Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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お前ホモかよぉ!

「……………」

 

あ、ボーっとしてたな。ミスター・榊による地獄の講義は終了した際に、受講者に多大な疲労を感じさせる特殊効果がある。俺は効果を受けないと言う完全耐性は持っていないので勿論多大な疲労を感じ、魂が抜かれたようにエントランスのソファーで座り、ボーっとしていた。

 

「やべえな、仕事する気起きねえな。もう何をするにしても気力が沸かん」

 

ちなみにユウナは講義終了後すぐにリンドウさんと一緒に任務へ出た。コウタはサクヤさんに同行して行った。あの2人には驚かされた。もしかしたら2人は相手の効果を受けないと言う完全耐性があるのかもしれない。いや、コウタは明らかに寝ていたから効果を受ける以前の問題だな。効果の対象になってないな。

 

 

さて、金貰っている以上仕事しないって訳にもいかないか。気乗りはしないが、やる事やるかぁ……。

 

ソファーから立ち上がり、エレベーターに乗る。行き先を選び、壁にもたれ掛って到着まで気長に待つ。すると、エレベーターが止まった。まだ目的の階層ではないので誰かが相乗りしてくるのだろう。此処で相乗りしてきたのが雨宮教官や支部長だったら気まずすぎて死ねる。苦手なんだよなぁ……あの2人……。

 

扉が開き入ってきたのは青フードが特徴のソーマと、自称華麗な神機使い、エリックだった。

 

「やあ、ユウ。奇遇だね」

 

「よお、エリック。ソーマも暫く顔合わせてなかったな」

 

「…………」

 

2人に手を上げて挨拶するが、ソーマは無反応だ。相変わらず何考えてるのか分かんねえな。フード取れば大分雰囲気変わると思うんだがなぁ……。

 

「これから任務か?」

 

「いや、これから束の間の休息と言うやつさ。ひとまず、部屋に戻って英気を養うよ。華麗に戦うためには休息は必要不可欠だからね。おっと、僕の部屋はこの階だから、先に失礼するよ。ユウも華麗に自身の務めを果たしてくれたまえ」

 

「ああ、ごゆっくり」

 

エリックはエレベーターを降り、去っていった。

 

「…………」

 

「…………」

 

おいヤベェよ、気まずいよ。この青フードいつも俺に関わるなオーラ出してるもんだから、話しかけづらいぞ。いっつも険しい顔してるなこいつ。

う~ん、良い奴ではあるんだがな……。

 

「新人、中々しぶといな」

 

うわ! いきなり話しかけてきやがった! びっくりしたじゃねえか。しかも開口一番がそれかよ……。ふむ……。

 

「ああ、おかげさまで半年目だよ。こんなクソっタレな職場でも続くもんだ」

 

「ふん……」

 

クソっタレな職場――ソーマの任務に俺が初めて同行した時、言われた言葉だ。いきなり「ようこそ、クソっタレな職場へ」って言われて困惑したね。まあ、確かにクソっタレな職場だな。そこは否定しないがな。

 

「先日の外部居住区襲撃の時、前線に居たらしいな。神機も無いくせに前に出るな。余計な死人が増えるだけだ。あの襲撃こそ規模はたかが知れてる。だから運よく死なずに済んだだけだ」

 

「そうだな。神機は無いし、余計な事かもしれないな。だが、自分から死に行っちまうような奴には言われたくねえよ」

 

「ちっ、生意気な事をほざきやがる……」

 

口じゃ悪態ついてるが、心なしか笑っているようにも聞こえる。こいつとの付き合い方は少しコツがいるが、仲良く出来れば愉快なものだ。エリックの愉快さには及ばないが。

 

「お、俺の行先の階だ。んじゃな」

 

ソーマに手を振り、エレベーターから降りる。

よし、さっさと仕事こなすか。

 

 

 

 

「一回作業始めれば気力が戻るんだよな。ホント気まぐれな肉体と精神だよ」

 

風邪気味で調子悪くても作業してれば気にならなくなって楽になるんだよな。調子悪いのに仕事してりゃ楽になるって人間の体ってホント分かんねえな。あれか? 俺が気まぐれな性格だから俺の肉体も気まぐれなのか? なあ、肉体よ。君は俺の性格が気まぐれだから君も気まぐれなのかい?

