Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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今回ちょっと短いです。


遠距離攻撃なんざ使ってんじゃねえ!

 

 サクヤさん達へ連絡を取ったが、サクヤさんたちは大型アラガミと接触、交戦に入ったので俺はそのままブレンダンの捜索を始めた。

 

 

 

 

 

 「無事……じゃなさそうだな、ブレンダン」

 

 何とかブレンダンの居る所までたどり着き、アラガミから身を隠してブレンダンに応急手当てを施す。

 

 至る所に傷を作ってそこから流れる血、そして一番酷いのは右足の脛だ。何かに斬られたかのような傷が布で隠されていた。

 

「すまないな。手間を掛ける」

 

「気にするな。包帯も取り替えないとな……」

 

 既に血を吸って赤く染まった布にこれ以上の期待はできない。

 だが、俺も包帯の持ち合わせはない。

 仕方ない、制服破って使うか。制服だとかの支給品の申請には年に一定回数までと制限があるので買わなければいけないが仕方ないだろう。

 

 制服を破って水筒の水で洗い、がっちり絞ってからブレンダンに巻く。

 

「染みるぞ」

 

「ああ。……ッ」

 

 ブレンダンは少し顔を顰めるが、声は漏らさずに手当てを受けてくれた。

 おかげで手当てはし易かった。

 

 

「お前も任務中だったといのに、手を煩わせた。すまない」

 

「謝る必要はねえ。生きているならそれでいいさ」

 

 さっきから謝罪の言葉ばかりだな。別に気にする事は無いのに。

 ブレンダンは真面目すぎる。いや、真面目なのは良い事だ。だが悪く言えば頑固な性格だ。

 しかし、あのハンニバル―リンドウさんはどうするべきか……。

 折角生存の可能性が浮上したと言うのに……もうアラガミ化してしまったでは何ともやりきれない。

 諦めるしかねのか……?

 

「ユウ? どうかしたか?」

 

 難しい顔をしていたであろう俺はブレンダンの声でハッとする。

 悟られないように自然体で誤魔化す。

 

 

「それにしても、識別不明のアラガミ相手にたった1人なんて無茶が過ぎるぞ」

 

「そうする他なかったんだ。アーク計画で、俺は守るべき人々を見捨てる道を選んだ。だから、今度こそ守らなければいけない」

 

 そうか、そういえばブレンダンは箱舟賛成派だったか。まあシックザール元支部長の考えも間違いではない。むしろ見方を変えれば正しいだろう。

 誰もが各々の考えをもってアーク計画に関わった。

 タツミもカノンもブレンダンが箱舟賛成派になったことに対しては気にしてないだろう。 

 

「タツミもカノンも気にしちゃいないと思うが……それじゃあ気が済まないか?」

 

「ああ、タツミもカノンも理解を示してくれた。だが、俺は……」

 

「なら自分で納得が行くまでとことんやればいいさ。他でもない自分の決意だろう? 一生背負って生きて、そして誰かに諭される事なく死ぬ奴なんて遥か昔からごまんといる。白黒つけれるのは自分だけだと思うぜ?」

 

「……そうだな。納得がいくようにか……なら、まずは早く戻って2人を安心させなければな。ユウ、俺はすぐにでも動ける。どうする?」

 

「ブレンダンのペースに合わせたいが、あまりグズグズできないな。アラガミの気配が集まってきている」

 

「そうか。なら、思い立ったが吉日だな」

 

 ブレンダンは神機を手に立ち上がり、俺はブレンダンに肩を貸して2人でアラガミに気づかれないように移動を始めた。

 

 

 幸いにも此処は廃墟が並んでいるエリアだ。身を隠す場所なら沢山ある。サクヤさん達も大型の1匹や2匹軽く捻ってすぐ――ほら、無線に通信が入ったぞ。

 

 丁度身を隠せる所が多いエリアだ。隠れるには最適だ。

 

 

『ユウ、そっちはどう?』

 

「ブレンダンは無事ですよ。今は廃墟の密集地域で身を隠しながら進んでいる所です」

 

『良かった。私たちもアラガミの掃討をしながらそっちへ向かうわ。気を付けてね』

 

「了解です」

 

 

 

 通信を切った直後に足音が耳に入った。

 

「ッ! ブレンダン、隠れるぞ」

 

「分かった」

 

 小声で言い、物陰までブレンダンを連れて行って休ませ、様子を伺おうと物陰から顔を出してアラガミを警戒する。

 

 ポーチからスタングレネードを取り出し、いつでも使えるようにしてから再び静かに移動を再開するが……。

 

 いざって時はブレンダンの神機を置いて逃げるしかねえか……? 

