Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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味方が強化されるならアラガミも強化されて当たり前だよなぁ?


そんなちんけな炎なんざ、ぶち抜いてやる!

 

 

 

 ハンニバルを追跡している内に市街地エリアから外れ、大分極東支部から離れた。

 これ以上遠くへ行かれると追跡する側としては辛くなる。このまま追跡を続けるか、いったん諦めて再び反応が支部周辺で確認されるまで様子見に徹するかを判断を仰いだが、とりあえず追跡を続けて様子を見て今後の行動に関しては判断を下すとのことなのでまだ追いかけろとお達しを受けた。

 

 最悪ヘリで迎えを寄こすとの事だが、こういう時に限って何かしらの問題――例えばアラガミが徒党組んで攻めて来た等の事態が発生しとりあえず迎えに行かせるヘリは無いと言われ歩いて帰って来いと宣言される可能性が大きい。

 

 ハンニバルはどんどん極東支部とは真逆の咆哮へ向かっていき、気配を殺して追いかける。

 先程から一直線で周囲に目も向けずに移動しているのが腑に落ちない。

 まあ特殊なアラガミの括りに入るので新たな発見があったとしてもなんら不思議ではないか。

 

 

 見渡しの良い荒地に入った瞬間、ハンニバルが動きを止めて辺りを見渡し始め慌てて地面に伏せるも奴は徐々にこちらへ近づいてきた。

 

 

 や、やばい……! ヤバいって! こっちに来るんじゃない!

 

 

 奴と目が合った瞬間、奴は覚えのある顔を見て雄たけびを上げてすぐに襲い掛かってきた。

 

 

 

 奴の爪が叩きつけられる前にその場から跳び退いて躱す。

 

 

 「さぁて……地下街じゃ横やり貰って無様を晒したが今度はそうはいかないぜ」

 

 周囲に気を配りつつ、ハンニバルの動きをよく見る。

 

 案の定無線が繋がらない。支部へ方角へ後退しつつハンニバルを誘い出すか。支部で反応を感知してくれればすぐにでも討伐隊を編成してくれるはずだ。 

 

 奴が両手を構えて空気を爪で切り裂きながらの突撃をギリギリまで引き寄せて跳び退いて躱す。

 

 次にハンニバルは腕を交差させて、炎を纏う。腕を振り抜くと炎の壁が作られて薙ぎ払うように迫る。

 空中ステップで更に後ろへ跳んで躱してやり過ごすが既に奴はこちらへ跳び込みつつ尻尾を叩きつけてきた。

 

 体を逸らすとすぐ横に尻尾が振り下ろされるが、油断せずに奴を見ると振り向きつつ炎の剣を振り抜いてきた。

 

 屈んでやり過ごすと頭上から未だ熱気を感じ、軽く距離を取る。

 

「ッ!」

 

 隙を与えないと言わんばかりに今度は炎の剣を投げつけてきた。炎の刃を横へ跳んで躱すと次は炎の槍を両手に持って突きを仕掛けてきたのに対し思い切り後方へ跳び退くが奴は炎の槍を放り投げた。

 

「なっ」

 

 ハンニバルが尻尾を炎槍の柄に巻き付けて叩きつけてきた。

 

 横へ跳んで咄嗟に躱すが奴はそのまま尻尾を振り払って薙ぎ払いを繰り出し、即座に高く跳んで真下を炎槍が通るのを確認して着地し次の攻撃に備える。

 

 奴は空いた手にもう1本の炎槍を作り出して両手の2本に尻尾で掴んだ1本、合計3本の得物を構えて突撃を仕掛けてきた。

 

「三槍流とか最早意味不明だっての!」

 

 つい悪態をつき、後退して攻撃を躱しつつ隙を伺うが、牽制代わりに尻尾の槍で地面を薙いでくるのでただひたすら回避するしか方法がない。

 流石に回避するのにも限界が見え、一か八か思い切り跳び退くが態勢を崩しかけ、急いで身構えたと同時に突然ハンニバルの側面に人影が現れて頭部目掛けて神機を振った。

 

 

 

 ハンニバルも視界の端の違和感に気づいたのか炎槍を手放して籠手で斬撃を防御して奇襲をかけた神機使いへ反撃を仕掛けるがその神機使いも素早く装甲を展開して反撃を防御して衝撃を利用して上手く距離を取って構え直す。

