Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
もう無理ですも。
休みが欲しいですも(切実)
あぁ、身体中が痛ぇ……。なんでこんなに痛いんだ……?
目を開けようとするが意思に反して瞼は開かず、内心焦る。
え、なんで開かないの?可笑しくね?まるで誰かが開かせないように押さえつけられているみたいだ。今更気付いたが手も動かせず、寝返りもできない。
クっ、これが金縛りか……!
そういえば……金縛りって幽霊の仕業とかって噂話があったよな?全く死んでなおも人様に迷惑かけるとは元人間の屑がこの野郎……。
クソがァ、全く動けねェ!(;;゚Д゚)
クソ、クッソ! クソがァ!なんなんだよこの腐れ幽霊がよォ!俺に何のうらみがあるんだよテメェ、心底イラつくぜぇえええええええ!
「あ! ……あぁ……いってぇ……」
憤怒に駆られ頭に血が上り興奮すると共に全身の所々から痛みが走り、中々の激痛でふと目が開いた。
視界に入ったのは医務室の天井だった。
起き上がろうと上体を起こそうとすると、体中に激痛が走るが歯を食いしばって痛みを堪えて床に足を着いてベッドに腰を掛ける。
掛布団をずらしてみると、パンツ一丁で体の至る所に包帯が巻かれていた。
包帯のを少し捲ると焼けただれた皮膚が見えて咄嗟に包帯を戻して冷静に考える事にした。
俺はリンドウさんの意識の中に居たが、実際にはあの炎で焼かれて瀕死状態だったか。
とりあえず情報が必要だ。あの後どうなったのか、リンドウさんやユウナ、レンはどうなったかのかが気になって仕方ない。
「とりあえず、制服何処だよ……」
待てよ、よくよく思い出してみれば制服とか殆んど燃えたんじゃね……?
俺がリンドウさんを引っこ抜こうとしてるときにジュウって音がしてたけど、あの音ってやっぱり俺がこんがり焼けた音じゃないのか?
とりあえず、近くに着るモノが無いか探すか。
痛みを堪えて震える足取りでベッドの手すりや壁に手を付いて医務室をうろつくが、何も見つからない。
その時、廊下から誰かの気配を感じた。
ヤベェ、まさか医務室に入ってきたら……!
まずい……! パン一で包帯グルグル巻きの変態が医務室を物色していたとか色々まずいぞ!
しかし、ベッドまで戻ろうにも体は激痛で上手く動かない。このままでは……!
せや! 跳んでベッドの上に着地すれば危機は免れるぞ!
頼む俺の足、あともう少しベッドまで近づいてくれ!
必殺技の『フライング偵察兵ポセイドン』はこの距離では届かん!
俺の足『無茶言わんといて、アー折れそ……。もうさっさとポセイドンしろや。多分届くよきっと』
分かった! 行くぞ足!
心の中で『ヤアアアあああァ‼』と叫んで身をベッドへ投げ出す。
そしてベッドにすら届かず床に着地、同時に体に更なる激痛が走り、俺はそのまま力なく床に転がる。
「届かなかった……」
俺の足『そもそも、ボロボロで歩くだけで辛いのに跳べるわけないやん。バカじゃね?』
謀りやがったなこの足がァ!
案の定、医務室の扉が開いた。
ああ、終わった――いや、ベッドの近くで倒れる事によって何とか起き上がろうとしたが、上手く立てずに床に倒れてしまったと言う状況にも見えなくはない。
しかし誰が見舞いに来たのだろうか?
ふと振り返ると、そこには雨宮教官が立っており、俺の事を呆れたような目で見ていた。
「あ、あの……」
き、気まずいぞ。流石に気まずいぞ。気まずすぎるぞ。気まずくて頭おかしなるで……。
「何をしている? 怪我人はさっさと寝て療養しろ」
雨宮教官が俺の首を掴んで持ち上げて乱雑にベッドに寝かせてくれた。
ちょっとやり方が雑すぎるんじゃないんですかね?
