Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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クリスマスが今年も妬ましい。


ああ成程、適材適所ってか。

「……ん……?」

 

 目を覚ませば、見慣れたラウンジでうっすらとだが日の光が窓から照らしていた。

 

 やべ、寝落ちしてたか。時間は……まだ夜明けか……。端末には雨宮教官から腕輪封印処理に関して通達はまだ届いてない。

 

 

「…………妙に騒がしいな」

 

 

 

 まだ日が顔を出して間もないが、エントランスから喧騒を感じる。

 気怠さを振り払い、いざ向かってみればそこには衝撃的な光景があった。

 

 ボロボロのソーマが担架に乗せられ運ばれていった。

 

 今の、ソーマ……だよな……?

 

 近くにタツミとブレンダンが居り、2人に事の経緯を聞いた。

 ただ2人共泥だらけでが、特に外傷は無いようだ。

 

 

「タツミ、何があったんだ?」

 

 

「救難信号が出されて、近くに居るソーマが駆けつけたんだが、ビーコン反応が突然消失。そして俺達が反応のあった最終地点へ到着するとソーマと救難信号を出した神機使いが倒れていた。見てわかる通り、酷い有様だった。正直、カノンの応急処置がなかったら2人とも助からなかっただろうな」

 

 タツミがポツポツと語り始め、ブレンダンも頷いて肯定する。

 

「2人を担いで危険域を離脱しようと寄ってきたアラガミと交戦して今やっと帰投したところだ」

 

 手酷くやられたソーマとその神機使いは集中治療室へ運び込まれてすぐに手術をするとの事。

 とにかく今は待つしかないらしい。

 

「タツミさん!」

 

 俺達の元へヒバリちゃんが駆けてきた。

 

「ああ、どうしたんだヒバリちゃん」

 

「榊支部長から伝達です。防衛班の皆さんは、アナグラ周辺の哨戒をお願いしたいとの事」

 

「…………ああ、分かったよ。ヒバリちゃん、第3部隊に連絡を。カノンは一応アナグラに残していく。戦況によっては出撃もあり得るから伝えておいてくれ。ブレンダン、準備が出来次第出発だ」

 

「了解」

 

「わ、分かりました!」

 

 2人はタツミの指示に頷いてすぐに行動を開始した。

 タツミは俺の肩に手を置いて、『任せろ』と言い残して出撃ゲートへ歩いて行った。

 

 

「………………寝てる暇、無さそうだな」

 

 医療棟へ向かい、手術室の前で壁に背を預けて治療が終わるのを待った。

 

 

 暫く待っているが、一向に『手術中』と書かれているランプは点灯したままだ。

 

 

 しかし、あのソーマがあそこまで手酷くやられるとは……大方、特異個体か。あまりよろしい状況じゃないな。今はまだ夜明け……そこまで公にはなっていないだろうが、極東最大戦力『第1部隊』の一角がやられたとなれば、甚大な規模の士気低下を招くのは明白。

 

 流石に情報を伏せるように博士や雨宮教官も考えるはずだが、問題はそのアラガミをどうやって撃破するかだ。ユウナも動けない今、特異個体と戦えるのはリンドウさん、サクヤさんにアリサとコウタの第1部隊、タツミぐらいか……。しかし、タツミは防衛に努めなければいけない。恐らくリンドウさんとサクヤさん、コウタとアリサで討伐チームを編成するか。

 

 エレベーターが止まる音がして、扉が開くと雨宮教官が出てきた。

 

「…………ただ事ではない事態だ。腕輪の封印は後日になるだろう」

 

「分かっています。ただ、一体何が……」

 

「分からん。兎に角、どちらかが意識を取り戻してくれれば聞くことができるだろう」

 

 

 雨宮教官と共に手術室の前で待っていると、部屋のランプが消灯した。

 

 扉が開くと、そこからソーマが運び出され、担当医師は何とかなったと疲れた顔で言った。

 この後すぐにまだ手術が終わっていない神機使いの治療に手を貸さなければいけないと言ってそのまま去っていった。

 

