Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
翌日、俺は無事退院して早速ハンニバル追跡に出ようとしたのだが、雨宮教官に止められ11:40に重要な知らせがあると言われ、その時間まで暇なので偵察班の部署へ行ってハンニバルに関して新しい情報がないか資料を探すことにした。
「あ、お疲れさん」
「ああ、お疲れ」
室内には先客が2名。
同じ偵察班の同僚達だ。1人は忙しそうに端末を操作し、もう1人は笑顔で電話対応中だ。彼らとはあまり一緒の任務に就くことは無いが、それなりの仲だと思う。
「ハンニバルに関して新しい情報とか入ってないか?」
「いや、特に無い筈だ。俺も俺で別件で調査を頼まれていてな」
端末を操作し、資料に目を通したりと大分事務仕事が板についている。
もう1人も端末を操作、資料を引っ張り出してきて次々と捲りながら話を進めている。
「その件に関しては支部長からも説明の通り……え、いやァ……そういわれましてもこちらも他の支部から要請が……」
悲しいなぁ……無茶な事頼まれてんだろうな。ぶっちゃけ人手不足で手を借りたいのはこちら側だからな……。
「それに新種の件で……はい。ああ……はい。分かりました……」
受話器を置いて暫く同僚は笑顔のまま固まり一拍置くと額に青筋が浮かび上がり、机に鉄槌打ちを振り下ろした。
「クソがァーーーーーーッ!‼!‼!」
憤怒の雄たけびが部署内に響く。
受話器を置いた次の瞬間キレる。電話対応あるあるだ。
「どうしたんだ。また厄介事か?」
「クッソ!クソがァ!こっちが下手に出てりゃ調子扱きやがって!こちとら新種に禁忌種のオンパレード、挙句にエイジスでのいざこざで近隣に被害が出ててそっちの対応で手一杯だってのに、本部まで来て詳細を説明しろだアァ⁉しかもテメエらの仕事手伝えとか頭湧いてんじゃねえのか!むしろ応援を頼みたいのはこっちなんだよォ!大体送った資料に事細かに書いてあっただろうがよォ!何処に目玉付いてんだよ⁉クソがァァ!要らねえ仕事ばっかり増やしやがってェ!心底イラつくぜェ!!‼!」
「どうどう、まずは支部長に相談だ」
同僚が相も変わらず端末操作しつつ嗜め、憤怒に駆られた同僚は鼻息を荒くして徐々にクールダウンしていく。
「クッソー……マジで面倒くさいぞおい。他の部隊が忙しい=こっちも忙しいのによ……」
クールダウンしつつもぶつくさ呟いて頭を抱える同僚。
そういえば、こいつ前も本部から無茶言われて無かったか?
「なあ、あいつって本部と何かあったのか?」
黙々と作業を進める同僚に小さな声で聞く。
「元々本部所属で、周囲と反りが合わずこっちに来たんだ。実際にお偉いさんからも無茶言われてたらしいぞ。それでも仲の良い同僚は居たらしくてな。口は悪いが友達思いの奴だ。そこに付け込まれてよく厄介事を押し付けられるらしい。転属しても根本的な解決にならないあたり、人間関係ってのは面倒くさいってのを痛感する」
なるほどな……確かに面倒くさいなそれは。
「邪魔しちゃ悪いから消えるわ」
「ああ、またな」
部署から出て廊下を歩く。窓に雨が叩きつけられているのに気付いた。いつの間にか雨が降っていたか。
「出るまでに止めばいいが……」
*
集合時間も近くなってエントランスで待っている内に第1部隊と防衛班の面々まで揃ってきて、一体どんな知らせかとハラハラした。
そして、時間になり、雨宮教官がエントランスに来た。
「先日、旧廃寺付近で何者かの遺留物が見つかり、DNAパターンを照合した結果、対象をほぼ雨宮リンドウ大尉と断定した。本日12:00をもって捜索任務を再開する」
その言葉にどよめきが走った。
旧寺院か……確か高値で取引される闇色の大翼だかがよく発見される辺りだったな。大方金目当ての奴が片っ端から拾っていったら偶々リンドウさんの遺留物にぶち当たったってところか。運命と言うべきか、世の中ってのは上手い事で来てるのな……。
「生存自体はほぼ間違いないが、腕輪の制御を失って久しいためアラガミ化の進行が懸念される。接触には十分な注意を払うように」
雨宮教官は少しだけ微笑みながら、言葉を紡ぐ。
「いい年して迷子の愚弟を……よろしく頼む」
しかし教官の言った通り、腕輪はピターの腹から発見された。MIA判定からかなり日がたつ。最悪な状況も考えられるな……。いや、こういう時位は素直に喜ばないとな、じゃないとマイナスな事を考えちまう。ネガティブな事ってのは考えば考える程程嫌なことになりかねない。
こうして集会は終わり、各々が嬉しそうに安堵の言葉を口にしている。
皆がエントランスの1階に集まっている中、俺はさっさとリンドウさんを捜索しつつハンニバルを追跡しようと思い、足早にアナグラを発った。
皆、はやく捜索に出たいだろうが一番乗りは俺が頂くぜ!
