Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
コロナに振り回された1年でしたが、めげることなく今年も元気に過ごしたいですね。
今年も宜しくお願い致します。


幕間 ~約束~

「とりあえず、今日の検査は終わりだよ」

 

「うっす。で、俺は一体にいつになれば任務に出られるんですかい?」

 

 2時間半に及んだ右腕の検査がようやく終わって書類を纏めている榊に聞くが、返ってくる返事は曖昧なものと予想する。

 

「前代未聞な出来事だからね。慎重に事を進めるのは当然さ。サクヤ君とゆっくり過ごせる良い機会だと思うよ?これから忙しくなることを考えればね」

 

 やっぱり人の事をこき使う気満々なのなこの人。

 

「次の検査まで日が空くだろうから、当日不調にならないように体調管理に気を配るように頼むよ。それじゃ」

 

 書類をもって研究室を出て行った博士に続いて俺も研究室を退室してエントランスへ向かう。

 

 

 かぁーっ、暇だなァ。どうすっかなー。ビール――はダメだよな。半端な時間に飲むとサクヤにどやされちまう。訓練場で軽くウォーミングアップは…………ああ、面倒になったな。やめるか。

 

 

 エントランスへ到着して階段の下へ目を向ければ、極東三バカトリオ+αがトランプを片手に睨み合っていたのを見つけた。

 

 

「くっそ、今月ピンチなのに負けられるか……!」

 

「ピンチの癖して賭けババ抜きに乗ったのかよ」

 

「うるせー、ほっとけ」

 

「とりあえず今はシュンが持ってるって事だな」

 

「馬鹿に駆け引きは無理だな」

 

「んだとォ! オラ、ユウさっさと引けよ!」

 

「なんで俺に八つ当たりするんですかね……? カレルも火に油注――アッ!」

 

「オッシャー!」

 

「ここまでつまらない勝負は初めてだ。分かりやすすぎるだろお前ら。ユウ、さっさと引かせろ」

 

「ちょっと待て。今シャッフルするから」

 

 ユウが手に持つカードをシャッフルして目を閉じてカレルに引かせる。

 あいつってトランプだとかやる時は良く顔に出るっけか。目をつぶって時の運に任せるのも手段の1つだろう。

 

「引かれる時に目を閉じる辺り、シュンよりかはマシだよな。流石は生粋のギャンブラー」

 

「なんなのお前ら?さっきからディスりまくってるけど」

 

「いや、俺何も悪口行ってないだろう?てか俺って褒められたのか?」

 

「世間一般的にギャンブルは良くないものと言う認知だ。後は分かるな?早く引けタツミ」

 

「へいへい。お、先に上がるぜ」

 

「は⁉ マジかよお前!」

 

 タツミがカードを全て手放してソファーから立ち上がり伸びをし、こちらに気づいて声を掛けてきた。

 

「リンドウさん、検査は終わったんですか?」

「ああ、無駄に長くて参った。お前さんら、賭け事は姉上に見つかると面倒くさいぞ?」

「今日の晩飯誰が払うかですから金のやり取りはしないですよ」

 

 引くカードを選びながらユウが金銭の貸し借りではないから問題ないと言うが、そもそもこういう現場を押さえられたら姉上から雷が落ちる気がするのだが……。

 

「上がりだ。馬鹿同士楽しめ」

 

 次にカレルがカードをテーブルの上に置いて立ち上がり、残った2人を煽る。

 

「「こいつと同類にするな」」

 

 結局いつもの2人の直接対決になった。

 よく罵り合っている2人だが、度々勝負事となれば最後に残るのはこの2人だと言う事実を思い出した。勝負の神様も面白い事をする。

 

「早く引けよユウ。ビビってんのか?w」

 

「テメェなんか怖くねえよ! ええい面倒だ! どちらにしようかな神様――なんぞ必要ねぇんだよォ!こっちじゃオラぁ!」

 

「外れだぜユウw」

 

「うっそだろお前w笑えるなあいまいみー」(錯乱)

 

 ユウが錯乱して変な事を口走っている間に素早くシュンがカードを引き、テーブルに2枚のカードを捨てて「上がりィ!」と叫んで立ち上がる。

 

