Nameless Story 1人孤独に立ち向かわざるをえない者   作:ロイヤルかに玉

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これにて完結です。
大掛かりな添削になりましたが年内に投稿出来て一安心です。


愛してるぜ。

 

 

 

「ガアッ!? ――ちぃ!」

 

 

 火傷するような痛みを堪え、ピターの手首を掴んでこちらも剣を構えて奴を睨みつける。

 予想外の抵抗だったのか、奴は一瞬目を見開いた。

 

「んなもん――効くかァ!」

 

 雄たけびと共に右手に持つ剣をピターの腹部へ突き刺す。

 

『ヌゥ!?』

 

 そして力任せに蹴り飛ばす。奴が剣を握ったまま吹き飛んだせいで腹部に再び激痛が走り、血が噴き出した。

 しかしそれは向こうも同じ。腹部の傷を押さえて悶えている。

 

 

 

 深い刺し傷から血が溢れ、無駄だと分かっていても空いた手で傷口を押さえる。

 

「がァ……グァ……ゴフっ! グ……ゥ」

 

 激痛で体にうまく力が入らず、片膝を突いて口から血を吐き散らかし、剣を杖代わりに立つ。

 

 右手は赤黒い異形の手に形が変わり始め、刺された箇所を見ると傷口からオラクルの侵食が広がっていた。

 

 負傷箇所からオラクルに侵食、おまけに腕輪がやられたか……!

 

 アラガミ化、即効性の猛毒、榊博士の言葉が頭を過る。

 

「やってくれるな……! だが、この程度……」

 

 

 強がりを自身に言い聞かせて立ち上がる。焼け焦げ、ボロボロになり衣服としての機能を失った上着を破き捨てる。

 

「まだ、死ぬわけには行かねえんだよ……!」

 

 

 猛スピードでピターが迫りくるのを確認すると共に拳を強く握り、全神経を集中する。

 

 ピターが腕を振り上げるのを確認すると共に、こちらからも距離を詰めて懐に潜り込む。

 剣が振り降ろされるよりも早く、腰を落としつつ腹部に異形の右拳を打ちこんで吹き飛ばす。

 

 しかし、ピターはすぐさま反撃に移り剣の切っ先が迫る。

 咄嗟に身を捻って避け、そのまま回転蹴りを脇腹へめり込ませて吹き飛ばす。

 

 

『キサママダ……ナゼ、ナぜダ? ナゼゼツボウシナイ……! これほどノ差ガアルにも関わラズ!』

 

「舐めるなよ……! 俺はまだ……戦える……! 人様の真似しか出来ないテメエには一生分からないだろうがな。血肉と魂が吠えてるのさ。テメエをぶっ潰せってなァ!」

 

 この傷……助かる見込みはもう無い。正真正銘、これが最後の戦い。

 なら、未練なんぞ残さないよう全力でやってやる。

 

 予定変更だ、コイツだけは絶対に此処でぶっ潰す。

 

 許せ、皆。残していく連中の事を思うってのはこういう事なんだろうな……。

 

 

 エレナ、約束……破っちまった……ごめんな。

 

 

 誰かが言っていたな。人間生まれた時は自分が泣き、周りは笑う。自分が死ぬときは周りが泣いて、自分は笑っている。

 それが人にとって一番幸せな人生だと。

 果たして本当にそれが幸せであるのかは分からんが、まあそれはそれで悪い気はしない。

 

 泣くのは構わない。涙を一滴も流せない悲しい人間よりはマシさ。

 だが、必ず仲間の死は踏み越えないといけない。

 それが散っていった者達への弔いだ。

 

「さあ……地獄まで付き合ってもらうぜ、害獣野郎。誰に喧嘩売ったのか教えてやる……!」

 

『オノレ……イレギュラァメ。ゼツボウシロぉ! キサマをケシタラスグにキサマのナカマモあとをおせテやる! 我こそ神にして絶対なりぃ!』

 

 ピターが空へ吠えると赤い電撃を体中へ走らせる。

 

 赤い電撃を纏った奴が瞬間移動で間合いを詰めて剣を振る。

 

 剣を盾にして防ぐが、あまりの衝撃に飛ばされて膝をつく。これ以上力が入らない。だが、諦めるつもりは毛頭ない。

 既に立つ場は死の淵、だが――最後の一線は超えるにはまだ早い……!

