Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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リアルの都合上、軽く編集する時間すらない程多忙になる可能性が浮上してきたのでできるだけ早く完結させたい(願望)


泣けるぜ……

 

 青い月明りに照らされながら道を駆けていると、突如地中から気配を幾つも感じて立ち止まって身構えた。

 

「なんだ……? まるで謀ったかのように…………」

 

 

 感じられる気配そこまで強くはない。精々小型アラガミか。

 

 

「ちっ、コクーンメイデンか」

 

 直後にコクーンメイデンが砂埃を巻き上げながら出現して瞬く間に囲まれた。

 明確な数は分からないが兎に角多い。さて、こいつらの包囲網+攻撃の雨を掻い潜らないといけない。

 

 

「ユウ、跳んでください!」

 

 アリサの声が聞こえて指示の通り大きく跳び、先程まで立っていた場所にオラクル弾が着弾すると膨張し始め、そして大きな爆発を起こした。

 

 砂埃はコクーンメイデンが出現したときよりも大きく巻き上がりそのまま砂埃を避けて着地すると建物の屋上からアリサが降りてきた。

 

「済まない。助かった」

 

「いえ、合流出来て良かったです」

 

「1人か? ソーマとコウタは……」

 

「到着早々で突然アラガミが地中から湧いて出て囲まれてしまって……。私が囮になってソーマとコウタはリーダーの捜索にあたってもらったんです」

 

「妙だな、アラガミの反応ならアナグラで感知できなかったのか?」

 

「全員の通信機が不調を起こして繋がらないんです。コクーンメイデンが多数発生しているか、そもそも敵の罠だと言う可能性も……。」

 

 アリサの言葉を疑うわけでは無いが、俺も試しに通信機を取り出して操作するが全く繋がらない。

 コクーンメイデンなら気配を察知すればと思い、集中するも小型アラガミの気配は全くしない。

 

「罠だと考えた方が良いだろう。原因がコクーンメイデンだとしても、敵の偶然は必然。いっそのこと常にジャミングで通信を絶たれた状況だと仮定して動いた方が得策だな」

 

 とにかくこちらもユウナを探さなければ……。もしジャックと合流出来ればそのまま奴と戦っている2人と交戦に入る事もできる。こちらにはアリサも居るし、幾分か有利か。

 

 歩き出した瞬間、何かが空気を切る音が聞こえて咄嗟にアリサを抱えて跳び退く。

 

 俺とアリサの真下を刃物が何本か通り過ぎて地面へ落ちた。

 

「ナイフ……⁉ それじゃあ――」

 

「ガルー5と連絡が取れなくなったが、お前がやったのか?」

 

 

 アリサの声を遮るように低い声が聞こえる。

 声のする方向を見ると、薄暗い暗い路地から顔を隠した男が姿を現した。

 

 手に持っているのは先程見覚えのあるショートブレード、こいつ1人か?

 おいおい……ズッコケジャックめ、まさかくたばった訳じゃねえだろうな……。

 

「あなたが理事の護衛……リーダーは何処に居るのか答えてもらいますよ!」

 

 

「すぐに会わせてやる、アリサ・イリ―ニチナ・アミエーラ。主からの命令なのでな。だが無名の雑兵、貴様はここで死ぬ」

 

 男が俺を指差し宣言、それに対し俺も男に中指を立てた。

 

「開口一番で雑兵呼ばわりとは恐れ入った。相手してやる」

 

 間違っちゃいないが、そこらの雑兵だと舐めてかかってると痛い目見る事を教えてやらねえといけないなこれは。

 しかし、アリサは連れていく……人質にするつもりか……。女子供を盾にするとは相変わらずみっともない真似しやがる。

 

「私を連れて行ってどうするんですか?人質ですか?」

 

 アリサも俺と考えは一緒らしい。声に呆れが含まれており、それには俺も激しく同意できる。

 

「主は麗しい女性に目が無い。気に入った女は囲わなければ気が済まない質だ」

 

「ナッ⁉」

 

「うわぁ、キッモ絶対頭沸いてるゾ」

 

