Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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皆さん、予防接種は受けましたか?
私はまだです。

予防接種受ける→人が密集する開場へ行かなければいけない→逆に危なくね?→効果があるのかも怪しいから猶更恐ろしくて行けない。


幕間 ~嫌悪~

 

「…………ゥ、ッ!」

 

悶えるような熱を感じて目が覚める。

 

「はあ……嫌になる……」 

 

汗で体が湿り、ベッドもシーツも若干だが湿っている。

先日も異常気象で凄まじい暑さだったせいで、部屋着やシーツを洗濯したのだがまた洗わなければいけない。

 

 

 つい昨日の事だ。榊博士から……本部からの来賓が私を食事に誘い、相手をしてほしいと言われた。

 任務が立て込んでいるのもあって断ろうとしたのだが……相手はフェンリルに多額の寄付をしている人らしく……流石に博士も気の毒だと思い、話だけならと応じた。

 

 本部の上層部で理事を務めている人と出資をされている人、3人で会食になり、普段は来賓をもてなす部屋を使った。

 

 正直、気持ち悪かった。理事と呼ばれる男が舐め回す様な視線で見てきて、気分は最悪だった。

 開口一番で本部直轄の部隊への転属などの話振ってきたり、そのたび言葉を濁しかなくなりはっきり言うと面倒くさい。

 

 

 極めつけには会食が始まる2時間前に部屋に理事から荷物が届き、その荷物は手触りから高級品だと感じ取れるドレスだった。しかし、問題があった。

 

 露出が凄まじかった。胸元が開け、丈も短い。姿勢を意識しないと下着が見られてしまうのではと思うぐらい。普段のアリサやサクヤさんの服装よりも過激的だ。

 

 とてもじゃないが着られない。神機使いである故に、よく無茶をするなと小言を言われる程に突破口切り開くために自身を顧みない行動を取る事も多々ある。

 お陰で体に傷や痣もあるのであまり人に見せたくはない。

 仕方ないのでサクヤさんの結婚式のときに来たドレスで会食に赴いた。

 

 理事には開口一番で体に痣や傷があって人に見せたくはないので身に付けれず申し訳ないと頭を下げた。

 相手は快い返事を返し、こちらも出過ぎた真似をして済まないと謝罪された。

 

 出身や経歴など互いに話し合い、時間が来たので会食は終了してとりあえずその日は解散となったが、暫く彼らはアナグラに滞在するらしくそれを聞いて気が重くなるのを隠して彼らと別れた。

 ずっと気持ち悪さを感じていたせいか吐き気がしてトイレに籠った。

 

 

 本当に気持ち悪い。ここまで他人に嫌悪感を覚えたのは初めてだ。

 

 

 

時計を見ればまだ朝早い。

 

「偶には湯船に浸かろうかな」

 

浴槽に水を溜めるという中々出来なかった贅沢な入り方を終えてから着替えを済まし、朝食も済ませる。

 任務の準備は昨日の内に終わらせてあるので確認するだけで終わり、結果的には時間を多く余してしまった。

 

 

 暇なのでエントランスに行けば誰か居るかと思い、向かうとカウンターの上部に設置されている席でユウとジャクソンが頭を押さえて項垂れていた。

 

「おはよう、2人ともどうしたの?」

 

「朝早いな神薙隊長、俺ならこの時間に目が覚めたら2度寝決め込むぜ。う……!」

 

「ああユウナか、おはようさん。うぅ……頭いてぇ……」

 

 2人のこの状態、昔お父さんがよく陥っていた状態に酷似している。何処からどう見ても二日酔いだ。

 

「2人ってまだ未成年でしょう? 大丈夫なの?」

 

「詰め寄られたら、チョコ喰ったらまさかの酒入りで2人してやられたって誤魔化すさ」

 

「タツミの奴も酔いつぶれたしな」

 

 ジャクソンからタツミの名が出たので恐らく3人で飲み明かしたのだろう。タツミも未成年に飲ませているのを知られたら危ない気がするが……。

 

「大体テメェ飲みすぎなんだよジャック。俺もタツミもそこまで強くねえよ」

 

「ちょっと水でも買って来るよ」

 

「ああ、悪いな。後で金返すわ」

 