 俺は雨宮教官と共に運ばれているソーマに同行する。

 

 

 

 

「やはり、ソーマが最初に回復したか」

 

「逆に言えば、ソーマ程の治癒力を持ってしてもって考え方もできますがね……」

 

「今はマイナス思考を控えろ」

 

 雨宮教官に窘められて、俺はそのままソーマが目を覚ますのを待つが果たして目を覚ますだろうか。

 あれ程手酷くやられては暫く目を覚まさない可能性の方が高い。

 

 考えている内に、すぐに榊博士が医務室へやってきた。

 

「ソーマの容体はどうだい?」

 

「絶対安静と言いたいところですが……」

 

「病み上がりで申し訳ないけど、彼でさえ敵わなかったアラガミについて聞かなければいけない事が多くある」

 

 榊博士も険しい顔をしており、今回の事態が如何にとんでもないイレギュラーであるのかを嫌でも認知させられる。

 

「ツバキ君。リンドウ君たちに連絡は」

 

「先程伝えました。2人にはすぐに戻ってきてもらっています」

 

 そうか、リンドウさんとサクヤさんは2人で出張へ出ていたのか。折角2人きりで出かけた矢先にこれとは……。

 

 博士が手持っている端末が音を鳴らし、博士が端末に目を向ける。

 

「手術の経過だね。やはり難航しているようだね」

 

 博士が端末を操作していると、再び表情を険しくした。

 そして、『これは……』と深刻な顔をしていた。

 その言葉に不安を覚えるが、先ほどマイナス思考を自重するよう言われた直後だ。

 俺は平静を装ってソーマが目を覚ますのを待った。

 

 

 医務室に誰かが向かってくる。気配から誰なのか察して戸を開ける。

 

「ソーマは……?」

 

 そこにはユウナが松葉杖を付いて息を切らしていた。

 

「ここまで来るなんて無茶したな」

 

 ユウナに肩を貸し、医務室の中に入り、椅子にユウナを座らせる。

 

「一命は取り留めた。病み上がりで悪いが聞きたいことがあるんだ」

 

 

 *

 

 

 

「ッ……」

 

 ソーマが目を開けて、起き上がろうとするが体に力が入らないのか、上手く体を起こせないでいる。無理をして何としてでも起き上がろうとしているソーマに慌てて駆け寄る。

 

「よせ。今は寝ておけ」

 

「くそ……! 寝ている場合じゃ……ッ!?」

 

 苦痛に顔を歪めながらも、ソーマは俺の肩に手を置いて支えにして無理に起き上がろうとする。ソーマの手を振り払う事も出来ず、俺はソーマの背中を支えてその上半身を起こした。

 

「ハア……ハア……。クソッ……」

 

 起き上がるのにすら人の手を借りないといけない状態が歯痒いのか、舌打ちをする。

 

「ソーマ、焦る気持ちは分かる。だが、今は安静にするべきだ。だが、何があったかは話してもらいたい。それが今のお前にできる唯一の仕事だ」

 

 教官もソーマを窘める。

 

「………………」

 

 落ち着きを取り戻したのか、ソーマが静かに語った。

 

 

「救援に駆けつけてたそこにはヴァジュラの死体だけだった。そして救難信号を出した奴も倒れ、担いでその場から離れようとしたとき、不意を突かれた」

 

「新種か?」

 

 不意を突いたとはいえ、ソーマと渡り合うなんて並以上の能力は勿論、知恵も必要になって来る。

 

「ローブで身を隠していたが……奴は、人の形をした……ディアウス・ピターだ」

 

 

「ディアウス・ピター? 人の形ってどういう意味――」 

 

 俺の言葉を遮るようにソーマは語り続ける。

 

「そのままだ。体格はほぼ俺達と同等、動きに至るまですべて。自らの身体から武器を作り出し、人間のように剣を振る。そして片言だが、言葉も発する」

 

 人間の形をしたアラガミ……?

