Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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今回は少し長くなってしまいました。
長文だと何処で区切るべきか本当に悩みます。即決できる人が羨ましい。


ぶち〇すぞテメェ!

 

「後悔して死ぬが良い。一般神機使いの諸君!」

 

 理事が高らかに笑い、ユウナとアリサの表情は悲しみに支配され声が出せず涙を流し、2人共目を背けている。

 

 

 

「死ぬかボケェ!」       

 

「ふざけんな!」       

 

「舐めるなァ!」

 

 

 否定の叫びと共にコウタとジャックも叫び、迫る死を回避して俺はガルー1に拳を叩き込み、ジャックはヴァリアントサイズを弾き返し、コウタは理事へ向かって引き金を引いた。

 

 

「ひっ……!」

 

 オラクル弾は理事を横切り、ジャックが神機を捕食形態に変形させて捕食口をユウナとアリサへ向ける。

 

「超広範囲式・ミズチィ!」

 

 三つ首の大蛇の如き巨大な捕喰口を飛ばし、ユウナとアリサを咥えて引き寄せて2人を取り返す。

 

「好き勝手させるかァ!死ねェ!」

 

 ガルー2がヴァリアントサイズを振りかぶってジャックへ斬りかかろうとし、ジャックは引き寄せた2人を守るように身を挺し、避けられぬ攻撃を正面から見据える。

 

 

 そこへ、ソーマが白い神機を携えて飛び出した。

 

 

「させん!」

 

 ソーマが2人の間に割って入ってガルー2を弾き飛ばす。

 

「おや……ソーマ君、随分成長したね。……その目つき、ヨハネスによく似ているよ」

 

「御託はいい。貴様が親父の名を口にするな」

 

 ソーマは理事へ神機を突きつけて睨む。

 

 こっちに流れが来たか。なら今できる事は――

 

 近くにアリサの神機が落ちており、アリサへ蹴って飛ばす。

 地面を転がる神機を拾い上げてアリサも構え直す。

 

「一転攻勢ってか? さて、たっぷりと礼をしてやるよ」

 

 ジャックが神機を構えるが、そんな奴の前に立って俺は構えて口を開く。

 

「アホ抜かせ! そんな傷じゃ無茶だ!お前もさっさと下がれ!」

 

「此処は俺が残る。行け」

 

 ソーマが前に出てきて神機を構える。

 

「コウタ、アリサ! ユウナを連れて行け!」

 

「ついでにジャックもだ! こっちも片付いたら後を追う。早く行け!」

 

 

「分かりました! すぐに応援を呼びます!」

 

「お前らも無茶するなよ!」

 

 

 3人はユウナと共にこの場を去って行き、ソーマと俺はガルー1とガルー2、そして怒りに体を震わせる理事を睨んで身構えた。

 

 

 

「そいつらを始末して奪い返せ! この際、シックザールは殺しても構わん!」

 

 怒る理事が2人へ命令を出し、ガルー1は翼を刃に変えた。ガルー2は神機を構えソーマを睨みつける。

 

 

「ソーマ、女だからって惑わされんなよ」

 

「お前こそ、足元掬われるなよ」

 

「気を付けるも何も、アンタ等死ぬんだから関係ねえだろぉ⁉」

 

「ガルー1、ガルー2! やれェ! 死に晒せ屑共がァ!」

 

 理事の罵声と共にガルー2がソーマに斬りかかり、ガルー1もこちらへ向かってくる。

 

 

「口の利き方に気をつけろ若造」

 

 声にドスを効かせ、構える。

 

 ガルー1が刃を振り、紙一重で回避して打撃を打ち込もうとする。

 即座に刃は分厚い盾に形状を変えてガルー1を守り、攻撃を中止して今度は盾で守られていない側面へ回り込んで蹴りを入れようとするも翼はそのまま盾の形状のままドーム状となってガルー1を囲んでこちらから手出しできないように防御を固めた。

 

 数歩下がると即座に形状は変化して先端が刃の鞭になって迫り、屈んで刃を躱すも今度は叩きつけが襲い掛かり、大きく飛び退いて危機を脱する。

 

「くっ……あの女の能力か……」

 

 ガルー2の能力はまだ発動しているらしく、どんどん体が重くなっていく。

 さっきのは所謂火事場の馬鹿力で無理やり動けたが、限界を超えて力を発揮した体には疲労が色濃く残る。それはジャックとコウタも同じはずだ。

 俺が先にバテてちゃ顔向けできない。

 

 翼は更に形状を変えて刃付きの鞭が3本に増えてあらゆる方向から襲い掛かり距離を取りつつ躱し続けるが、消耗した状態で長期戦は下策だ。何とか突破口を……!