 

 

 亜麻色の髪と瞳が印象的でこちらとあまり歳が変わらない若い神機使いだ。しかし普通の神機使いとは違う。

 黒い腕輪を着けた神機使いなど聞いたことがない。神機のパーツも見たことのないものだ。黒を基調とした神機と服装に気品を感じる。

 

 男は無線を使って口を開く。

 

「フライヤ、標的と遭遇。だが、神機使い1名を確認。照合を頼む」

 

 

 標的……ハンニバルの事だよな。てことはこの男もハンニバルの追跡を……いや、そんな話なんて聞いていない。

 無線を使って支部へ連絡を取ろうとするがノイズが酷く一向に繋がらない。

 

 ちっ、ホントに役に立たねえ無線だな……! もっとマシな物を支給しろや……!

 

 

 

「何? ビーコン反応が感知されない……? 了解した。とにかく標的との交戦に入る」

 

 

 男はそう言って神機を構えた。

 

「そこの神機使い。奴は俺が引き受ける。下がっていろ」

 

 亜麻色の髪を揺らして凄まじい速度でハンニバルへ突撃を掛けるが奴も炎の剣を作り出して振り、男の神機とぶつかる。体格の差があるにも関わらず男は互角の剣戟を繰り広げる。

 

 対アラガミ用ナイフを抜き、助走をつけて跳んでハンニバルの顔面に勢いよくナイフを叩きつけた。

 

 

 視界を突然遮られた挙句に傷をつけられ怯み隙を晒したハンニバルに男が数発斬撃を叩き込んで堪らずは奴は跳び退いてこちらへ火球を吐く。

 体を逸らして火球を避けてハンニバルへ接近する。隣を男が駆けていった。

 

 ハンニバルが炎を吐いて焼き払おうとしてくるが男と共に跳んでやり過ごすも既にハンニバルは炎の剣を両手に構えていた。

 

「くっ……軽率だったか……」

 

 隣から聞こえた呟きを無視して筋力増強剤を入れたケースを取り出し、蓋を開けて乱雑に錠剤を口に放り込んで齧って飲み込む。体中に違和感が走り、力が漲り体自体も軽くなる感覚がする。

 

 

「こうすりゃ問題ねえよ!」

 

 対アラガミ用ナイフをハンニバルの頭部目掛けて投擲した。

 過剰なドーピングで剛腕になった状態で投擲したナイフは凄まじい速さで奴の頭部へ向かい咄嗟に炎の剣を盾にしたがナイフは炎を貫いてハンニバルの片目に深く突き刺さった。

 

 ハンニバルが顔を覆って悶えている内に着地して一気に駆けだして距離を詰める。

 男が強力な斬撃を叩き込み、悲鳴を上げて苦しむ奴の目に突き刺さったナイフの柄を握って勢いよく振り抜く。

 

 鮮血が飛び出して制服が汚れるが気にしないで距離を取る。

 

「済まない。助かった、感謝する」

 

「礼ならあの野郎叩きのめしてからで頼む」

 

 男の言葉に返し、ハンニバルへ意識を向けて構えると奴は身を屈める。

 すると奴の傷口が炎に包まれた。

 

「っ!」

 

 炎が消え去るとそこにあった筈の深い傷は綺麗に消えていた。

 

「その場での再生能力か……」

 

 流石は不死のアラガミか……。確かに、既にコアを摘出すれば再生させること無く霧散するように神機は改良された。

 だが、コアの摘出をするためには一度倒して活動を停止させなければならない。つまり、1度倒されなければいけない。

 故に即座に再生できるように新たに能力を獲得したか……それとも今まで隠し持っていたか……どちらにしろ厄介だ。

 

「一度でも倒すことができればこちらの勝利……。ならば、再生する暇も与えることなく倒すのみだ」

 

 男は冷静に分析したのだろうが、誰もが考えるその結論に結局行き着く。

 

「簡単に言ってくれるな……!」

 

 この兄ちゃん、俺を戦力に数えているのでは……?