「良いってそれぐらい」

 

 

 エントランスの階段を降り、出入り口に設置されている自販機で水を買って2人に渡す。

 

「「あ^~水が染みる……」」

 

 2人がハモリ、同時に顔色もだんだん良くなってきている。水を飲んだだけでこんなに早く回復するものなのだろうか……。

 ジャクソンも底知れない所があるし、ユウもユウでとんでいる所があるから2人が特別だと言う事にしておこうか。

 

「2人とも今日は任務?」

 

「部署で書類仕事」

 

「こっちは装甲壁の更新する箇所の防衛だ。まあ、酔いつぶれた班長には頑張っても貰うしかないが……」

 

「酔い潰したのは他でもないお前だけどな」

 

「あ、そっかぁ……」

 

 ユウのツッコミにすっとぼけるジャクソン、息をするように漫才をする2人。

 きっと漫才のようだと言えば否定してくるだろうけど……。

 

「さて、ユウ。酔い覚ましに軽く打ち合うか?」

 

「この戦闘狂め、そんなやりたきゃ付き合ってやるよ」

 

 突然、ジャクソンは唐突に言い出してその言葉に対してユウも面白そうだと言わんばかりの顔をして立ち上がる。

 

「2人とも急にどうしたの」

 

「訓練所で乳繰り合――「やめないか!」

 

 セクハラ発言を止めるようにユウの拳がジャクソンの頬を一瞬横切り、ジャクソンは頬を庇いつつ軽やかに回避して頬を摩る。

 

「あっぶねー。今本気で殴ろうとしただろっ」

 

「お前なら回避するだろうと信じたうえでの攻撃だ」

 

「〇〇だろう運転は危ないって習っただろう!」

 

「それとこれとは話が別だ。時間も惜しいし、さっさと行こうぜ」

 

「あ、じゃあ訓練場の使用申請『言い出しっぺの法則って知ってるか?』しておくわ」

 

 やっぱり漫才にしか見えない2人のやり取り。ちなみに私も誘われたが任務も控えてるから見学と言う事で一緒に訓練所に向かった。

 

 ついでに審判もやって欲しいと頼まれたので快く引き受け、2人がモックアップ神機を互いに構える。

 

 

「じゃ、制限時間10分で一撃当たったらそこで終了だよ? では……始め‼」

 

 

 声を合図に2人が凄まじいスピードで動き、モックアップ神機同士が激突する。

 ユウに関しては以前から共闘したこともあったので流石の速さだが、ジャクソンも負けていないどころか若干だがユウよりも早い。

 

 ジャクソンが一撃打ち込み、ユウは巧みに防御で応戦して2撃目を弾いて少し態勢を崩したジャクソンへ即座に踏み込みつつ反撃を繰り出すが咄嗟の防御で防がれ、続けて得物を振るも逆に2撃目が弾かれユウは後ろに下がる。

 

 その隙を突くようにジャクソンは文字通り鋭い突き攻撃を仕掛けるもユウは体の軸をずらして受け流し、驚くことにジャクソンが持つ得物の腹を踏みつけて床へ叩きつけた。

 ジャクソンはそれを分かっていたのか足を大きく開いて態勢を安定させて力尽くで得物を振り上げてユウを後ろへ押し飛ばす。

 

「っ!」

 

 ジャクソンが不敵に笑いながらその勢いのまま得物を振るが、ユウは冷静に防ぎつつ姿勢を変えて受け流した。

 

「おっと!」

 

 受け流されて床へ滑り込んだジャクソンは足払いをするように下段攻撃で牽制し、ユウは跳んでそのまま空中から蹴りを浴びせようとするが腕で防がれ、ユウは反撃を警戒したのか即座に蹴りを防いだ腕をそのまま足場代わりに使って跳び、距離を取る。

 

 

 どちらもレベルの高い立ち回りをしている。

 神機使いが対人戦と言うのは中々無い話だが、反武装組織の鎮圧などに当たる場合もあるので訓練しておいて損はないだろうが、それにしては2人とも戦い慣れしすぎている。

 

「お前絶対リサも交えて訓練したときの事を根に持ってるだろう⁉」

 