 今からでもどこかに隠しておいて、後程回収班に任せるって言う手もあるが……。

 正直、神機は使わないなら最大の荷物なので置いて行った方がこちらも動きやすくなる。

 

「ブレンダン、ちょいとよろしい状況じゃない。いざって時は神機を置いていく可能性もある」

 

「……わかった。戦えない以上、余計な荷物になる。仕方ないだろう」

 

 

 感覚を研ぎ澄ませて周囲のアラガミを把握し、奴らの動きに合わせながらこちらも行動して極力接触を避ける。

 

 

 

ブレンダンと共に移動を始めて数時間、ブレンダンが流石に疲れを見せ始めたので一回屋内へを隠して休憩を取る事にした。

 

 

「ブレンダン、傷はどうだ?」

 

「特に異常はない。痛みはあるが動けない程でもない。大丈夫だ」

 

「そうか…………」

 

 サクヤさん達と合流出来たら、まずはちゃんとした手当てをしてもらおう。俺じゃあただ止血しただけだ。サクヤさんに見てもらった方が確実だ。

 

 

「――ッ!」

 

 

 何かがこちらへ飛んでくる気配を感じて咄嗟に対アラガミ用ナイフを構える。

 

 大きな窓ガラスを突き破ってザイゴートが屋内へ入ってきた。

 

「ちっ、こんな時に……!」

 

 負傷して思うように動けないであろうブレンダンへ奴が襲い掛かる直前、ザイゴートへ飛びかかって目玉に対アラガミ用ナイフを突き立てると血が噴き出し苦痛にザイゴートが吠える。

 

 まずい、早く黙らせないと……他のアラガミが寄ってくる……!

 

「ユウっ! そのまま抑えてくれ!」

 

 ブレンダンが体を引きずりつつ巨大な刀身を振り下ろしてザイゴートが叩き潰された。

 

「…………ッ! くっ……」

 

 ブレンダンが膝を突いて息を荒くしてすぐに駆けよって肩を貸して壁へ寄りかからせる。

 

「済まん。怪我人に無理させちまった」

 

「ふ、気にするな。お前が無事でよかった」

 

 呼吸を整えるブレンダンから離れ、意識を集中させると何匹かこちらへ向かってる感じがした。ザイゴートの悲鳴を聞きつけたか……!

 

 今ブレンダンを動かすのはまずいか。唯でさえ相当の負担を掛けている。

 外に出てユウナたちが駆けつけるまで凌ぐか……。騒ぎともなればあいつらもこっちの場所が分かる筈だ。

 

 「ブレンダン、此処で隠れていろ。外に出て騒ぎを起こせばサクヤさん達も気づくはずだ。一応無線で連絡を入れおいてくれ」

 

「分かった。だが、無茶はするなよ……危ないと思ったら俺を放って逃げてくれ」

 

「その時はその時だ。お前も担いで逃げる」

 

 それだけ言って割れた窓ガラスから跳び出て石ころを拾って別の建物の窓へ投げつけてガラスの割れる音を響かせる。

 

 

 

 直後に上空から気配を感じて見上げると建物の屋上からオウガテイルが大口を開けて飛び降りてきた。

 

 咄嗟に回避すると続々と小型が集まってくる。ブレンダンが隠れている建物から距離を取って挑発フェロモンを使い連中の気をこちらへ向けさせる。

 

 奴らはほぼ一斉に襲い掛かってくるが躱す事だけに集中してひたすら迫る攻撃を凌いでブレンダンの元へアラガミが向かわないように目を配りつつ逃げる餌を演じる。

 

「ふっ!」

 

