Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者 作:ロイヤルかに玉
アラガミ装甲壁を越えて市街地エリアを過ぎて更に先へと向かう。
もしかしたらピターは既に動き出しているのかもしれない。意識を集中して気配を感じつつ走り続けた。
「…………ッ!」
一際大きな気配。どうやら向こうから出向いてくれたか。それとも丁度アナグラを攻めに来たか。
まあ、明らかに後者だろう。
向こう側から歩いて来るローブを纏った黒い人影。
間違いねえ、奴が人間の形をしたディアウス・ピターか……。
見覚えがある姿だ。大分前だがハンニバルを一撃で沈めた奴と同じだ……。
道理で人間の気配がするわけだ。まさか、リンドウさんかと勘違いしたばかりか最初に奴の姿を拝んでいたのは俺だったとは。
ピターは歩みを止めて、こちらを見て不敵に笑う。
『シニニきたカ、おろかモノめ』
片言ではあるが言葉を話すと聞いたが……中々日本語がうまいじゃないか。
「ちげえよ、調子こいてるテメエをぶっ潰しに態々出向いてやったんだよ、テメエの<自主規制>に指突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやらぁ」
中指を立ててピターへ向ける。
『ワレはヒトをトウタする。ヒトハワレにアらがえん。キサマラは害獣でシカなイ』
「害獣とは随分な言い様だ。いいか? 害を成すから害獣だ。俺からすれば、俺に対して害を成しているテメェが害獣だ」
『キサマ……ホザイタナ。決してクツガエセヌちかラの差をミルがイイ。キサマはワレに勝てん。希望ナドソンザイせん』
「そうか? 1度敗北してこちらに姿を似せたあたり、学習しているようだが……お前、本当に人間を理解した上でその姿を選んだのか?」
『なにがイイタイ』
「いやなに、すぐに分かるさ。さあ、さっさとおっぱじめようぜ。こっちは帰ったら始末書等が雁首揃えて待っているんでな。嫌な仕事は早く片付けるに限る。だから――」
足を肩幅に開き、腰を引いて拳を軽く握った。
「能書き垂れてねえでさっさとかかって来い。此処がお前の――ッ!」
宣戦布告をしようとした瞬間、ピターは体から自身の刃翼を模した剣を生み出し、それを手に凄まじい速さで襲い掛かかってきた。
瞬く間に間合いを詰められて刃が目の前まで迫る。
さっさとかかって来いとは言ったが、まだ喋ってる途中だろうが――
「よッ!」
攻撃を受け流しつつ、ピターの手首を掴んで捻り、流れるように武器を奪い取ってピターへ斬撃を入れる。
『ヌウ!』
思わぬ反撃でピターが後退りして隙を見せた瞬間、即座に蹴り飛ばしてこちらも距離を取る。
地面を転がったピターが立ち上がると共に構えた。
『グウ、ニンゲンガァ!』
ピターは姿を消した。
消えた――いや、ただ速いだけか。
「ッ!」
背後で地面が蹴られる音と共に気配を感じ、即座に振り向きつつ身構える。
姿を現したピターが飛び掛かかってきた。
再び攻撃を受け流し背後へ回り込んで踏込と同時にピターを斬りつける。
『オノレェ!』
ピターは後方へ跳び、同じく刃を精製してこちらに向かってくる。
迫る刃をこちらも刃で受け止めて鍔迫り合い。
不意の素早い蹴りを何とか回避し、距離を取るが直後に距離を詰められて攻撃を許してしまったが、こちらも意地で迎え撃つ。
互いの刃はぶつかり合い、金属音に近い音が響いて火花を散らす。
少しばかり手が痺れる。流石はアラガミか……。
左手でフックを繰り出し、続けて肘で打撃を放つが防がれる。
当てたところで、拳と蹴りじゃダメージにはならない。何とか隙をつくり、急所――首か胸を突き刺して仕留めるしかない。
