Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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まさかWindowsアップデートで失敗した挙句マウスを破壊してくるとは思わなかった。マウスに至っては新品に買い替えても認識しないと来たもんだ。
アプデと何とかマウスを認識させようと3日奮闘する羽目になった。

お陰で無駄な時間を過ごせたよ、やってくれたなMicr〇soft……!



上でふんぞり返ってるだけの奴が一番嫌いなんだよ

 

 

 

山のような種類仕事を順調に片付けていき、一服付けようと自販機でお茶を買って飲んでいた。

 

「コーヒーよりお茶だな」

 

 やっぱりお茶って美味いわ。この苦みは好みだぜ……コーヒーの苦さとはまた違う。

 

 飲みながら部署へ戻り、席について仕事を再開している内に同僚の1人が任務から帰ってきた。

 

「お疲れさん」

 

「お疲れー」

 

 早速偵察の結果と任務の報告書を纏めている。

 そういえばこいつ元々本部に所属してたらしい。ちょっと人狼部隊(ルー・ガルー)だとか理事の事とか知ってんじゃないのか?

 

 

「なあ、ちょっと聞きたいんだが……」

 

「うん?どったの?」

 

「今本部から偉い人来てるじゃん?どんな奴なんだ?」

 

「さあな。俺も詳しい事は分からんが……ああ、そういや黒い噂があったか」

 

「噂?」

 

 何時の時代も権力者は悪い噂を囁かれるものだが、実際に悪い事してそうな顔してるからな……あのおっさん。

 

「奴から指名されて任務に行くと帰ってこないだとか。指名されるのはほぼ女性神機使いで、実際に何人かMIAになってる筈だ。真偽はともかく、下の人間の声なんざ上に届く筈もなく……だがな」

 

 そういや女性(ジャック曰く)を部屋に連れ込んでいたか。

 と言う事は肉体関係迫って口封じってやつか……。ぶっちゃけ想像できるのはこれぐらいなものだ。

 

「じゃあ、あいつ護衛してる連中については……」

 

「護衛の……ああ、本部のデータベースに侵入しても情報が無かったとかって連中だろ?アレばっかりは知らねえぇな。まあ、護衛してるってことは相当の手練れじゃねえの?俺こそ顔を合わせた事なんて無いが。そもそも本部は人が多すぎて把握しきれんし」

 

 やはり情報関係は徹底しているか……。ジャックの言う通り、中々尻尾を捕まえさせてくれない連中のようだ。

 

「ああ言う奴に関わると碌な目に遭わないぞ?詮索はやめとけ」

 

 折角の忠告を無碍にするようで申し訳ないが、既に厄介事に巻き込まれている可能性が大いにある。それでも、『分かった。そうする』と頷いて端末に向き直って作業に戻り、入力作業を再開する。

 

 

「あ、なあ此処の処理ってどうすればいいんだ?」

 

「ん? ここをこうすればええんやで」

 

「済まん、助かる」

 

 完成したデータを見直して記入漏れ等がない事を確認して印刷する。

 

「それって何所に提出だ?」

 

 印刷し終え、資料を順番通りに纏めようとしたら聞かれ、雨宮教官へ出すと答えると、ついでにこれも持って行ってくれと頼まれると共に印刷機が動き出す。

 

 

 出てきた資料を手に取って纏め、雨宮教官の執務室へ向かった。

 

 

 

 

 

「やはり、周辺のアラガミは数を減らしているか」

 

「間違ありませんね。俺も先日の偵察で特別に許可を貰って任務区域より先の様子を見ましたが、大型や中型は勿論、小型も大した数を確認できていないです」

 

 作っていた資料と言うのは最近、アナグラ周辺のアラガミが減少している事に関しての真偽だった。長期任務や重要任務などで空けている連中を除き、人員を総動員してアナグラ周辺の偵察・調査を行ったが本当にアラガミの数が減っている。

 

「また何かの前触れだと覚悟した方が良いようだな」

 

「ええ、最悪のパターンを想定しておけばいざ動く時にもスムーズな行動ができるかと」

 

