Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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ちょっとこれは想定外だな

 翌日、俺はガルー1――エレナの父親の墓前で手を合わせた。

 

 頼まれたのに、情けない事だが八方塞だ。できる限り善処はすると心の中で墓へ語り掛けて後にした。

 

 

 気付けば端末に連絡が入っており、研究室へ集まって欲しいとの事だった。

 

 

 

「博士、第1部隊+α呼んでどうしたんですか?」

 

 研究室へ到着すれば、既に俺とユウナ以外は集まっておいた。ユウナは今回の話からは除くらしい。

 

「さて、本題に映るが……ユウナ君の傷から何やら妙なオラクルが混じっていてね。質の悪い事に、ユウナ君の肉体と結合しているんだ」

 

「んー?どういう意味ですか博士?」

 

 コウタが首を傾げ、リンドウさんは頭を掻いてパッとしない表情を浮かべ、俺も言葉の意味が分からず唖然としている。

ソーマとアリサ、サクヤさんは理解できているようだが……首を傾げている俺達に呆れながらアリサが言葉を紡いだ。

 

「博士、兎に角説明を。あの3人には後で噛み砕いて教えておきます」

 

「今はユウナ君の体に痣として残っている部分にそのオラクルが混じっていてね。そしてユウナ君を問いただしてみれば理事から逃げ出し、その逃走中にローブで身を隠した怪しい人間に斬られた傷らしい。君たちの中に心当たりがないかと思ってね」

 

「ローブを身を隠した人間……いえ、そんな奴は居ませんでしたが……」

 

「俺も心当たりが無いな。つか人狼部隊の連中じゃねえのか?あいつらもローブ来てるだろう」

 

「ジャックにも確認取ってみた方が良いんじゃないのか?」

 

「いや、ジャクソン君には彼が本部へ発つ前に聞いたよ。彼も心当たりはないらしい。それに妙な事に、理事の遺体の検視結果にもユウナ君と同じ妙なオラクルが検知されているんだ」

 

 理事の死体にも……?ってことはユウナに傷負わせた奴と理事を殺した奴は同一人物って事か。

 

「ユウ君、君の言う通り……理事は何者かによって殺害された。そしてその犯人はユウナ君にも……。とにかく味方では無いのは確かだ」

 

 ユウナに傷を負わせたときはすぐに逃げ、理事は殺していった……何がしたいんだ? 確かに味方とは思えねえが……。

 

「ただ注意して欲しいって事さ。勿論、ユウナ君から具体的な情報を纏め次第、全神機使いの端末に詳細を送信させるけどね。ユウナ君が暫く動けない以上、君たちに大きな負担がかかるだろうけどよろしく頼むよ。他部隊への人員借りも何とか都合をつけてもらうようにお願いするつもりだしね」

 

 

 つまりその怪しい奴に注意しろって事だな。

 悩んでいても仕方ないので待つとしよう。果報は寝て待てとかってことわざがあったような気もするし。

 

 解散となり、それぞれの仕事に戻った。

 

 

 

「ユウ、これが頼まれていたバレットよ」

 

 エントランスに出ると、ジーナが俺を待っていたようで渡すものがあると言い、懐からバレットを出した。

 フェデリコに特訓をつける為にジーナにあるバレットの作成を頼んでいた。

 

「済まないジーナ、助かった。どうしても頭使うのは苦手でな」

 

「これくらいならお安い御用よ。でも、何に使うの? 正直、役に立たないバレットよ?」

 

「フェデリコに稽古をつける事になってな。その時に使うのさ」

 

 フェデリコから『秘儀・雷返し』の極意を教えて欲しいと頼まれたが、実戦で覚えろだなんてスパルタ教育を施す趣味も無い。

 だが雷が必要なので、自発的に雷属性の弾を自身へ当たるように軌道を調整してもらった。

 

「へぇ……興味があるけど、生憎任務でね。残念だわ」

 