 隙を見つければ対アラガミ用ナイフで相手の目玉を傷つけて視界を潰し、少しでも攻撃の手が緩むように立ち回る。

 

 しかし目を潰してもその内、鼻で匂いを嗅ぎつけてこちらの居場所を特定してくるかもしれないか。ハンニバルのように再生能力を身につけたアラガミが他に居ても可笑しくはない。やはり攻撃に転じるのは失策か……。

 

 距離を取りつつ迫る攻撃を回避して凌ぎ続けるが奴らもそれなりに頭が回ったのか遠距離攻撃をする個体、近接攻撃を仕掛ける個体で別れて襲い掛かってきた。

 

 それでも何とか凌ぎ続けると上空からオラクルのレーザーが飛んで内一体を貫いて動きを止めた。

 

 どうやらサクヤさん達が到着したらしい。

 

『ユウ、遅れたわね。今ユウナとアネットもそっちへ向かっている筈よ! 援護するから何とか凌いで頂戴!』

 

 サクヤさんから通信が入り、通信しつつ次々と的確にアラガミの急所を打ち抜く技術に感服する。

 

「分かりました。ただ、ブレンダンの隠れてる建物にアラガミが向かいそうになったらそっちを優先してください!」

 

 それだけ言って通信を切り、レーザーが飛んできた方向を確認してサクヤさんが狙撃しやすいように立ち回る。

 

 サクヤさんも遠距離を攻撃を仕掛けようとするアラガミを優先的に落とし、死角である空中から攻撃を仕掛けてくるザイゴートも即座に撃ち落としてくれたおかげで大分立ち回りが楽になった。

 

 

 

「ハァアアアッ!」

 

 空中から掛け声と共にアネットが神機を振り下ろしつつ降下し、真下のアラガミを叩き潰した。

 

「ユウさん、遅れました! 交戦に入ります!」

 

 張り切っているアネットが意気揚々とアラガミに突っ込み、そんなアネットに死角から攻撃しようとするアラガミをいきなり現れたユウナが両断して見事にフォローする。

 

「ッ!やらせん、遠距離攻撃なんざ使ってんじゃねえ!」

 

 遠距離から赤いオウガテイル――ヴァジュラテイルが尾の先端から炎の玉を打ち出そうとするが、跳び上がって頭上に渾身の踵落としをめり込ませるが、ヴァジュラテイルがこちらを睨み、咄嗟にそのまま踏み台にして跳び退いて反撃を回避する。

 そして今度は口から炎を噴くが、地面を滑るようにユウナが割り込んできて神機を一振りして炎を掻き消し、俺は突きの構えを取って一気にヴァジュラテイルへ距離を詰めて眼に対アラガミ用ナイフを突き立てた直後、悶えようとしたヴァジュラテイルはユウナの神機に切り裂かれて絶命した。

 

「ユウ、私を上に投げて!」

 

「跳んで脛に乗れ、思い切り蹴飛ばすぞ!」

 

 それだけ言って思い切り跳躍すると、すぐにユウナも跳んで着いてきた来たのを確認して足を伸ばして脛にユウナが両足を付けると同時に思い切り足を振り上げる。

 

 高く跳んだユウナは神機へ銃形態へ変形して上空から銃撃しつつ降下する。

 次々とアラガミは銃撃に倒れ、残ったアラガミもサクヤさんの狙撃に貫かれ、アネットの一撃で粉砕されてユウナが地上へ降り立つ頃には既にアラガミの掃討は終わった。

 

 

 

 

「ブレンダンさん……良かったです……!」

 

「心配をかけたな。おかげで命拾いした」

 

 アネットは安心したのか涙を浮かべて喜び、ブレンダンもサクヤさんの手当てを受けて先程よりかは大分良さそうだった。

 

 ユウナは先ほどブレンダンの捜索のために出撃して入れ違いになったタツミ達の元へ向かった。なんでも付近で識別不明の反応が検出されたらしい。

 

 俺もとりあえずアナグラへ戻る事にした。

 何より報告しなければいけない事があるのだから。 




バースト編も終わりが見えてきましたね。まあ、3編がちょっと長かったのでアレですが……。
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