Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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ー仕事中ー

ワイ「工事するでー」ドドドドドドドドド

イッヌ「ワンワン」ガブッ

ワイ「おー痛ってェおい!噛みやがったなお前!ざけんじゃねえよこのク〇犬‼」 

イッヌの飼い主「そこで工事してるのが悪いから自己責任でしょ」


ワイ「憤怒」 


参ったね、こりゃ

 

 検査の結果……。何も問題なければ良いが、アーク計画からずっと不調だからな……禄でもない事になっているに違いない。

 

 

 重たい気分のままラボラトリに到着し、研究室の戸を開ける。 

 

 

「ああ、待たせて悪かったね。早速、本題に移るとしよう」

 

「原因が分かった様で安心できますよ」

 

 

 俺の言葉を聞いて、博士は少し顔を歪ませた。

 

 ソファーに腰を掛け、博士が資料をテーブルに広げ指を指して説明してくれる。

 

「検査の結果、肩の傷から今までに例のないオラクルが見つかった。パターンから見ても、ユウナ君に結合している妙なオラクルとはまた別種のものだね」

 

「肩の傷……」

 

 紫炎を操るアラガミから受けた傷か。確か、灰域種と言っていたか。

 エレナが塞いでくれたおかげで助かったが……。

 確かに、ただの傷じゃねえのは喰らった瞬間に分かった。身体を内側から削られるような感覚……質の悪い激痛だったのは覚えている。

 

 その辺のアラガミとは次元が違うアラガミ、厄災のアラガミと呼ばれるにふさわしい強さを誇っていた。

 

 

「そのオラクルが君の体の偏食因子に影響を及ぼしているようだ。正直、ユウナ君に結合しているオラクルより厄介だろうね。全く解析が進まないんだ」

 

「え、それって……」

 

「ああ、とてつもなくまずい状況だ。正直、何が起きるか私にも分からない」

 

 博士の言葉に俺は顔を顰める。

 険しい表情から博士の知識をもってしてもどうにもできない問題と言うのが察せられる。

 

「理論上、神機使いは既にアラガミ化している状態だと言うのは知ってるね? 制御を維持するのは難しいんだ。偏食因子の過剰投与と投与不足の他に、神機使いとしての活動限界、偏食因子とオラクル細胞を制御する腕輪のエラー……制御ができなくなる可能性は数えきれないほどある。そして、君の傷から見つかった物……。正直、お手上げだよ」

 

「その、もう駆除とかできないんですか?」

 

「現在の医学では不可能だろうね。私から推奨、いや支部長権限で命令する。まずはこれ以上前線に出ない事、勿論腕輪は封印するよ。そして私や専門家の監視の元に居る事」

 

 

 榊博士の言葉に俺は衝撃を受けた。

 それは最早戦う事すらできない事を意味していた。

 

 せっかく、リッカが神機を修理できるかもしれないと提案してくれたのにも関わらず、突き付けられる現実。

 

 

「どんな影響を及ぼすか分からない以上、アラガミ化だけは何としてでも食い止めないといけない。そのオラクルの及ぼす影響は未知数だ。君の活動限界を大きく短縮させると言った事が起きない可能性も否定できない」

 

 そっか、俺神機ねぇから俺がアラガミ化したら俺を殺せる神機がねえもんな……。神機が修復できると決まったわけでもないし。

 

「リッカ君がハンニバルのコアを使って君の神機を再生出来ないか試しているだろう。申し訳ないが、神機が再生しても君に持たせることはできない」

 

 

 おいおい、こんな酷い話があってたまるかよ……。エレナを探すこともできないだろうが。

 

「どちらにしろ、ツバキ君には連絡をさせてもらうよ。後日、腕輪の封印処理の日程が決まり次第、ツバキ君を通して通告するよ」

 

 

「…………分かりました」

 

 

 そこからはあまり記憶にない。礼だけ言って頭を下げて研究室を出て、ラボラトリのベンチにとりあえず腰を掛け、今に至る。

 

 

 

 

 

「…………参ったね、こりゃ」

 

 

 とりあえず、リッカに謝りに行くか。あいつの事だから俺の責任じゃないとかって言うだろうが、それじゃあこっちの気が済まない。

 俺が頼んだ以上、ちゃんと頭を下げなきゃならんだろう。

 

 

 エレベーターに乗って神機保管庫を目指す。

 

 

 

 近くの整備員にリッカが何処にいるか聞き、整備室に居ると聞いたので礼を言って神機保管庫を後にする。

 

 整備室の扉を開けると、リッカが椅子に座って冷やしカレードリンクを飲みながら書類に目を通していた。

 