「おいおいマジかよ……」

 

 今回の敗北者がテーブルに散らばったトランプを片付けながら項垂れる。そんな奴に気にすることなくタツミ達はメニユーを言う。

 

「俺唐揚げ定食な」

「俺は日替わりランチ」

「白ボルシチ」

「お前らホントこういう時遠慮ねえよな」

 

3人の要求に未だに杖を突いて立ち上がった怪我人はぶつくさ文句を言いながら財布を開く。

 

「おーいユウー」

 

「なんすか?」

 

「俺晩酌セットで頼むわ」

 

「図々しいなアンタも!って金足りねえじゃん。ちょっと下ろしてくるわ」

 

 そう言って杖を突きながら階段を上りターミナルへ下ろしに行った。

 

「あいつって下ろすほど貯金溜まってんのか?」

 

「さあ?でもリンドウさん居ない時に車両整備の補助してる最中に部品ぶっ壊したみたいで良い金額持ってかれたらしいっすよ」

 

「あいつもシュンに負けず劣らずの馬鹿だなやはり」

 

「おうカレル、テメェさっきから何かと突っかかって来るが喧嘩売ってんのか?」

 

 このやり取りを見ていると返ってきたと言う実感がある。俺が居ない間に皆頼もしくなったなと感じる。暫く見なけりゃ、人ってのはこうも違って見えるもんかねぇ……?

 ユウは大分大人びたと思っていたが、他の連中も大分成長している。特にユウナやコウタ、ソーマにアリサを見たときは驚いた。隊長をやっていた頃はこのメンツを引っ張るのは骨が折れるかと思ったが、今はそれも懐かしい思い出だ。今年入隊した連中がここまで成長するとは驚きだ。

 

 

「リンドウさん?」

 

「いや、後輩たちが逞しくなっているのを見て……おっさん感動してんだ」

 

「なんだそれ……まっだおっさんって年でもないだろ、リンドウさん」

 

 タツミは苦笑い、カレルは端末を弄り、シュンが呆れた顔してツッコミを入れてくる。

 くだらない話をしている間にユウが戻ってきて食事代のfcを3人に渡し、俺にも手渡してきた。

 

「冗談のつもりだったが……」

 

「安いやつくらいなら御馳走しますよ。結婚祝いってことで」

 

「んじゃありがたく貰って置くわ」

 

 

 極東3バカトリオ+αと俺で少し早いが晩飯を食おうと食堂へ向かう。

 少し早いだけに食堂は人が少なく、俺たちは纏まって席に着く。

 

「しかし、最近妙じゃねえか? アラガミが良く活性化して何かと忙しくて敵わねえぜ」

 

 タツミが食べながら呟き、全員がそれに同意する。

 

「なんだか妙な偏食場の乱れがあるとか噂が立っているな。まあ、その分報酬の良い任務が回って来るんで文句はねえが」

 

 どうやら噂としてだが、広まっているようだ。最近は少し特異な偏食場の乱れが至る場所で発生しており、それに伴ってアラガミの活動が活発化している。未だに原因が分からない以上、後手に回るしかない。あまりこの現象が続くと徐々に消耗していき、苦しくなる。

 

「それじゃさっさと出向いて片っ端から倒しちまえばいいだろう?アラガミが居なけりゃ何の問題もなくなるわけだし」

 

「だから偏食場の乱れが普通のモノと違うから警戒しつつ守りを固めているんだろうが」

 

 シュンの言葉にカレルが反論して互いに口論となってそれをタツミとユウが間に入って止める。

 

 

「どっちにしろこれから忙しくなるだろう? タツミ達は防衛、俺は偵察、リンドウさんは遊撃、それぞれやる事も違う。こうやって暇なときは情報交換は良い機会だろ?」

 

「んだな。アネットとフェデリコも大分慣れてきたし、こっちも方針も考えないといけないな」

 

「稼げる任務さえ寄こしてくれれば文句はない」

 

「あ、抜け駆けすんなよカレル!」

 

「報酬の良い任務はその分危険だ。大抵リンドウさんか第1部隊に振られるんじゃないのか?」

 