幸い、ヒトを真似たおかげで体術は隙を作るうえで有効打になる筈だ。
此処でこいつを倒す。倒せなくてもせめて致命傷、欲を言えば片足か片腕、片目を潰してアナグラの連中に後を託す。
何度も刃はぶつかり合い、火花を散る。手の痺れが気になるが、気合で堪えて攻撃の速度を維持し続けた。
僅かな隙を見つけ、踏込と同時に肘で殴りつけるが防がれる。それを見越して右足を軸に左足で回し蹴りを繰り出してピターの脇腹にめり込ませる。
しかし相手はアラガミ、気にも留めずに爪を突き出してきたのに対し、上体を仰け反らせてやり過ごし、即座にバックステップで後ろへ下がる。
「ちっ、流石に崩れないか……。しかし、さっきまでの余裕はどうした?」
挑発と共に刃を振るが、容易く弾かれる。
『スコシハ、ヤルか。ニンゲン、タイシタものダ』
「テメエに褒められても嬉しくねえよ。さっさとくたばっちまえ」
『ヘラズグチを』
剣戟と体術の応酬を繰り広げ、互いに再び距離を取る。
奴の接近と共に刃が迫り、後ろへ下がると目の前を通り過ぎる。
反応が遅れていたら顔に消えない傷が……いや、鼻から上が斬り落とされたかもしれんな。
実に冷や汗ものだ。
追撃を低姿勢で躱し、再びバックステップで距離を取るが、予想されていたのかすぐに距離を詰められて刃が突きだされる。
迫る刃の腹に剣を叩きつけて無理やり弾き反撃を仕掛けるが容易く防がれ、今度はピターからの反撃。
こちらも最小限の動きで隙を作らないように回避して、すぐに攻撃へ転じるも反撃は弾かれる。
僅かな隙を突いた攻撃が向かってくるが、いなしつつ背後へ素早く回り込み、即座に刃を突きだすもピターは跳躍しつつ背後へ回ってくる。
急いで振り向きつつ刃を振るがバックステップで距離を取られやり過ごされる。
『ココマでダ』
ピターは体から新たに片刃の剣を取り出した。今の剣と比べれば明らかに上等なものだ。
この剣で受ければ諸共斬られるな……。
仕方ねえ、仕切り直しだ。
ピターが剣を構え、距離を詰めてくるのに対し、牽制目的で刃を投げて後退。
牽制攻撃は回避されて刃が迫り、斬撃を躱して隙を伺う。
横切りは姿勢を低くして躱し、縦切りは体を横に反らし、袈裟切りは横に回り込むように躱す。
「ッ!」
斬撃の猛攻から突きに転じたようだ。素早い突きをひたすら躱す。
くそっ、どんなに見切れても反撃出来なければ意味がない。俺もまだまだか……。
急に連撃が止まり、ピターは掌を向けた。
掌に赤い電撃が一瞬だけ走った。
「ッ! ふ――」
察して横へ跳ぶと共に、ピターの掌から赤い雷球が発射された。
「へえ、手品か? 他に特技は?」
ピターは剣を咥え、両掌を向ける。次々と赤い雷球が発射され、ダッシュからの横跳びやバク転、バック宙、サイドステップは勿論、体を捻じりつつ跳んでひたすら回避する。
「さて……」
雷球を回避しつつスタングレネードを取り出して思考する。
かつて第1部隊が交戦した際、背中に隠した翼のような刃でスタングレネードから視界を守ったと聞いている。
翼が無い以上、腕で目を覆って攻撃が止まる事を見越して距離を詰めるか。
回避行動をとりつつ、スタングレネードの安全ピンを引き抜く。
レバーを握っていつでも使用できるよう準備をする。
よし……行くぞ。
次の雷球を躱すと同時に方向転換をしてピターへ駆けだす。
前方へ駆けつつ次々と迫る雷球を躱し、ピターとの距離を詰めて行く。
そしてスタングレネードをピターの足元に投げつけると同時にステップで一気に距離を詰める。
ピターはスタングレネードが効果を発揮するよりも早く空中へ跳び、雷球を連射した。
しかし、どの雷球も俺を狙ってはいない。