「ん、どうしたのユウ……そっか、神機の事?」

 

「ああ、話が速くて助かる」

 

「まあまあ座って。あ、クーラーボックスに飲み物あるから飲みなよ」

 

「ああ、悪いな」

 

 ボックスを開けてお茶の缶をとって椅子に腰を掛ける。

 

「すまない。せっかく提案してくれたのに」

 

「いいって、そんな。博士からも、ユウの神機を引き継ぐ人が現れた時の為に修復しておいて損は無いってそのまま頼まれてるから無駄なんかじゃないよ」

 

 リッカが笑いながら答えた。

 

「ユウは腕輪を封印された後、どうなるか決まってるの? 前線に出れないって事は偵察任務とかもできないって事でしょう?」

 

「ああ。確実に偵察班から異動になるだろうな。今まで通り、他の部署に手を貸しながら色々やっていくのか、デスクワーク専門になるのかは分からない」

 

「そっか、もし暇だったら整備班にも手伝いに来てよ。力仕事が楽になるからさ。なんなら整備士目指す?」

 

「頭使うのは嫌だから勘弁してくれ。力仕事ぐらいなら喜んで手伝うがな」

 

 

 

 *

 

 

 現実を突き付けられた日の翌日、俺は雨宮教官に呼び出されて執務室に出向いていた。

 

 案の定、腕輪の封印に関してだった。色々と手続きが必要でその後の待遇などに関しても説明があって、雨宮教官から直々に説明を受けている。

 

 本来、腕輪の封印とは神機に適合して規定の年数が経つか、士官としての能力を認められれば神機使いを引退と言う事で腕輪を封印する事になる。

 もし引退せずに神機使いとして活動を続けた場合、やがて活動限界を迎えてアラガミ化してしまうため、生き延びようが神機を手放す事になる。

 

 俺の場合は特例中の特例だ。規定年数に達してもいなければ士官としての能力なんて皆無である故、その後の待遇に関しても変更する場合があるかもしれないとの事。

 今のところは教練担当の雨宮教官の補佐をする事になった。

 

 苦手意識を持っている上司との仕事、こればかりは流石に胃がキリキリと悲鳴を上げて、冗談ではないと言わんばかりに訴えてくる。

 

「では、腕輪の封印処理は明日になる。不明な点があればまた聞きに来い」

 

「分かりました」

 

 

 教官に頭を下げて一礼し、執務室を後にしようとした。

 

「ユウ」

 

 教官に呼び止められて振り返る。

 

「お前は神機を失いながらも己の責務を遂行した。アーク計画、リンドウに関してもよくやってくれた。戦場に立てないと言っても悲観するな。各々がそれぞれの戦場に立っているのだ。今後の働きにも期待している。よろしく頼むぞ」

 

「了解」

 

 敬礼を返し、執務室を後にする。

 

 

 

 エントランスに戻ると、いつものように騒がしく人が行き来している。

 明日には実質神機使いを引退、今日は封印されていない腕輪をつけて居る事ができる最後の日だ。だが忙しなくしている奴らには関係ない。だからいつものように見える。

 神機使い引退なんて他の連中からすればずっと先の事だろう。俺が一足早くその先に着いている筈なんだが、何だか自分だけ取り残されているような気分だ。

 

 

 

「お兄さん!」

 

 聞き覚えのある声がした方を向くと、エリナがノートとペンを持って立っていた。

 

「今日も勉強か?」

 

「うん!」

 

 そうだな、戦場に出れなくてもできることはある。未来の神機使いの育成も現役だろうが引退していようが大事な仕事だ。

 

「そうか。よし、座りな。のんびりやろうや」

 

「うん!」

 

 そう言ってソファーに腰を掛けてエリナもテーブルにノートを広げて勉強会が始まった。

 

 

 そういえば、俺が教官の補佐になったらもしかしたらエリナにも訓練だの座学だのを教える事になるのか。座学か……結局頭使わねばならんのか。

 まあ、まだエリナに適合する神機が発見される可能性も低いだろうから本当にもしもの話だが。

 

 

「ねえお兄さん。どうして極東じゃ皆ブレード型神機を使っているの? あっちじゃポール型神機って言うのを使ってた人が多かったんだよ?」

 

「ああ、前に教えたアーティフィシャルCNSってあるだろう? 欧州製パーツは極東支部製のアーティフィシャルCNSと相性が悪くてな。だから神機使いの中でも特に適合率が秀でている人にしかポール型神機は許可できないんだ」

 

「極東には適合率の高い人が居ないの?」

 

「いや、ユウナなら適合率が高いから扱えるぞ。確かポール型神機の試験運用も担当しているからな。俺も先日初めて知ったが」

 