 

 

 決意して体に力を込めると胸と首に違和感を感じ、剣を持つ手が暖かい何かに包まれた。見てみれば……小さな手が、俺の手を優しく覆っていた。

 

 小さく暖かい手の主。

 視界には……此処には居ないはずの可愛らしい少女の幻が見えた。

 あの出会いから一度として忘れたことは無い。

 とても優しく、笑顔が良く似合う少女が――笑顔で俺に言った。

 

 

『ユウ、大好き!』

 

 

 

「はは……俺もさ。ありがとな」

 

 

 笑って彼女の幻に答えた。胸と首が熱くなり、熱は全身へ。激痛は消え失せ力が漲り、剣を構える。

 

 構えた瞬間――腹の傷口からオラクルが噴き出し、ピターから奪い取った翼を模した黒い刃を包む。

 

 黒い刃は、灰がすべてを喰らうあの世界で……彼女から借り受け、幾たびも振るった灰色の刃に形を変えた。

 

 それは当然のように手に馴染む。

 

 

 こちらも剣を両手に持ってあえて攻撃に対して攻撃を繰り出し、斬撃同士をぶつける。

 俺が弾き返そうとするとピターも同じように弾き返そうと力を込め、互い後ろへ弾き飛ばされる。

 

 すぐに態勢を立て直し、再び距離を詰めて斬り合いに持ち込む。

 

 剣戟の最中、ほんの一瞬の隙を逃さずに踏込んでピターの胸部を狙って切っ先を突き立てるも奴は肩を盾代わりにした。すかさず蹴りを腹に入れて引き離す。

 

 受け身を取って着地をしたピターは雷球を撃ちながら接近してきた。

 

 雷球を避けつつこちらも接近する。剣が届く距離に入ると同時に一閃、奴も剣を振ってきた。刃同士がぶつかり合い、灰色の刃と黒い刃がぶつかる度に火花が散る。

 

 攻撃、防御、回避、受け流しを駆使した応酬を続ける。

 

「さっきは油断した。見切るってのは焦らず冷静であることが前提条件なんでな」

 

 剣を振りつつ言葉を紡ぎ、迫る斬撃を防いで弾く。

 

『そのカラダデハワレのイチゲキ二タエレまい。楽にシテやろウ』

 

「確かに、後1回でも直撃貰えば死ぬだろうな。故に、油断はしないしお前の攻撃にはもう当たらない」

 

『ナラバ……』

 

 ピターの剣にオラクルが集結して赤黒く光を放ちながら、強大な刀身となる。剣を重そうに持ち上げて振りかぶる。

 大技をかます気か。

 

 こちらが構えると同時に右袈裟斬りを繰り出してきた。

 

 意識を集中し、躱す事に専念して最低限の動き且つ紙一重で避ける。続けて左から水平斬りも同じように捌く。

 

『死ねェ!』

 

 そして最後の一撃と言わんばかりに、刀身は輝きを増す。そしてピターは辺り一帯を薙ぎ払おうと剣を振りかぶる。

 

 輝きを増して迫る刀身を軽い跳躍で回避し、そのまま回し蹴りを放つ。

 

 

 蹴り飛ばされたピターは再び瞬間移動でその場から消え、背後に気配を感じ振り返ると再び瞬間移動で姿を消す。

 

「ちぃ……!」

 

 横や正面、背後と距離を保ちつつ周囲を瞬時に移動し続けるピターに少しイラつくが、すぐに冷静になって意識を集中する。

 

 背後より迫る気配を察知すると当時に振り向いて剣を振り、ピターの奇襲を弾き返す。

 

 地面を転がり、すぐに姿を晦ましたピターの気配を追おうと意識を集中した瞬間を背後から光の輝きを感じて振り返ると、ピターは両手で巨大雷球を作り出し、こちらに向ける。

 

『キエロォッ!』

 

