Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
「うん……? ここは……」
俺はいつの間にアナグラのエントランスで倒れていたようだ。
「初めまして……ですね」
「ッ‼」
突然の呼びかけに驚いて振り返れば、そこには男とも女とも言える中性的な顔立ちをした奴が立っていた。そしてそのすぐ傍でユウナが倒れていた。
「僕はレン。リンドウさんのかつての戦友です」
戦友と言ってるが、こいつの気配は以前感じた気配と全く同じ。だが、気配を感じ取れただけでこいつの姿は見たことがない。人間なのかこいつ……。
「色々ツッコミたいが、それは置いておくとしよう。ここは何処なんだ? アナグラにしては、妙だが……」
「先程、ユウナさんがハンニバルに攻撃したときに、少し手違いがあってユウナさんとリンドウの意識が強く感応した結果僕たちの意識が――」
感応と言う言葉が出てきた瞬間、脳が働くのを拒否しだした。こうなれば最早俺の理解力はどうにもならんので彼には悪いが一言で纏めて貰う他ない。
「ああ、済まん。平常時は頭の回転がよろしくないんだ。シンプルに言ってくれないか?」
「そうですね……安っぽく言うと、リンドウの意識の中です」
「OK。把握した」
「しかし、妙ですね。貴方の意識まで引き込んでしまうなんて……ユウナさんは一回リンドウさんの神機に接続したからともかく」
レンガ深く考え込んでいるのを尻目に周囲を見渡すと俺たち以外に誰もエントランスに居ない。とりあえずユウナを俺の特等席でもあるソファーに寝かせる。
気づいたが制服の至る所が真っ黒焦げであるのに気づき、また支給申請をしなくてはいけない。ぶっちゃけ無償支給の制限越えてるからポケットマネーが必要になるんだよなぁ……。
「とにかく、この空間に長居すればリンドウとユウナさん、そしてあなたと僕の意識が溶け合ってしまって消滅してしまうかもしれません。まずは脱出をしなくては」
消滅ってうっそだろお前……滅茶苦茶ピンチじゃん。しかしどうすればいいんだ? リンドウさんの意識の中だからリンドウさん見つけ出して何とかして貰うしか
手がないのでは?
「まずはあなたより弱っているリンドウの意識を呼び起こす必要があります。そのためには彼の記憶を辿り、意識に刺激を与えて起こすしかないですね」
リンドウさんの記憶か……なんかあんまり見てはいけないものまで見えてしまうのではないだろうか。
流石に人のプライベート見るのは気が引けるが……。
「このゲートの先がリンドウの記憶の中でも特に印象に残っている場所へ繋がっている筈です。そこで起こる出来事に干渉すれば恐らく……」
「よし、行ってくる」
なら話は早い。さっさと片付けないとな。こんな道草くってる場合じゃない。何とかリンドウさんを助けないとな。折角あと一歩と言うところまで来たんだ。このままチャンスを無駄にするわけにはいかない。
「レン、悪いがユウナを頼む。もし俺が戻らなくてもユウナならなんとかできるかもしれん」
「分かりました。申し訳ないですが、よろしくお願いします」
ゲートを潜ると、周囲が暗闇に暗闇に包まれて熱気を感じふと暗い周囲を見渡せばそこはマグマ溢れる地下鉄跡だった。
「ここは……」
周囲の探索をしようと歩き出した瞬間地響きと共に何かが地面を突き破ってその巨体を現した。
「スサノオ……!」
ボルグ・カムラン神属禁忌種のスサノオが立ちはだかり、雄たけびを上げてこちらへ襲い掛かってきた。
飛びかかってきた巨体から距離を取り、奴の動きを見ながら対アラガミ用ナイフを抜こうとするが、いつも腰に差してある筈のナイフがない。どこかに落としたかと焦るが、制服に固定してあるナイフを差すホルダーもなくなっており、すぐにここが意識の中だから得物が無い事に気づく。
「ん……? アレはッ⁉」
スサノオの胴体に何かが刺さっており、良く目を凝らして見れば、かつての俺の神機だった。
このスサノオ……あの時の個体か……!