雷球が地面へ衝突して弾けると砂埃が舞い、周囲の状況を把握できないがとにかく集中して警戒する。
しかし、砂埃に乗じて攻撃が飛んでくる訳でもない。砂埃が晴れると俺を囲むように雷球が配置されていた。地上、空中共に包囲されている。
この状況で一斉に撃たれれば逃げ場は無いに等しい。
「アララ……こりゃ参った。まあ、手が無いわけでもないが……な!」
意識を集中し、雷球の配置を確認して通り抜ける可能性がある箇所を目測して即座に前方へ駆け――
『キエロ!』
ピターの言葉と共に雷球は一斉に動き出す。跳びながら体を捻り、雷球と雷球の間を潜り抜けて離脱する。
「少しヒヤッとしたな。やっぱ知恵があるだけ厄介だな」
左肘をピターに向け、構えと共に呼吸を整えて一気に距離を詰めて肘打ちを叩き込み、続けて右足で踏み込んで掌底を叩きつけて態勢を崩す。
『ヌゥ!?』
突然の奇襲に怯んだ隙に、剣を持っている方の腕を宙返りと共に蹴り上げた。
剣は宙を舞い、気を取られたピターにそのまま突き蹴りを放って吹き飛ばす。
ピターから目を離すことなく、降ってきた剣をキャッチしてすぐに追撃へ向かう。
まず一太刀繰り出し、ピターの胴体に傷を入れた。もう一撃入れようと剣を振るが、ピターが剣を取り出し防がれた。
少し後退すると見せかけて斬りかかるが、ピターも同じように剣を振る。
二撃、三撃と剣を合わせ火花が散り、側面へ回り込んで同時に斬りつけるが受け流しで凌がれ、牽制しつつ距離を取って互いに向かい合う。
ピターが横薙ぎを繰り出し、姿勢を低くしつつ後ろへ下がって避ける。
続けて迫り来る縦切りは地面を転がりつつ背後へ回り込んで斬りつけ、次の攻撃を先読みし、すぐに後ろへ身を翻す。
同時に読み通り、ピターが剣を振りつつ一回転して周囲を薙ぎ払った。
後隙を狙い、踏込と共に剣を振るが奴は無茶な姿勢での反撃に対し、攻撃を中止して防御。
攻撃を受け止めた衝撃を利用して大きく距離を取る。そして互いに構え、同じタイミングで剣を振りつつ互いの背後へ切り抜ける。
振り向き合い、すぐさま繰り出された突き攻撃を最小限の動きで回避してピターの肩を斬りつけて、背後へ回る。
振り向きながらの反撃を一度バックステップで下がったと見せかけて跳び蹴りをかますと、追撃のために接近したピターの顔面に足の靴裏をめり込ませて吹き飛ばす。
『オノレェ……!』
ピターは受け身を取ると共に高く跳び、上空から雷球を発射してきた。
降りかかる雷球をすべて躱し、跳んで空中のピターを追い駆ける。ピターは迎撃の雷球を発射してきたが雷球を剣で斬り、掻き消しながら接近する。
ピターも神機使いと同じように空中ステップで向かってきた。
間合いに入った直後、剣を振ると奴もほぼ同じタイミングで攻撃を仕掛けてきて剣同士が衝突して耳障りな音が響く。
そのまま空中での剣戟に移行し、互いに空気を蹴って移動しつつ斬撃を繰り出す。
『シネ』
渾身の斬撃を仕掛けてきたが、身体を僅かに反らして反撃を回避して剣を振る。
攻撃・防御・回避・反撃の応酬を繰り返す最中、一瞬の後隙をついて右膝を振り上げて胸部にめり込ませ、更に態勢を変えて両足でキックを放つもピターは腕を振る。
腕に弾かれて吹き飛ばされるが、態勢を整えて空中ステップでピターを追い駆けて勢いのまま剣で刺突を仕掛ける。
『ヌウン!』
ピターが片手で赤い電撃を放ち、こちらは咄嗟に防御して赤い電撃を受け止めて刀身に纏う。
「かかったな馬鹿が! 雷返し!」
突きを繰り出して赤い雷槍を放つ。
『ナラバ……!』
ピターも同じように刀身で受け止めて一回転ともに剣を振ると雷の刃が返ってきた上に、既にピターが追撃を仕掛けようと接近していた。
「……ッ、要らねえよ!」
