Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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更新がほぼ一か月遅れてしまいました。申し訳ありません。


舐めてんじゃねえぞオラァッ!

「もう行くのか」

 

「ああ。検査結果は極東に送られて、それをあちらでも確認して後日結果を俺に知らせるらしい」

 

ヘリポートにてジャックとの別れの挨拶をする。

 

 

朝早く起きたので少し運動をしてから朝食を摂り、その後にお土産には何を買っていけばいいかジャックにアドバイスを貰って一通り無難な物を手に提げてヘリポートまでやってきた。

 

 

「また来いよ。なんなら転属でも構わんぞ」

 

「なんだかんだ極東が気に入ってるから転属はねえわ」

 

「そうか。生きてればまた会えるだろう」

 

「だな。お互いくたばらないように気を付けつつ頑張ろうや」

 

「ああ、またな」

 

 

 ジャックと拳を合わせて俺はヘリに乗り込む。パイロットが離陸開始と発言するとヘリは浮き始めた。

 

 窓からジャックに手を振り、ジャックも俺に手を振りかえす。

 

 

 

 

 *

 

 

「極東区域に到達、極東支部までもうしばらくです」

 

 長い空の旅でウトウトしていたら、パイロットの声で目が覚める。

適当な返事を返して窓から下を見下ろせば何度も任務で訪れた市街地エリアが広がる。

 

 

「…………?」

 

 大型アラガミの気配を感じるが……妙だ。そこいらの大型とは訳が違うな。禁忌種や変異種に近いか。普段なら調査のためにここでヘリから降りるところだが、流石にそれは勝手が過ぎるか。

 どうせアナグラでも反応を感知できている筈だ。何かしらの対策は考えているだろう。

 

 アナグラに着くまで暇なので少し仮眠でも取ろうかと思い、座ろうとした瞬間に突然ヘリが強い揺れに襲われた。

 

「どうかしたのか?」

 

「地上からアラガミの攻撃がッ!」

 

 パイロットが焦りつつアナグラへ通信を試みるが、何も応答がない。さっきの揺れで機械がイカれたか。

 

 パイロットの隣に位置取り、地上を見下ろすと紫色の炎の塊がこちらへ飛んできていた。

 

「っ」

 

 パイロットを座席から引き離し、そのまま担いでヘリのドアを蹴り破って宙へ跳びだした。

 直後、ヘリに紫炎が衝突して爆発を起こし、爆風を受けながら地上へ落下する。

 

 建物の屋根に着地し、身体に掛かる衝撃を我慢する。

 人を抱えていなければ衝撃を逃がせたんだが、こればかりは仕方がない。さて、面倒なことにな――

 

 目の前にハンニバルが突然姿を現し、咄嗟に跳び退くと共に俺が立っていた場所へ白銀の籠手を叩きつけた。そこから屋根全体に亀裂が走り、嫌な予感と同時に崩壊してパイロット諸共下へ落ちていった。

 

 

「くッ!」

 

「ぐ、ぅ……ぁ……」

 

 隣からうめき声が聞こえてみればパイロットが片腕を押さえ、苦しそうに悶えていた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「す、すみません……腕が……」

 

 押さえる腕を見れば、医療の心得がない俺でも骨までやられているのが分かる。青く腫れて痛々しい。

 だが、悠長にしている暇じゃない。さっきのハンニバルがすぐに襲い掛かってくるだろう。

 

 パイロットを担いでその場を離れようとしたら、紫色の炎に照らされて熱を感じる。

 

 奴め、焼き払うつもりか……!

 

 パイロットに少し耐えろと言って急いで崩落した建物から脱出して近くの瓦礫の陰に隠れる。ゆっくりとパイロットを下ろし、瓦礫に背中を預けさせて楽な姿勢を取らせる。

 

 通信機を取り出し、アナグラへ繋げる。

 

『こちらアナグラ、どうされましたか』

 

 男性のオペレーターが応答し、こちらの状況を伝えると既に第1部隊がこっちへ向かっていると言われた。暫く囮をして時間を稼ぐしかないようだな。

 

「俺は奴を引き付ける。悪いがここで待っていてくれ」

 

 それだけ言って瓦礫の陰から跳び出すと側面に気配と同時に危険を感じ、飛び退くと紫炎の剣を携えるハンニバルがこちらを睨みつけていた。

 

 紫色の炎……なら侵喰種……じゃないよな。体の色は白だが、原種と比べれば紫色の部位が見受けられる……。明らかに変異種だな。

 

『Guuuッ!』

 

 唸り声をあげた直後に奴は目の前から姿を消して背後に回り込まれた。

 

「っ!」

 

 咄嗟に屈んで炎剣による横薙ぎを回避し、飛び退いて距離を空けるが奴はあっという間に距離を詰めて再び攻撃を繰り出してきた。次もギリギリで躱すが、更に連続攻撃を仕掛けられて何とか掻い潜ってハンニバルの背後へ回るが、凄まじいスピードで尻尾が迫ってきた。