 こんなナイフで奴に有効打なんて与えられん。ましてやあの再生能力、俺の攻撃は最早通用しないだろう。

 

『GUuuuuu!」

 

 奴の背で揺らめく炎の翼が肥大化し奴は宙へ浮き上がり、全身に炎を纏い始める。

 

 あの動作は――広範囲に渡る攻撃か!

 

 跳び退いてできるだけ距離を離すと同時に男も後退して装甲を展開する。

 

 奴が天へ雄たけびを上げると同時に凄まじい炎が嵐のように周囲へ放たれ、大分距離を取ったのにも関わらず熱気が届く。

 

 激しいの炎の柱がこちらへ向かい、跳んで躱しつつ次から次へと迫る炎をひたすら躱し続ける。視界の端に装甲で炎の嵐を防ぐ男も見えたが、険しい表情をしながらも態勢を崩すことなく耐えている。

 

 

 

 炎の勢いが収まり始め、奴の方へ目を向けると既に奴は炎を纏ったまま男へ突進していた。

 男は横へ飛び退いてやり過ごすし、反撃で斬りかかるがハンニバルも急ブレーキをかけつつ尻尾で薙ぎ払い、牽制した後に飛び退いて距離を取った。

 

「厄介な敵だ……。普通のアラガミとは格が違うか……」

 

 男はそうつぶやくも表情は先程までと同じく冷静に敵を見据えている。

 互いに出方を見ているのか動く気配がないのを見て、俺は仕掛けようと考えて奴へ接近する。

 

 俺の接近に反応して両手に炎剣を持って振り払った。

 

 軌道をよく読んで紙一重で躱しつつ更に距離を詰めると奴も最適な距離を維持しようと後退する。

 斬撃を躱すと奴が一回転して尻尾が迫るがスライディングでやり過ごして反撃に注意しつつ近づく。

 

『GYAAAAAAA!』

 

 奴が雄たけびと共に跳んでこちらへ炎剣を振り払ってきたがあえてこちらも跳び込んで炎の斬撃を躱して懐へ潜り込む。

 

「ちっ!」

 

 ハンニバルは再び跳んで剣を槍へ形状を変化させ、突き刺そうとしてきたがそのまま前方へステップをして躱す。当然背中を向けて隙を晒している俺へ攻撃をするだろうが――。

 

『GYAAAAAAA!?』

 

 背後からハンニバルの悲鳴が聞こえた。

 振り返れば案の定、あの男が神機を奴の背中に深く突き刺し、振り抜いた。

 

 ハンニバルも痛みを堪えつつ距離を取って、屈んで傷に炎を纏い始めた。

 

「させんッ!」

 

 男が神機を変形させて、氷属性のオラクル弾を奴の背中へ命中させた直後、冷気が放出されてハンニバルが苦痛に悲鳴を上げた。

 

 

 この男、新型か…!

 

 奴は巨大な炎の剣を作り出して地面に突き刺して盾代わりにして身を屈めた。

 これじゃ妨害ができないか……いや、手はまだある!

 

「くっ……!」

 

「おい、雷属性の弾を高出力で打てるか⁉ 俺目掛けて最大出力で撃ってくれ!」

 

「な、何を……!」

 

 男の困惑の声を聞きつつ、駆けだして高く跳躍する。

 

「いいから撃てェ! 突破口を切り開くだけだ!」

 

「ッ!」

 

 男が巨大なオラクル弾を撃ち、雷がバチバチと音を立てながら弾丸となる。迫るオラクル弾に対アラガミ用ナイフで受け止めて強力な電撃をナイフに纏う。

 

 今に見てろ……! そんなちんけな炎なんざ、ぶち抜いてやる!