咄嗟に剣を振って電撃を纏い、そのまま勢いに任せても更に回転切りを放つと赤い電撃の刃が突撃を仕掛けてきたピターを飲み込む。
『グオオオォぉぉッ⁉』
ピターの悲鳴が聞こえ、更に追撃を繰り出すが容易く防がれた上に弾かれる。
奴が唐突に踵落としを掛けてきた。
咄嗟に片方の腕で防御するが一撃は重く、地面へ叩き落とされる。
着地時に両足で踏ん張るが耐え切れず膝が地面につく。受け止めた腕に多少の痛みと熱が残って痺れる。上空からピターが剣を構えて襲い掛かるも最低限の動きで上空からの攻撃を回避し、斬り込んで地上での白兵戦に持ち込む。
斬撃を弾かれてそのまま反撃を返されるが受け流しつつ相手の手首を掴み、足を絡ませて刈り取ると同時に地面へ叩きつけるが、受け身を取られた果てに逆に掴まれた。
放り投げられるがうまく着地をしてバックステップで距離を取るが、相手も加速して追い駆けてくる。
「ちっ! 攻めないと悪戯に消耗するだけか……!」
攻撃に転じる為には最小限の動きで対応をしなければいけない。こちらはまともな一撃を食らえば致命傷、ミスは許されない。
剣を両手に持ち、ピターの斬撃を冷静に弾く。
突然奴は跳び上がって、剣を振り下ろしてきたが横へ軽いステップで躱すと奴は次に肘打ちを繰り出してきた。
剣の腹でガードするが思いの他、衝撃が強く後方へ押され、奴は距離を詰めて突きを放ってくる。
「ふッ!」
突きを受け流しつつ、突き出された剣を片足で踏みつけて地面へ押さえつけるが、ピターはこちらへ空いた方の掌を向けた。
雷球が発射される前に横へ転がり、態勢を整えて斬りかかるが、躱されこちらに下段攻撃を仕掛けてくる。
「甘い!」
身を翻しつつ跳躍し、着地と共に蹴りを浴びせて一回転しつつ2連続で蹴りを入れ、更にもう一回転して勢いに任せ剣を振り、返し刃で更に切り裂き最後に突き蹴りを繰り出すも最後の蹴りが防がれ、反撃を許す。
「ちっ!」
何とか回避して僅かな隙を見つけて首を狙って斬りかかるが黒い刃に防がれ、咄嗟に後ろへ飛んで反撃を回避する。
踏み込んで胴体に剣を振るが向こうも同じ考えか、こちらの攻撃とほぼ同じ軌道を描いてぶつかり合う。
似たような応酬が、数秒の間に幾度か繰り返される。
剣戟の最中、重い一撃が振られて咄嗟に防御すると後ろへ押されてつい膝を突く。
「……ッ」
人間の真似事にしちゃ良く出来ている。
見切りの極意にここまで対応してくるとはな……!
咄嗟とは言え……雷返しに対する返し、今の重い一撃……。
奴め、戦いながら学習している。このまま戦いが長引けば奴も更に強くなり手が付けられない状態になる。
速さ、力、体力はすべてあちらに軍配が上がる。故にこちらは培ってきた経験と技量で仕掛けるしかねえ。
踏込と同時に距離を詰めて斬りかかるが、奴は後ろへ下がってやり過ごしてからの反撃。
反撃が飛んでくる前に剣を振って牽制する。
後ろへ後退し相手の攻撃を誘う。
誘いに乗ったピターは踏込と共に斬撃を放ってきた。体を反らして攻撃を回避し、攻撃するが相手も剣を振って弾く。
互いに攻防を繰り返し、何度も斬撃がぶつかり合う。
剣を水平に薙ぐフェイントを入れ、剣の柄頭でピターを殴り飛ばす。そして追撃――
「ッ!」
態勢を崩しつつも俺の肩を狙った的確な蹴りでの反撃に対し、追撃を中止して向かってきた足に剣を突き刺す。そのまま足を切り裂き、蹴りを入れる。間髪入れずに跳躍と共に切りつける。
まだだ、折角攻勢に出たんだ。ここで一気に決着をつける!
切り口を押さえて悶える奴に飛び込み突きを放つが、剣の切っ先は奴が持つ剣の柄頭で受け止められた。
こいつっ……! さっきの技を……ここまで器用とは予想外だな……!
