剣は回転しながら壁を焼き切りつつ追ってくる。

 

 真後ろまで熱を感じ、咄嗟に体を捻りながら壁から跳んで炎剣を躱す。

 

 上手く地面に着地してハンニバルへ向き直ると、ハンニバルは口から炎を吐いて辺りの地面ごと焼き払おうとしてきた。

 

 

「うおッ!? そりゃ無いぜ!」

 

 迫りくる炎に背を向けて走り出し、逃げ続ける。

 

 逃げいる内に炎は勢いが弱くなったのを感じ走りつつ振り返ると、燃えている地面を踏みつけながらハンニバルが2本の炎剣を両手に構えて突進してきた。

 

「ハァ⁉ 二刀なんざ聞いてねえぞクソがっ!」

 

 二振りの炎剣を躱すが、すぐさまハンニバルは炎剣を振り直してくる。避けるともう片方の手で炎剣を振り、それを避けるともう片方の炎剣が迫りくる。

 

 何とか攻撃を躱して凌ぐ。

 只の斬撃だけでなく、突き攻撃、そして炎剣を順手から逆手に持ち替えて様々な角度からの連続攻撃を仕掛けてくるので全く付け入る隙が無い。

 

 次に炎剣を振られるよりも速く懐へスライディングで潜り、そのまま尻尾を躱して背後へ回るが、ハンニバルも回転しつつ炎剣を振る。

 

 

『GUGAYAAAッ!』

 

 2つの炎剣を合わせ、1本の巨大な炎の剣が作られた。

 

「おいおい、マジかよ……」

 

 そしてハンニバルが炎の大剣を振ると、炎の斬撃が飛んできた。

 

「くッ!」

 

 身体を横へ転がして、炎の斬撃を躱す。しかし、ハンニバルは炎の大剣を地面に引きずりながら接近し、振り払う。凄まじい熱気が飛んで来るが我慢しつつ回避に専念する。

 

 

『ユ……さ……ユウさ……!』

 

「ん!? どうしたッ!?」

 

 無線が入り、ヒバリちゃんの声が聞こえてきた。

 

『ユウさん、ご無事ですか!?』

 

「ああ、何とかな! 今ハンニバルとダンスしている最中なんだ。後にしてくれる……ッと!嬉しいんだが……!」

 

 繰り出される斬撃と炎を躱しつつ、後退する。

 

『そちらの状況は把握しています。今、第1部隊が地下街エリアに到着してそちらへ向かっている筈です。離脱してください!』

 

「そいつはありがてえ。了解だ」

 

 

 攻撃を躱しつつ、スタングレネードを取り出して使うタイミングを計る。

 

 

 

 

「横に跳べ!」

 

 

 

「ッ!」

 

 

 背後から声が聞こえ、何かが迫ってくる気配を感じて横へ身を投げ出すと、背後からオラクルの衝撃波が通りすぎてハンニバルを襲った。

 

 

『GAAaaaッ!?』

 

 

 あっぶねー今の俺じゃなかったら当たってたぞ。極東のエースは容赦のない事で……。

 

 

「随分無茶をしたな。下がれ」

 

 白いバスターブレードを手に俺の前にソーマが降りたつ。

 

 

「こちらソーマ、討伐対象と接触した。交戦する」

 

 

 無線に呼びかけると、神機を構えハンニバルへ向かっていく。

 

 ハンニバルが炎剣を振ると、ソーマは背を向けつつ装甲を展開し、攻撃を受け止めながら素早く踏み込んで神機を振り上げてハンニバルの顔面を切り裂く。

 

 ハンニバルが籠手でソーマに殴りかかるが装甲を展開して防ぐ。

 

 青色のオラクル弾が何処からともなく飛んできてハンニバルを撃ち抜く。

 オラクル弾は再び飛んでいく。ハンニバルは籠手を盾にして弾丸を防ぐが、その隙を突いてソーマは足を切りつけた。

 

「へっ。ユウ、元気そうだな!」

 

「後は任せてください!」

 

 コウタとアリサが神機を構えながら飛び出し、攻撃を続ける。

 

 ハンニバルは跳び退くと共に、幾つもの火球をアリサとコウタに吐き出した。

 

 アリサは剣形態に切り替えて、装甲を展開し、俺はコウタを担いで火球の嵐へ飛び込む。

 

「ちょちょ、ユウ! 当たるから!」

 

「当たらねえから」

 

「ああもう! 当たったら恨むからな!」

 

 コウタはヤケになりつつも神機の引き金を引き、俺はコウタを担いだまま火球の嵐を掻い潜る。

 

 ソーマも素早く駆けて火球を躱しつつハンニバルへ近づく。

 

 そしてハンニバルは炎剣を作り、俺達を薙ぎ払おうとする。

 