 雷球からこちらを容易く呑み込める規模のレーザーが照射された。

 凄まじい熱気を放ちながら迫ってくる。

 

「ちっ、でかい雷球にお次はレーザー? 出鱈目な奴め」

 

 レーザーを躱しつつ後隙を晒した奴へ近づき、斬りかかると見せかけて地面へ剣を突き刺して思い切り振り上げて砂をピターの顔へ掛ける。

 手で顔を覆い、その直後に渾身の力で殴りつける。

 

『ヌぅ……!』

 

 受け身を取ってピターが両手を構え、雷球で弾幕を展開される。

 

 雷球の嵐へ突撃を掛け、被弾しそうな雷球を剣で掻き消しつつ距離を詰め、一気に斬りかかって剣戟へ持ち込む。

 金属音が何度も響き、火花が何回も散る。

 

 斬撃を回避しつつ真横へ回り込んで突き攻撃を繰り出すとピターは飛び退くが切っ先は頬の肉を幾分か削ぎ落して鮮血が舞う。

 

 

『オノレッ!』

 

 ピターめ、相当頭にキテるようだな。

 誘い込んだ。後はこちらがヘマをしなければすぐに終わる。

 

 腰を低くして、足に力を込める。

 

「言ったろ。お前だけは生かしちゃおけねえってな。だから、此処で全部終わらせてやる」

 

 全身全霊の力で地面を蹴り、距離を詰めるが奴は剣を上段に構えた。

 

 あの構えは……やはり使ったか。

 

 無骨に、正面から叩き斬る。ただ、それだけを一意に専心した技。

 

 

『ハアッ!』

 

 刃が振ろ下ろされた。

 気迫なら奴の方が上であるが……自分の技を見切れない間抜けが居ると思うか? 

 最初に忠告した筈だ。本当に人間を理解したうえで真似たのかと。

 

 

 おかげでこいつにぶち込めるぜ。致命の一撃をな……!

 気迫と共に振り下ろされる剣よりも早くピターの側面へ滑るように回り込み、霞の構えを取る。

 

 瞬時に精神を統一して明鏡止水へ至り、剣を一振り。

 

 その一振りでそれぞれ軌道の異なる二つの斬撃を同時に繰り出す。

 

 一太刀は肩を、2つ目の斬撃は左腕を斬り落とした。

 

『GAAAAAAA!?』

 

 燕なら躱せたぜ、今の攻撃。だからお前は燕以下だよ、害獣野郎。

 

 悲鳴を上げるピターへ更に連撃を繰り出し、滅多切りにする。

 右袈裟斬り、左から水平斬り、右から返し刃、 左下から斬り上げ、垂直に近い上段斬り下ろし。

 

 次々に繰り出し、反撃は愚か逃げる隙も与えることなく攻め続け剣を振るう度に奴の返り血を浴びる。

 

 更に強力な一撃を仕掛けようと軽く跳躍して踏込むと同時に片足を浮かせ、もう片方の足で立つ。

 剣を両手で持って振りかぶり、勢いのままに剣を振る。

 

「デアァアアァッ!」

 

 ピターを思い切り斬り飛ばした。

 

 吹き飛んだピターは地面へ落ちて転がるが、すぐに立ち上がってこちらを睨みつけてきた。

 

『クソ、今のは……なンだ⁉ 最後まで不愉快な下等生物め!』

 

 まともに言葉まで発せるようになったか。段々人間に近くなってきたな……。

 だが、人に近くなれば近くなるほど俺を倒す見込みは無くなるぞ。

 

 

 

「くそったれな三流技だ。諦めろ、テメェじゃ一生真似できねえよ」

 

『戯言ヲ……死に損ないが!』

 

「ああ、その通りだ。だが、俺は所詮無銘の兵士。戦場じゃ真っ先に散る命だ。お前はその無銘の兵士すら容易く殺せない事もまた事実だ」

 

『負ケ惜しミヲ。負け犬ノ遠吠エか』

 

「戦いに勝ちも負けもねえさ。戦って生き残るか、死んで消えるかだ」

 

 

 不意打ちとはいえ、ソーマに一撃入れたのは褒めてやりたいところだが……あいつらは何度でも限界をぶち破って強く、そして経験を得て賢くなるだろう。アラガミの進化と競うように。

