第1話「登場はド派手に行こう」
森の中…その奥深くには、教会があった。いや、教会だったという方が正しいのか…その教会の姿は荒れ果て倒壊しかけている寂れたものであった。
森の木々に囲まれたその教会の入口前に一人の男と宙を飛ぶドラゴネットが突然、風と共に姿を現せる。
「はぁはぁ、相変わらず…は、早いよ…はぁはぁ…。」
ルーガは息を乱して汗を流しながら疲れた表情で隣に立つ自分とは違い全く息を乱していないハルト視線を向ける。
「お前が遅いだけじゃね?」
「違う!ハルトが異常なの!ってちょっ…!休憩させてよ…!」
ルーガが息を切らしながら精一杯文句を言うもののいつの間にか主人の姿はない。
辺りを見回すとハルトはさっさと教会の入り口へと歩を進めていた。
「ちょっ待ってよ!ハルト!!」
「早くしないとおいてくぞー。」
ハルトは教会の古びた扉に手を掛ける
ガチャッ…ギィィ…
扉の古さを表す音を響かせながら戸惑うこと無く開き、さっと教会の中へ入っていく。
中はとても教会であったと思えない程の荒れようである。
長椅子と祭壇など普通の教会と変わらないデザインではあるが、奥にある聖人の彫刻は頭部が破壊されている。
「すごい荒れようだね…。」
「仕方がねぇよ。ここは何年も前につぶれた教会だ。こんな森の奥にあれば堕天使の目につきやすい。」
「よしそれじゃ、早く聖堂への通路を探してシスターを助け…ようって言ってるのに何してるの?」
「この辺…かな…」
ルーガは戦闘への闘志を燃やしていたが、主人であるハルトは入口側から動こうとしていない。床を眺めながらゆったり入口付近を歩き回っているだけである。
「ハルト!何してるのさ!!早くしないとシスターが死んじゃうよっ!!!」
「わかってるって…。ここだな…。」
「早く聖堂に行かないと!!!!」
しびれを切らしたルーガはハルトの服を思いっきり引っ張った。
しかし、ハルトは全く気にすることもなく、小さく笑いながらある位置で止まった。
「ハルトっ!」
「この下。」
「って、は?何が…?」
ルーガは虚を突かれたような声と顔でハルトを見上げる。
そんなルーガを一見した後、視線を誘導するように口角を上げながら床下をそっと指す。
「この教会の下に聖堂がある。目的のシスターと堕天使はこの真下だな。」
「あ、感知能力…?」
「そう、こっちの方が早いだろ。さっさとしないと間に合わないし」
「まさか、このまま行くつもり…?」
ルーガは嫌な予感がして冷や汗を流しながらハルトをもう一度見る。
ハルトは先ほどより深い悪戯な笑みを浮かべて一言告げる。
「そのまさか」
またか…
ルーガは内心諦めを感じていた。またかということはこのようなことは1度や2度だけではない様子。
ハルトはそっと右手を上げて力を込める。
すると、透き通る赤色の魔力が目視で確認でき、徐々に右手を覆っていく。そして、次第に右手を覆っていた魔力は透き通る赤い魔力の短剣へ変形する。
魔力によって形作られた短剣。
「さあ、行こうか」
「もうちょっとお淑やかに登場しようよ…」
一方、ハルトとルーガが教会に到着した頃の地下聖堂では…
光の剣を持つ大多数の神父、いや、はぐれ
そして、かれらが揃って仰ぎ見ているのは、地下聖堂の最奥、一人の女堕天使と十字架に
バンッ!!