 

 両腕を交差させて何とか防御するが、あの大きさの尻尾を凄まじい速さで叩きつけられたらただじゃ済まない。歯を食いしばって激痛に耐えつつ吹き飛ばされ、何とか受け身を取ってすぐに態勢を整える。

 

 立て続けに奴が迫り炎剣の切っ先が俺目掛けて向かってくる。

 

 最低限の動きで尚且つ紙一重で熱さを感じながら躱し、もう片方の手が爪で空気を切り裂きつつ迫り、跳んでそのままハンニバルの頭を踏みつけた拍子に高く跳んで周囲を確認する。

視界に食い荒らされた建物が見え、食い荒らされた穴から見るに広い空間を持っているのが分かる。

 

 一直線にその建物へ向かい、奴を待ち伏せる。

 

 此処なら奴の動きもある程度制限できる。

 

 奴が暴れればそのまま生き埋めにしてある程度の時間は稼げるだろう。

 

 

 ハンニバルは横穴から侵入してこちらへ拳を叩きつけてくる。

 何とか躱すが、このハンニバルはとにかく速い……! 何とか攻撃に対応できているが、一瞬でも気を抜けば反応が遅れてお陀仏になる。乱戦ではこいつ以上に厄介な奴は居ない程に、脅威の速さだ。

 

 両の爪で引き裂こうと攻撃してくるが、落ち着いて躱しつつ隙を伺う。

 

『GYAAAAAッ!』

 

 突然、雄たけびを上げたかと思えば炎の剣を両手に持ち、2本を合わせて1本の巨大な炎剣が完成してそれを振り回そうとした。

 

「こいつ……ッ!」

 

 熱気に襲われながらも直撃は避け、壁や鉄骨を背にして建物の崩落を狙いつつ立ち回る。

 

『GUUUUU!‼!』

 

 イライラしてきたのか炎の大剣を床へ突き刺すと、床一面が紫色の炎に包まれ始め、咄嗟に跳ぶが床から紫炎の柱が幾つも飛びだしてきた。

 

「うおっ⁉」

 

 空中ステップで宙を蹴って次々と現れる炎柱を回避しつつやり過ごしていると建物が崩落を始め、瓦礫が紫炎で燃えながら降って来る。火傷覚悟で振ってくる瓦礫へ跳び、即座に次の瓦礫へ跳んで上りつつ脱出して外へ降り立ち、紫炎に包まれる建物の残骸を見る。

 

 瓦礫の間から光が一瞬煌めき、その直後に紫色の爆炎が轟音と共に弾けて瓦礫を吹っ飛ばし、炎の向こうからハンニバルが爪をこちらへ向けて突っ込んできた。

 

「くッ!」

 

 爪での突き刺しを受け流し、そのまま腕を両手で掴む。

 

 

「舐めてんじゃねえぞオラァッ!」

 

 

 雄たけびと共に腰を入れて引っ張り、背負い投げでハンニバルを地面へ叩きつけた。

 

『Gu……』

 

 地面へ叩きつけられたハンニバルはこちらを睨み、やり返そうと炎剣を手に取って振り下ろしてきたが、俺の目の前にユウナが躍り出て装甲を展開して炎剣を受け止めた。

 

 突然敵の出現でハンニバルが困惑した隙を突いて、コウタがハンニバルの眼前に飛び出して、高出力のバレットを撃ちだしてハンニバルは怯んで態勢を崩した。

 

 

「ユウ、待たせたな!」

 

「済まんコウタ。悪いがお土産は奴のおかげで灰になった」

 

「え、マジ?」

 

「呑気なこと言ってないでこの人を連れて撤退してください。医療班に要請を出しておいたんで、合流してそのままアナグラへ」

 

 

 アリサがパイロットを担いでやってきた。

 パイロットをアリサから渡され、背負う。

 

「ソーマ、こっちに合流して」

 

「悪いが、此処は頼む」

 

「任せて。アリサ、左右から攻めるよ。コウタは奴の弱点を!」

 

 ユウナは素早く指示を出し、神機を構えてハンニバルへ向かい、アリサもユウナに続いて駆けていく。

 

「ユウ、本部での土産話、後で聞かせろよ!」

 

 コウタがそれだけ言って銃撃しつつ駆けていき、俺も撤退を始めた。

 

 

 

 ハンニバルの変異種を第1部隊に任せてヘリのパイロットを背負って医療班との合流エリアに着き、そのままアナグラへ帰還した。

 出張先からやっと帰ってきたと思えば、早々災難に巻き込まれてかなり疲れた。

 

 とにかく手続きが必要なので受付へ向かう。

 

 

「ではこちらが出張報告書になります。提出をお願いしますね」

 