 コンゴウやシユウの様な二足歩行できるアラガミかと思い、ソーマに尋ねるが首を横に振り、言葉通り人間と同じ姿形らしい。何より言葉を話せるのが驚きだ。

 

 うーむ、顔がピターで姿形体格は俺達と同じ霊長類……想像したらすごいアンバランスじゃね?

 

「情けない話だ……! 一太刀浴びせる事も出来ずに……ッ!」

 

 

「ユウナ君の証言と同じだね。ローブを纏った怪しい人間」

 

 ソーマのおかげで救難信号出した奴は一応命拾いしたか。ディアウスピター、普通の神機使いならとっくに喰われている。

 

「ソーマ、ピターに攻撃された時、何か違和感は無かったかい?」

「分かるのか……?」

「やはり、何かしらの異常があったみたいだね」

 

 榊博士がソーマの反応から確信を得たようだが、相変わらず深刻な表情をしている。

 

「攻撃を受けた傷から徐々に痛みと熱が広がってきた。あの感じ、ヴェノムやリークとは違う」

 

「ふむ……。やはり、予測通りだね……。当たって欲しくはなかったが……」

 

 榊博士が予想していたことが当たったようだ。

 

「榊支部長、やはりとは……」

 

 雨宮教官が博士に尋ね、目を細めて深刻な表情のまま言葉を紡ぐ。

 

「そのピターの攻撃を受けたら、傷口からオラクルに侵食される。そして適合率が低くければ低いほど……侵食が速く重症に至る。もし、適切な治療をしなければ死に至るだろう」

「それはつまり……」

「ああ、即効性・致死性の猛毒だと思えば分かりやすいか。手術の経過を見せてもらって解析したが、ソーマの適合率は知っての通りだ。だから手術は早く終わった。しかし彼は……最悪の結果になるかもしれない。ユウナ君はもその傷で済んだのはソーマと同じ理由だろ」

 

 

 ユウナが患者服の上から傷があるであろう場所を摩る。

 

 

 成程、そういう事か。確かに厄介だな。1回でも直撃貰えば時間との勝負という事か。

 カノンの応急処置がなければ助からなかったではなく、ソーマは適合率の高さも相まって何とか間に合った。もう1人はこれからが山場か……。

 

 

 しかし、謎がある。

 

「ピターは何故2人を見逃した?普通なら止めを刺すなり喰らうなりする筈じゃ……」

 

「奴は言葉を話す。去り際に『一時、時間を与えよう』と、ほざいて消えた……」

 

 

 博士の端末に連絡が入ったようで博士は熱心に端末を見つめ、焦燥の表情を浮かべた。

 

 

「この症状のオラクルの侵食は……偏食因子にまで……⁉」

 

「博士、それでは――」

 

 ツバキ教官の察したような口ぶり、教官の顔も今まで見たことがないほど焦燥に駆られていた。

 

「アラガミ化だろうね。死かアラガミ化か……最悪の2択だ……!」

 

 焦燥している顔で冷静に言葉を紡ぐ博士。

 

「おい、それじゃあいつは――ぐッ⁉」

 

 ソーマが腕を押さえ、苦しみだした。ソーマの腕を見れば一部が赤黒く染まっており、徐々に広がっている。

 

「うぅあ……くぅ……!」

 

 ユウナも苦しみだして椅子から倒れ、それを雨宮教官が抱き支える。ユウナもソーマと同じく首元や腕まで赤黒く染まった皮膚が姿を現し、苦しそうな呼吸と先ほどとは非にならない程の汗を掻いていた。

 

 

「これは……! ツバキ君、すぐに医療班の手配を!」

 

「分かりました!」

 

 ツバキ教官が端末を操作して医療班へ連絡を取る。

 

 

「早急に対策を立てなければいけないようだね。『一時』とはどの程度の期間かは分からないが、時間が無いのは確かなようだ。ツバキ君、至急各部隊の隊長・副隊長クラスの神機使いを集めて緊急ブリーフィングだ」

 

「至急取り掛かります」

 

 ユウナをベッドに寝かせて教官は医務室を出ていき榊博士もそのあとに続いて医務室を後にすると、すぐに医療班の連中が様々な器具を携えて入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

   ドクンッ!