 

「オラ、とっておきをくれてやらァ! 秘剣・雷返しィ‼」

 

 電撃を帯びたナイフを振ると巨大な電撃の刃が飛び出す。

 放たれた電撃の刃は炎を切り裂いて一瞬でハンニバルを飲み込む。

 

『GYAAAAAAAA‼GAAAAAAA!!』

 

 今まで聞いたことのない悲鳴が響き、奴は地面に倒れて打ち震えている。

 

「今だ! やっちまえェ!」

 

 男に叫ぶとすぐさま駆けだして渾身の斬撃をハンニバルの頭部に叩き込んで一瞬ハンニバルの体が痙攣してそのまま地面に倒れた。

 

 着地すると、既に男はハンニバルのコアを摘出していた。

 

 

 男はこちらへ歩き、敬礼をした。

 

 

「協力、感謝します。私はフェンリル極致化技術開発局所属、ジュリウス・ヴィスコンティと申します」

 

「極東支部偵察班のユウだ。よろしく頼む」

 

 随分誠実な男のようだ。歳は俺と変わらないだろうが……随分大人びているように見える。かなりのエリートだな。動きを見てもベテラン連中と遜色ない。

 だが、悲しいな。ここまで独りである事が板につく人間てのはそうそういない。

 

「申し訳ないが、今回の件は内密にしてもらいたい」

 

 この男のおかげで命拾いしたようなものだ。恩人の頼みを無碍にするわけにはいかないだろう。

 

「分かった。その腕輪等聞きたいことは山ほどあるが、野暮なようだ。心の中にしまっておこう」

 

「そうしてもらえるとありがたい。ただ貴官のビーコン反応が検出できないようなので、極東支部も捉えられていない可能性があります。良ければ近場までお送りしましょう」

 

「それは願ってもない事だ。是非よろしく頼む」

 

 

 ジュリウスと名乗った男は頷き、帰投要請をするとほんの数分でヘリがやってきたた。

 

 

 

 

 

 

 ヘリに乗ってふと気になって気を集中させる。

 案の定、ジュリウスから妙な気配を感じる。ソーマやユウナ、AGEとはまた異なる感じだ。やはり黒い腕輪が関係しているのか……?

 

「ジュリウスさん、アンタ……特異な体質でも持っているのか?」

 

 端末を操作しているジュリウスに問いかけると、少し驚いたような顔をしたがすぐに無表情に戻った。

 

「何故、そのように?」

 

「いや、感覚……ただの勘だ。別に言いたくないなら構わないさ」

 

「私も貴方に疑問があります。失礼ながら、あなたの経歴を調べさせてもらったのですが……不思議だと感じざるを得ません」

 

「そうか。大方……歳もはっきりしていないし、出身も不明。名字すらない。不思議なのは分かるさ。ちょいと訳あり、だが特別な事情ではない。入隊以降の経歴は間違いない」

 

「その割には、今年入隊した者の動きではなかったと思いますが……」

 

「経歴こそ消えたが軍に居てな。戦い慣れしているだけさ。真人間の頃からヤンチャしていたんでな」

 

「真人間で雷を返す技量をお持ちとは……感服です」

 

「それはこちらの台詞だ。当初ベテラン連中でも手子摺っていたハンニバルを相手にあそこまで安定した立ち回りには舌を巻いた。実に見事だった」

 

「いえ、私も詰めが甘かった。まだ経験不足です」

 

 向上心の塊とでも言うべきか。見習いたいものだが、中々手が届く領域ではなさそうだ。

 

 

 さて、とりあえずアナグラと連絡を取るしかあるまい。

  

 このあたりで下ろしてもらえばいいか。ハンニバルの反応が消えて俺の反応も消えたなら、まだハンニバルは生きていて反応に無いだけ、このまま追跡すると嘘をついてリンドウさんの捜索もできるかもしれない。

 我ながら良い案だ。

 

 

「このあたりで十分だ。世話になった。今回の事は他言無用だと約束する」

 

「分かりました。どうか宜しくお願いします」

 

「このまま降りるから高度はそのままで良い」

 

 ヘリのドアを開ける前に、ジュリウスに敬礼をして、取っ手に手を掛ける。

 

「ジュリウスさん、独りってのは辛く険しい道だ。だから……己を信じ、仲間を信じて歩くと良い。必ず応えてくれる仲間と会える筈だからな。良い仲間は、良い奴の元に集まる故に――なんて古い奴らのお言葉さ。頭の片隅にでも入れて置けばきっと役に立つぜ?」

 

 柄にもなく気障な事を言って、ヘリの扉を開けてそのまま飛び降りた。




次の幕間を誰視点にしようかちょっと悩む。ぶっちゃけそこまで絡みの多いキャラが居ないからなァ……。個人的に物語の構成が下手だとしょっちゅう陥る事態だと思う。
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