 雨宮教官はまず油断をしない人だ。今回の件も、傍から見ればアラガミが少ない=少しは平和だと考える奴も一定数要るだろうが、短期間でここまで数を減らすと言う事は――凄まじい勢いで強力なアラガミが捕食しているとも考えられる。そして捕食を続け、進化したアラガミの次の狙いは間違いなくアナグラだ。

 

「できる事なら、敵が仕掛けてくる前に打って出たいものだが……簡単に動けないな。上層部は状況を楽観的に見てばかりだ。前線を知らない者が上だと、何より危険に晒されるのは下に居る者だ」

 

「確かに、今危惧している状況を伝えたところで帰ってくる返事は予想できますがね」

 

 極限を知らない奴は、物事を楽観的に見る傾向になる。生まれついて慎重すぎる位が丁度良いようなきがするが……。

 

 雨宮教官の端末に連絡が入り、それに目を向けた教官は一瞬だが眉間に皴を寄せ、立ち上がる。

 

「急用が入った。話はまた後日だ。下がれ」

 

「了解」

 

 雨宮教官も執務室を後にし、早歩きで去って行った。

 

 

 俺も部署へ戻ろうとエレベーター向かおうとしたとき、聞き覚えのある声が途中の扉から聞こえてきた。

 

 

『だから今すぐに繋げと言っているだろう!』

 

 

 本部からのお偉いさん、理事の声だ。イラつきが混じる声が聞こえ、誰かと通信をしていると思うが……相手までは分からない。

 

 険悪な雰囲気が感じられる。偉い人の内輪揉めって聞いてて面白いのでこのまま聞き耳を立てる事にした。丁度護衛の人狼部隊も見当たらない。此処で失言でも録音してジャックに教えてやるのはどうだろうか。

 

 そんな訳で端末を取り出して録音モードにして扉に当てる。

 

 

 

 

『こんばんは理事。退屈な本部を離れて久々の外はどうかね?』

 

「余計な前置きは良い。技研から通達が来たが神薙の身柄拘束後の指示、どういった了見だ?」

 

『無論、身柄を拘束できればまずは理事の好きなように使って構わない。用が済んだらこちらへ寄こして欲しいと言うだけさ』

 

『ならば構わんが……。ところで本部の神機使いが1人極東で妙な動きをしているがこれはどういうことだ?』

 

 ジャックの事か……! まずい、感づかれているか……。

 

『ああ、何でも極東には妙な神機使いが居て、そいつの監視らしい』

 

「妙な神機使い?」

 

『妙と言っても、神機を失って一時期MIAになっていた無能さ。体から普通の神機使いとは異なるオラクルを検出されて先日、本部へ精密検査のため来ていたらしいが……オラクルの詳細が分からない故、偏食因子の制御機能が不調を起こしてアラガミになられたら大変だ。その神機使いの同期を監視に付けたらしい』

 

 お、俺の事か……! しかも無能って言いやがった……! くっそ、戦争も知らねえ若造が舐めやがって……! 

 上でふんぞり返ってるだけの奴が一番嫌いなんだよなおい。

 

「ほう、その神機使いに興味がわいた。女か?」

 

『男だが? この好色じじいめ。はぁ、神薙の身柄が技研へ渡るのは1年以上かかりそうだな』

 

「ちっ、男ならどうでも良い。技研へ譲るのは2,3年かかるだろうよ。なに、飼っている間は丁重に扱う。顔と体つきも申し分ない。十分愛で、儂の子を産んでもらった後に譲ってやろう。実験の材料でも何でもすると良い」

 

『おいおい、程々にしてくれよ。神薙は優秀な母胎なんだ。それに、あんた何時だか目をつけてた神機使いの女性が既に妊娠していたのに腹を立てて嬲った後に細工した偏食因子でアラガミ化させたんだろう?それで丁重に扱うと言われてもね……』

 

 …………こ、こいつ……外道なんてもんじゃねえ……!