 『リサ』と聞いた覚えのない名前――恐らくジャクソンの同僚だろうか。とにかくユウとジャクソン、リサと言う人の3人で訓練してユウは苦労したらしい。

 

「君のような勘の良い同期は嫌いだよ。今度は痛い目見るかもねェ!」

 

 ユウが腰を落として突きの構えを取ったと視認した直後――いつの間にかジャクソンへ距離を詰めて渾身の突き攻撃を放つ。

 

 ジャクソンが刀身を盾にするが、あまりの衝撃で受け止め切れないでいるところをユウは素早く刀身を足場にして跳び、全体重をかけた蹴りを放つ。

 

「いっ⁉」

 

 ジャクソンは身を投げ出して床を転がって何とか回避して態勢を整えて構え直した。

 

 

 互いに踏み込んで得物を振って激突する。

 片方が攻めれば片方が守りに徹し、時に互いの立場が逆転して剣戟の応酬が何度も続き、傍から見ても達人同士の戦いだと良く分かる。

 2人とも自分より早く入隊し、その分の経験があるのを考慮したとしても……とても入隊1年目でできるような動きではない。

 

 

 2人の戦いを眺めている時、急に体が熱を帯び始めて息苦しくなる。

 

「…………っ!」

 

 何とか堪え、深呼吸をして体を落ち着けるが2人に隠し通すことはできないようだ。

 2人はこちらを一切見ていないのにも関わらず、同時に手を止めてモックアップ神機を下ろし、こちらへ駆けてきた。

 

 

「昨日もだろ。休んだ方が良いぞ?」

 

「兎に角終了だ。ユウ、神薙隊長を連れて行け。後片付けと終了申告はやっておく」

 

「分かった、頼む。ユウナ、行こう」

 

 ユウがジャクソンにモックアップ型神機を投げ渡した。ユウの肩を借りて共にエントランスへ戻り、ソファーに座ってユウから水を手渡される。

 

 

「あ、リーダー。ユウもおはようございます」

 

 水を飲んで一息ついた直後にアリサが来た。

 

「おはよう、アリサ」

 

「アリサ、今日ユウナと任務か?」

 

「はい。ソーマとコウタも一緒ですよ。開始まで時間はまだありますが……」

 

「こいつ、今日は少し調子が良くないらしい。休ませたいところだが、今本部の馬鹿共が来てるだろう?出会う度に小言がうるさいようでな。アナグラ離れた方がマシなんだと。だからフォローしてやってくれ」

 

「出撃は控えて欲しいのですが……はあ、分かりました。リーダー、私が前衛に回りますのでコウタと後方支援をお願いします」

 

 アリサの言うことに頷き、ユウにも感謝しないといけない。調子が悪いならアリサの事だから休ませようとしてくるだろうが、今は理事と会うのは気が重い。ユウもそれが分かっていて気を使ってあえてフォローするように頼んだのだろう。

 

 ユウも時間なのでそろそろ行くと言って仕事へ向かい、私とアリサは任務の作戦を練り直すためにコウタとソーマがエントランスに揃うまで互いに意見を交えた。

 

 

 

 

 

 市街地エリアの中では特にアナグラから離れている地点で今回の目標が捕捉された。

 今回は車両で向かい、コウタが運転している間に神機の最終調整をし、途中でソーマがコウタに神機の最終調整をしろと言って運転を代わった。

 

 

「…………着いたぞ」

 

 車両を停め、神機との接続をしながら外へ出てレーダーに表示される目標の地点まで警戒しつつ向かう。

 街中でも特に入り組んだ場所へ入り込み、警戒を強めて一瞬だけ気配を感じるとソーマも何かを感じたらしく、神機を構えた。

 

 アリサとコウタにも構える指示をして気配を感じ取る。

 

 

「ッ…………来るよ! 散開!」

 

 

 合図とともに建物の壁が破壊されて何かがそのままこちらへ降って来る。

 一足先に指示を飛ばしたおかげで全員余裕をもって奇襲に反応できた。

 

 強力な冷気を肌に感じて相手を睨みつけて神機を構える。

 

「これは……あの時のプリティヴィ・マータ! 識別不明の反応の筈なのにどうして⁉」

 