そういう所があるから男が近寄――やべっ、睨まれた。
そんな訳で俺が気絶した後に何があったか、一通り説明された。とにかく、シンプルに言えばユウナがまた無茶した事とリンドウさんが無事に戻ってきたとの事だ。やはりユウナとレンが上手くやってくれたのだろう。おかげで俺も無事に帰ってくる事が出来たと言う訳だ。
正直、リンドウさんが無事に戻ってきたと聞いて他の話があまり頭に入ってこなかったが……今だけはそんなことを気にしないで素直に喜びたいものだ。
雨宮教官が医務室を去ったのと入れ違いでリンドウさんが見舞いに来てくれた。
リンドウさんも体中に包帯を巻き、右腕はアラガミの腕に変貌しているが、手の甲に神機のCNCの様なものがあった。
なんでもこれのおかげでアラガミ化の進行が治まったとの事。
「悪かったな。急に行方を眩ませちまって」
「全くですよ。俺なんてリンドウさん探している間に、マータとか言う人面猫4匹と命がけの鬼ごっこをする羽目になったんですから」
「ははっ、だが五体満足に生きてるじゃないか」
「死ぬなって命令したの他でもないリンドウさんでしょう? 当然ですよ」
互いに笑いながら言葉のチャッチボールを始める。
色々な事を話した。一緒に面倒を見ていた例の集落の事や、アラガミ化したリンドウさんに手酷くやられた事、リンドウさんの意識の中でどうしたのか等を話す。
「そうか、お前も……」
「大したことはしてないですよ。ユウナとレンが居なけりゃ俺もお陀仏だったわけですし」
「まあ、なんにせよ……随分世話をかけたな。ありがとな、ユウ。ユウナにも、お前にも教えられたな」
「え、何がですか?」
「生きる事から逃げるな。それと、己の命令一つ守れん奴が指図するな。全くその通りだな。覚悟はとっくに決めたと思っていたんだが……決まっちゃいなかった」
参ったと顔に表しながら言葉を紡ぐ。
そういや、そんな事を口走ったな。頭に血が上ると余計な言葉を紡ぐ癖は直したいと思っているが中々に難しい。
「兎に角、もう大事な人を置いて行ったら駄目ですよ? 悲しませた分、しっかり向き合ってあげないと」
「…………ああ、そのつもりだ。それにしても、お前も大分変ったな」
リンドウさんは一瞬、目を見開いたがすぐに表情を戻して笑う。
「ユウナにも言われましたけど、そんなに変わりましたか?」
「随分大人びてるぞ。一瞬、歳上に感じた」
まあ……生きてきた年数はともかくとして、実際に生まれた時代的にはあなたよりも遥かに早いですからね。本来ならオラクル細胞とか言う発生して50年ちょっとでイキってるのよりもずっと年上やぞ。
「あ、リンドウさん。実は1つだけお願いがあるんですが……」
「お? なんだ言ってみろよ?」
「リンドウさん引っこ抜こうとして制服燃えたんで新しいの支給申請だすんですけど、俺もう支給上限に達してるんですよね。次に支給を申請したら手数料かかるんですよ。ちょっと負担して欲しいなーなんて……配給ビールと交換で」
「ああ分かった。それぐらいならお安い御用だ」
「マジですか。ありがとうございます」
俺は頭を下げて礼を言う。
よし、良かった。これで出費が少しだけ抑えられるぞ。
リンドウさんも医務室を去り、俺は暇になった。
「暇だな。金縛りごっこでもして遊ぶか」(唐突)
コンコン
金縛りごっこを初めて1時間程経った頃、ノックの音が響き、俺は金縛りごっこを中断して「はいってどうぞ」と声を掛ける。
「容体はどう?」
「ユウナか。悪いな、あのアラガミを片付けるのに手間取って助太刀に行けなかった。苦労を掛けたな」
入ってきたユウナに労りの言葉を掛ける。
「ユウが足止めしてくれなかったら間に合わなかったかもしれないんだよ? 謝る必要なんてないよ。あ、レンがね。ユウにありがとうって言ってたよ」
「そうか。せめて俺も礼の一つくらいは言いたかったが……」
「レンの事は気づいていたの?」
「いや、詳しくはわからん。ただ人間の気配じゃなかったからな。得体は知れないが、不思議な体験ばかりしたんでな。奇跡の1つと言う事にしておく」
「そっか。うん、それがいいよ」
「ユウ、お邪魔するよー」
「これはこれは、整備班のリッカさんじゃないですか。どうしたんだ?」
「うん、ちょっとだけいい知らせがあってね。聞きたい?」
いい知らせ?