「フェデリコがその内特訓の成果を見せてくれるさ。期待して待ってろ」

 

「それじゃあ楽しみにしておくわ。ふふ、フェデリコとアネットには早く自分より良い神機使いになってくれって先輩としては情けない事言っていたけど、ちゃんと先輩してるじゃない」

 

「早く良い神機使いになって欲しいからこそってな。腐っても先輩だからな」

 

 

 ジーナを見送り、フェデリコと訓練場へ向かう。

 

 まずはウォーミングアップからだ。

  

 互いにモックアップ神機を構え、向かい合う。

 

「まずは体を慣らすぞ。動きや後隙を観察して的確に撃ち込んで来い」

 

「分かりました! 行きます!」

 

 意気は良し。気合十分で踏み込み、フェデリコが振るうロングブレード型の得物が迫るが紙一重で躱し、フェデリコの側面を回り込む。

 

「ッ!」

 

フェデリコが返す刃で得物を横に振り、軽い跳躍で躱しそのままフェデリコを踏み台にして跳ぶ。

 

「ハアッ!」

 

空中なら逃げ場はない。そう判断した故にフェデリコも跳び追撃を仕掛けてくるが、空気を蹴って更に跳んで追撃をやり過ごして互いに距離を離して着陸して得物を構える。

 

「いい判断だ。普通の奴なら空中で叩き斬られてそれで終わっていた」

 

「流石です、ユウさん。それにまだまだ余力を残している様子……」

 

 フェデリコは言葉を紡ぎながら構えを変えて得物の切っ先をこちらへ向けた。

 

 

 む……この構えは……。

 

 察すると同時にフェデリコは踏み込んで床を滑るように一気に距離を詰めて渾身の突き攻撃を仕掛けてくる。

 

「ふっ」

 

 

 突き攻撃を受け流し、足を振り上げてそのままフェデリコの得物を踏みつけて床へ叩きつけた。

 

「うわっ⁉」

 

 突然、意図せぬ力が加わり、態勢を崩したフェデリコに得物の切っ先を突きつけた。

 

「く……参りました」

 

 フェデリコが得物を離し、両手を上げた。

 

「いや、驚いた。さっきの突き技、何処で覚えた?」

 

「以前、タツミさんに特訓をつけてもらったときに……」

 

 成程、タツミが教えたなら納得だ。あいつは俺の剣技を全部会得している上に、上達も俺より早かった。現に新兵のフェデリコが剣を習ったばかりだった当時の俺よりも形になっていた。

 

「まあ、相手が俺じゃなかったら上手く嵌まったかもしれんな」

 

「やっぱりユウさんには通用しませんでしたか。タツミさんもまだまだ先があるって言ってましたし……」

 

 突きだけで終わっては未完成だ。その先へ追撃を派生させて初めて完成する。追撃の斬撃を入れるもよし、態勢を崩した相手の踏み台に跳び、落下と共に斬る・突き刺す。跳躍と共に切り上げる……と言った具合に派生していく。派生先は様々だが、相手や状況に適した追撃を仕掛けて初めて完成する。

 

「突きだけで終わらず、そのあとの追撃を仕掛けて完成だ。どんな追撃を仕掛けるかは人それぞれだ。突き自体は元々、防御を崩す為の技だからな。後はお前さん次第って事さ。だからタツミもそこまでしか教えなかったんだ」

 

「え、待ってください。じゃあ、タツミさんに教えたのって……」

 

「俺だ。ちなみに素手やナイフみたいな小物でも再現できる」

 

「そうだったんですか……! タツミさんはただある神機使いに教わったって言ってて、勝手にリンドウさんみたいな人だろうなって思ってて……」

 

「そうか、リンドウさんみたいに威厳のある人じゃなくて済まなかったな」

 

「あ、いや、そういう意味では……!」

 