 

 

「…………!」

 

 心臓が一度だけ大きく脈打った。まるで、戦えと言わんばかりに。

 

 

  『お前は呼ばれたのだ』

 

 

                『何故過去の存在であるお前が時を超えたのか』

 

 

  『この世で起こる事全てには、必ず何かしらの理由がある』

 

 

                『戦に長けた者を呼ぶなら、その理由は明白』

 

 

 

 

 戦友の言葉が脳裏を過り、やっとわかった。

 

 

 ああ成程、適材適所ってか。

 

 

 人の形、それもこちらと同じ様な体格なのだとしたら、これはまたとないチャンスだ。

 何より自分の身体から武器を作り出すのなら、また好都合だ。

 大体の対策はすでに思いついた。

 

 恐らくピターは敗北から学び、人に姿を似せてきたのだろう。

 

 オラクル細胞が初めて喰う事以外で学習した決定的な瞬間である。

 

 確かに長い歴史の中で一時は人間を多く殺したのはクマなどの猛獣ではなく、他でもない人間だ。そこに目を付けた辺り、賢いのだろう。

 実際普通の神機使い連中は人殺しなんてしないからな。どちらかと言えば猛獣退治が専門と言った方が的を得ているかもしれん。

 奴と戦うに限っては、俺が適任らしい。

 

 

 俺も医務室を後にする前に一声かける。

 

「今は休め。いいな?」

 

 俺も行こうとすると、肩を掴まれて振り向くとソーマは険しい顔をしながら俺を見ていた。

 

「おい……! 何する――つもりだ……?」

 

 流石はソーマ、俺のやる事がばれたらしい。だが、事態が事態だ。悠長に考える暇はない。保険てのは先に打っておくからこそだ。

 

「なーに、自分の仕事に戻るだけだ。お前はさっさとその傷治せよ?」

 

 ソーマの手を軽く振り払い、出ていこうとすると今度は後ろから抱き着かれて今度は何だと見れば苦しさを押し殺したユウナが必死に俺の制服を掴んでいた。

 

「ユウ、行ったら駄目! お願い!」

 

 

「関係者以外は立ち入りを遠慮してください!」

 

 

 医療班がユウナから俺を引き離し、そのまま離されて俺は医務室の外へ締め出された。

 

「ユウ!」

 

 ユウナの声が医務室から響き、俺は医務室に背を向けて歩く。

 

「………………急がないとな」

 

 

 さて、向かうとするか。心臓がさっきから煩くて敵わねえ。

 

 

 

 実質俺は外出禁止みたいな状況だ。それはオペレーター各員にも伝達されている筈。入口を見張るように受付が配置されているので、外に出ようとすると呼び止められるに違いない。

 

 階段を駆け上がって、トイレに入って人の気配が来ないか確認して窓を開ける。

 

 あ、ついでに用を足してくか。

 

 手を洗って、そのまま窓から外に出る。

 壁を駆け下り、近くの建物の屋上に着地する。

 

「…………」

 

 心臓の鼓動はまだ止まない。ある方向を向いた瞬間更に大きく脈動して自然と頭が理解する。

 

 この方向に奴が……ピターが居ると。

 

 屋上から屋上へ飛び移り、すぐ近くのパイプラインの上に昇り、そのまま疾走して心臓の鼓動が指し示す方向へ向かった。

 




皆さん、子供の頃はサンタさんは信じていましたか?
私は6歳の頃に真実に気づきました。

ワイ6歳「お、電話きたやんけ。もしもーし」ガチャ
親父「私はサンタクロース。今日の夜プレゼント置くからなー」
ワイ6歳「あ、はい」(これパッパの声やんけ。)
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