 ヒバリちゃんから書類を手渡された。とりあえずさっさと書き上げて休むとしよう。

 はあ、少ない小遣いを使って折角お土産を買ったのにハンニバルの変異種とか言う腐れアラガミにパーにされちまった。金の恨みは食べ物以上に恐ろしい事を教えてやりたいところだ。

 

 

 報告書を早急に書き上げて、再びヒバリちゃんに渡すと榊博士が呼んでいるとの事で俺はそのまま研究室へ向かう。

 

 

 

「さて、慣れない場所で缶詰状態で検査したせいで疲れも溜まっているだろうけど、今はとてもよろしくない状況でね」

 

「なんかあったんですか?」

 

「第2のノヴァが出現したのさ」

 

 

 うわーすっげぇ不吉なワード……。

 

 俺が本部に出張している間に極東はとんでもない脅威に襲われたらしい。

 

「エイジス事件」の顛末でノヴァが月へと飛び立った際、母体から引き千切られた莫大な量のオラクル細胞群が地球上に残留した。「ノヴァの残滓」と言うべきか。

 これが変質して新たなアラガミと化すことが懸念されたため、極東支部は順次回収、厳重に管理されながら沈静化作業が進めていた。

 

 だが、保管施設から「残滓」の流失が発生。貯蔵庫は内側から喰い破られており、恐れていた事態が現実となった。

 「ノヴァの残滓」より誕生したアラガミを、極東支部は「第二のノヴァ」すなわち終末捕喰の後継者であるとして討伐作戦を実行したらしい。

 

 この第2のノヴァがとても厄介なアラガミで神機による攻撃をほぼ無効化する防御力を持っていたらしい。単純に『硬い』ではなく、神機が選り好みして「こんなん喰えんわアホらし」と職務放棄した結果まともにダメージを与える事が出来なかったらしい。

 

 しかも知能も高く、1度目の作戦時は死んだふりして逃走。

素の戦闘能力も他のアラガミとは別次元で2戦目にはソーマ、コウタ、アリサに重傷を負わせて医務室送りにしたとか。

 

 対策としては、こちらも神機を特殊なアラガミのコアで強化してぶつけると言う筋トレして殴れとも言わんばかりの対策法だ。

 極東地域にはノヴァの残滓を捕食して特殊な進化を遂げたアラガミが何体か存在しており、そいつらのコアが必要らしい。

 第2のノヴァも普通のアラガミは食べ飽きたらしく、こちらと同じく特殊な進化を遂げたアラガミのコアを狙っており、争奪戦の真っ最中だとか。

 

「先程君を襲ったハンニバルの変異種もそのアラガミの内の1体さ」

 

「とりあえず、まずは第2のノヴァですね。俺もできる事はやりますよ」

 

 

 いやーしかし俺ってなんで大事な時に居ないんだろうな?

 ピターとリンドウさんの仇云々の時は異世界に。

 アーク計画の時は都合悪くアラガミが攻めてきてエイジスには行けずに、防衛戦を展開。

 リンドウさんを助ける為に飛び出すも、結局敵の足止めをしてやっと救援に迎えると思ったら意識が飛び、目を覚ましたらハッピーエンド。

 

 そして今回は本部にただの検査で出張している間に世界滅亡のカウントダウンが知らない間に始まっていたと。まあ、知らない間に終わる前に戻ってこれたので間に合ったと言う事にしておこう。

 

 とことん肝心な時に役に立たん男であるな自分。自分で言ってて悲しくなってくる。

 

 

「ふむ。無事ハンニバルの変異種を討伐できたようだ――こ、これは…………!」

 

 榊博士が突然驚きの声を上げた。

 

「ヒバリ君、第1部隊に任務更新の連絡だ。彼らに繋いでもらえるかい?」

 

『分かりました。少々お待ちください』

 

 榊博士が焦りながらヒバリちゃんに通信して忙しそうに手を動かす。

 

 

『博士、珍しいですね。どうかしたんですか?』

 

「つい先ほど、空母で極めて強力なオラクル反応を補足した。まさに我々が探している超弩級アラガミと呼ぶに相応しいものだ。恐らく突然変異的に発生したものだろうが、このアラガミのコアを獲得できれば戦況はこちらに大きく傾く筈だ。何としてでもノヴァよりも先にコアを手に入れたい。任務直後で悪いが『榊博士!緊急事態です!』」

 

 ヒバリちゃんから緊急事態と報告を受ける。

 

『第2のノヴァが当該アラガミのポイントに高速で接近中!ポイント到着まで推定3――秒です!』

 

「な、何だって……!」

 

『博士!俺たちは現場に急行する!』

 

 ソーマからの連絡を最後に通信が終わり、榊博士は背もたれに寄りかかってぼそりと言った。

 

「頼む、間に合ってくれ……!」

 

 空母エリアか……。俺の足でも間に合わないな。結局俺にできることは無いと……はぁ……ホント役に立たん男であるな自分。

 

 

 

 それから暫くした後、第2のノヴァがコアを喰らい、逃走したと残念な報告がされた。

 

 




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