一体なんだろうか……。ぶっちゃけ何なのか思いつかんぞ……。
俺はとりあえず頷いた。
「じゃあ、教えるね。ハンニバルのコアを利用したら、ユウの神機を再生できるかもしれないんだ」
「な、なんだってー!?」
ヤベェよこの人。今サラッと凄まじい発言をしやがった……!
これは朗報だ。しかし性能は壊す前より幾分か落ちてしまうし、本来は投棄するレベルで破損した神機を修復するので試験など何回も通さないといけないなど色々と条件はあるが……それでもアラガミと真っ向から対抗できることに変わりはない。
「リッカ、一応聞いておくがドッキリじゃないよな? 誰かがドッキリ大成功ってプラカードを持って出てくるなら今の内だぞ?」
「態々嘘なんてつかないよ。4月1日じゃないし」
リッカが苦笑いしながら答えた。
「ただし、さっきの条件もあるし『再生できるかもしれない』だからね? だから『ちょっとだけ良い知らせ』なんだ」
「でも、可能性はあるんだろう?」
リッカが頷き、俺は是非とも修理をお願いした。
「じゃ、私はそろそろ戻るね。お大事に~ってそうだ。ユウナ、今の内に神機のメンテナンスをすることになって、整備班からメールを送ったから申請書出しておいてね?」
「うん。分かった。戻ったらすぐに提出するよ」
それだけ言ってリッカは医務室を後にし、ユウナも端末を取り出して内容を確認している。
「神機に何かあったのか?」
「そういう訳じゃないけど……リンドウさんの神機を無理に使ったせいでメディカルチェックとかしないといけないって言われて、私もずっと待機命令出されててさ」
そういえばリンドウさんの神機と自前の神機をハンニバルの口に突き刺してエグイことしてたな。顔には出さなかったが、内心困惑したのは記憶に新しい。
俺でもせいぜい首を斬り落とす位だが、流石にぶっ刺してクパァは失笑を禁じ得ない。
*
「悪いなコウタ。手間ばかりかけちまって」
コウタに肩を貸してもらい、もう片方の腕で杖を突いて廊下を歩く。
「気にすんなって。辛かったら言えよ? ゆっくり行こうぜ」
コウタはスーツを着て身嗜みを整えおり、俺は着替える手間+金銭の問題で正装を用意できなかったので結局いつも通りの制服だ。ちなみに新しく支給して貰った新品だ。今日はとてもめでたい日だからな。泥を被った格好はできない。
「いやー結婚式なんて楽しみだなー。サクヤさん、綺麗だろうな」
そう、今日はリンドウさんとサクヤさんの結婚式だ。
俺も療養していないといけないが、杖を突けば何とか歩けるので勿論参加することになった。流石に患者衣で参列するのはあれなので、時間こそかかったが何とか制服を着て、さあ会場へ行こうと思ったらコウタが迎えに来てくれたという訳だ。
肩を貸してもらいおかげで大分楽だ。
「お、重役出勤だなユウ」
「ようタツミ、お前もさっさと意中の相手口説き落として派手な式でも挙げろよ」
茶化してくるタツミにこちらも反撃して互いに笑いながら会場に入る。
「あ、やっときましたね。もうすぐ始まりますよ?」
「ああ、分かった」
紅いドレスに身を包んだアリサに案内され、コウタと共に席に座って暫くすると式が始まり、最初は支部長でもある榊博士や身内である雨宮教官が挨拶をしてついに主役の登場だ。
リンドウさんはタキシードが良く似合っている。そしてサクヤさんはただでさえ別嬪さんだが、ウエディングドレスを身に着けて超別嬪さんになった。
式が終わるとパーティーになり、タツミをはじめとした連中にあんまり無茶するなよとツッコミを入れらたり、笑いながら思い出話に花を咲かせたり、実に有意義な時間を過ごした。
世の中捨てたもんじゃないなとしみじみ思う。
今日だけは、戦いの事なんて忘れてもいいだろう。
ドリンクを飲んで一息つくと、急に胸と首が熱を帯びて眩暈までして鼻根をつまんでみる。特に楽にならないが、このまま何もしないよりはマシだと思いそのまま今度は鼻根を押す。
「ユウ―、写真撮るから行こうぜ! ん、どうした?」
「いや、ちょいとな」
コウタを誤魔化して、グラスの中身を一気に飲み干して席から立ち上がった。
夜中に仕事関係の電話が入ってきたらげんなりする。やめちくり~