 アリサが驚くのは無理もない。以前交戦した冷気を纏っているプリティヴィ・マータ。

 普通のマータと違い体格も大きく、纏う冷気も以前と比べて増して強力になっている。あの時は――無意識の間に致命傷を与えて撃退できたらしいが、今のこちらは地力が上がり、神機連結解放<リンクバースト>状態に移行できれば無意識化で行使した力を完全に制御して戦える。

 

 だが、強くなったのは向こうも同じ。油断をして良い筈はない。

 

「こいつはヤバそうだな……!」

 

「ソーマ、あまりリーダーに負担は掛けられません!できるだけ早く撃破しましょう!」

 

「分かっている。俺が前に出て気を引く。動きを知っているお前は隙へ差し込め」

 

 そう言ってソーマは地面を蹴ってマータへ向かっていき、私は神機を銃形態へ変更してコウタと共に射撃を始める。

 アリサもマータへ向かっていき、マータの死角から攻撃を仕掛けるがアリサの神機がマータへ触れる直前で冷気がマータの体表を覆うように凍り付いてアリサの攻撃が上手く通らなかった。

 

「くっ……!」

 

 アリサが顔をしかめて咄嗟に引くと地面から氷柱が飛び出した。

 ソーマの足元にも冷気が集中したのを視認し、ソーマに叫ぶと即座に退避して足元から生えてきた氷柱を回避する。

 

 

 マータが吠え、辺り一帯へ向けて氷の槍を作り出し無差別に放つ。

 

 ソーマがコウタを庇うように装甲を展開して防御し、私とアリサは迫る氷槍を躱しながら接近し、火属性のバレットをマータ向けて撃ち込む。

 

 火の玉は冷気と衝突して蒸気となり、冷気による防御が弱まった一瞬を突いてアリサの神機が突き刺さし、即座に飛び退くアリサへ冷気の塊を吐き出す。

 

「させない!」

 

 神機を剣形態へ切り替えながら冷気の塊へ突っ込んで叩き斬る。

 

 マータがこちらへ気を向けている間にソーマとコウタが死角へ潜り込んでコウタが銃口を向けてバレット連射し、続けてソーマがバスターブレードを叩き込み、マータは悲鳴を上げて飛び退く。

 

 方針は決まった。同じ部位に攻撃を重ねて冷気の防御を薄くしたところで直接叩く。

 

『GUuuuッ!』

 

 怒りに身を任せたのか見る者を圧倒する形相でマータが飛び跳ねて空中から大量の氷槍を降らせ、全員が回避に専念する。

 誰も被弾こそしなかったが、マータや味方へ距離がバラバラになり4人全員距離が離れ連携が難しくなる。私たちを引き離すために今の範囲攻撃を繰り出したのだろう。

 

 そしてマータが地面へ降り立った瞬間、マータを起点に冷気が辺り一帯を覆い、周囲から氷柱が飛び出し、更に全員の距離を離れていき包囲するように飛び出す氷柱に動きまで制限される。

 

「くっ‼」

 

 マータが目の前に現れ、爪を振り下ろしてくるがソーマが割って入り装甲を展開して受け止めつつ即座に刀身で反撃を仕掛け、マータの爪を破壊する。

 

「無理するな、下がれ」

 

 そう言ってそのままマータへ斬りかかり、コウタの銃撃が飛び怯んだ隙にソーマの一撃がマータの体を抉る。

 

 『GUUUUッ!』

 

 逃がさんと言わんばかりに空中で氷槍を作り、無差別に放つ。

 

 向かってくる氷槍を神機で壊そうとした瞬間、マータは冷気を吸い込み、白い霧に変えて解き放って周囲を覆った。

 

「皆!攻撃を仕掛けてくるよ!注意して!」

 

 目くらましに間に攻撃が来ると思い、叫んで気配を探ると突然近くで轟音が起こった。マータの攻撃ではないが……今まで感じていたマータの気配が遠くなっていった。

 

 

 何――ッ!

 

 突然脇腹を刺された直後、身動きが取れなくなり口を塞がれた。

 誰かに手で口を塞がれ、傷が熱く疼き視界が眩んで意識を手放した。

 




先日カビの怪物と素手で戦う夢を見た。
素手で挑むとか汚すぎる。夢の中の自分の思考回路を疑う事が多々ある。

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