 

 

 そう、人間は強い。もし俺達の時代にアラガミなんて出てきたら打つ手は無かっただろう。だがこの時代の人間は見事に対抗して見せた。

 

 

 

「おい、希望など無いとほざいたな?」

 

 中指を立ててピターへ向ける。

 

「希望がねえのはテメェだよ、害獣野郎」

 

『オノレェ……! 下等生物ガァ……ワレを愚弄するカァ!』

 

 ピターは剣を片手に猛スピードで接近し、剣を振りかぶる。

 

 こちらも剣を片手に、呼吸を整える。

 

 

 

 まったく文句ばっかりほざきやがって……怒りてえのはこっちだ。そもそもこいつが現れなければ……。

 

 エレナとの約束に、ユウナとの約束も……。

 

「テメエのおかげで、大事な約束を2つも破っちまっただろうが……!」

 

 

 

 

 剣を構え、意識を集中させる。

 

 

「カタぁ着けてやる。これで最後だ」

 

 

 

 踏込みと同時に、ピターの振る剣を全力で叩き斬って圧し折る。

 

『ヌアッ⁉』

 

 攻撃を弾かれ、隙をさらした奴へ肘鉄を繰り出し、更に怯ませてから喉元に剣を突き刺す。

 ピターは抵抗して折れた剣を振りかぶるが素早く後退して、反撃を回避する。

 

 無理に反撃を振ったおかげか、遂にピターはよろけて膝を突いた。

 

『AAaaaa…………』

 

 

 勝機!

 

 

 一気に距離を詰めて首へ一閃するも、剣で防がれる。すぐさま剣を上空へ弾き飛ばす。

 

 即座にピターは一瞬で姿を消し背後から新たな剣を取り出して斬りかかってくる。

 迫る剣を紙一重で回避して反撃へ転じ、剣を振るがピターも体を傾けて紙一重でやりすごし、踏み込みつつ返し刃、ピターは軽快に跳んで再び背後へ回り込まれた。

 

「っ!」

 

 振り向きながら剣を振ると、ピターも同じように刃を振っていた。

 

 

 刃同士が激突した直後、ピターの顎目掛けて空いた手で拳を握り渾身の力で跳躍と共にアッパーを叩き込む。

 

 

 そして剣を逆手に持ち替え、ピター肩を乱雑に掴んだ。

 

『ナッ⁉』

 

「迷ったな!首をだせェ!」

 

 目を見開いて驚くピター、一回転と共にその首を切り裂いた。

 

『バカな……ナゼ……コノヨウナ…………オノレェ……!』

 

 首だけとなって地面へ落ちる最中……最後の悪あがきか、赤い電撃を纏って赤く輝く。

 

「まだだぁ! 最後に1発くれてやらぁ!」 

 

 とどめの一撃を入れるため、首の無い胴体を足場代わりにして跳ぶ。

 剣を両手で握り、空中からピターの眉間目掛けて落下して狙いを定めた箇所へ思い切り剣を突き刺した。

 

 首だけになっても油断することなく相手の眉間に必殺の一撃。これぞ隙の生じぬ二撃必殺。

 

 

『オ……オノレェ……オノ……レェ……』

 

 

「時に人は神や鬼にも肉薄する。取るに足らぬと侮ったな」

 

 

 剣に貫かれたピターの体は霧散して消え、そこに残ったのは剣で貫かれたコアだけだったが、すぐにコアも霧散し空へ昇っていく。

 

 その直後に体から力が抜け、その場で膝をつく

 

 

 

 

「グゥ……! ハア……ハア……ッ! グッ……ガハッ!」

 

 

 痛みに身を強張らせると胸が苦しくなり咳き込んで幾らか吐血する。

 身体から力が抜け、力むと激痛が走る。緊張が解けたこの状態じゃ……もう立ち上がる事もできないかもしれない。

 

 

 流石にあの攻撃が致命的だったようだ。

 