 同僚の言っていた噂とやらは本当だったって事か。こいつらを野放しには出来ねぇな。それこそ本当に消さねえと犠牲者が増える一方だ。

 

『ところで、極東を何とか傀儡にしようと意気込んでいたらしいが、どうなんだい?』

 

「ふん、無駄な足掻きに手を焼いているわ。ペイラー榊、食えぬ男だ。ヨハネスが亡き今、引き入れるのは容易だと思っておったがな……。研究だけが取り柄の男と思っていたが、そこは認めてやろう」

 

『へぇ、アンタが認めるなんて相当だな。でも、気を付けた方が良い。極東には遥か昔から『鬼』が出ると言われているからね』

 

「下らん、アラガミの方が恐ろしいわ。お前も尻尾を掴まれんようにうまく隠せ。む……? 少し出てくる。また連絡を取ろう」

 

『ああ、分かった。それじゃあ、そっちの都合のつく時間を追って知らせてくれ』

 

 

 ジャックに知らせた方が良いな。あいつ、今どこにいるだろうか。メールでも送ってみるか。とりあえず博士の研究室へ向かおうと思い、端末を操作しながら小走りで廊下を駆ける。

 

 

 メールを送り、研究室へ向かう途中でジャックと鉢合わせした、

 

「ユウ、丁度良かった! 今すぐ研究室へ来てくれ!」

 

 

「お、おう」

 

 

 *

 

 急いで研究室へ入ると、そこにはユウナを除く第1部隊とリンドウさん、サクヤさん、雨宮教官も揃っていた。

 榊博士が忙しそうに端末を操作しており、ますますただ事でないことが察せられる。

 

「揃ったな。んじゃ情報の共有と行こうか」

 

 リンドウさんの発言に全員が頷き、アリサの口から紡がれた。

 

 

「ユウナが行方不明?一体何があったんだ」

 

 驚きだがまずは冷静に聞く。以前交戦した冷気を纏うマータと交戦中、視界を霧で奪われ轟音が響いて霧が消えた頃にはユウナは神機を残して姿を消していたらしい。

 ユウナが居た場所に血痕があった。

 

 血の量から致命傷ではないらしいが、近くを捜索すると第1部隊の誰のものでもない足跡が発見された。

 

「神薙は攫われたと言う事で間違いは無かろう。そして、攫ったのは……」

 

 人の手が介入したと言う事は……さっきの盗み聞きから確信しているが、間違いなく理事の指示だろう。

 チャンスが来るのをずっと狙っていたのか、これ程早く手を仕掛けてくるとは……。

 

「理事の護衛隊だ。榊博士に頼んで奴らの動向を時間ごとに追ってもらっていたんだが、神薙隊長が消息を絶った時間が丁度連中が近くで任務かは知らんがうろついていた」

 

 ジャックと榊博士が先に手を打っていたおかげで犯人が分かった。確かにシステムが完全に独立している研究室からなら悟られずに奴らを探れる。

 

「くそっ、なんでユウナが……何の目的で」

 

 コウタが悔しがり、その問いにジャックが答える。

 

「惨い話だが……あらゆるアラガミを屠る戦闘能力、高い感応能力に神機適合率、そして驚異的な潜在能力。研究者からすれば喉から手が出る程欲しい母胎だろうな」

 

「その通りだジャック、ほらよ」

 

 ジャックに端末を投げ渡し、受け取ったジャックに録音音声を再生するよう言うと、多少音が拾えていないが先程の通信が再生された。

 

 

 

「そ、そんな……そんなの酷すぎます。人をなんだと思って……!」

 

 アリサが怒りを覚え、ソーマ自身も似たような扱いを受けたことがあるのか顔を険しくしており、コウタは怒りで震えている。

 

「3人とも、今は落ち着いて考えましょう」

 

 サクヤさんが3人を嗜め、今後の事をどうするべきか話し合う事にした。

 

 

「私は理事とその護衛隊について調べる為、情報管理室へ行ってくる。今回の事は榊支部長とも話し合ったが内密にする」

 

 雨宮教官はそれだけ言うと研究室を後にしてジャックはテーブルに地図を広げる。

 