「冗談だ。悪かった。さ、剣技についてはタツミの方が教えるのが上手いからあいつに丸投げするとして……本題だな」

 

「は、はい! 雷を返す技ですよね?」

 

「ああ、とりあえずモックアップ型じゃ話にならんからお前の神機を持ってこい。申請は出してるな?」

 

「はい!」

 

 

 モックアップ型神機を隅へ置き、フェデリコはケースから神機を取り出して接続を始めた。

 

「よし、フェデリコ。まずはこのバレットをセットして試しに撃って見ろ」

 

 ナイフを構えてフェデリコの隣に立ち、雷属性の弾が発射されると緩く旋回して向かってくる。

 

 軽く跳躍し、ナイフの刀身で雷の弾丸を受け止める。

 素早く床へ向けてナイフを振ると電撃の刃が飛び、床へ激突して弾けた。

 しかし、ただのナイフで受け止めたのが原因か。ナイフは既に刀身は見るも無残な状態になっていた。

 

 ただの電撃じゃなくてオラクルだからな……当然と言えば当然か。

 

 

「す、凄い……」

 

「やり方は単純だ。電撃を空中で受けて着地する前に振って飛ばす。突きで出すと槍のように飛ぶ。ただ、雷を受けた状態で着地するなよ」

 

「もし、失敗して着地してしまった場合は……?」

 

「雷が全身を駆け巡り、逆に痛い目を見る。俺に教えてくれた人曰く、何人か死人が出ているらしい。まあ、真人間だったらの場合だ。神機使いなら痺れるだけで済むだろう、多分」

 

 

 

 

 

 

 

「間に合――うわ!?」

 

 雷属性のオラクル弾が神機の変形にもたついてるフェデリコにヒットして雷が弾けてフェデリコの体が吹き飛ぶ。

 

 

「ちょっとこれは想定外だな」

 

 フェデリコは少々不器用らしく神機の変形にもたついてしまっている。

 何事もそつなくこなすところを見ていた故に、意外な短所を発見してしまった。

 しかし困った。これでは一向に特訓が進まない。もう1度ジーナに頼んで着弾までの時間を調整してもらうか……?いや、だがただでさえ忙しい中あのバレットを作ってもらった手前頼むのは気が引ける。

 

「す、すみません。まさかここまで自分が不器用だとは……」

 

「いや、誰にだって苦手はある。克服しようと努力できるのは良い事だ」

 

 新型じゃない俺にはまるで分らんな。こればっかりはアドバイスもできない。

 

 

 仕方ない、ナイフはまだある。俺が空中で受け止めている間に変形を完了してもらい、俺の雷返しを返して貰おう。

 

 フェデリコに思いついた案を提案し、その流れで特訓を行う事になった。

 

 是非ともフェデリコには頑張って会得してもらいたい。

 ナイフは俺のポケットマネーで購入している。今持っているナイフは3本。つまり練習4回以降は俺の財布がダメージを受けると言う事だ。なんとかナイフを追加購入する前にフェデリコには会得してもらいたい。

 

 

 結果は一回目でフェデリコは雷返しを会得したようだ。

 試しに2回目、3回目と続けたが何の問題もない。後は実戦で怖気ずに受け止めて返せれば問題ないだろう。

 やはり才能があるようだ。神機の変形にもたつく欠点も慣れれば解消できるだろうし、どうとでもなるだろう。

 

 頼もしい後輩が出来て大変心強い。

 

 

「ユウさん、今日はありがとうございます!」

 

「ああ、気にするな。こっちとしても良い経験になった。これからもがんばれよ」

 

「はい!」

 

 

 フェデリコと別れ、エントランスに戻ると端末に連絡が入った。

 

 榊博士からだ。

 

 本部での検査の結果が出た……それに関してか。

 

 さて、何事も無ければ良いが……。

 




そういえば学生の頃職場見学で自衛隊の基地に行き、なんやかんやあって感電した事を思い出した。
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