 刺された傷から血が溢れ出し、傷口のすぐ近くの皮膚はオラクルに侵食されて赤黒く変色している。右腕は赤黒く染まり、袖を捲ればシャツに隠れていた部分も完全に赤黒く塗りつぶされており、胴体まで完全に侵食されているのが容易く想像できる。

 このままじゃ失血死でくたばるか、最悪アラガミ化もあり得るな。

 

「ああ……。痛ぇ……」

 

 

 ああ、覚悟を決めたつもりだったが……死ぬのってやっぱ怖いな……。

 やべえ、意識が朦朧としてきた……。

 滅茶苦茶痛えし、苦しすぎて吐きそうだ……。

 

 

 

「…………?」

 

 視界がぼやける中、白い制服を着た神機使い達が背を向けて歩くのが見える。

 

「…………………あぁ……そうか……」

 

 ユウナたちがフェンリルのマークに良く似たエムブレムが刺繍された白い制服を着て、去っていく姿が見えた。その後姿はとても逞しく、立派なものだった。

 

 痛みを無視して咄嗟に手を伸ばす。だが、伸ばした手をすぐに下ろした。

 

「……そうだ、前へ進め……」

 

 

 『この世の全てには必ず理由がある』と、戦友は言った。俺の死もきっと……。

 無様に敗北し、挙句に何も守れずに死ぬような、納得のいかない無念だけは残さなくて済みそうだ。

 戦って守る命、これ程尊いものは無い。

 

 

 しかし、感慨深いな。ここが未来だなんてな。いやまあ、絶望的な未来だよな……これ。

 でも、あいつらはこんな絶望しかない世の中でも希望を捨てずに戦っている。

 過去の存在である俺たちからすれば、未来を生きるあいつらは何よりの宝だ。俺たちはあいつらと、あいつらと共に在る未来のために戦ったのだから。

 そしてあいつらは見事立派に生きて戦っている。

 嬉しく、誇らしい事だ。

 

 あの世への良い土産話がたくさんできた。土産話を戦友たちに聞かせ――いや、その前に地獄の底で鬼達と一戦か……。

 

 

 さぁて……ホントに覚悟を決めるか。

 

 このまま死ねば、俺はピターに殺されたことになる。倒したはずの奴に殺されたことにされるとか癪に障る。人として死を迎えるより早くアラガミ化し、未練がましくこの世を彷徨うなんてのも御免だ。

 

 自分の始末は、自分でつけるしかない。

 

 

 気力を振り絞り、地面に膝を突いて上体を起こし、震える手でしっかりと灰色の刃を握って切っ先を腹へ向ける。

 

 

 悪いな皆、先に逝く。

 でもお前たちは、あと数十年はこっちに来るなよ。せめて爺婆になってから来てくれ。

 あ、でも俺って地獄行きか? 

 

 前言撤回、地獄に落ちるような悪い事はするなよ。

 

 

 

 エレナ、元気でな……。幸せに、なってくれ。

 

 

 

 皆、あともう一言だけ言わせてくれ。

 

 

「ありがとよ、世話になったな」

 

 

 言葉と共に、刃を思い切り腹へ突き刺し、奥深くまで刺し込む。

 

 痛みと共に意識は徐々に遠のき、瞼は勝手に……ゆっくりとだが閉じていく。

 流石に刺しただけじゃ死ねねえか。まあそれならピターに刺された時点でとっくにお陀仏か。

 

 歯を食いしばり、痛みと恐怖で震える体を押さえつけて剣の柄を力強く握る。

 

 

 

 

 

 

            「愛してるぜ、可愛い子どもたち」

 

 

 

 

 

 もう一言を紡ぎ、刃を振り抜いた。

 

 




トラブル等で丸1年投稿できなかったりペースが定まらなかったりと色々ありましたが完結出来てホッとしています。
程度の低い文ですが、それでも応援のお言葉を頂けて大変励みになりました。
また、誤字脱字のを指摘してくださった方々にも重ねてお礼を申し上げます。 
誤字脱字の修正に関しては時間を見つけ次第行っていきたいと思います。

最期に読者の皆様にお礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。

 

一応、後日談の随筆も投稿日は不定ですが考えておりますので、投稿した際にはご覧になって頂ければ幸いです。

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