 

エントランスに戻り、長椅子で寛ぎながら自問自答?する。傍から見れば滑稽だな。自分でも馬鹿馬鹿しく思うわ。

 

 

目の前を裕福そうな少女が横切る。あれって確かエリックの妹じゃねえか? いつもなら親御さんと一緒に来てるはずだが……迷子か? ウロウロしているが……。

 

「お嬢さん、人探しか?」

 

長椅子から立ち上がり、少女の近くに寄って屈んで問う。小さい子と話すときは目線を合わせると警戒されずに済むぞ。ロリコンには必須テクニックだな。なんで犯罪を助長させること言ってんだ俺は。これじゃ犯罪予備軍と呼ばれても文句言えねえぞ。

 

 

「お父さんときたんだけど、偉い人とお話があるからここで待ってなさいって言われたの。でも、エリックに会いたくてさっきから探しているけど見つからないの」

 

「人探しなら、あそこのお姉さんに聞いてみな。放送で呼び出してくれ――」

 

ヒバリちゃんの方を向くと、タツミがヒバリとしゃべって――いや、あれじゃ仕事の邪魔だな。おのれタツミ、なんて間の悪い奴……。しかし、仕事を妨害されているにもかかわらず、ヒバリちゃんはタツミの言葉に耳を傾けながら作業をしている。なるほど、あれがプロか。

 

「あっちのお姉さん忙しそうだから……。案内するよ。一応俺エリックとは友達だから」

 

「ホント!? ありがとうお兄さん! 早くエリックに会わせて!」

 

エリック妹を連れ、エレベーターに乗り込む。エリックの部屋がある階に着くと、奥の扉を指さしながら説明した。

 

「あそこがエリックの部屋だ」

 

「うん! ありがとう!」

 

そう言ってエリック妹は俺が指差した扉へ走っていった。

ふっ、兄妹水入らずが良いだろう。他人の俺はクールに去るぜ。

というのは建前であのままエリックに会ったら妹の自慢話を延々と語られる事が目に見えている。と言うか、延々と語られた。こちとら残業で疲れてんのにそんな事お構いなしに聞かされた。多分、ソーマも俺と同じ犠牲者だろう。

 

 

さて、エントランスに戻って寛ぐか。もしかしたらシュンがいるかもしれんな。会ったらとりあえず、荒治療に命令違反の処罰、減給の3連コンボを食らっただろうから「ねえねえ、今どんな気持ち?」って聞いて煽ろうかな。

 

心をウキウキさせながらエレベーターに乗り込む。エレベーターが動き出すが、すぐに止まる。どうやら先客ならぬ後客の様だ。まあ、乗ってくる奴が知り合いである可能性なんてちょっとしたもんだから、恐らく名も知らない他人だろ。

 

扉が開いた瞬間、胸がその存在を俺に主張してきた。

うお!? でけぇ! これほどまでに見事な果実の持ち主は中々居ないだろう。心なしか何回か見覚えがあるものだが、気のせいだろう。さて、この果実の持ち主は――!?

 

「あ……どうも……」

 

「ああ」

 

(^o^)<うわー雨宮ツバキ教官だー

 

なんてこった、少し前に雨宮教官や支部長と相乗りしたら気まずいなって心の声のせいか!?

見事にフラグを回収しちまったな。心の中で思っただけでフラグ立つとかどんだけだよ。これもう無心で生活するしかねえじゃん。いや、無理だよ! んな芸当できたらそれだけで食っていけるわ!

 

「………………」

 

「………………」

 

 

アカン、これは実にアカン。何で1日に2度も同じ思いしなきゃならんのだ。気のせいか、エントランスに到着するまでの時間が長く感じる。

 

 

「先日の外部居住区襲撃の時、前線に居たらしいな」

 

「え、ええ……」

 

うわぁお説教だ……。仕方ねえ、ひたすら「はい」と言うしかねえな。

ぶっちゃけさ、上の人に怒られて「はい」って答えてると「「はい」って言ってりゃいいって問題じゃねえぞ」ってキレられることが多々あるんだけど、「はい」がダメならなんて言えばいいんだよ。無言なんてそれこそダメだろ。それとも俺の頭が悪いから「はい」しか言葉が出てこないのか? 頭の良い奴はどうやって受け答えしているんだ? いや、頭が良かったらまず怒られるヘマなんかしねえからそれ以前の問題か。ホント出来の悪い奴に厳しい世の中だな。出来ないなりに頑張っている人だって居るんだからその努力をしている姿勢を褒めるべきじゃねえのか? 