「ちっ、なら頼み込んで同行させてもらうしかねえか。あ、ユウ。お前も割の良い偵察任務があったら誘えよな」

 

「ああ、もっとも病み上がりの人間にそんな危険度の高い任務回すとは思えないがな」

 

 ユウがジャイアントトウモロコシの粒を口へ運びながら言う。

 

 

 

 食事が終わっても暫く話し込み、防衛班組は明日に備えて早めに寝ると言って戻っていき、ユウも病室へ戻ろうとするが、晩酌に付き合えとラウンジへ連れて行った。

 

「酒じゃなくていいのか?」

 

「飲酒する怪我人なんて居ないでしょ普通」

 

 ソフトドリンクを片手に椅子に腰を掛けてテーブルに寄りかかる。ユウを尻目に

 グラスの酒を一気に飲み干し、瓶からもう一杯分グラスに注ぐ。

 

 

「レンの奴、もう少しお前とも話してみたいって言ってたぞ」

 

「そうですか。いやはや、奇跡ってのは侮れないもんですね」

 

 ユウもグラスへ口をつけ、テーブルに置いて一息つく。

 

「それにしても……顔の傷と言い、白髪と言い苦労をしたようだな」

 

 横一文字の深い傷に、髪の毛は白――よく見れば灰色か。色々あったことは察することができる。最近のこいつはよく何かを心配している顔をしているらしい。それもアーク計画の後から。ユウも一時期MIAになったらしく、その間に何かあったのだろうが…………聞くだけ野暮かもしれない。

 

「この苦労、リンドウさんもあと数年で分かると思いますよ?」

 

 後数年で分かる……? どういうことだ? だが妙に説得力があるのは何故だろうか。

 ホントに最近は大人びているように感じる。こいつの方が年上なんじゃないかと勘違いする程に変わった。一体何がここまでこいつを変えたんだ?

 

 

「しかし、こんな時間まで飲んだくれていいんですか?奥さんが寂しがるんじゃないですか――って噂をすればですね」

 

 ユウの発言でハッとして奴が見ている方を見ると、そこにはサクヤが立っていた。

 

「リンドウ、ユウはまだ怪我人なのよ?こんな時間にまで付き合わせるのも悪いわよ?」

 

「いえいえ、俺も医務室で寝たきりだと暇疲れしてしまうもんで、誘ってもらえて丁度良かったんですよ」

 

「ごめんなさいねユウ。リンドウ、明日また右腕の検査でしょう?備えて早く休みなさい」

 

「え、暫く日が空くって博士は言ってたぞ?」

 

「緊急で検査項目が増えたから端末に連絡したけど返信が返ってこないって博士から連絡が来たのよ……」

 

 呆れて言葉を紡ぐサクヤを尻目に端舞うを取り出して受信履歴を見ると確かに博士からその旨の連絡が来ていた。

 

「ん、ああホントだ。すまんすまん」

 

「それじゃそろそろお開きですね」

 

「だな。悪いな、付き合ってもらって」

 

 

 ユウと別れ、サクヤと一緒に自室へ戻る途中でサクヤにユウの事を聞いてみた。

 

「サクヤ、ユウって大分変ったと思わないか?」

 

「確かに、雰囲気は前までと比べれば全然違うわ。きっと…………何かあったのね」

 

「そうか」

 

「それに、最近顔色が良くない日が多いわ。バイタルも不調に偏っている事が多いって聞くし、心配だわ」

 

「そりゃ初耳だな」

 

せめて火傷の傷が完治するまで何事もなければいいが。

 

「なあ、サクヤ」

 

「ん?」

 

「明日、午後から非番だろ? 出かけようぜ?」

 

「どうしたの急に?」

 

「いや……心配かけた分、ちゃんと奥さんに構ってやれってユウに説教されてな」

 

「あら、ならエスコートはお願いしようかしら?」

 

 明日の約束を取り付けて2人で部屋へ戻った。

 レン、気づけば色んな奴に助けられていた。そしてお前にもな。お前から貰ったこの命、無駄にはしないからな。また会おうと約束したんだ。その時まで胸張って生きてやるよ。

 

 




ゴッドイーターの新作を願いつつ、今年もぼちぼち投稿していきます。
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