 男である俺でさえ悪寒が走ったぞ今の。当のアリサ本人に精神的ダメージを与えられる前に何とかしなければいけない。

 

「行こうぜアリサ、正真正銘のキチガイだ。あのデブの護衛って時点でこいつも碌な奴じゃねえよ」

 

「貴様、私と主を愚弄するかァ⁉」

 

 

 うお、いきなりキレた!やっぱやべー奴じゃん。

 

 男が怒りに身を任せて突然斬り掛かり、アリサを抱えて跳び退く。

 

「うぅ……」

 

 アリサが口を押えて必死に堪えている。まずい、よもや精神へ攻撃してくるとは予想外だ。

 

「アリサ、無理す――ッ!?」

 

 いきなりオウガテイルが地中より湧いて出てきたのを見て構える。

 アリサも吐き気を押し殺して神機を構えると、オウガテイルの群れの中を先程の男がゆっくり歩いて来る。

 オウガテイルは男に関心を示さず、そのまま道を空ける。

 

「どうして、アラガミが……!」

 

「連中、妙な能力を持っているんだ。これが奴の能力だな」

 

「特異能力の存在を知っている……ガルー5め、能力を行使したのにも関わらず敗北したのか……無能め」

 

 男が俺を指差した直後に指先からオラクルのレーザーが飛び、咄嗟に上体を横へ逸らして回避する。

 

 能力を2つも……ああ、めんどくせえ奴だ、厄介極まりない。

 ジャック……マジでやられちまったのか……?

 

 

「逃がさん。ハァッ!」

 

 

 男が空に手を掲げると5本の指からレーザーが飛び、空高く昇ったレーザーは空中で拡散して降り注ぎ、俺とアリサはレーザーの壁で分断され、ハッとしたころには周りをレーザーで囲まれ、動きを制限される。

 

「アリサ・イリ―ニチナ・アミエーラを捕らえろ。この雑兵は私がやる」

 

 男が俺の目の前に、オウガテイルはアリサへ。

 

「アリサ、何分持つ?」

 

「何分でも持ちますよ。ただ……リーダーが心配です」

 

「じゃあできるだけ早めに片付ける」

 

 アリサにそう言って、男と向き合って中指を立てつつ身構える。

 

「貴様、嘲るのも大概にしろ!」

 

 神機を片手に振りかぶり、迫る攻撃を紙一重で躱し後退しながらやり過ごすが、既に後ろはレーザーの壁。これ以上は下がれない。

 

 男の攻撃を受け流してそのまま背後へ回り込んで、肘鉄を打つが神機を持つ腕で防がれて眼前に奴の指が現れ、咄嗟に首を曲げて撃ちだされたレーザーを回避。

 

 片手で相手の手を払い除け、もう片方の手でナイフを取り出して刺しにかかるが男は空中へ跳んで距離を取った。

 

 

 

 あいつ、息が上がっているな……。

 このレーザーの囲みを持続させるのに、それなりの消耗があるようだ。なら、このまま遅延行為――だが時間がない故、早急に黙らせる必要がある。

 

 一気に距離を詰めると奴は牽制の斬撃を繰り出すが、ショートブレード程度の得物との戦闘方法は会得している。どうとでも対応できよう。実際にレーザーに囲まれて動きを制限されている中でも容易く戦えている。

 

 斬撃をやり過ごして踏み込み、腹部に掌底を叩き込むと男は吹き飛び、その体はレーザーに触れるが男の体はレーザーをすり抜けたかのようにものともしない。

 

 何だ? 見せかけか?

 

 バレットで言う装飾弾か?