 

 

仕方ねえ、お叱りを清聴するか。

 

「本来なら厳罰だ。何故、何も処罰が無かったか分かるか? タツミからお前の事を不問にして欲しいと頼まれた」

 

「タツミが……」

 

「私にも立場がある。そう簡単に例外を許すわけにはいかんのだがな……あそこまで食い下がられると少々気の毒でな」

 

「俺ってば支えられてばっかりだな……」

 

「しかし、次は無いぞ。今後違反をしたら容赦なく懲罰房に放り込んでやる」

 

怖いねえ……。まあ、なんだかんだ言って牢屋にはお世話になってるからな。今じゃ仲良しよ。入らないに越したことはねえがな。今回は助かったぜ。タツミの心遣いと――

 

「雨宮教官の慈悲に感謝します。ありがとうございます」

 

教官に頭を下げる。すると、エレベーターが止まり、扉が開く。

 

「次からは注意しろ。あと、住民の避難・救助……よくやった」

 

それだけ言い、雨宮教官はエレベーターを降りた。扉が閉まり、再び動き出す。

 

いや、まあ……。ちゃんと見てくれる人は見てるんだな……。悪い事ばかりじゃねえか。

とりあえず、今夜はちょっと高い酒でも持ってタツミの部屋にでも遊びに行くか。

 

 

エントランスに戻り、物資関係の資料に目を通す。

定期的にそれぞれの科で集会や会議があり、その際に今後の方針などを纏めたり、決定をする。俺はまだ平社員だから会議とかには出れないので集会に出席して資料を見ながら説明を聞くしかやっていないが、中々内容が濃い物で時々資料に目を通しておかなければいけない。というか、復習しておかないと仕事に支障が出る。俺は色々こなしているので頭に入れなければいけない内容も並の職員よりは多い。まあ、ベテランにも敵わないが。あくまで広く浅くやっているだけだ。

 

「しかし、棚卸を月1でやれってか……めんどくさいな。配給の方も、また外部居住区の住民が増えたから、1件当たりの数量を計算してか……」

 

配給される物資や食料の数は一定じゃないから一々計算しないといけないからな。まあ、この辺りは専門の人がやってくれるだろう。俺はただダンボールをトラックから降ろして手渡すだけだ。楽な仕事さ。

 

 

「あ、コウタじゃん。おっす」

 

「よっ、ユウ。サボりか?」

 

「ちげえよ。これでもちゃんと翌日の段取りだとか頭の中でしてるんだよ」

 

「そんな風には見えなかったけどな……」

 

思考が読まれた!? こいつ……!? こりゃただの新人じゃねえぜ。こいつが頭角を現すときが恐ろしいな……! 

 

「ところでユウ。お前、この後暇か?」

 

「あん? 晩までなら暇だぞ」

 

「んじゃ俺んち来いよ」

 

 

マジかよコイツ。出会って一日も経ってないのにもう実家にご招待かよ……。いや、あのね? もうちょっとよく考えてからね? お互い入隊して1年も経ってないじゃん? まだ色々と経験とかさ、不足してるじゃん? だからそう言うのはちょっと早いんじゃ……。

いや、そんなアホな事があるわけないやん。ホモENDって一部の人からしか需要ないやん。

とりあえず……。

 

「お前ホモかよぉ!」

 

「違ぇよ! 何でそんな結論に至るんだよ!?」

 

わお、凄い慌てよう。中々のリアクションだな。これからも偶に吹っかけてみるか。

とりあえず、今回はからかうのはこの辺にしておこう。

 

「いや、冗談だ。俺もそっちの気は無いぜ?」

 

「いやあったらビックリだよ! 職場初の男友達がガチだったらこっちが複雑で何とも言えねえよ!」

 

それには同意だな。俺も複雑すぎてコメントできないな。

 

 

 

 

そんな訳でコウタ宅に行ってきた。あいつのおふくろさん美人だな。そしても妹は可愛かった。あの露出している肩にそそられたぜ。ありゃ誘ってんな(確信)。

こりゃどうやら、数年後にはコウタの事をお義兄さんと呼ぶことになりそうだ。

 

 

 

「さて、タツミも部屋に戻ってるだろう」

 

高い酒が入った袋を引っ提げ、タツミの部屋へ向かう。

 

 

部屋の扉をノックし、声を掛ける。

すぐにタツミが出て来てくれた。

 

「アポなしで済まんな。暇なら男2人で寂しく飲み明かそうぜ」

 

袋を見せながら言うと、タツミはすぐに素敵な笑顔で答えた。

 

「お、良さそうなの持って来たな。入ってくれ。今、ちょいとつまみになりそうなもんだすからよ」

 

「邪魔するぜー」

 

そう言って部屋に入る。

椅子に座って酒を取り出し、タツミに注ぐ。タツミも俺のグラスに酒を注いでくれた。

 

「「乾杯」」

 

そう言ってグラスを軽くぶつけあい、酒に口をつけた。

喉が焼けるような感覚に陥った。そこから意識が朦朧としてきた。

 




未成年の飲酒は禁止です。良い子も悪い子も真似しちゃダメですよ。
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