 

 

「ッ!」

 

 ナイフを一本理事へ向かって投擲し、鞭の合間を縫って跳ぶナイフは理事の足へ突き刺さった。

 

「ギャァアアアッ!?あああああああ!」

 

 理事の叫び声に2人が反応した。

 

 

「そこだッ‼」

 

 ソーマが発した言葉と共に、その隙を突いて距離を詰めて浴びせ蹴りを叩き込んでガルー1を吹き飛ばし、ソーマの方からも金属音が響いてガルー2が地面を転がる。

 

「く、クソ! この無能共がァ! いいか⁉ 儂は先に行く。そいつらを殺して神薙とアミエーラを連れてこい!分かったか‼」

 

 理事はそう言って足を引きずりながらからこの場を離れ、追いかけようとすると殺気を感じてその場から跳ぶ。

 

 跳んだ場所に異形の刃が振り下ろされていた。

 

 見てみればガルー2のヴァリアントサイズが展開状態になってそのまま振り回す。

 

「アァアアアアァアアッ!」

 

 

 雄たけびに耳を塞ぎながら無造作に振られる異形の刃を躱し続ける。

 

 

 

 ガルー1が翼をロングブレード並みの長さの刃に形状を変化させて迫り、先制の刃が薙がれる。

 

 咄嗟に刃を躱して距離を取る。

 

「はっ、私の能力を忘れたか⁉ 最大出力で行使してお前らを止めてガルー1が止めを刺せばすぐに終わる!」

 

「その程度の偏食場、(化け物)には通用せん」

 

 ガルー2が能力を使うもソーマはそんなもの知らぬと言わんばかりに神機を振ってガルー2は舌打ちをしてソーマの攻撃を防ぐ。

 

「ちっ、生まれついての化け物がッ!」

 

 

 

 これでガルー1と全力で戦える。ただこちらが幾分かマシな状態なったとはいえ、それでも奴の攻防一体の能力は厄介、なら攻める隙はおろか守る隙も与えなければ済む話だ。

 

 ガルー1から距離を取って両足の重りを外して、地面を蹴る準備をする。

 

「ッ!」

 

 身体が軽いなんてものじゃない。

 

 とっくに限界を迎えたつもりだったが……まだ成長途中らしい。さて、軽くウォーミングアップから始めるか……!

 

 

「参る」

 

 一言宣言して一気に地面を蹴ると瞬く間に自分でも驚くほどに距離を詰め、困惑しつつもパンチを仕掛ける。翼の防御はギリギリ追いつきそうだが、拳が翼に触れる前に寸止めして側面へ回り込むが、思いの他力加減が上手く行かない。

 

 それでも蹴りを入れるが翼は形状を変えて針を伸ばし、こちらの攻撃と奴の反撃が相打ちになると考え蹴りを中断して翼の防御が届かない箇所へ回り込む。

 

「ッ……!」

 

 ガルー1が焦った顔をするが、そのまま翼をドーム状にして全方位に対して防御した。

 

 あの翼もオラクルだとすれば、触れれば喰らい付いてくる可能性もあり、触れるのは避けたいが……一瞬のうち――オラクルに喰い付かられるよりも早く離せば行けるか……?