レンが言っていた通りか。ここはリンドウさんの意識、あのスサノオを倒したのもリンドウさんだ。ならあの時の個体が現れても可笑しくはないか。
忘れもしない、苦渋の決断で神機を壊す羽目になったあの日を。おかげでナイフ一本でアラガミと渡り合う羽目になったんだ。
「おもしれェ。あの時は世話になったな……倍にして返してやるよ……!」
勝機を見出した俺はスサノオへダッシュで近づき、奴は両の捕食口から光弾を乱射するがその手の攻撃には完全に慣れているので次々と迫る光弾を紙一重で避けつつ距離を詰め、次は尻尾の剣を振り下ろしてくるがそれも躱してそのまま足から胴体へ伝い神機を引き抜く。
『GYAAAAAAA!!!!』
鮮血を噴き出しながら怒るスサノオを尻目に飛び退きつつ神機を見る。
CNCから触手が伸び、それは腕輪の溝に入った。
「さて、相棒。久しぶりやってやるとしようぜ!」
答えるようにCNCが光り輝き、神機を構えてスサノオへ突撃を仕掛ける。
スサノオが剣で地面を切り払ってくるがそのまま跳躍しつつ切り上げて下段攻撃を凌ぎながら斬撃を喰わらせ、もう一回転して勢いに任せて神機を振って奴の胴体を切り裂く。
痛手を負った奴は跳び退きつつ捕食口から光弾を打ち出してくるが、再び接近しつつ被弾しそうな光弾は神機で掻き消して飛び込みと共に神機を捕食形態へ移行してスサノオの胴体の肉を喰らい千切り、バースト状態へ移行してそのままスサノオを足場代わりに跳んで奴の真上を取る。
「ッ!」
奴が尾剣を振って俺を斬り落とそうとする前に再び捕食形態へ移行してそのまま壁の方へ伸ばして壁に喰らい付かせて縮ませて引っ張てもらう。
地面へ着地して振り向けば捕食口で殴りかかってきたので装甲を展開して攻撃を防ぎ衝撃を受け流しつつ、距離を取る。
こちらへ捕食口で喰らい付こうとする奴の行動に合わせ、神機を左腰に添えて居合の構えを取り、奴が腕を振りかぶると同時に一気に距離を詰める。
「十字!」
振り抜きで横一閃した直後に返し刀で今度は角度の鋭い斜めに切り下し捕食口を十字に切り裂く。
悲鳴を上げる奴の捕食口には歪な十文字が刻まれ、傷からは大量に血が溢れ出る。最早片腕は潰れたも同然だろう。
『GYAAAAAAA!!!』
「ハっ、良い様だな。名前の割には大したことねえなァ⁉ 蠍野郎!」
挑発に乗ったのか尾剣を振り下ろしてくるが、軽快に回避するも今度は突きを打ってくるがそのまま跳躍で躱して尾剣の腹に乗って今度はこちらが突きの構えを取る。
そして奴が動くよりも早く跳び込み、胴体に神機を突き刺した直後に斬り抜きながら更に跳んで、頭上から神機を渾身の力で振り下ろして頭部を叩き斬ろうとするが、奴も咄嗟に身を捩って頭部真っ二つは凌がれた。だが頭部の一部を叩き潰せたので良しとしよう。
着地した隙を狙うように尾剣を突き刺してきたが迫る攻撃に神機を添えて軽く受け流しつつ身を翻した直後に踏み込んで反撃の斬撃を尾剣に叩き込む。
尾剣の先が割れ、奴は悲鳴を上げて藻掻き苦しむ。
「最大の武器が最大の弱点とは難儀なもんだな……」
『GYAAAAAAAッ‼』
怒りの雄たけびか、こちら目掛けて頭上から尾剣を突き刺そうとしてきたがバックステップで跳び退く。しかし、尾剣の切っ先が突き刺さった箇所が光り輝く大爆発を起こして輝く爆風がこちらを飲み込もうと迫る中、装甲を展開して腰を落として耐える。
「グッ……!」
凄まじい衝撃波で一瞬でも気を抜けば吹き飛ばされるだろうが、安易な油断はしない主義だ。更に足に力を入れてただ耐え凌ぐ。
衝撃が和らいだと思った瞬間、装甲に爆風とは異なる強い衝撃を受けてそのまま吹き飛ばされた。
「ちっ! 小癪な……!」
爆風を凌いでいる間に今度は物理攻撃をかましたのだろう。
流石にただでさえ爆風の防御に体力を使った上に強力な打撃まで防いだ。これ以上攻撃を受け止める事はできない……!
追撃を貰う前にこちらから仕掛けるしかないか!