「コウタ! 奴の上まで投げるぞ! かましてやれ!」

 

「OK!」

 

 コウタを1回転共に上空へ放り投げて、コウタは奴の逆鱗に攻撃を浴びせる。

 

 しかし、ハンニバルはそのまま炎剣で地面を薙ぎ払ってきたがソーマと共に跳んで回避する。ついでにソーマの腕を掴んで更に上空へ投げる態勢を取る。

 

 「悪いが、後は上手くやってくれ!」

 

 「な、おい」

 

 謝罪と後の事を託し、ソーマを投げ飛ばす。

 

「オラ跳べやァ!」

 

 

 

 ハンニバルが俺を睨みつけて炎剣で突き刺そうとしてくる。

 

「そのまま!」

 

 アリサが声を上げ、壁を蹴って空中を素早く移動して俺の襟を掴んで引っ張り、間一髪のところで助けてくれた。

 

 

「くらえッ!」

 

 ソーマが急降下して神機を振るが、ハンニバルは籠手でソーマの攻撃を受け止めた。

 

「隙ありっと!」

 

 コウタがハンニバルの背に着地し、再び跳んで顔面に零距離で銃撃を浴びせるとハンニバルは堪らず態勢を崩し、ソーマが神機を構え直してもう1度振り下ろす。

 

 白い鋸はハンニバルの肩を切り裂く。

 

 ソーマが力尽くでそのままハンニバルを地面へ叩きつけるがハンニバルは抵抗して空いた手で攻撃しようとするのを既に駆けだしたアリサが腕へ神機を振って弾き返して剣形態のまま銃口を向けて爆撃して腕を吹き飛ばす。

 

 

 そして俺の横をユウナが一瞬で通り過ぎ、ハンニバルの頭部へ一直線に向かう。

 

 ユウナが神機を振り抜いてハンニバルの顔面を斬り崩し、口へ神機を突き刺して動きを止める。

 

「ソーマッ!」

 

 ユウナが叫ぶと、ソーマは再び跳んでハンニバルの真上で捕食形態へ切り替えて、構えて急降下。

 

 神機がハンニバルの背中に喰らいつき、そのまま肉を食い破って鮮血が飛び散る。

 

 そしてハンニバルは咆哮を上げた後に力なく地面に倒れた。

 

 

 

 ユウナがコアを回収し、すぐに撤退しなければいけないとの事で急いで地下街から脱出する。

 

 

 

 

 

「悪いな、おかげで命拾いしたぜ」

 

 地下街から脱出して周囲を警戒しつつヘリの迎えを待つ間に、最初に駆けつけてくれたソーマに礼を言うと、「気にするな」とまさかの言葉が返ってきて内心困惑している。正直、無視されるか神機もないのに前線で出しゃばるなとお言葉を貰うかと思っていた。

 

 しかし、ソーマの神機……この色はやはり……。

 

 アーク計画の後にソーマの神機は色が黒から白色へ変わった。そしてこの神機は見覚えがある。

 あの世界でソーマに似た顔をしていたアインが持つ神機と全く同じなのだ。実際アインの神機をじっくり見る暇なんて無かったので全く同一かは分からんが。

 まあ……刀身が白い神機ならたくさんあるが、アインとソーマの神機に共通して言えるのは捕食形態まで真っ白な色をして居る事だ。普通なら黒色の筈だからな。ただの偶然にしては少々不気味だ。だが、あの男は青いオラクルを刀身に纏って凄まじい一撃を放つがソーマはそれらしき芸当を見せていない。それにアインと比べればまだ若い。

 

「どうした? 神機が気になるか?」

 

 ソーマがこちらの目線に気づき、問いかけてきたのでついでだと思って聞いてみる事にした。

 

「ソーマ、アインって名に聞き覚えあるか?」

 

「いや、無いな」

 

「そうか。ならいいんだ。失踪途中で世話になってな。随分お前さんに似ていたもんでな。とすると他人の空似だな。気にしないでくれ」

 

 

 




~GE3灰煉種戦にて~

バルバルス・イラ~地面に潜って遅延しやがってよォ!心底イラつくぜえええ!

アグニ・ヴァジュラ~ファッ⁉怒り時オートヒールにカウンター⁉アアアァァ‼

ヌァザ・アイル~なんやこの設置技⁉威力高すぎィ!心底イラつくぜええ!

メラム・マルドゥーク~毒なんざ関係ねーんだよ!(ヒートドライブ脳死ぶっぱ)

ティラニ・ハンニバル~いいゾ~これ(珍しく快勝)

バルムンク・レガリア~ガン〇ムやんけ!アァアアア鬱陶しぃンゴォォォ!‼!‼!

ティラニが唯一の癒しでした(血涙)

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