 ものは試しだ、仮に腕一本使えなくなったところでもう片方あれば戦える。

 

 暫く守りを固めるガルー1の周囲を何周も周り、ドーム状の壁にパンチを打ち即座に引き戻す。様々な方向や角度から打撃を浴びせるがびくともしない。

 ガルー1の周囲を高速で移動し、様子を窺うと一瞬防御を一部解除した。

 

 即座にガルー1へ体当たりを仕掛け、地面を転がるガルー1に追撃の蹴りを入れ、そのまま上空へ蹴り飛ばす。

 

 空中で態勢を整えが翼を巨大な手に変えた。地面へ手を突っ込み、手一杯の岩を握りつぶしてこちらへ投げつけてきた。

 

「はっ!」

 

 砕かれた岩の破片をそのまま足場代わりにして跳び、破片から破片へ跳び移りつつ接近して一気にガルー1の目の前に跳び、足を振り上げて踵落としを肩へ浴びせるが、肩へめり込んだ足を掴まれそのまま投げ飛ばされて地面へ叩きつけられる。

 

 

 即座に態勢を整えて身構え、追撃をギリギリで躱し反撃の拳を叩き込むとすると翼で防御される。

 

 防御をすぐに解除したかと思うと翼は5本、それぞれ長さの異なる刃付きの鞭へ変化して周囲を無差別に斬り裂くように振りまわす。

 

 ガルー1の周囲を回るように立ち回り、動きをよく見て観察する。

 

 防御に3本、攻撃に2本使っているか。

 

 周囲を移動して攻撃を誘えば、一瞬の間は鞭は3本のみ、3本なら付け入る隙はある。

 

 さっさと終わらせて理事を追わなければいけない。

 

 正面に立って攻撃を誘い、迫る2つの刃を受け流して背後へ回り込んで携帯したナイフを全て一度に投擲して即座に突っ込んで一瞬の隙を突く為に集中する。

 

 飛ばした数多のナイフを3本の刃付き鞭が迎撃する間に、今自分が出せる最高速度で側面回り込み、踏み込みと共に拳を腹部へ叩き込む。

 

 ガルー1は口から血を吐き散らかしながら吹き飛び、建物の壁に激突した。

 

 

 ヴァリアントサイズを持った女と交戦していた筈のソーマが神機を携えてこちらへ来た。

 

「手を貸すか?」

 

「頼む。そっちは?」

 

「気絶させて両足を圧し折った。念のた為神機も壊した。放って置いても問題ない」

 

「流石だな」

 

 

 壁へ叩きつけられたガルー1へ警戒しながら近づく。

 

「ガフッ……!」

 

 

 血が噴き出し、返り血を浴びる。

 

 ガルー1の懐から一枚紙が落ち、血で汚れる。

 

 弱弱しい呼吸だけが聞こえ、落ちた紙切れを拾い上げると写真だった。

 写真に付着した血を拭うとそこには映っていたモノに驚いた。

 

「写真か……?」

 

 写真に写っていた人物は灰色の髪に黄金色の瞳、忘れもしないあの子に――エレナにそっくり女性の写真だった。そしてすぐに思い出す。この写真に写っているのは、この世界へ帰る直前――生と死の狭間で出会ったエレナの母親だ。

 

 どういうことだ……。何故エレナの母親の写真をこいつが……!

 なら、あの世界は……灰域は一体……。

 

 

「頼む……返してくれ……」

 

 弱弱しい声でガルー1は震えながら手を伸ばし、俺は写真を手渡す。

 ガルー1を壁を背に座らせて、追及する。

 

「お前はこの人とどういう関係だ?」

 

 写真を指さしながら聞くと、ガルー1は口を開く。

 

 

「知ってる……のか、そうか……やはり……サラの、親戚か……?俺は、サラの……ぐっ……!」

 

 

 エレナの母、サラと言うのか……。

 

「サラが妊娠して、それを機に……結婚したんだが……あの男、理事がサラとお腹の子を人質に……」

 

 

「それが奴に従っていた理由か」

 

 ソーマが険しい表情をしており、俺も最早内心は穏やかではない。

 

 奴め……やはりとんだ外道だ。

 あいつのせいで、エレナは……。親の愛も受けれずにあの子は……。

 

「あんた、頼む……サラを……お腹の子を頼む……!俺を容易く倒せたアンタなら……」

 