その時、静寂な空間に大きく響き渡る。
レイナーレとアーシアがいる所とは真逆に位置する聖堂の入口の扉が勢いよく開かれた音だ。
聖堂にいた全員が振り返り入口側へと視線を向ける。その表情は誰もが戦闘態勢に入っていた。
勢いよく開かれた扉の奥から現れたのは、男2人・女1人の計3人。堕天使とは対立関係にある悪魔であった。
一般的に思われる悪魔の姿形とは程遠い3人の悪魔は全員、16~7くらいの年に見える子供であった。
先頭に立つ茶髪の青年の名は兵藤一誠。その後ろに立つ金髪の青年の名は木場祐斗と、白髪が目立つ小柄な少女の名は塔城小猫。
悪魔・堕天使・はぐれ悪魔祓い・シスター。それぞれ決して、交わることがないと言われる種族たちが一つの聖堂に集結していた。繰り返される種族間での争い。また一つ新たな悲劇が始まろうとしていた…。
「いらっしゃい。悪魔の皆さん。」
「アーシアぁぁぁぁ‼‼‼‼」
悪魔兵藤一誠こと、イッセーは立場は違えど仲の良い友達となったシスターのアーシアを助けるべく、とある縁により仲間となった悪魔の裕斗・子猫と共に堕天使の巣窟である教会へ辿り着いた。堕天使に攫われたアーシアがいる地下聖堂までようやく辿り着いたイッセーだったが、貼り付けにされたアーシアはすでに弱弱しくなり、力尽きる寸前である…。
アーシアは友達となった異国の友人イッセーの懸命な叫びを聴き、僅かに残る気力でイッセーへと視線を上げた。
「…イッセー…さん…」
「…っ!あぁ、助けに来たぞ!!!」
弱弱しくなったアーシアに驚愕と悲痛な胸の痛みを感じるがそれを払拭し、アーシアを安心させるようにイッセーは力強く笑顔で返事を返す。彼女はただその一言に微笑み一筋の涙を流す。
感動の瞬間もつかの間…邪悪な魔の手はすぐそこにある…。
アーシアの近くにいた堕天使レイナーレは極悪な笑みを浮かべ、2人の間を割くようにアーシアの前に立ち塞がる。
「感動の対面だけれど遅かったわね。いま、儀式が終わるところよ。」
レイナーレの言葉と共にアーシアの体が突然光を放つ
「っあぁぁぁ!!!」
アーシアの悲痛な叫びが聖堂内に響き渡る…
「アーシアに何をするつもりだっ!!?」
「っ!!そうか、堕天使の目的は…」
堕天使レイナーレを鋭い眼光で睨みつけるイッセー。すると、十字架や儀式の言葉で何かを理解したのは裕斗であった。
その言葉に反応するイッセーと子猫。
「堕天使はシスターの
「
「それはっ…」
「…あぁあ、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ッドッカーン‼‼‼‼‼‼
さらに大きく十字架とアーシアの体が光り出したその時、聖堂最奥の十字架の遥か頭上、天井が爆発する。
「「「っ!!?」」」
「っ⁉何っ⁉」
天井の爆発と同時に聖堂最奥に広がる土煙。イッセーたちも驚きが隠せない。
先ほどまでの笑みはどこかへと消えた突然の頭上からの爆発音にレイナーレは壇上から翼を広げ飛び上がる。
さらに、視界の悪い中、金属の音がガチャガチャッと響いていた。
暫くして煙が収まったころ…
「な、なんだっ!!?」
神父たちが騒ぎ出す。なぜなら、これは計画にないことだからだ。
「なんなの!!?どうなって…!!」
レイナーレもまた何がどうなっているのかわかっていない。
「アーシアぁぁぁぁ!!!!」
アーシアの安否だけが心配で叫ぶイッセー
全員がレイナーレとアーシアがいる方へと視線を向けていた。
「ガタガタうっせぇなぁ…」
「「「!!!!?」」」
その場にいた全員が驚きの声も出ず、ただ茫然と突然姿を現した第三者へと視線が釘付けになる。
「こんばんわ、堕天使レイナーレ。」
十字架に磔られていたはずのアーシアは1人の男の腕で抱き挙げられていた。
男が立つその後ろには、使い物にならない程破壊されて機能を失った十字架とアーシアを縛っていた鎖が無残に落ちていた…。
急展開過ぎる出来事に誰も声を発せずにただ、突然現れた男に視線を向けるだけ。
その男ハルトは気にすることもなく、宙へ飛ぶレイナーレへと冷え切った視線を向ける
「彼女は死なせない。」
「っ!!?っ貴様ぁぁぁあ!!!!」
我に返ったレイナーレはハルトをこの上ない程怒りの顔に満ちていた
ハルトはその表情に臆することなく冷ややかな視線で向かいあった