*
ハンニバルが確認された市街地へエリアへ到着して無線を取り出す。
「目的地に到着した。索敵、追跡を開始する」
『了解! 何かありましたらすぐに連絡を!』
「了解。交信終了」
無線を切って、俺はハンニバルを追い駆ける。
さぁて、前日は卑劣にも他のアラガミに横やりを入れられたが……。今度はそうはいかんぜ。
ハンニバルを探して駆けだす。
奴は地下街で第1部隊に敗れ、コアを回収された。だが持ち前の能力で復活してたのだろう。
俺が1日医務室で寝転がっている間に、地下街合エリアから市街地エリアまで一気に移動していた。
こちらとしては、市街地エリアの方が近場なのでありがたい限りだ。
一応、ハンニバルを追跡しながらもリンドウさんの捜索も行っているが、手掛かりは愚か気配も感じ取れない。やはり、遺留物が落ちていた廃寺エリア付近に居るのかもしれない。
リンドウさんの捜索任務でもあれば、真っ先に受注するのだが……。しかし、なんだかんだ言って極東は広いからな……。基本的に捜索は防衛班や偵察班が出るとの事だ。流石に第1部隊がアナグラを長期的に空けるわけにはいかないだろう。
俺もリンドウさんの捜索は頼まれているが、どちらかと言えば任務を優先しろとのお達しなので直接接触でもしない限りは任務に集中しろと怒られるだろう。
一番乗りは頂くぜと啖呵きっておいて、この様である。情けないぜ……。
物陰に身を隠しながらハンニバルを探す。強力なアラガミが辺りをうろついているせいか、小型や中型アラガミはあまり見かけない。
そういえば、榊博士によるとハンニバルの籠手の施されている意匠性のモールドは上位のアラガミにしばしば見受けられる特徴との事。
他に例を出せば、テスカトリポカの前面装甲か。
あの部位にも人の顔が描かれているし、実際にテスカは暴れ出すと周辺が浄土と化す程だ。
実際に俺もあいつは嫌いだ。広範囲攻撃ばかりで回避するのに苦労する。
だが、一番記憶に残っているのは奴のミサイル攻撃だ。
発射されたミサイルがいつの間にか頭上に転移していて、それをぶち落とすとか言う超常現象起こしてきた時は流石に困惑した。
「…………?」
遠くから爆音が響いてきた。
大方ハンニバルが暴れているのだろう。こちらとしては探す手間が省けたのでありがたい限りだ。さて、早速向かうとしようか。
音が聞こえた方向へ駆けた。
*
「うわぁ……ラーヴァナじゃん。」
『GYAAAAAッ!』
ハンニバルは怒りに震え、奴の怒りの矛先はヴァジュラ神属禁忌種、ラーヴァナへ向けられていた。
ヴァジュラ種の接触禁忌種。機械と獣の丁度中間のような姿をしており、ヴァジュラが兵器類を積極的に捕食して進化したらしい。
背部の小型太陽で炎を操る能力を得ており、背中の砲塔か炎弾を発射するなど遠距離攻撃が強力だ。
そして禁忌種相手でも果敢に立ち向かうハンニバル。
まあしかし、ハンニバルは不死だから例えやられても復活できるからこそ、好戦的なのだろう。
とりあえず、アナグラに連絡しておくか。
アナグラに連絡し、少し離れた場所から2匹の戦いを眺めていたが、どちらも一歩も引かない戦いを繰り広げている時にもう1体のラーヴァナが乱入してハンニバルと2対1の状況を作り出した。ラーヴァナはヤクシャと同じく連携を得意としているのでハンニバルが不利か。まあ、あいつ不死身だからラーヴァナの絶望的状況は変わらんが。
ラーヴァナによる度重なる砲撃、遂にハンニバルは倒れた。2匹のラーヴァナは早速ハンニバルを捕食しようと奴の死体に近づくが倒れているハンニバルから炎が立ち上って復活した。
『GAAAAAッ!』
倒したはずの敵が蘇り、ラーヴァナ2匹は困惑の声を上げるがそれを気にする事なくハンニバルは炎の剣を作り出して自身の逆鱗に突き刺した。
そして逆鱗は破壊され、ハンニバルの背中に炎を翼が現れる。そしてハンニバルは力を溜めるかのように体を丸め、翼によって宙に浮く。
「やべっ! こっちも危ねえぞ!」
焦って近くのがれきの陰に隠れ、ラーヴァナも危険を察知したのか尻尾を巻いて逃げ出す。
ハンニバルは一気に溜めた力を開放して周囲に炎の嵐が吹き荒れて必死に逃げるラーヴァナを焼き尽くした。
焼け焦げて地面に転がるラーヴァナはハンニバルに掴まれ、そのまま口まで運ばれて噛み千切られる。
喰うのに飽きたのか、半端に喰われた死体を投げ捨てて再び歩き出す。
俺も気付かれないよう、姿勢を低く足音に気を使いながら後を追う。
「RESONANT OPS」がサービス終了しましたね。
約2年半程でしょうか、お疲れ様です。