ピターがパンチを放つと共に、横へ受け流してバックステップで後ろ軽く跳ぶ。
『貰った!』
ピターが予測していたと言わんばかりに飛び込んでくる。
着地と共に一か八か、回転しながら周囲を斬りつける。
回転の勢いをつけた鋭い斬撃がピターの肩から腹を切り裂き、強力な反撃を叩き込まれた奴は即座に距離を取る。
『ラチガアカン。チョコマカト……』
「俺が悪いんじゃない。当てられないテメエに問題があるんだよ」
『ナラバ、コウスルマデダ』
言葉と共に突撃。
「知恵があるのに結局ゴリ押しか、所詮人間の真似事か」
攻撃を弾いても今度は下段の薙ぎ払いが繰り出され、跳んでそのままピターを踏み台にして跳びあがり、頭上から剣を振り下ろした。
「ッ!」
剣を受け止められると共にそのまま弾き返されて地面へ叩きつけられるが受け身を取って態勢を整え、次の攻撃が飛んでくる前に一気に間合いを詰めて斬りかかるが刀身で防御される。
ピターが後ろへ少し下がると、すかさず踏み込んで距離を離すまいと踏み込んで蹴りを仕掛ける。
しかし奴は不意に体当たりを仕掛け、足一本で体当たりに勝てる筈もなく態勢を崩す。
その隙をつくかのような追撃が迫る。
「ッ……!」
咄嗟に刀身で防ぐが衝撃までは防ぎきれず後ろへ押されながらも、地面を踏みしめて踏ん張り、そのまま剣を掲げて構える。
ピターの追撃に合わせて剣を振り下ろす。
「カァーッ!」
気迫と共に振り下ろした斬撃は防がれるも、衝撃までは防げなかったようでピターは地面へ叩きつけられる。
即座にピターが足元に雷球を撃ち、砂埃を起こして大きく跳躍して距離を取られる。
ドクッ!
「グゥ……⁉ くそ、こんな時に……!」
心臓の鼓動が聞こえたかと思えば息苦しくなり、胸部が激痛に襲われて脚から力が抜け始める。何とか気合で堪えて立つ。
砂埃の向こうでピターの影が見え、こちらへ迫ってくる。
焦って剣を振ると、手ごたえは無く砂埃には赤い電撃が走った。
背後から何かが迫って来るのを感じ取り、振り向きと共に剣を振るが切り裂いたのはピターの形をした赤い電撃だった。
「は、お人形遊びか?」
嘲笑った直後、真っ二つに斬られた赤い電撃は弾け――
「ぐッ!?」
ヤベッ、体が……!
完全痺れた訳ではない。それよりも奴を……!
焦りながらピターの姿を視界に捉えようとした瞬間、目の間に邪悪な顔が現れ、腹に掌を当てられると同時に凄まじい熱を感じ、激痛と共に吹き飛ばされた。
「――ッ!」
あまりの痛みで悲鳴を上げる事も出来ず、地面へ転がり腹部の激痛に悶える。腹はジュウと焼けるような音をたてながら痛みを訴える。
「グ……ウゥ……」
歯を食いしばり、痛みを堪えて立ち上がろうとするが足に力が入らず、剣を杖代わりにしてやっと立ち上がる。だが立っているだけでやっとだ。
ああ、くそ……あんなお人形遊びで致命傷を受けるとは……。馬鹿馬鹿しい……ッ!
致命傷を貰ったと認識すると心臓が速く、大きく鼓動して体に力が漲る。
はっ、致命傷がなんだ。戦いは終わっちゃいねえぞ……戦闘――続行だ……!
『愚か。実に愚カ、くだらん、ゼツボウしろ』
ピターが一瞬で距離を詰め、突きを放つ。
「ッ!」
何とか躱そうとするも剣の切っ先が右手の腕輪に直撃して腕輪が大きく欠け、その瞬間に手から腕にかけて凄まじい痛みが走る。
「…………ッ!? っ……!!」
更に追撃が迫り、激痛を押し殺して剣を振って斬撃を弾くが連撃は止まらない。次の斬撃も何とか弾き、さらに続く斬撃にも何とかくらいつくが次第に捌けなくなってくる。
「くっ……!」
ガキンッ!
剣が弾かれ金属音が響く。態勢を崩し、大きな隙を見せてしまった。
『死ねェ!』
ピターの剣が腹部に突き刺さった。
ちなみに次回で完結です。かなり長くなる予定故、長すぎたら結構大掛かりな添削になると思いますが年内に投稿する予定です。(願望)