 

 ナイフを一本、レーザーへ放り投げるとレーザーは砕けちって破片が散らばる。

 

 本人には当たらないと……どういう理屈か不明だが……まあ、敵が有利なのはいつもの事だ。気にする必要もないか。

 

「死ね」

 

 男がこちらへ指を向けて再びレーザーを照射してくる。足を執拗に狙ってくるので軽快な動きをしつつ、相手の指の動きをよく見ながら回避する。

 

 そして軽く跳ぶと同時にピストルを取り出して発砲する。

 男は咄嗟に神機の刀身を盾に防ぎ、レーザーの照射が止まりその間に一気に距離を詰めつつ引き金を引いてレーザーを使わせなぬようにする。

 

 至近距離へ入り、拳を打つ。

 拳は男の頬を捕らえ、殴り飛ばすが追撃を仕掛けようにもレーザーが邪魔で近づくのに時間がかかるせいで躱しながら近づく間に態勢を整えられる。

 

 男が受け身を取ってそのまま接近し、神機を振るがその攻撃を受け流して回り込むが素早い振り向きと共に刃が振られ、反撃の機会を掴めずに回避に専念させられる。

 

「ッ!」

 

 神機による乱舞を往なし続けるが反撃の糸口が見つからない。いっそのこと足の重りを外して一気に攻めるか、だがこれは最終手段だ。

 

 まだ人狼部隊はこいつを倒しても3人……奴らの中に高い索敵能力を持つ奴がいる可能性も考慮すれば、この戦闘も見られているだろう。当然対策も考えてくるはずだ。

 

 

 さて、どう崩すか……!

 

「鬱陶しい虫め、死ねぇ!」

 

 中々攻撃が当たらずイラついたのか大振りな攻撃を仕掛けられ、それをやり過ごして肩先でタックルを決めて相手を突き飛ばす。

 

 冷静なのか……頭に血が上りやすいのかどっちだこの男、忙しない奴だ。

 

 

 

『GAAAAAAッ!』

 

 

 隣でオウガテイル叫び声が聞こえ、振り向くとオウガテイルが突然倒れ始めていき、皆霧散していった。

 

 

「ガルー3……あの一兵卒に敗れたと言うのか⁉」

 

 

 ガルー3……アラガミが消えたと言う事はアラガミを操る能力はこいつではなく、そのガルー3の能力、こいつの能力は手からレーザー放つ能力か。

 

どちらにしろ今がチャンスだ。

 

 

「アリサ、頼む!」

 

「了解です!」

 

 アリサが神機を銃形態へ切り替えてレーザーの合間を縫ってオラクル弾を撃ちだし、それは男の足元に着弾して膨張を始め、男は慌てて飛び退く。

 

 爆発を起こして土煙を巻き上げる中、男の居るであろう場所へ一気に向かい、拳を握る。

 

 砂埃を脱出すると目の前の、男は目を見開いて俺を見ていた。

 

 

「お前さ、ヴァジュラとお前のさ、子供が出来たらどうするよ?え?ヴァジュ山ヴァジュ太郎の誕生か?」

 

「は――」

 

 拳を男の顔面に叩き込んでそのまま殴り飛ばすと、囲むレーザーは全て消え失せた。

 

 

「あの、最後の何ですか?」

 

 アリサがドン引きするような顔で聞いたきたので俺は当然だと言わんばかりにこう答えた。

 

「いや、おしゃべりな奴だったから俺も対抗しようと思ってな」

 

「だからって意味不明すぎます。ドン引きです」

 

「泣けるぜ……」

 

 呆れるアリサを尻目に倒れる男へ近寄って、男の両肩に足を振り下ろして肩を破壊して神機の使用、能力の行使をできないようにする。

 

 命までは奪わんさ。せいぜいアラガミだらけの危険地帯から逃げれるように祈るふりでもしておくか。

 

 アリサが複雑そうな顔をしているが、俺はアリサの目を見てはっきり言う。

 

「…………同情はいらねえぞ。こちらに明確な殺意持って襲い掛かってきた以上、こいつらは紛れもない敵だ。特殊部隊名乗るなら神機と能力使わずに生還してみろやって話しだ。極論になるが……こいつの命とユウナの身、どっちが大事だ?」

 

 アリサに「さっさと行くぞ」とだけ言って走り出すとアリサも後を追って走り出した。

 ジャックやコウタ、ソーマと合流するために気配を頼りに、薄明るい空の下を駆ける。

 

 

 




最近特に異常はないのに寝汗が酷い。

あ、お前さ、体温調節機能さ、洗濯だってタダじゃねえからガバッて余計な事すんじゃねえよお前よオォん⁉

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