地面を蹴ってスサノオの正面に飛び込んでジャンプと共に神機を上段に構え、渾身の力で振り下ろす。
「カァッー!」
気合で振り下ろした斬撃を尾剣で防ごうとしたのだろうがそのまま尾剣諸共叩き斬ってひび割れた尾剣の亀裂は更に広がって一部は砕けて最早剣と呼ぶには語弊がある状態まで結合を崩壊させた。
しかし相手は禁忌種、怯むことなく捕食口で殴りかかってきた。
咄嗟に装甲を展開して防ぐが衝撃の強さも大きく後ろへ押し戻され、奴は既に武器としての役割を果たさない尾剣で周囲の地面を薙ぎ払うように振り、すぐに装甲を解除して高く跳んで下段攻撃をやり過ごしてスサノオの頭を踏んで再び高く跳び、奴の頭部目掛けて落下してそのまま左手をスサノオの首に回して後頭部へ回って首に神機を突き刺した。
『GYAAAAAA!! GYAAAAAAッ!』
暴れ狂う奴に臆することなくそのまま神機を両手で握り、渾身の力で力任せに振り抜いて首を落とした。しかしまだスサノオの気配の強さは完全には消えておらず、急いで首の断面に神機を捕食形態にして突っ込ませて怪しい光を放つコアを引きずり出してそのまま手でコアを掴んで神機を突き刺す。
暴れ狂う巨体が動きを止め、地面に崩れたのを確認して地面へ着地する。
スサノオの死体はすぐに霧散し、その場所から光が溢れた。光が徐々に大きくなってゆっくりと周囲を飲み込み始めてあまりの眩しさに目を閉じて腕で顔を覆う。目を開ければそこはエントランスだった。
しかし、レンとユウナの姿が見えない。2人は一体どこへ……。
ゲートへ向かって開けようとするが全く開く気配がしない。先程はすんなり開いたと言うのに……とにかく扉を片っ端から開けてみるか。
その後エントランス内の扉をすべて開けてみようと試みたが全て閉ざされており八方塞だった。試しに神機でぶった切ろうとしたがびくともしないどころか傷すらつかない。
「たくっ、何だってんだ――エレベーターがあったか」
エレベーターのボタンを開けてみれば反応して扉が開き、中に入り新人区画のボタンを押すが無反応。ベテラン区画のボタンを押せば反応してすぐにエレベーターが止まり、扉が開くとそこは俺も知っているベテラン区画の廊下だ。
リンドウさんの部屋へまっすぐ向かい、扉を開けるとそこにはユウナとレン、そしてリンドウさんが居た。
「ユウ!良かった、無事に戻ってきたんだね?」
「心配をかけたな。リンドウさんは……」
リンドウさんの右腕は既に異形なものになっており、当の本人は苦しそうに右腕を押さえている。
『二、にげろ……俺の事は、放って……』
譫言のように呟いており、その眼には俺はおろかユウナも映っていないのだろう。
「リンドウの意識も限界みたいですね。貴方がスサノオを、ユウナさんがウロヴォロスを倒し、リンドウの意識を刺激したおかげで彼の意識がある場所もはっきりしました。今もそこで本当のリンドウは自分を侵食するアラガミと戦い続けている筈。急いで向かいましょう」
今はこいつウロヴォロスって言ったか? 俺より遅れてユウナがウロヴォロス倒しに行って既に戻ってきてるってヤバくね?ユウナが強いのかそのウロヴォロスが弱いのか、これもう分かんねえな……。
「ユウ、レン。急ごう」
ユウナの言葉に頷き、エントランスへ向かいゲートを潜ろうとした時、急に敵意を感じて神機を構えた直後――
エレベーターが破壊され、煙の中から何者かが接近してきた。こちらへ異形と化した爪で襲いかかる。
「っ!」
神機で爪を受け止め、そのまま弾き返した。
「っ! なんでリンドウさんが……」
襲い掛かってきたのは先ほど部屋で佇んでいたリンドウさんだった。だが、様子がおかしい。苦しそうなうめき声を上げながらこちらを向くと、頭部にハンニバルを思わせる片角が生え、アラガミ化した腕も先ほどよりも侵食が進み、肩からは突起が出ており焦点の合ってない紅い眼がこちらを見据える。
「いけない!ここまで侵食が……!」
レンの言葉に反応したのか、リンドウさんは右手から神機のような巨大な剣が生え、それを手にレンに斬りかかろうとした。
咄嗟に2人の間に割って入り、リンドウさんの得物を神機で受け止める。
「ユウ!」
ユウナも神機を構えるが2人に声を飛ばす。
「来るな、先に行け!俺はここでこいつの足止めをする!」
「でも……!」
「時間がないんだろう⁉ 早く行け!」
「…………っ! レンっ!」
「分かりました。ここはお願いします!」
頷いてそのままリンドウさんを押し返して神機を構えた。
バースト編も次回辺りで終了ですがハンニバルとの戦闘が多く、くどかったのは反省。
でも個人的に良アラガミだから書きたい葛藤。