 ガルー1が震える手で俺の肩を掴み、その眼に確かな力を感じる。

 

「後生だ、頼む……!約束してくれ……!今此処で……!」

 

 胴体を起こしながら歯を食いしばり、俺を見る。男の手を掴み、頷く。

 

「ッ……。分かった……。安心して眠れ」

 

「……あ、りが……とう……あんたが優しい人で……良か……っ」

 

 ガルー1は安心して事切れ、眠るようにその身を地面へ倒した。写真を手に取り、懐にしまう。

 そして理事が逃げ行った道へ歩き出すと、肩をソーマに掴まれた。

 

「待て、今はあいつらとの合流を優先するべきだ」

 

「済まん。今回ばかりは譲れない。悪いがそいつを頼む。せめて弔いたい」

 

「ちっ…………分かった、行け。だが深追いはするなよ?」

 

 

 ソーマに頷き、血の跡が続いているのを発見して跡を追って駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 血の跡は荒廃した施設の屋内へ続いており、ゆっくりと跡を辿る。

 

 

 瓦礫やモノが散乱している部屋へ着き、血痕はここで止まっている。気配を探ると瓦礫の陰に隠れているのが分かる。

 その瓦礫を蹴飛ばすと、小太りの男が腰を抜かして後退りした。

 

 

 

「き、貴様、こんな……ただで済むと思うなよ⁉ すぐに査問会にかけて極刑に処して――」

 

 理事を睨みつけるとそのまま口を止め、胸倉を掴んで写真を見せた。

 

「この人は今どこにいる? 答えろ」

 

「わ、儂を見逃すならその女に会わせてやる!だから――」

 

「俺は何処に居るかって聞いてんだよ! テメェのような下衆の手引きなんざ必要ねえよ!早く答えろ!」

 

 俺は理事の腹に拳を叩き込むと口から透明な液体を吐き、その液体が手に掛かって汚れるが気にすることなく今度は蹴りを肩へ入れる。

 苦しそうに蹲って必死に呼吸をする。

 

 息を荒くしたままこちらを睨みつけてようやく口を開いた。

 

「み、見逃してくれるなら教えてやる!言う事を聞かんかァ!」

 

「ならさっさと言えや!ぶち殺すぞテメェ!」

 

 胸倉を掴み、壁に叩きつけて怒鳴りつける。

 

 言葉に困ったように、絞り出す言葉を選んでもごもごと言い、それを聞いてすぐに嘘だと分かった。本当に助かりたいならすぐに言う筈だが、態々もごもごとしている辺り本当の事を教えるつもりはない腹が見える。

 

「見え透いた嘘ついてんじゃねえぞオラァ!正直に言えや!」

 

 理事の顔にイライラが爆発したかのような怒りが現れ、怒鳴り始めた。

 

「黙れェ!その女、儂が目をつけてやったのに勝手に他の男のガキを孕んで嬉しそうにしていた!それが気に食わん!だから膨らみ始めた腹をしたその女を犯した後、アラガミ化させて野に捨て置いてやったわァ!今更どこかで他のアラガミに食い散らかされただろうなァ!良い気味だ!」

 

 目の前が真っ赤になり、目の前に居るこの男を惨たらしく嬲り殺そうと手を振り上げた瞬間――天井が爆発と共に崩落を始め、咄嗟に後ろへ跳んで床の上を転がりその場から退避し、敵かと思い構えるが舞い上がった埃と煙が視界を覆っているせいで何も見えない。

 

 何かの影が埃の中から穴の開いた天井へ飛び出し、視界が晴れて理事の居た場所へへ近づくと、理事は無残に切り刻まれて絶命していた。

 

「…………ッ!」

 

 クソッ! 何だってんだ……一体誰が殺った……! 俺以外に誰かこの付近に居たってのか?

 

 ジャックへ連絡を取り、事の経緯を説明するとすぐに向かうと言われ、瓦礫をどかして理事の遺体を引きずり出して床に放り捨てる。

 

 兎に角、今はアナグラに戻る事が先決か……。

 




なんだかんだ完結も近いので今年中には何としても完結させよう(鋼の意思)
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