 

 先日、ユウナと飯を食べている時に本部での事を話してポール型神機の話題になり、ユウナは試験運用を担当していると暴露した。しかし、運用の際にはパーツなどその他諸々含めて欧州へ発注などが必要で手続きが面倒らしくあまり乗り気ではないとの事。

 

 本人によると、前回の会議で2、3年後には極東支部でも設備を揃えて正式運用に移れる目途が立ったとの事。

 

 

「それじゃあユウナさんに聞いたら教えてくれるかな?」

 

「ああ、多分な」

 

 

 その後もエリナの勉強に付き合い、彼女にも迎えが来て帰って行った。

 今度、戦術マニュアルでも渡してやるか。俺のお古だけど。

 

 丁度夕方だなと思ったら、腹が空いている事に気づいたのでとりあえず腹ごしらえだと思い、食堂へ向かった。

 

 

 安上がりなメニューを頼み、トレイを持って歩いているとタツミに呼び止められた。

 

「第2部隊勢ぞろいか」

 

 タツミの他にブレ公と誤射姫も一緒に食事をしていた。

 一応「邪魔するぜ」と一言言って席に座り、食べ始める。

 

「そういやユウ、明日で腕輪の封印だろ? 偵察班から異動したら何処に配属されるんだ?」

 

「今のところは雨宮教官の補佐をする事になっている。ある程度経験を積んだらまた別の部署に異動になるか、そのまま教練担当になるかだな」

 

「それなら、鍛錬の時は付き合って貰う事があるかもしれんな。その時はよろしく頼む」

 

 

 ブレ公はクソ生真面目なので選り好みせずに様々な自主トレを行っている。

 あまり重要視されていない組手も他の神機使いと比べれば経験が多い。俺もアラガミ退治より人間と戦う方が得意だったので中々白熱した戦いを繰り広げる。

 ブレ公も良い鍛錬になるらしく、それ以来ブレ公から時間があるなら組手に付き合って貰えないかとよく誘われるし、俺からも誘う事がある。

 

「それなら私の特訓にも付き合ってください!」

 

「カノンよ。前にブレンダンと2人で特訓に付き合って俺達を仲良く吹き飛ばしたのを忘れたか?」

 

 マジでコイツの誤射は何とかならないのか?

 ブレ公なんて特訓の後に『誤射されないための戦術理論を構築しなければいかんな』って呟いてびっくりしたよ。そもそもなんだよ味方に誤射されないための戦術って。

 そんな戦術聞いたことないわ!

 

「うう……ごめんなさい……」

 

 カノンが落ち込みながら謝ってくる。

 だが誤射もそうだが一番厄介なのは……戦場に出たら性格が凄まじいほどに豹変する事だ。もう二重人格じゃないのかと思う程変わる。

 

 アラガミを撃破したら『断末魔素敵だったよ!』とか女の子が口にするには過激なセリフを吐き捨てる。小型に至っては断末魔どころか悲鳴あげる前に消し飛ばされている。

 

 そしてこれだけに飽き足らず満身創痍のアラガミに『このままだと穴だらけだよ』だとかサディスティックである。

 

 タツミとブレ公の気苦労が知れない。だが、第2部隊じゃなくて良かったと安堵する自分もまた存在している。

 

 

 

 食事も終わり、タツミ達とも別れた。

 

「明日に備えて寝たいが、目が冴えるな……。眠くなるまでラウンジで時間潰すか」

 

 ラウンジで適当に寛ぎながら時間を潰せば眠気も来るだろう。

 

 「ッ……‼」

 

 適当に飲みながら時間を潰していると、胸が急に痛みを訴え始めた。此処には他の利用者も居る為、目立つことはしたくない。いきなり苦しみながら床をのた打ち回ったら皆驚くだろう。

 

 手で強く胸を押し、痛みを押し殺す。

 

 

 「ふー……」

 

 徐々に痛みは引いていき、深呼吸をして体と心を落ち着ける。

 

 よし、何とか痛みは無くなったか。しかし、相当体にガタが来ているようだ。これなら前線に出ても足を引っ張るだけだな。博士の言葉通りか。

 死期ってのはこんなに分かりやすいんだな……。できるなら寝てる間にポックリ逝きたいものだが……。

 

 俺はそのままラウンジに残り1人でグラスに飲み物を注いで夜が更に耽るまで静かに神機使いとして過ごせる最後の日をのんびりと過ごした。

 

 




前書きの続き

ワイ「犬に噛まれました」

上司「お前病院行けよ。あ、仕事中に噛まれたって言うなよ」


ワイ「超憤怒」
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