「ふむ、やはり理事の護衛隊はユウナ君が失踪した地点の近くでまだ反応が掴めている。ジャクソン君の予測は的中していたね」

 

 榊博士が立ち上がり、モニターに周辺の地図を表示させて赤い点が5つ固まっている箇所を指し示しながら言う。

 

 

「まずい状況だ、神薙隊長は既に連中の手に堕ちた。正直今すぐにでも行かなければ手遅れになる可能性がある。今本部から連絡が来たんだが、ロシア支部から航空機が1隻極東へ向かって発ったらしい。恐らく神薙隊長を連れていくためだ」

 

 ジャクソンの言葉を聞き、今まで忙しそうに端末を操作していた榊博士が手を止めて険しい顔をしている。

 

「何らかの手段でユウナ君の腕輪からビーコン反応を出さないように細工されているとして、完全に向こうへ連れていかれたらどうやっても助け出せなくなるだろう。ユウナ君の情報も改竄され、ビーコン反応も腕輪に細工をされて完全に反応を感知できないようにされたら……こちらは打つ手がなくなる」

 

 

 端末に通信が入り、博士が応答すると「なんだって⁉」っと声を荒げた。

 その瞬間、モニターに表示されている地図上でアナグラ付近に赤い点が幾つも現れアナグラを囲むように配置されている。

 

 

「ヒバリ君、ツバキ君に連絡を! すぐにアナグラの神機使いを緊急招集して当たらせてくれ!こちらも一刻を争う事態になった」

 

「博士、何があった?」

 

 ソーマが冷静に問うと、その答えは案の定だった。

 

「多数のアラガミが装甲壁付近に集まっている」

 

「な、こんな時に限って……!」

 

 アラガミの数は減っている筈――いや、狙ったかのようなアラガミの侵攻……まさか理事め、何か小細工をしたか。アラガミとやり合っている間にユウナを連れて行かれちまう。

 狼狽える中、リンドウさんが頭を掻きながら考えて地図を指さす。

 

「よし、お前ら。第1部隊は出撃して正面のアラガミを片付けながらユウナが失踪した地点へ向かえ。防衛は俺が残ってやる」

 

「んじゃ、俺とユウは一足先に出て目的地へ行って捜索・および救助だな」

 

「作戦と言うにはお粗末だが、時間がない。とにかく時間との勝負だ」

 

 リンドウさんの言葉に続き、ジャックが地図の上に5個の磁石を置く。

 

「皆、一つ言っておく。理事の護衛隊ってのは本部直轄の特殊部隊だ。手練れである事は間違いない。神薙隊長を救うならこいつらとぶつかる事になる。最悪殺害も考えろ。暗器やピストルでも持ってけ」

 

 そういうとジャックは研究室の片隅置いてあるアタッシューケースをテーブルの上で開け、そこには携帯に適した形状のナイフとピストルが収められてあり、全員に配る。

 

 地図の上の5つの磁石を指さす。

 対人・アラガミ討伐なんでもござれの連中であり、アラガミ化した神機使いの始末もしている連中。

 手練れであるが、こちらもアラガミ討伐に秀でた精鋭・第1部隊と対人戦闘の経験なら俺は勿論、ジャックも居る。

 

 そして数はこちらが上。勝てない戦ではない。

 

「ツバキ君に車両使用の許可を出してもらった。こちらからも情報の提示・オペレートとできる限りの支援をする。無事、ユウナ君と一緒に帰ってきて欲しい」

 

 全員が言葉に頷いて研究室を後にする。

 第1部隊+αで廊下を駆ける。

 

「ジャック、俺は車両を出しておく。神機を持ったらゲートにまっすぐ向かえ」

 

「分かった。頼むぞ」

 

 廊下を駆けつつジャックに言い、途中で別れるとリンドウさんも俺と同じ方向へ着いてきた。

 

「ユウ、悪いが乗せてけ!先陣切ってできるだけあいつらの道を空けておきたい」

 

 リンドウさんの言葉に頷いて2人で車両格納庫へ急ぐ。

 

 

 




コロナと暑さで今年は例年よりもイライラしております。
だから台風、こっちに来るな。
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